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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~白銀の物語~

白銀の輝きを宿すその子が生まれたのは陽頂月の中旬、草木が芽吹き暖かな色に満たされたころだった。


*****

 
病室に産声が響いたのは深夜。
草木も眠る丑三つ時とはよく言ったもの。
そんな時間に生まれた赤子は母親の腕に抱かれる…前に現在進行形で歳の離れた兄によって抱かれていた。

「母様、疲れて眠ってるのか」
「はい。産声を聞いて気を失うように」
「そっか」

お産を手伝ったのだろう看護師に教えてもらったオレは、赤子を抱いたままベッドに眠る母へと近づく。
ベッドに眠る母は銀の髪を広げ、疲労の様子を見せながらも穏やかな寝息だ。
いくらか歳をとってからの出産(何せオレたち兄弟の年齢はどう考えても一回り近く離れている)なので、随分と疲れただろう。
オレは母の寝顔を確認すると、母をゆっくりと休ませるためにそっと部屋を後にした。

*****

「顔は君に似ているな」
「あら、そうかしら?この部分などあなたにそっくりだと思いますけど」
「いや、やっぱり君に―…」
「……」

あの後生まれたばかりの弟を保育室に戻したオレは、仕事の関係で出産に立ち会えなかった父親へと、 弟が生まれたことを連絡した。
その際、通信の向こうがとても賑やかだったことは置いておこう。
どうせドジな父の事だ、嬉しさのあまり色々とひっくり返してしまったのだろう。

そんな父が病院へと着いたのは、日が高く昇ってから。
その頃には寝ていた母も目を覚まし、 我が子を腕に抱いて母乳を与えているところに到着(と書いて乱入と読む)した父は妻と弟の顔を見た途端、先の言葉となった。

「シグレ、あなたはどう思いますか?」

両親の言い合いを遠い目で見ていたオレ(シグレと言う名だ)へと、母が声をかけてくる。
少しばかり意識を遠い所へとやっていたオレは、母の声で意識を戻して呆れた様な溜息を吐いた。

「もうどっちでもいいよ。可愛いんだから」

額を押さえて言ったオレもまた、両親同様十分すぎるほどの兄バカだったようだ。

*****

そんな事が有ってからしばらく。
生まれた子供は『シュウ』と名付けられた。

母も産後の肥立ちがよく、無事に退院をし、家へと弟と共に帰ってきた。

家(と言ってもその規模は屋敷と言えるものであるが)に勤めている使用人たちは、初対面となる赤子にずいぶんと色めき立ち。
昔から居る者たちにおいては「シグレ坊ちゃんによく似ていますねぇ」などと、正直聞くには恥ずかしい事を口々に言ってくださった。

止めてくれ、本当に恥ずかしい。

恥ずかしさのあまり穴に入ったら入りたいなどと居候(この屋敷には数人の居候がいる)へと言うと、やめておけと言われた。
まぁ当然だ。
と、それは置いておくとして。

退院したとはいえまだ完全に体調の戻っていない母と赤子の弟がいる俺の役目は、 毎朝仕事へ行くのを愚図る(いったいどこの餓鬼だと言いたい)父を屋敷から蹴り出し(そう、文字通り蹴り出すのだ。使用人ではいささか役不足らしい)、 母乳以外の育児の手伝いをすることだ。
本当は使用人お役目なのだろうが俺も弟が可愛くて仕方ないし少し思うところもある。

そんなわけで俺は毎日忙しくも楽しくしている。
ちなみに、俺が生まれた時は仕事に出ようとしない父に手を焼いた母と使用人は、 母を実家に帰らせておってきたら離婚すると言いつけたらしい。
その反動か、母が帰ってきた時父はしばらく離れようとせずまた一悶着あったというのは古株たちの言だ。

*****

オレはおしめを取り換えたシュウを抱き上げてあやしてやる。
もう目が見えているのか少し怪しいが、シュウは菫色の瞳をきょとりとさせて機嫌は良さそうだ。

うん、やっぱり可愛い。

俺はそんな事を思いつつふくふくとした頬を突いてやると、キャッキャと笑い声をあげてくれた。
その様を見て、オレはフッと表情を変える。

「お前は強くなるだろうなぁ」

そう、シュウは誰に似たのか『力』が強いらしい。
内に秘める『力』を感じた、『力』を持つ者たちの満場一致の意見でもあった。

子供、特に赤子などはまだ感情に忠実だから、ふとした拍子に『力』が暴走する事もあって中々に危険である。
一度『力』が暴走すれば一般人ではそれを止めることは出来ない。
そんな理由もあってシュウの世話を引き受けているということもあるのだが。

今はまだ身体も『力』も小さいが、成長すればきっと強くなるだろうから。
今から楽しみでもあった。

いつのまにか寝てしまったシュウを見やって、オレはこの子が健やかに育つようにと一つ願った。







親バカと兄バカに囲まれて育つことになるヘタレ。
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