Dramatic Record ~Part 57~ 古びた書物の本棚 2010年08月27日 「ちちうえ!」 「--おまえはその子を連れて逃げなさい」 「ですが…っ!」 「いいから行くんだ!!」 「っ…わかり、ました」 「いやぁ!ははうえ、ちちうえが!ちちうえ!!」 そこかしこで火の手が上がっているのか焦げ臭いにおいがする。 そんな中、1人の男性が迫り来るものと必死に食い止める姿がある。 その男性の背後では泣き喚く幼子を抱え、辛そうな表情をする女性。 幼子の言葉から、この男女が夫婦であり幼子の両親であることがわかる。 「はやく、行きなさい!」 「はい…っ」 急かす男性の声に頷いた女性は、幼子を抱えたまま奥座敷のある方へと駆けていく。 しばらく駆けた女性はしかし、はっとしたように立ち止まる。 腕の中には泣き続ける幼子の姿。 この屋敷は彼女たちが住む集落でも一番強固な結果で守られている。 そしてその結界を織り成すのは幼子の両親。 しかし今、その結界に綻びが生じあちこちに亀裂が走っている。 「……っ」 女性は唇を噛み締める。 強固な結界、2人で織り成すそれが壊れかけているということはつまり---…そういうことだ。 そしてそれと同時に感じるのはこの屋敷を囲み迫る、集落を襲ったものたちの気配。 もう、どこにも逃げ場は無い。 そう悟った彼女は腕の中の存在を強く抱きしめ、再び走り出した。 向かったのはこの屋敷の最奥。 最奥にある一室へと辿り着いた女性は幼子をそっと床へと降ろした。 「---、これを」 「こ、れ…」 女性が手渡したのは部屋に飾ってあった一振りの刀。 それを幼子へと私、そして---…。 「それは一族の先祖から守り伝えてきた大切な家宝。次にそれを受け継ぎ守るのは貴女の役目」 「っいや!いやです、ははうえ!!」 「……もう逃げられないのよ。だからせめて貴女だけでも」 そう言って女性は幼子の額に口付ける。 その瞬間、ドクンと胎動にも似た振動が体内を駆け巡った。 それと同時に幼子の瞼がゆるりと下がる。 「---、どうか貴女だけでも生き残って…」 幼子の意識が完全に途切れる前に見たものは、母の泣きそうな笑顔だった---…。 ◆◇◆◇◆ 「---…!!!」 ガバリと、彼女は布団を跳ね上げて起きる。 完全に息の上がった彼女の頬を涙が一筋伝った。 乱れた前髪をクシャリと掻きあげて大きく息を吐く。 夢で見たものを、あの映像を自分は知っている。 だって、あれは本当にあった出来事で、あの人たちは、あの幼子は…。 「リューィ」 「デューイ」 心配してくれているのか、白と黒の2匹の幼竜が自分へとすり寄ってくる。 しかしそれに反応してやれるほどの余裕はなくて。 あの、幼子は…。 「っ…」 また、涙が頬を伝う。 ---あの幼子は、自分自身なのだから。 お題No.10 うわー、悪夢ってお題で書いたら暗くなった!めちゃ暗くなった!! これ元はもっと暗いだなんて暴露しちゃってるけどしたくなかった的な!(← 女帝の一族はこんな感じで滅びましたorzPR