Dramatic Record ~Part 40~ 古びた書物の本棚 2010年06月05日 数居る仲間の内で最も希少だった俺たち。 そんな中でも更に異質だった俺は常に独りで。 そんな、誰とも関わろうとしなかった俺に手を差し伸べて笑いかけてくれたのは貴女だけだった。 共に行こうと言ってくれた時、どれ程嬉しかったか。 優しい声音で名を呼ばれる度、俺の心は歓喜に震える。 あの時、俺は俺自身に誓った。 主と定めた貴女のその命が消えるまで、何があっても傍に居ようと。 ◆◇◆◇◆ ≪月影≫ 優しい声が聞こえる。 その声に誘(いざな)われ、闇の中沈んでいた意識が浮上していく。 呼ばれたのだと理解したと同時に文字通り闇にたゆたっていた身を浮上させ、地上へと姿を現す。 「お呼びですか」 闇(正確には影だ)から姿を現したのは闇色の体躯に金色の瞳を持つ人語を解す獣だ。 姿は狼に酷似しているがその大きさは狼の比ではなく、大の男が2人は乗れるかというほど。 そんな闇色の獣---月影は主へと恭しく頭を下げ言葉を待つ。 「ん、最近会っていなかったから。それに今日は天気がいいから久々に、ね」 月影に傅かれている少女---レイナは微笑を浮かべ言葉と共に頭を撫でてやる。 気持ち良いのかグルグルと喉を鳴らし手に擦り寄る姿は大きな猫のように感じると、笑顔の下考えてしまう。 「しかし、よろしいので?まだ授業の時間なのでは…」 レイナが何を言いたいのか正確に読み取った月影は心配気に訊いてくる。 その言葉には大切だからこそ迷惑になる様な事はしたくないという思いが込められていて。 月影同様にしっかりとその気持ちを読み取った彼女は笑って続ける。 「いいのよ、私がそうしたかったの。だから一緒に日向ぼっこしよ」 「……わかりました」 しばしの葛藤の後、月影は承諾する。 とたん、レイナの顔には満面の笑み。 「それじゃいつもの場所へお願い」 「御意」 月影の是とする言葉を聞くや否や、レイナはそれの首へと腕を回す。 それを確認した獣は己と主の繋がった影を見て一言。 「闇渡り」 そう呟かれたと同時に彼らの影が蠢く。 蠢いていた影は次の瞬間実体を持つと1人と1匹を呑み込み消えた。 影の消えたその場には、彼らの姿はなかった。 ●補足 闇属性の精霊、月影。 月影という名は「夜のような色に瞳が月みたい」との事からレイナが命名。 本名はまた別にある。 レイナを唯一絶対の主と仰ぎ、普段は彼女の影の中に潜んでいる。 レイナ以外の人が居る場所で影の中から出てくることは極稀で、月影の存在を知っている人は少ない。 彼女とであったのは9歳の頃で一番目のガーディアンとなる。 お ま け ☆ 静かな森の中、大樹の根元に影が一つ。 それはよく見ると大きな獣に身体を預けて眠る少女の姿。 1人と1匹は気持ちよさそうに寝息を立てている。 少女の気配を追って迎えにきた青年---シュウは、その光景を見て苦笑をこぼす。 「これは、起こすわけにはいかないな」 そう言って澄み渡る大空を見上げた。PR