Dramatic Record ~金と銀の二重奏~
出会ったのは陰廻の月。
大人の腕に抱かれた身体は小さく、日が当たり輝く金糸がとても眩しい。
寝ているのだろうか今は閉じられている瞼に、その下の隠された瞳の色を思うと胸が高鳴るのを感じた。
*****
ここしばらく世界を騒がせていた魔物の集団が討伐されたとの知らせが世界を駆け巡ったのは、およそひと月前。
討伐隊が見事撃ち滅ぼしたと公表されたそれが違うという事を知るのは…ほんの一握りのみ。
彼らが件の魔物の気配を辿り行き着いたのは西北の島。
そこに色濃く残っていた魔物の気配はしかし、そこまでだった。
それ以降全く存在を掴むことができず、島唯一の生存者の口から「もう存在しない」と語られたことにより、世界への発表となった。
ただ一つ、誰が倒したのか謎のままに――…。
*****
そして島唯一の生存者はというと。
討伐隊の一員として参加していたリュウオウとユキメによって引き取られた。
その際に一悶着も二悶着もあったのだが、2人はそれをはねのけた。
その事は今回は割愛しておく。
とまぁ、色々あった一ヶ月。
2人は唯一の生存者、まだ小さな女の子を連れて親友の家へと訪れていた。
いくらか時間のかかった道のりに、少女はリュウオウの腕の中で眠っている。
寝ている少女を起こさぬようにしながら案内されるまま着いた部屋には親友の妻と息子(次男だけだ)がいた。
「アイツは?」
「仕事よ。なかなか終わらないみたいなの」
「またか」
苦笑して二人掛けのソファーに腰を下ろす。
そして先程から何やらずっとこちらを見つめている次男坊――シュウを見やって苦笑を一つ。
どうやらリュウオウの腕に納まっている少女の事が気になって仕方にらしい。
「その子が生き残りの…」
「ええ」
妻の方も少女が気になっていたのだろう。
いつの間にか彼女の視線も少女へと固定されている。
「レイナ、着いてるぞ」
リュウオウは少女――レイナの肩を揺すり覚醒を促す。
それほど眠りの深くない少女の事だ、これですぐに覚醒するはずだ。
「名前、レイナというのね」
「ええ」
「聞き出すのに一週間かかったがな」
唯一の生存者であった少女は両親と島人が件の魔物達に殺されている。
今こうして少女が生きているのは文字通り母親が命を懸けて守ったからに他ならない。
そしてそんな少女はというと、あの一件で他者を酷く警戒するようになっていた。
リュウオウとユキメはこの一ヵ月間、警戒を解いてもらうために色々と努力をしたのであった。
その結果が今のこの状態である。
「ん…」
もぞりと、リュウオウの腕の中で少女が身じろぐ。
そして閉じられていた瞼の下から現れたのは蒼穹の色をした瞳。
澄んだ色をした蒼はきょろりと周囲を見渡し、見知らぬ顔へと行き着いた。
「…っ」
瞬間、少女の身体が固まる。
抱いていたためにそれを感じ取ったリュウオウは、安心させるようにその背を撫でた。
「大丈夫だ、家で何度かあったことのあるおじさんがいるだろ?その人の家族だ」
「かぞく…?」
「そう」
『家族』の言葉に反応したレイナに首肯して、少女の身体を2人の方へ向けてやる。
レイナは未だに少し身体を強張らせているが、先ほどよりはましだ。
「はじめまして、私はアリシアよ。こっちは息子のシュウ。よろしくね」
「おれはシュウ!よろしく!」
アリシアと名乗った女性は微笑んで、息子のシュウも紹介してやる。
紹介されたシュウも、元気よく挨拶した。
「……レイナ」
そんな2人の様子に多少気圧されつつも、レイナはちゃんと返事を返す。
*****
あの後シュウが落ち着きなくそわそわしているためか、大人3人は幼子2人に遊んでくるようにと言って部屋を追い出した。
この屋敷は庭も含めてそれなりの広さがある。
子供2人だけなので多少の心配はあるものの、今なら休日という事も有り『エリアル学園』からコウリュウが帰ってきている。
だからそれほど心配することもない。
それに、レイナにはガーディアンがついているから危険はないはずだ。
そうして大人だけとなった室内で、彼らは話を進める。
「それじゃ、やっぱり学園に?」
「ああ。俺達も来年から教師としていくことになるからな」
「あの子はまだ先になるけど、今から人馴れさせておいた方がいいと思うの」
「そうね」
リュウオウとユキメは新年度からエリアル学園で教鞭をふるうことになっていた。
そうなれば2人は少女を育てるのが難しくなる。
数年後にはレイナも学園へ入学できることもあって、しばらくこの家に預けるという話をしていたのだ。
こうして本人を抜きにして色々と話が決まってしまったが、特に拒否もされなかったのでそのまま決定となるのはもう少し後の話。
それから2年後、エリアル学園始まって以来の天才児が入学するが、それはまだ先の事である。
DR第9話になります。
レイナとシュウの出会い。
次はコウリュウたちと合わせたいなと。
あと1話、番外として話を出すか悩んでいるのですが書いた後にいよいよエリアル学園へと入学になります。
学園へ入学の話からは女帝が女帝らしく女帝である話が続きます。
そして初っ端からチート(最強)の予定。
女帝は能力的には他者を圧倒する正しくチート。
頭はバカじゃないですよ?
女帝は肉体労働派(…)で(気が向いたら)ガンガン前衛に出るタイプなので、戦略諸々の頭脳派はヘタレの役目。
ヘタレは後方からの支援という後衛タイプ。
でも間合いに入られると不味いので対応できるようにと体術は叩き込まれてると思う。PR