Dramatic Record ~Part 50~ 古びた書物の本棚 2010年08月01日 「貴女は谷間に咲く白百合のようにとても美しい。ぜひとも私の傍にずっと居てほしいほど…っ!」 その言葉と共に、言われた本人は勿論のこと、その周囲の人もまたピシリと音を立てて固まった。 ◆◇◆◇◆ 今日、どこかの国の偉い人が視察に来るのだと聞かされたのは朝早い時間だったと記憶している。 そのときに生徒会長として学園を案内してやってくれとも言われた。 今日は抜けても問題のない授業ばかりだったなと、頭の中に入っている時間割を思い出し是と応えた。 まさかこの時、こんなことになるとは思いもしなかったが。 さて、是と応えたからには当人に会わなければならない。 しかしまだその人は来ていないようで、仕方なしに正門へと出迎えのために赴いた。 そして待つことしばし、正門の前に一台の馬車が止められた。 その中から出てきたのは1人の年若い男性。 年齢は20台半ばといったところか。 「ようこそ、エリアル学園へ」 学園長が挨拶と共にお辞儀する。 もちろんレイナもそれに習った。 「ああ、急な視察ですみません」 「いえいえ、構いませんよ」 学園長と男が言葉を交わす傍らで、レイナは失礼にならない程度に男性を観察する。 物腰も柔らか、嫌味な所も特にないし、好印象だろうか。 などと考えていたら、不意に言葉をかけられた。 「ところで、貴女は?」 「へ?」 思考の海に沈んでいたから咄嗟に反応できなかった。 だからなんとも間抜けな返事をしてしまったのだが、男性は特に気分を害した様子もなく再び問いかけてくる。 「貴女の名前を教えていただけませんか?」 「ああ、失礼しました。私はレイナと申します」 名前を名乗って礼儀正しく腰を折る。 伊達に礼儀の科目でAクラスに属しているわけではない。 「それでは後の案内は彼女に任せていますので」 と、学園長は言い残して去っていった。 ちょっと無責任じゃないのかと思ったが、口には出さないことにする。 ◆◇◆◇◆ 「こちらが学生塔、生徒たちが寝食を共にする寮がある建物です」 あの後教師塔、勉学塔、実習場、温室の順で案内し、ここ学生塔へとやってきた。 学園の敷地は実に広く、この学生塔の案内が終われば丁度良い時間になるだろう。 「この学生塔は一階左手側が食堂に、右手側が大浴場になっています」 「一回は公共施設になっているのか」 「はい。それと二階より上は階段を上って左手が女子寮、右手が男子寮となっています。部屋は基本的に5人部屋となっており、上の階に上がるごとに上級生たちの部屋になっています。さすがに女子寮を案内することは出来ませんが、男子寮の方を覗いて見ますか?」 「そうだね、食堂と男子寮を見せてもらおうか」 「わかりました、こちらへどうぞ」 そう言うと、レイナは男性を促し中へと歩みを進める。 先ずは食堂を案内し、メニューの説明をしていく。 その後階段を登り男子寮の案内という順番だ。 余談だが、男子寮のほうへ行くと丁度出くわした男子生徒が悲鳴を上げて逃げ出した。 「みんなとても賑やかだね」 「はい。元気が取り得の者が多いですから」 一通り案内が終わった2人は、学生塔のエントランスまで戻ってきていた。 時刻も既に夕食時に近づいており、階段を降り食堂へ向かう生徒の姿が多く見られる。 「これで視察が終わりと思うと…とても残念だね」 「…?」 なぜ残念なのか別けがわからず首を傾げていた彼女の手を、不意に男性が両手で握り締めたかと思うと、そのまま自身の胸元まで誘い、そしてのたまった。 「貴女は谷間に咲く白百合のようにとても美しい。ぜひとも私の傍にずっと居てほしいほど…っ!」 そうして事は冒頭へと戻ることとなる。 お題No.36 白百合 たまにはこんなノリもいいと思ったんです。 男子寮の部屋は適当に誰かの部屋を見せてもらいました。 男子生徒が逃げ出したのはレイナが男子寮の方まで来てて驚いたのと恥ずかしかったから。(← ちなみに女子寮の方には魔法が掛かってて男子は入れません。 男子が入ろうとした場合は魔法で寮のエントランスまで飛ばされます。PR