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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

Dramatic Record ~聴こえる歌~

ようやく声が届いたと歓喜したのは、さていったいいつの事だったか。
記憶に残るのは、幼い時と木漏れ日である。


*****
 

チチチ……と、常なら聞こえそうな程天気の良い中。
木漏れ日を提供する木々の枝には鳥ではない生物たちが集まり、ある一角を見つめている。
鳥ではない生物――精霊たちの視線の先には巨大な亀と、本来ならこの場にいることなど滅多にない人間という種。
そんな人間の中でも特に精霊たちが見つめているのは、陽に煌めく金色の髪を靡かせ元気に動き回る幼子――レイナの姿。
大空を切り取ったかのような碧眼が見つめる先には大きな猫か小さな犬ほどの体躯をした白い翼竜がいる。

「ちー!」
「リュリュィ!」

レイナは“ちー”と言いながら白い翼竜を追いかける。
当の翼竜はというと、楽しそうに幼子の手が届くか届かないかの位置を幼子のペースに合わせて飛んでいる。
 そんな1人と1匹の様子を少し離れた場所から見守るのは1組の男女と大亀。

≪ほんとうに、レイナは元気じゃのぅ≫
「ふふ。やんちゃ盛りで毎日大変ですよ?」
≪子どもというのはそれくらいがちょうどいい≫

人の身の丈より遥かに高い背を持つ大亀は、己の傍に座る女性となるべく視線が同じになるようにとその頭を地につける。
そして周囲に優しく響くのは大亀――翁の声。
空気を振動させ響いたそれが、周囲に生える木々の葉を揺らす。
木の葉を揺らしたそれは1匹、また1匹とこの場へ精霊を集める。

こんにちは
来ていたのね
待っていたよ
ちい姫は白九龍と遊ぶのに夢中なのね

人の言葉とは決して違う、音。
声なき声で話されるそれは“聞く”力を持つ男女と、同族たちにはしっかりと聞こえている。
しかし未だその力が未熟なレイナには聞こえる声はわずかで、翁や月影と言った力の強い精霊の声しか聞き取れない。
だから、精霊たちはいつも早く声が届けばいいと祈っている。

「……?」

と、不意に白九龍と戯れていたレイナの動きが止まる。
その様子に幼子の様子を伺っていた者たちは不思議に思う。

どうしたのだろう
何かあったのか
怪我でもした?

「レイナ、どうしました?」
「うー…」

未だ届かない精霊たちの声を代弁するように、翁の傍にいた女性が声をかける。
首を僅かに傾げ、優しい黒の髪が肩から滑る落ちる。

「母上」

声をかけられたレイナは振り返り、己を呼んだ女性――母親を呼ぶ。

「どうかしたのですか?みなが心配していますよ」
「なにか、聞こえるの」
「なにか…ですか」
「うん」

母親の言葉に頷いて、幼子は周りを見渡す。
見渡す先に見えるのは、両親と翁と精霊たち。

聞こえる?
聞こえたのかな?
ようやく届いた?

周囲にいた精霊たちの声が弾む。
その声はひとつふたつと波紋のように広がり、全体へといきわたる。

「……こえ?」

コトリ、と首を傾げ幼子は耳を澄ませる。
 そうすれば、僅かに聞こえてくる多くの声たち。
それは少しずつ大きくなり、鮮明になり。

「せいれい?」

まだフィルターを通したかのようにくぐもってはいるが、今までとは違い様々な声が聞こえる。
両親と翁と、精霊たちの奏でる音しか聞こえなかった空間が。
今は様々な声に溢れ賑やかになっているのだ。

届いた!
ようやくだ!
聞こえるようになったのね おめでとう!
ちい姫、ちい姫
遊ぼう
 
精霊たちの喜びに、木々も呼応するかのように音を奏でる。
レイナはそんな精霊たちをぐるりと見渡し、しばし唖然。
これ程にも声が溢れていたなど知らなかったのだから当然か。

「みんなの声、だったのね」
「そうよ。みんな、あなたに声が届くのを楽しみにしていたのですから」
「そう…だったんだ」

寄ってきた精霊たちに囲まれて、幼子は届いた声に顔を綻ばせた。
遊びに誘う声にゆるゆると口端が上がっていく。

「うん。いっしょに、あそぼ」

最上級の笑顔を見せて、レイナは言う。
これからは、たくさんの精霊と戯れる幼子の姿が見れるのだろう。







女帝が精霊の言葉がわかるようになりました。
親が精霊と話せるんだし素質というか能力はあるだろうと思い頑張ってもらいました。(←
ちなみに力の強い精霊の言葉(特に翁あたり)は一般人でも聞ける。と思う。

それにしても、女帝がとても素直である

幼少はこんなに素直だったのか。
女帝の素直さに管理人も驚きである。
なんかもう別人じゃね?

次回は多分契約のお話だと思われる。
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