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古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。
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「んん?」
「あっれー?」
「……誰、ですの」
顔を合わせた途端、3人共に首を傾げてくれやがりました。
◆◇◆◇◆
ただ今の時刻、13時5分前。
もう少しで授業開始という時間になっても未だ現れない少女に、どうしたのだろうと心配する声が上がった時だった。
ダンスホール(次の授業は礼儀作法でダンスの練習だ)のエントランスが不意に騒がしくなる。
声に耳を傾けてみると「どこの子だ」や「綺麗…」などの言葉が聞こえ、顔を付き合わせ話していた生徒会4人組みのうちの3人、シュウ、エミリア、ファゼたちはつられる様にしてエントランスへと顔を向ける。
生徒たちの視線の先にいたのは白銀の髪に青藤色の瞳を持った少女。
見た目は恐らく自分たちと同じ歳だろうが纏う雰囲気はとても大人びている彼女は、上品なドレスを身に纏う。
白く滑らかな肌にはうっすらと化粧が施され、鮮やかな紅のひかれた唇はいっそ煽情的とも言える。
正に綺麗と評するに相応しい少女は、つい…と視線を動かしたかと思うとシュウたちへとそれを向ける。
「……っ」
視線を向けられ、知らず喉がヒクつく。
なんだろう、これは。
見つめられただけで胸が高鳴り息苦しい。
白銀の麗人は視線を合わせたまま、ゆっくりとこちらへ歩みだす。
すると、自然と道が開けさながらモーゼのような光景となる。
彼女自身が淡い彩色だからなのか、ダンスホールの窓に嵌め込まれているステンドグラスの放つ光に当てられ、周囲が輝いて見える。
コツ…、コツ…、と靴を鳴らし歩く姿に、3人の胸は更に高鳴った。
「「「……」」」
3人は声を出すことが出来ない。
そんな姿を見つつ、麗人がゆっくりと口を開く。
そしてようやく声帯を振るわせ鈴を転がすかのような声(※想像です)を発したかと思いきや。
「なんでみんな固まってるの」
麗人の口から発せられた声は、よく知る人物のものだった。
まぁ、たしかに綺麗な声ではあるのだが…。
知ってしまった瞬間、一気にその場を支配していた緊張感が吹っ飛んだ。
「んん?」
「あっれー?」
「……誰、ですの」
思わず漏れた言葉には、否定したい気持ちがありありと浮かんでいて。
そうして冒頭の会話へと戻ることとなる。
◆◇◆◇◆
「シュウ、覚えがないとは言わせないわよこのヤロー。ファゼは人を指差すんじゃありませんその指へし折ってやろうか。エミリア嬢も、この期に及んで『誰』はないんじゃないかしら?」
ニッコリ、ニコニコ。
後ろに溢れるどす黒い魔力の靄のような物が怖いだなんて口に出して言うことは出来ない。
言ったが最後、失ってはいけないものがなくなってしまう気がする。
「あー、その言い方は」
「間違いなく」
「レイナ、ですわね」
3人は順に言葉をつなげていく。
ここでまだ惚(とぼ)け様ものなら一体どうなることやら、考えるだに恐ろしい。
よほど機嫌が悪いのだろう、白銀の麗人---レイナは、黒い笑みを浮かべどす黒い魔力を消してくれる気配はない。
「それ、どうしたんだ」
あまりの怖さに誰も声をかけられない中、やはりと言うべきか、シュウが生徒たちの気持ちを代弁してくれる。
「………のよ」
「ん?」
うつむきぼそりと発せられた声は小さく聞き取れない。
余談だが、この時シュウは『結い上げて晒されてる項が色っぽいなぁ』と考えていたらしい。
後日親友(ファゼ)に打ち明けているのが確認されている。
「だから、ちーちゃんが悪戯で中に入ってるの!」
「「「「「は?」」」」」
「あ、やっぱり」
「中に入る?」
「何のことですの…」
わかっている者2名、わからぬ者多数。
みなが首を傾げる中、2人の会話は進んでゆく。
結局理解できたのは彼女のガーディアンのせいで髪と瞳の色が変わっていること、服はダンスホールへ向かう途中にルリとコウヤにつかまり着せ替え人形よろしく遊ばれたということだけだった。