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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

Dramatic Record ~亡くした日~

赤く染まる空と鼻につく臭い。
立ち上るのは黒煙。
ひっきりなしに聞こえてくるのは数多の悲鳴で、私は思わず耳を塞ぐ。


*****


その日は何の因果か世界に満ちる魔力がもっとも弱くなる日、落魔。
朝から感じるのは日頃よりも強い闇の気配。
この日だけは誰もが身に危険を感じ、もっとも用心する。
人間も、精霊も皆等しく。

唯一そうでないものは、闇から生まれた魔物だけ…。

*****

西北の最果て、そこにある小さな島では落魔の日でありながら聊か賑やかであった。
その原因は、島人達が生まれた時から可愛がっている子供の誕生日。
紅月輝く祈穏の日に生まれたその子は今日で丁度7歳を迎える。
広くない島であるがゆえにみなに知られた、可愛がられている少女―――レイナ。
だからこそ、このような日であっても賑やかなのであろう。

「誕生日おめでとうねえ」
「ありがと!」
「もう7歳か…早いものだな」
「子供の成長は早いといいますからね」

レイナに声をかけ、時にはプレゼントを渡し。
そんな様子を少し離れた場所から微笑ましく見やる者もいる。

「このまま、何もないといいのだが」
「そうね…」

そう、ぽつりと零したのは祝福を受ける少女の両親。
落魔の日だからか、その瞳には不安が浮かんでいた。

*****

最近、不穏な話が流れている。
それは小さな島国の集まるこの西北にまで届くほど。

その内容は、たちの悪い魔物の集団があるという。
それは大陸を、村を、小さな町を荒らしているのだと。
一番新しい話では北東の、ウェルディアの在る大陸だ。

魔物の集団の所業に東南の、魔導学園エリアルの在る地からいくつもの魔導ギルドが討伐に出たとも聞く。
しかしそれらは成果を上げることはできず、魔物の集団は今もそのままだと。
近々大掛かりな討伐隊が編成されるだろうとも聞いてはいるが。

討伐隊が早いか、魔物の集団がこの地に来るのが早いか。
彼らの心配と不安はそこであった。

*****

言祝(ことほ)ぎも終わり、縁側で出された料理を堪能する人達は。
不意に不穏なものを感じ取った。

「……何かしら」
「あまり、いい感じはしないな」

この地の人間は精霊と共に在る。
それゆえか、相反するモノには敏感であった。
そう、闇の気配には特に――…。

最初に聞こえたのはなんだったか。
悲鳴か、それとも危険を知らせる叫びか。
いっきに膨れ上がった闇の気配はとても濃く。
レイナの父は、思わず舌打ちをした。

「みんな、すぐに逃げるんだ!お年寄りには手を貸して!」
「島の反対側へ、そこならまだ魔物は来ていないはずよ」

レイナの両親は屋敷に来ていた島人達に、他の島人を連れて避難するよう促す。
一旦島の反対側へと逃げ、そこから転移魔法を使い別の地へと逃げる。
ここの島民には転移魔法を使える者はレイナの両親しかおらず。
転移魔法を使うには少しの時を要し、今近づいている魔物たちの距離では間に合わないだろうと判断したからだ。
が、しかし。

「だめだ、もう囲まれてる!」
「……っ!」

誰かの放った叫びと同時に、逃げようとしていた方向からも濃い闇の気配が立ち上る。
なぜ、どうして。
先程もそうだがなぜここまで近づかれて闇の気配に気づくことになったのか。
しかし考えている暇はない。
なんとかして島人と、妻と娘を逃がさなければと思考を巡らせる。
その間も屋敷の敷地外からは悲鳴が聞こえ、煙と火の手が立ち上る。

「仕方ない、一先ず屋敷の中へ!奥座敷ならば結界もある、しばらくもつはずだ!!」

彼の放った言葉に、その場にいた島人たちは無事な者にその事を伝えるため屋敷の外へと駆ける。
彼は妻と娘に、先に奥座敷へ向かうように言う。
自分は魔物達の相手と集落の人たちを連れてくるから、と。
妻が娘を連れて奥座敷へ向かうその間も闇の気配は近づき。

「ああ、ここに居たぁ」
「っ」

魔物たちが姿を現す。
禍々しい気配と異形の姿。
魔物たちの顔には見にくく歪んだ笑顔が浮かぶ。
他者を狩ることを楽しむ笑顔が。

「さて、転移魔法は妻も使えるからね。君たちの足止めは、俺がさせてもらおうか」

そう言って彼は、どこからともなく得物を出し構えた。

*****

娘を連れて奥座敷へ向かっていた女性は、不意に目を見開き立ち止まる。
彼女に手を引かれていた少女は周囲の異変と消える気配にすっかり怯え涙をにじませていた。

「………」

そっと視線を娘へと向けた女性は、クシャリと顔を歪める。
念の為にと彼女の夫が集落の周りに掛けた守りの魔法。
そして共に掛けた奥座敷の結界。
守りの魔法は解け、結界も最早然程の効果もないくらいにまで弱まっている。

それはつまり――…そういうことである。

感じられなくなった夫の力の代わりに強く感じるのは、この屋敷を囲う魔物の気配。
もう、逃げ場はない。
そう悟った彼女はクッと唇を噛み、娘の手と繋ぐそれに力を込めると。
再び奥座敷を目指して走り出した。

*****

たどり着いた最奥の一室で、彼女は娘に布に包まれたものをそっと手渡す。

「レイナ、これを」
「こ、れ…」

それは、刀袋に収められた一振りの刀。
少女が生まれる前からこの家にあった、家宝だというそれ。

「これは、先祖から守り伝えてきた大切な物。これを次に受け継いで守っていくのはあなたの役目」
「や…いやですっ!母上!!」
「もう、逃げ場はないわ。それに、転移魔法を発動する時間も。だからせめて貴女だけでも…」

そう言って彼女は娘の額に口付ける。
その瞬間、ドクンと胎動にも似た振動が体内を駆け巡った。
それと同時に少女の瞼がゆるりと下がる。

「月影、昼間のあなたに力が足りないのは知っています。ですがどうか、この子だけでも守って…」

少女の母の言葉に、影に潜んでいた精霊が頷くのがわかった。
それと同時に少女の周りに強固な結界が張られるのも。

レイナの意識が完全に途切れる前に見たものは、母の泣きそうな笑顔であった―――…。







DR第5話をお届けです。
前回更新から結構経ってますねw


そして今回、とうとう両親居なくなりました女帝様。
落魔の日に誕生日とか幸は薄い。(ぁぁ

そして彼ら、島の集落に居を構えてます。
集落のちょっと端あたりでしょうか。
女帝の誕生日とあり朝から島人が仕事の合間に祝いに来たりしています。
そんな中での魔物襲撃。
魔導ギルドですら太刀打ちできない奴らです、魔法は使えるが日頃平和な島人達にはどうすることもできません。
精霊たちは?とも思いましたが禍々しい闇の気配でノックダウン。(ちょ
白九龍も多分使い物にはなりません。(…
月影が月影で時間帯が昼間と無能タイム(待)なのでお得意の影渡りは近距離&主だけという。

そんな裏設定により1つの島から人が消えました。

ちなみに女帝は母がまさしく命がけで張った強固な結界の中で気絶です。
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