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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~Part 17~

「はぁ…」

重い足取り、吐かれた溜息。
今日も今日とて陽の光を受け淡く煌く金色の髪を揺らしたのは、この学園の生徒会長であり何においても最高峰と謳われるほどの力を有した少女、レイナだ。
彼女の片手には少々大きめの紙袋が握られている。
彼女の周囲にはピンクのオーラを放っている者や、はたまたそわそわと忙しなく身体を小刻みに揺らす者など普段とは明らかに様子の違う者たちばかり。
それもそうだろう。
なんてったって本日は世の女性、はたまた男性たちが色めき立つ行事の一つ、バレンタインデーである。
そこかしこで匂ってくる甘い香りと甘い雰囲気。
毎年の事ながらもうんざりとしてしまうのは仕方ない。

「はぁ…」

もう何度目になるのか、数が片手を越えた時点で考えるのを止めてしまったので正確な数を把握していないが20になろうか。
それもそのはず、あちこちから寄せられる視線が実にうっとおしいことこの上ない。
視線を辿れば必ず行き当たるのは男男男。
目当ては間違いなく紙袋の中身だろうがしかし、これを奴らに渡す気は毛頭ないしましてや愛想を振る必要性も感じない。
そんなに飢えているなら他の女子にでも泣きつけ私は知らん。
まさにそんな態(てい)で男共の視線を無視し目的の人物たちを探す。

「あ、いたいた。コウ!」
「ん?」

視線の先には女子生徒に囲まれた幼馴染兼この学園の教師であるコウ兄弟。
コウリュウは困り顔だった顔を、コウヤは朗らかに笑っていた顔をレイナへと向ける。
実はこれでも私的な付き合いの教師が多かったりするのだが、特に問題もなさそうなので隠すことなく接していたりする。

「はいこれ、義理ね」
「わー、ありがとー♪」

紙袋を漁り取り出したのは綺麗にラッピングされた小箱。
中身は言わずもがな、チョコである。
もちろん先述で述べたように義理だ。
そしてそれを真っ先に受け取ったのはコウや。
ついでに兄の分も受け取る。

「なにお前、『菓子メーカーも購買数向上のために義理だの友だの逆だのと名目打ち出しては色々企んでほんと商売魂逞しいよなぁ』とか言って興味なさそうだったのに、結局策略に乗ったのか」
「昨日ルリっぺに捕まったのよ」
「ああ、それでか」

既にこの3人、周囲の生徒たちに対して『アウト・オブ・眼中』。
すっかり自分たちの会話の世界に入り込んでいる。
もちろんながらそこに恋愛要素は0。
まぁ、教師生徒ではなく幼馴染全開だが。
ちなみにルリと言うのは医術/薬草学の担当教師であり彼女らの幼馴染の事だ。

「昨日放課後に捕まってさ、家庭科室に連れて行かれたら、ね」
「ああ…」
「うわー、想像できちゃうよ」

なんというか、ご愁傷様。
連行されたその先にはエプロン三角巾装着済みの、片手にボール、もう片手にはゴムベラを持った女性たちがいたわけだ。
そしてあまり甘いものが得意ではないというのに付き合わされた、と。

「昨日のがまだ抜けてなくて気持ち悪い…」
「大丈夫か?」
「じゃ、なさそう…」

うっ、っと呻いて口元を押さえた彼女は本当に昨日の家庭科室での甘い匂いが忘れられないのか。
少し青い顔をしていた。

「とりあえず、まだ他のみんなに渡してないのよ」

渡し終わったらさっさと休むつもり。
そう言って、返事も聞かずに踵を返した彼女は手をひらひらとさせながら次に渡す人物を探す為校内へと消えていった。


◇◆◇◆◇


「やっぱりここにいた」
「お、レイナ。もしかして探してた?」

寮塔の最上階、普段は誰も寄り付かない(なんてったって地上からかなりの高さがある上階段しかない為非常に登るのが面倒でありましてやこの時期はまだまだ寒い)屋上にいたのはシュウだ。
コートにマフラー、手袋までして防寒対策はばっちり。
冷たい風が吹き付けるそこは地上よりもずっと寒いのでその格好は正解だろう。
そんな許にやってきたのは言わずもがなレイナであって。
彼の横にストンと腰を下ろすとポケットから何かを取り出す。
出てきたのは。

「Happy Valentine's Day」

言葉と一緒に出されたのは、他の人たちよりも綺麗にラッピングされた小箱。
派手なのを好まない彼女らしい、しかじ地味すぎることもなく控えめながらも華のあるラッピングだ。

「また随分と、手が込んでるなー」

もしかして本命だったり?
と茶化した彼に返ってきた答えは。

「もちろん、本命。私が義理をあげるとでも思ってた?」

あっさりと、そう答えてくださった。
まさか本当に望んでいた返事が来るとは思わなかったのか、その答えを聞いたとたんにシュウは顔はおろか耳も首も真っ赤にして。
慌ててレイナから視線を外してしまった。
その様を見ていたレイナはクツクツと喉の奥で笑っている。

「おまっ、それ、反則…っ」

貰った包みを大切そうに片手で抱いて、もう片方の手はテレを少しでも隠そうと口元に。
いまだ冷め遣らぬ顔の赤みははたしていつ引いてくれるのか。
夕日に全てが染まる中、こうして今日も彼らの戯れは続くのだった。







まさかの新事実発見。(笑
コウ兄弟とルリとレイナは幼馴染です。
ついでにシュウも。(←!?
ついでとか言ったら彼は本気で泣きそうだな。

そしてレイナちゃん、普段はまったく素振りすら見せないのにこんな時だけデレます。
ツンデレ?クーデレ?
デレてるレイナちゃんを他の人に見せるのが癪なシュウ君はこうやって人の寄り付かない場所にあえて行きます。
それを判っているのでレイナもわざわざそこへ行くんですよ。
これでまだ付き合ってないんだからこっちが驚きです。
いつくっつくんだお前ら。

レイナちゃんがデレるのは年2回、VDとクリスマスだけだと思う。
あ、互いの誕生日とかもよさそうじゃね?(…

しかしあんな彼女でも近しい人たちへの愛はちゃんとあります。
今回書いていませんが実はあれでも甘いのと甘さ控えめの2種類のチョコ用意してるんですよ。
それに合わせて包装も変えてあります。
ちなみにコウヤ君が受け取ったのは甘いほう、コウリュウ君が受け取ったのは甘さ控えめ。
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