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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Portable Doll ~Part 3~

「名前?」
「そう。ほら、渡した後色々忙しくて聞いてなかっただろ」
「ああ…」

そういえばそうだったなと記憶を辿り思い出す。
あれ以来互いに忙しく、すっかり2人の頭の中から名前のことが抜けていた。

「で、名前は?」
「……聞きたい?」

再び問いかけてきた彼に、レイナはしばし逡巡した後質問に質問で答えた。

「んー…変な名前でも付けた?」
「いや…」

レイナの返事を聞き、いくつかのパターンを考えありえそうなことを口にしてみる。
が、別段そういったわけではなさそうだ。

「じゃぁ教えてよ」
「大声出さないでよ?」
「わかった」

彼に釘をさしてから、レイナはゆっくりと息を吸い。

「シュウ」

名を呼んだ。

「何?」
「はい!」

それに答えた声は2つ。

「…は?」

間抜けた声を出したのは『彼』で、元気よく返事した『彼』はニコニコとした笑顔を浮かべている。

「セツメイヲオネガイシマス」

片言になったのは仕方ない。
だって驚きすぎたのだから。

「だから、シュウ。PDの名前」
「マジ?」
「ほんとよ。ね。しー君」
「うん!ドクターと一緒!」

どうやら聞き間違いでもなんでもなく、しかも随分と可愛がられているらしい。
しー君、しー君、しー君…俺の小さい頃の愛称ってしーちゃんだったよな…と、この事実に気が遠くなりかけた。

「いきなり朝来たかと思ったら何の説明も無いんだもの。これくらいはしたって許されるでしょう?」
「う゛…」

そう、彼---シュウ(青年)はレイナにPDを何の説明もなく(一応取扱説明書は付けたが)押し付けるという暴挙をやってのけた。
それに腹が立ったのか、PDに彼と同じ名前(オマケに姿もほぼ一緒だ)をつけたらしい。

「いくら姿が同じだからって、それはないんじゃ…」
「いいじゃない、呼び名は違うんだから」
「……」

彼女に言い分に、もう閉口するしかない。
元来男という生き物は力で勝つことは出来ても口では勝てないのだから。
押し黙るシュウ青年を他所に、レイナと彼女曰く『しー君』は暢気に話をしている。

「ふふ、成功ねー」
「うん、マスターびっくり!」

2人して話している姿は可愛らしいなぁと思いつつ見ていたシュウは、レイナがここに来ることとなった用件を思い出し、未だ話し続けている2人に声をかけた。

「レイナ、今日は最終調整のために来たんだろ」
「あ、そうそう。データ採集は終わったって連絡がきたから」
「もうプログラムも粗方調整が終わってる。PDを貸して。データ更新と微調整をするから」
「わかった」

レイナは頷くと、シュウの手にPDを乗せる。

「大人しくね」
「うん」
「3日もすれば終わるから、また来てくれ」

彼の手の上に乗るPDの頭を撫で是と答えると、彼はPDを連れて部屋の奥へと消えていった。


これより数ヵ月後、PDの正式発表と発売が成された。


◆◇◆◇◆


~おまけ~

彼奥へ立ち去った後、入り口付近の惨状を見て溜息を一つ。
これはいくらなんでも散らかりすぎであろう。

「まったく、生活能力破綻者め」

愚痴を零しつつ、足元にある書類から整理をしていく。
処理済と未処理のもの、種類別と選り分けてやる。
ついでにと書類整理の際に発見したマグカップをフロアに設置されている休憩スペースに持っていく。
この地下にある特別フロアに勤めている者たちはよく徹夜や自宅に帰らない者が多いため必然的に休憩場所や仮眠室、おまけに簡易キッチンまで設備されていた。

「(至れり尽くせり、って感じねぇ…これだから生活能力破綻者が生まれるのよ)」

結構失礼なことを考えながら簡易キッチンに入りマグカップを洗う。
それが済むとまた別のコップを取りココアを入れてやった。

「ま、こうやって世話してる自分も自分か…」

暖かい湯気を出すホットココア片手に来た道を戻っていると前方から顔馴染みが歩いてくるのが判った。
互いに姿を見つけると片手を上げて挨拶してやる。

「やっほー」
「ああ、レイナ嬢。久しぶりだね」
「ええ、元気そうね」
「はは、それなりに…」

軽く挨拶が済むと2人はまた互いの目指す場所へ向けて歩みを再開してやった。

「(今度差し入れ持っていってあげるか)」

先程の彼の顔色と、今も自分の仕事場に篭っている恋人の姿を思い浮かべて。
次に来た時どうするかの予定を組み立てるのであった。







しー君の性格は容姿と同じようにドクター(シュウ青年)をベースにしています。
が、本人より明るく元気な感じに成長しました。
物事もはっきりストレートに言います。
そして生まれて間もない幼子と同じなので時々言ってる意味をちゃんと把握していません。
学習能力付きの優秀な子なのでシュウ青年では中々出来ないことも出来そうでとても楽しいです。(爆

そしておまけにて、特別フロアの住人勤務者たちに『生活能力破綻者』の称号が与えられました。
頑張れみんな、特に独身。
てか多分、ここにほぼ住み込んでる人たちは出会いも無いと思う。
時々地上に出ては太陽が眩しいとか干からびるとか言ってれば楽しいです。(待
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