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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

結局それは悪でしかないんだ

「口先だけでの理想なんて誰でも言える」

不意にレイがポツリとそう呟いた。
その言葉に、共に行動していたチェレンが訝しげな顔をする。

「ポケモンは友達で、解放しなくちゃいけないって言うのは自由だ。行動に移すのもいいよ、それが誰の迷惑にもならないのならね」
「・・・・・・」

“誰の”というその言葉にはきっと、ポケモンも含まれているのだろう。
とても優しい彼の事だから。
生まれたときから共にいる存在だ、どんなに隠し事をしていたとしてもなんとなくわかってしまう。
だから彼、チェレンもなんとなくレイの事はわかっていた。

「彼らはポケモンを解放するといっているけれど、でもやっている事はどれもこれも酷くて、みんな自己満足でしかない」

静かに語るレイの足元では彼の大切なパートナーが不安げな表情でオロオロしている。
いつも優しい笑みを浮かべていた彼だから、こんな様子は初めてなのだろう。

「ねぇ、オニイサンたち。」
「は、はいいい」
「ポケモンは友達で対等でなければならない、だから解放する。その考え自体は別に悪いことでもないだろうし否定する気もないけどさ。だからって、人のポケモンを無理やり奪って、それは結局のところ悪でしかないんだよ」

「そのことちゃんと判ってる?」とニコリとレイは笑うがその目はまったく笑っていなくて。
足元にいたダリアも隣にいたチェレンも、真正面からその笑みを見てしまったプラズマ団も。
みんなえもいわれぬ恐怖に襲われた。

「互いに信頼し信頼され、力を貸しあい助け合う存在は友達であって仲間だってこと、ちゃんと理解しておいてよ?」

今この時この場所には、たしかに覇者が君臨していた。
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