Dramatic Record ~契約の時~ Dramatic Record 本棚 2011年02月26日 それを交わしたのは、たしか幼子が声を聴けるようになって直ぐだ。 あの日の事は今でも鮮明に思い出せる。 体を駆け巡るのは歓喜の奮え。 これで、名実共に主になったのだと。 ようやくこの力を貸し与え守ることができるのだと。 貴女が我らの主であることが、至宝となった日の事だ。 ***** 空は茜に染まり、もうじき日の暮れる時間帯。 西北の島国、その最果ての島にある平屋建ての庭で佇む影が一つ。 小柄なその影は腕に白いものを抱え、静かにそこにいる。 平屋の軒では小柄な影同様静かに、それを見やる一組の男女。 小柄な影――レイナはそんな男女を視界の端に、そっと地面へと顔を向け。 「げつえい」 ぽつりと名を呼ぶ。 その言葉に呼応するように蠢くのは、レイナの足元にある影。 影はゆらりと揺らめき実体となると、獣の姿を形作る。 影のように漆黒の、大きく裂けた部分が口であろうとしか判別のできないそれは。 ゆっくりと切れ目の両端を持ち上げた。 ≪ようやく…。この時を、待ちわびた≫ 「……本当に、いいの?」 ≪是≫ 影の獣(姿からして狼だ)から発せられたであろう声が響き、レイナは本当にいいのかと言葉をかける。 しかしそれに影狼――月影は一言答えるだけ。 その返答を聞いたレイナは、目を閉じひとつ深呼吸をする。 「わが名はレイナ、せいれいとけいやくせんとする者。大いなるやみのしんえんより生まれしものよ、 わが力をもってその名をしばる。われに力をかしあたえよ、――……。」 拙い声で厳かに唱えられたそれは、契約の詠唱。 レイナが最後に月影の真名を呼ぶと、月影の額部分と少女の胸元に光を帯びた同様の紋章が浮かび上がる。 浮かび上がったそれは契約印であり、その精霊との契約が無事なされた事を示す。 数秒浮かび上がっていた契約印はすぅっと薄くなり完全にその姿を消した。 「けいやく、終わった?」 ≪是≫ 「あらためて、よろしくね」 ≪……≫ 終了を確認したレイナが笑って言うと、月影はひとつ頷く。 かわらないね、と言ったレイナは、先ほどからずっと腕に抱えていた白いものを見やる。 「ちー?」 「……」 腕に抱えられていた白いものは、白九龍だ。 普段から少女の傍におり、“ちーちゃん”と呼ばれ仲良くしているそれは今現在むすっと不機嫌そうにしている。 「どうしたの?」 「……」 何が不満なのか白九龍は幼レイナの腕の中で不機嫌なまま、幼子の問いかけに答えるつもりはないらしい。 そんな翼竜の様子をじーっと見ていたレイナに、幼子らの様子を伺っていた女性が声をかける。 「レイナ、いらっしゃい」 「母上」 女性――母親に呼ばれたレイナは素直に近づく。 近づいてきたレイナを母親の隣に腰を下ろしていた男性、レイナの父親が抱き上げその膝に乗せてやる。 「先ずはおめでとう、ですね。ちゃんと契約できてよかった」 「うん。これでげつえいとずーっとおともだちなの」 「そうね」 契約の意味とは少々ずれているが、まあいいだろうと両親は笑いながら幼子の言葉に頷く。 そしてレイナの頭を撫でてやりながら、幼子の腕の中を見やって言う。 「レイナ、ちーはいいのですか?」 「ちー?」 母親の言葉にレイナは首を傾げる。 何がいいのだろうか、といった表情のレイナに2人が苦笑を漏らす。 「ちーも、あなたとずっと友達でいたいのでしょう」 「ちーとも契約してやってはどうだい?」 「……けいやく、したいの?」 「リュィ」 両親の言葉に少し考える様子を見せてレイナが問うと、変わらず不機嫌そうな様子ではあるがようやく白九龍が反応を示した。 どうやらレイナの中で月影との契約、それだけで事が完結していたのが気に入らなかったらしい。 反応を示した白九龍の姿に頷いたレイナは、再び契約の詠唱を唱える。 次に呼ぶのは白九龍の名。 こうして幼子は、生涯を共にする己のガーディアンを手に入れた。 ちょっと短いけど契約編終了。 ちーちゃんが契約したいことに気づいてもらえなかったのはきっと「リュィ」tt鳴き声だからだと思われる。(ぇぁ ほら、精霊の声聞こえるようになったのちょっと前だから人語じゃない鳴き声で聞こえなかったんだよ。 逆に月影は契約したいって事ある毎に言ってたんじゃないだろうか。 PR