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古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。
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「どうぞ」
「ありがと」
出されたのは淹れたての紅茶とクッキー。
自分の目の前には黒い人―――髪も瞳も服までも、全ての光を呑み込んでしまうのではないかと思わせるほどの漆黒を纏った彼、魔王が、対面側のソファーで自分に淹れられた物と同じ紅茶を、ムカつくくらいの優雅な動作で飲んでいる。
そして先ほど紅茶を淹れてくれたのは薄青色の髪と青紫の瞳の女性―――魔王の側近の一人で夢魔のサキュバス。
優しい風貌の彼女はお辞儀をすると静かに扉を閉めて出て行った。
「まさか本当に連れてくるとは思わなかったわ」
魔王―――クロスと同じように紅茶を一飲みして言う。
淡く煌く金糸と大空を切り取ったかのような蒼い瞳を持つ少女―――この世界では頂点に君臨するほどの魔力を持ち、クロスと対等に渡り合える唯一の人物。エリアル学園の生徒会長を勤めるレイナは、ティーカップを置くとゆっくりとソファーの背もたれへと背中を預けた。
先のやり取りで色々と消耗したらしい彼女の顔は疲労感いっぱいだ。
「私が有言実行タイプなのは君も知っているだろう」
「だからって何も平日、それも授業中に来なくてもいいでしょうが」
「ははは」
笑い事じゃない!と憤慨しつつ、ふと扉の方を見やる。
扉で仕切られている為姿を確認することは出来ないが、いくつかよく知った気配がいる。
「ああ、会いたいって騒いでたんだっけ…」
「おや、もう集まってきてるのかい?」
今この2人がいるのは魔王が普段引き篭もっている(←失礼)魔城。
魔物たちは普段荒廃した土地に住んでいることが多いのだが、この魔城の周囲は緑が多く茂っている。
それでも空には所々暗く厚い雲が漂い、少し城から離れれば荒野が続いているのだが。
そんな場所にいるのは当然魔物たちなわけで、この扉の外にいるのもまた魔物たちだ。
「いいよ、入っておいで」
そう、クロスが扉に向かい言ってやると、すぐさま扉が勢いよく開かれた。
扉から入ってきたのは5,6人の魔物たち。
彼らはいっせいにレイナの方へとかけてくると…。
「あねさーん!!」
抱きついた。
それもみんな一斉に。
当然ながら抱きつかれたレイナは押しつぶされ、魔物たちの山の下から救助コール。
「こらこら、離れなさい」
見兼ねたクロスが助けてやる。
言われた魔物たちは「すみません」と素直に謝ってレイナを解放してやった。
「吃驚した…」
「あねさん全然顔見せに来ないからさみしかったっすよ!」
不満げに声を上げたのは一番最初に部屋に飛び込んできた魔物。
床にちょこんと座り頬を膨らませて抗議する姿はなんだか幼く見える。
彼の後ろにいた他の魔物たちからも「そーだそーだ!」と抗議の声。
「あー…そんな頻繁に私がここへ来るのも問題でしょう」
その彼らの姿に若干顔を引きつらせつつ、気まずそうに言う。
目が泳いでいる辺り、一応悪いとは思っているのか。
「せめてもう少し定期的に顔出しを!」
「「顔出しを!」」
勢い付いた彼らはなかなか止められないようで。
綺麗に合唱してくださって。
「わかった、わかったから」
ちょっと静かになさい、と言って彼らを宥める。
それを了承と取ったようで、ようやく落ち着いたらしく静かになった。
「まったく、相変わらず元気ね」
「そりゃもちろん!」
これまた元気な返事が返ってきた。
その元気さ時々疲れるわ、と言いつつもレイナも嬉しそう。
まぁ、あまり表情の変化はないのだが。
「ゆっくりしてってくださいよ!」
「はは、夕方には帰るけどね」
「「えー!!」」