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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~Part 4~

「やぁ、久しぶりだね。」

本日の空、晴。(所々に良い具合で雲が浮いている)
ただ今の時刻、おおよそ13時半前後。(昼食が終わり通常ならそろそろ眠気の来る時間だ)
ただ今の授業、格闘技。(眠気も吹っ飛ぶ激しい組み手が、ここ実習場の各所で行われている)
私の視線の先には、黒い人。(髪も瞳も服までも黒い)
その黒い人物は突然目の前に現れたかと思うとにこやかに挨拶をしてきた。(ムカつくくらいの笑顔だ)

「なんでここにいるー!!!!?」

ついさっきまで行っていた組み手の勢いをそのままに、片足を軸として反転。
足技を繰り出すかと思いきや繰り出されたのは、いっそ見事なまでのアッパーカット。
もろにソレを喰らった黒い人物はこれまた見事に吹き飛ばされた。

「時と場所を考えろ!」

怒声一発。
陽の光を受け淡く煌く金糸と大空を切り取ったかのような蒼い瞳を持つ少女―――この世界でトップクラスの魔力(実際頂点に君臨するのだが)を誇る我らが生徒会長様であるレイナの怒声と突然実習場内に現れた気配、そしてアッパーカットの決まる音と重たいものが落ちる音に、生徒たちは何事かと渦中の人物たちへと視線を向ける。
黒い人はと言うと、ムクリと起き上がると目前の威圧的な気配を感じ取ったのかすぐさま正座の体勢へ。
そんな黒い人の視線の先には女帝の如く仁王立ちをし、彼の者が正座する理由となった威圧的な気配を抑えることも隠すこともせず垂れ流しにしているレイナの姿。
その様を見た他の生徒たちは、自分たちが怒られているわけではないのにも関わらずそのあまりの威圧感にジリジリと後退する者、ふらりと倒れる者など様々。
彼女と組み手をしていた、襟足まで届くざんばらの銀糸に紫の人を持つ彼―――この学園では有名なさる名家のご子息にして彼女を唯一窘める事の出来る人物、副生徒会長のシュウだ。

「れ、レイナ、ちょっと落ち着こうよ…」
「お黙り」

あまりの怒り具合に周囲の生徒たちを案じて窘めようとしたのだが…どうやら彼女は相当怒っているらしく虚しくも一蹴されてしまった。
当の彼女はと言うと、今尚怒り心頭。
その威圧感は収まるどころかどんどん増しているようにさえ感じる。

「で?どうして此処に来たのかしら、クロス?」

クロス。
間違いなく、確実に、彼女の目の前で自主的に(半ば強制的でもあったが)正座をした黒い人物の事であろう。
レイナとは対照的に陽の光を受けて尚全てを飲み込むかのような漆黒の、腰よりも長い髪と同色の瞳、そして服を着た男性―――纏う気配は人とも精霊とも違う。そう、この気配は紛れもなく魔物のものであろう彼はしかし、正座をしているにも関わらずニコニコと、反省の色の欠片も見えない様子でレイナを見上げていた。

「だって君、全然顔を見せに来ないだろう?だから寂しくなってね、会いに来たんだよ」

では何か。
単に寂しかったからここまで来たと。
別に会いに来るのは構わない。
全くもって問題はないし時と場所さえ合っていればこちらとて歓迎しただろう。
しかしソレらが合うことはなくむしろ状況的には最悪。

「……立場、わかってる?」
「うん」

何が最悪かって?
それは勿論この男の立場的問題が大部分を占めるだろう。
この男、実はこれでも魔物の長、つまりは魔王である。
本人は普段魔城(魔物たちの領地に聳え立つ城だ)に引き篭もっているのでその顔を知る人間は非常に少ない。
が、彼の内包する魔力と気配だけで勘の良い者なら感づいてしまうだろう。
そんなとんでもない事態を引き起こそうとしている(いや、既に引き起こしてしまった後であろう)彼はそんなことはどうでもよいと、全く気にする様子もなく相も変わらず笑顔である。

「ならどうして」
「だから寂しかったんだと言っているだろう」
「・・・・・・」

彼の科白にレイナはただただ絶句するしかない。
先ほどまでの怒りはどこへやら、彼のあまりにもくだらないその言葉を受けてすっかり収まってしまった様子。
今やあの威圧感は完全に消えうせ、形を潜めている。
怯えていた生徒たちも安堵の息を吐き出していた。

「で、来てどうしたかったの」

呆れの溜息を吐いたレイナが彼へと問う。
問われた彼は、ようやく本題に入れたと言わんばかりに更に笑顔になった。
本当にこれで魔王だというのだから、世の中なにか間違っているような気がする。

「それなんだけどね、他の者も君に会いたがっていてね」

ちょっと拉致でもしようかと思って。
などと言われ、レイナは本気で眩暈が起こった。
武器を扱い、時には拳でもって敵を黙らせることもあるとは到底信じられないような白く細いその手を己が額へと当て、嘘でも演技でもなく本当にヨロヨロとくず折れる。
常の彼女ではありえないその光景に他の生徒はただただ驚くばかり。

「レイナ!?」

その様を見ていたシュウは慌てて彼女を支える。

「ごめん、ちょっと、本当に信じられないわ…」
「おや、大丈夫かい?」
「誰のせいだと思って…っ!」

支えてくれているシュウの腕に空いている手を乗せ、クロスの言葉に言い返す。
一応、言い返すくらいの気力はあるのだなと、生徒たちが思ったのはここでの秘密。

「まぁ、そういうわけだから。一緒に来てくれるかな?」
「は?え、ちょっ、マテマテマテ!担ぐなーー!!!」

どうせ暇だろう、と言いつつ近づいたかと思うと。
シュウの腕の中にいたレイナを、まるで小物でも扱うかのようにヒョイと持ち上げ肩に担ぎ上げてしまった。
やられた方はたまったものではない。
必死に抵抗するのだが、相手は自分より大きい上に男。
抵抗虚しくその努力は実らなかった。

「え、ほんとに連れてく気?」
「当然」

本人も驚きだが周囲も同じくらい驚きである。
まさか本当なんじゃとシュウが訊いたら答えは上記の通り。
自分じゃ魔王に勝てないのは確実だから悔しがることしか出来ない。
レイナが本気で抵抗すれば抜けられないこともないが…被害が多すぎるのを双方わかっているので、それはしないだろう。

「ちゃんと夜には帰せよ」
「わかっているよ」
「ねぇ、そこはもうちょっと抵抗してくれないかな!?」

仕方ないとの妥協案。
しかし問題の当人であるレイナは不満のようで。
抗議の声を上げるが悲しいかな、結局聞き入れられる事はなく。
そのまま魔王の手によって拉致されてしまったのだ。







新たな人物ご登場。
魔王とレイナの関係は(中略)です。(わかんねぇよ
ま、その辺りの秘密も追々わかることでしょう。
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