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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~鈴鳴りの刃~

もしも鈴の音を聞いたなら。
その場で動かずじっとしている事。
無暗に動いてはいけない。
動くなら、覚悟をしてから――…。
 

*****


その日もまた、穏やかな空気の流れる屋敷に鈴の音が響く。
屋敷全体に響くものではないが、発生源の近くにいる者にはしっかりと聞き取ることができるその音に。
不運にもその音を聞いてしまった者たちは、掃除していた者や荷物を運んでいた者など、だれかれ構わずその場で固まってしまった。

ピタリと動きを止めた者たちは微動だにしない。
そんな中、再び鈴の音が響く。

――チリン、チリン、リィン

音色の違う鈴の音は、ひっきりなしに聞こえたり途切れたりと不規則である。

「…いつもと、違う?」

そう誰かが呟いたその声は、今動きを止めている者たちが皆心に思っている事でもあった。

*****

所変わってここは屋敷の裏庭。
そこにはこの屋敷にいろいろあって居候中の銀髪の青年と深い蒼の髪の少年、そして白銀の髪の幼子が居た。

彼らの周りには多くの切断された的が転がっている。

幼子の様子を見るように少し後ろに居た青年と少年が幼子へと近づく。

「なぁんでテメーは全部切ってんだよ!」
「シュウ、ちゃんと印の付いた的を狙わないと」

そう2人に窘められた幼子――シュウはぷくりと頬を膨らませ、負けじと拙い言葉で反論を試みた。

「まとはまとだもん」
「お前練習の意味わかってねーだろ」
「いたいー!」

シュウの反論に青年は額に青筋を浮かべて片手で掴める幼子の頭にアイアンクローをお見舞いする。
青年の握力にシュウが悲鳴を上げるが、アイアンクローが止められる様子はない。

しばらく続いたその問答は、見かねた少年が仲裁に入るまで続けられた。

*****

「はは、そんなことがあったのか」
「笑い事じゃねーぞ」

時間は進み、良い子はとうに寝ている時間。
屋敷の一室では4人ほどが集まり談笑していた。
集まっているのは言わずもがな、この屋敷の主人夫婦とその長男、そして銀の青年。

青年から昼間の報告を受けた主人一家は呑気に笑っているのだが、実のところシュウ――次男の問題は大事だった。

「今はまだ一般人に被害がないからいいが、物品と俺とコウリュウは被害にあってるし、このままだと確実に他への被害があるぞ!?
 確かにまだシュウは5歳に満たないが双禍の扱いはちゃんと教えねーと!」
「ビャクヤ、あまり騒ぐと血管が危ないよ?」
「誰のせいだと…っ!」

主人夫婦の次男坊シュウの所業を青年――ビャクヤは切々と訴えるのだが、いかんせんこの夫婦は揃ってマイペース。
そのマイペースさは2人の息子たちにもしっかりと受け継がれているのだから性質が悪い。

ビャクヤはシュウと一緒に今は夢の中に居る深蒼の少年――コウリュウと、今まで被害に遭った物品たち、そしてその被害総額を思い出して肩を落とした。

そもそもなぜ5歳にも満たない幼子がそれほどの被害を出しているのかというと、目の前にいる主人夫婦、特に夫のせいである。

シュウが4歳を迎えたその日、幼子は家族から一対の鈴をプレゼントされた(少なくともこの時点で幼子に渡すようなプレゼントではない)。
最初他の者たちは「なぜ鈴を?」と首を傾げたが、金と銀の鈴は表面に細かな細工が施されており、美しい音色をたてるために誰もが深く追求しなかった。

そしてそれが間違いであったと気付いたのはそれから約一月後。
気づいた時には色々とどうしようもない状況になっていた。

先ず最初の一月は何事もなかった。
しかし一月経った辺りから屋敷の庭の植え込みが、庭師が手入れしていないにも拘らず歪に剪定されていたり、屋敷内の物品(安い物から高いものまで様々)が鋭利な刃物で切られたような断面を見せて壊れていたり、コウリュウが「気づいたら切れていた」と言って頬や腕に切り傷を付けて手当してもらう回数が増え(コウリュウは痛覚が鈍い)、ビャクヤ自身も痛みが走ったかと思ったら血が出ていたという事があった。
さすがにこのままにしておくわけにはいかないと思い原因を探ってみると、意外にも早く判った。

原因は、シュウが誕生日に貰った一対の鈴。
それも、話を聞いてみるとどうやらシュウ本人には全く自覚がない。

実はこの鈴、持ち主の魔力を消費して武器となる特殊な武器、魔武器と呼ばれるものであった。
それも鈴内部に鋼糸が仕込まれているとんでもない代物だ。

なぜそんな物を4歳児に渡すのかと主人夫婦(特に夫の方)に問い詰めると(犯人だと確信があった)、「綺麗だから」とは妻と長男の言だが、「面白そうだったから」とは夫の言である。

それを聞いた瞬間ビャクヤが居候している屋敷の主人を殴りそうになったのは致し方ないだろう。

とにもかくにも、今更シュウから鈴を奪うことも出来ず(一度試してみてひどく泣かれた)、主人夫婦と話し合って武器の扱いを教えるという事になった。

そこから約3か月、事件発生からおよそ4か月の今日、庭に出て武器を実際に扱うという事になったのだが。
これがまた本人のマイペースさも加わって昼間の事と相成った。
ちなみに3か月の間一般人に被害はなかったものの、確実に物品被害は増えていた。

「まぁ、武器がよりにもよってあれだしなあ。指切ったりしなきゃいいけど」
「心配はそこか!?」

相変わらずの彼らの言葉にビャクヤが考えを放棄するまであと少し。
今日も賑やかに夜が更けていく。







実に2か月ぶりの更新です。
DR第8話お届けとなります。


今回はとんでも少年シュウ君のターン。
ちなみに双禍とは「瞬禍」と「絶禍」です。
銀が瞬禍で金が絶禍。

ちなみにヘタレが操っていたのではなく武器の暴走。(待
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