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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

Dramatic Record ~Part 36~

「またかよ…」

そう呟いた彼、コウリュウの言葉は、目の前で作業している彼女たちに届くことは無かった。


◆◇◆◇◆


本日の天気、快晴。
空には適度な雲しかなく、青い空が広がっている。
本日の気温、快適。
暑くもなく寒くもなく、優しい風が吹く今日はとても過ごしやすいだろう。

そんなわけで彼女は思い立った。
「そうだ、あの子達の手入れをしよう!」と。

思い立ったが即日の彼女、ルリは早速といわんばかりに同僚のサヨを伴いとある一室までやってきた。
そして扉を開け放つと机に向かい作業をしている人物へと近づく。

「コウリュウ、温室行くわよ!」
「はぁ!?」

作業をしていた人物、コウリュウへと声高らかに言うと腕を掴み立たせて引きずるように室内を後にする。
突然のことに驚き声を上げるが悲しきかな、フェミニストの嫌いがある彼は強く抵抗することも出来ずに連行されるのであった。

その後彼女たちが来た場所、それは数ある温室の中でもっとも危険な植物たちが育てられている第5温室だった。
この第5温室には貴重な毒草や『食』のつく植物たちが植わっているのだ、危険以外のなにものでもない。

温室へ到着した彼女たちはどこからとも無くエプロンや軍手、マスク(毒対策だ)などを取り出し装着する。
勿論それはコウリュウも有無を言わさず渡された。
そうして準備が終わるとこれまたいつ用意したのか肥料とスコップを持ち、近くの植物(間違いなく毒草である)に向かい合うと作業を始める。
(当然のことながらこの温室の責任者である彼女たちがここの植物たちに怯えるはずが無い)

「またかよ…」

そんな光景を横目で見つつ、コウリュウは溜息と共に呟いた。
こうして話は冒頭へと戻ることとなる。


◆◇◆◇◆

「サヨちゃん、ユニコーンとってー」
「はい。こちらには清水をいただきたいです」
「りょーかい」

作業を開始して1時間。
コウリュウの背後では彼女たち2人によるそんな会話が繰り広げられていた。(ユニコーンとは肥料の種類のことだったりする)
その会話をBGMに作業をしていたコウリュウがふと顔を上げる。
そのまま顔をぐるりと動かして周囲の様子を窺う。
何かを、感じ取ったのだ。

「……」

と、不意に何かが擦れる音が聞こえてきた。
その音はこちらへと近づいてきているようで、少しずつ大きくなっている。

「…まさか」

ちらりと、背後を振り返る。
すると目に入ったのは

「ゴッメーン、昨日からカイザー放してたんだった☆」
「ちょっとまてえええええ!!?」

てへ☆と舌を出し謝るルリとオロオロ慌てふためくサヨの姿。
そしてルリが言った『カイザー』という名前。
この温室に存在するのだから先ず間違いなくそうなのだろう。

「うわー、俺ヤバイよな明日生きてるかなぁ」と考えていると、音が止んでいることに気が付いた。
と同時に感じる背後の気配。
それと共に匂うのはなんともいえない甘い匂い。

幾度もここへ来ている(と書いて連行されたと読む)彼には判ってしまった。
この匂いが食人植物たちの放つ獲物捕獲用の匂いだということに。

「…………」

ゆっくりゆっくり、振り返る。
途中から見える毒々しい色に、これは現実なんだと認めざるを得ない。
正面を見据え(ああ、あの毒々しい色がいやだ!)そのまま視線を上へと上げる。
次いで見えたのは大きく立派な歯。(比喩や言い間違いではない)
その近くでうごうごと蠢いているのは太い触手。

この姿は紛れも無い、第5温室のボス『カイザー』(※この植物の名前)
カイザーは獲物を見つけたと言わんばかりに待ち構えていた。

ルリとサヨは温室の責任者であり植物たちの育ての親でもあるため襲われることは無いだろう。
瞬時にその結果を導き出した彼は、今己が持ち得る全ての力で持ってその場から逃げ出した。







お兄様の受難。(爆

第5温室はあんなのがうようよ。
ボス的存在な雄花のカイザー君と雌花のコーネリアちゃんがいます。
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