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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~Part 68~

「レイナ」
「んー」

次々と追加されていた書類も落ち着きを見せ、整理もほとんど終わったころ。
カタン、とペンを置いたシュウがレイナへと声をかける。
彼女はココアの入った(コーヒーなどではないあたりが実に彼女らしい)カップに口をつけたまま気のなさそうな返事をする。

「今月中頃のパーティどうする?」
「あー…」

今月中頃、クリスマスには毎年パーティが開かれ、生徒たちや教師たちはダンスや雑談など思い思いに過ごす。

「会場の飾りつけの手配は済んだし、調理の手配も同様。とりあえず今できることは済んでるから問題はないだろ」
「そう」
「んで、肝心のダンスのパートナーなんだけど今年もいいよな?ドレスはどう―…」
「今年は先約あるからダメデス」
「………は?」

毎年共にダンスへと参加していたから今年元思い話をしていたシュウは、レイナの言葉に一瞬何を言われているのかわからず、間抜けな声を上げる。

「だから先約」
「……誰」
「ヒミツ」

シュウへともう一度繰り返し言うと、彼は心底不機嫌そうな顔と低い声で問うてくる。
それにクスクス笑いながら唇へと当てた人差し指の下で楽しげに言った彼女へとシュウはため息とともに脱力した。


◆◇◆◇◆


「で、今日は朝から見てないと」
「おう」
「いつもやってる朝の稽古もですの?」
「………」

エミリアの言葉にシュウは黙り込むと、ややあってから静かに頷いた。

「わたくしも朝から会っていませんからどこに居るのか判りませんわ」
「当然ながら俺も」

いったいどこに行ったのだろうかと3人は首をひねるばかり。
少なくとも、昨日の就寝まではいたはずだ。
シュウは一つ息をつくとパーティ会場を見渡す。
普段はシンプルなここ、ダンスホールも、この日は色とりどりの花や壁際の料理、着飾った生徒たちで華やかだ。
そんな中彼らがいるのは比較的静かなダンスホールの隅。
そこで主に落ち込んでいるシュウをファゼとエミリアが励ましている状態だった。

「しかしどこにいったんだろうなぁ」

そんなファゼの呟きは、ダンスホールの喧騒にまぎれて消えた。


◆◇◆◇◆


「本当に良かったのかい?」

窓辺に置かれたソファーに座る漆黒の人物が唐突に聞いてくる。

「何が?」

質問に質問で返したのは漆黒の前に置かれた丸テーブルの向こう、同じようにソファーへ座る金色だ。
金色―――レイナは「ああ、パーティ?」というとソファーに身を沈める。

「本気にしなくともよかったのに」
「先約優先。判っててやったくせに」
「はは」

レイナの前に座る漆黒―――クロスは小さく笑うとカップを手に取り紅茶を一口飲んで言葉を続ける。

「でも、君の事だから真に受けるとは思っていなかったんだ。姿を見せた時は本当に驚いたよ」

そう、クロスは今日会えないかと前々からレイナに約束を取り付け、彼女はその約束通りにこの場所へと来てくれた。

「で、お茶を飲んで話をしたかっただけ?」
「それもあるが本命はこれだ」

言って彼が差し出したのは小さなオルゴール。
少し古びたそれはしかし繊細な細工が美しく、アンティークとして十分いける。

「どうしたの、これ?」
「昔貰ったのさ」
「…そう」

クロスの短い言葉に彼女はそれだけどいうと渡されたオルゴールを手に取り静かに見つめる。

「ありがとう、と言っておこうかしら?」
「ありがたく受け取っておくよ」

ややあって口を開いた彼女にクロスが茶化すように言うと、その空間には再び静寂が訪れた。

「(それは決して嫌なものではなかったけれど)」


~おまけ~

「あ、レイナ!」
「やぁ」
「一日どこ行ってたんだよ」
「クロスのところ」
「はあ!?」







実はあのオルゴールはゴニョゴニョ。(←
女帝はそれを知ってて少し懐かしくなった。
クロスも回想に耽ってただけ。
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