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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

Dramatic Record ~Part 67~

何かが爆発する音とともに暴風が衝撃となって周囲を襲う。
立ち上る黒煙と土埃で視界が遮られる中、何かが勢いよく飛び出す。

「待ちな!」

黒煙と土埃を巻き込み言葉と共に風刃が飛び出した何かを追い…紙一重で避けられた。

≪―――≫

先程の声とは別の低い声が辺りに響くと周囲を晴らす様に風が動き、視界が開ける。

「レイナ!」
「…っち!」

煙が晴れて現れたのは、陽に煌めく金の髪と蒼穹を映した瞳の少女と、夜に浮かぶ銀月を模した銀の髪と菫色の瞳の青年―――レイナとシュウだ。
レイナよりも後方に控えていたシュウは彼女の名を呼び駆け寄る。
名を呼ばれたレイナはというと、周囲の気配を探ると忌々しそうに舌打ちした。
すでにこの辺りには彼女たちの気配しか感じられない。
くしゃりと顔にかかる髪を掻き上げたレイナは大きくため息を一つ。

「逃げられたな」
「ええ」

レイナの横に立ったシュウもまた大きくため息を吐くとうんざりした表情を表す。

「また、探すのか…」
「もうヤダ」
「そう言うなよ」

眉間に皺を寄せるレイナを自身も嫌そうにしながら宥めるシュウは、そのよく回る頭でもって次はどうするかを考える。

「(奴は素早いがそれ以外の能力はそれほど高くない。だから障害物の多い場所を好むはず…。このあたりでそんな場所は確か―…)」

標的の能力値と地形を頭に描き次に行きそうな場所をピックアップする。

「レイナ、次の場所へ行くぞ」
「わかった」

今いる場所から一番近い場所へと2人は移動を開始した。


◆◇◆◇◆


今回2人がこの地へと来たのは依頼のためだ。
本来この2人が出向く必要のないランクの低い依頼であったのだが依頼対象があまりに素早く動くため他の生徒では全く捕まらないということでこの2人に回ってきた。
ちなみに捕獲系の依頼であるためあまり攻撃することができない。

「いた」

レイナが小声で言う。
彼女の視線の先、木々の茂みの向こうには捕獲対象が当たりを警戒するさまがあった。

「シュウ、ちょっと範囲広めで結界。今度こそ逃がさないわよ」
「りょーかい」

レイナの言葉に是と答えたシュウは発動状態で手に持っていた『絶禍』の糸をゆっくりと伸ばす。
それは意思を持つかのように動いて獲物と2人を範囲内に入れたまま円を完成させた。

≪籠ノ鳥≫

スルスルと綾取りをするかのように糸を組んだシュウが短く詠唱すると、伸ばした糸をもとに結界が織りなされた。
対象は周囲の様子が変わったことに気づいたらしく騒ぎはじめる。

「さっきは油断したけど、今度は逃がさないわよ」

そういってレイナは茂みから姿を現す。
彼女の姿を認めた対象は身を低くし、威嚇の鳴き声を上げる。
しかし当然ながらレイナはそれに臆することもなく対峙し、ニヤリと笑った。

「レイナ、うまく捕まえろよ」
「わかってる」

シュウは気配でレイナの笑いを感じ取り、一応と念を押す。
捕獲系の依頼で対象を傷つけられたらたまらない。

「さぁ、捕まってもらうわよ」

言うと、レイナは動き出した。


◆◇◆◇◆


「(あいつ、俺の注意忘れてるだろ…)」

シュウは己の周囲に張った結界の中で盛大な溜息を吐きだす。
結界の外では聞きたくない音を響かせ地形が局地的に変わっていく。

「(特殊な結界にしといてよかった)」

今は見るも無残なことになっている地形だが、結界を解けば元に戻るだろう。
シュウはもう一度溜息を吐き、怯え逃げ惑う対象を追い詰めるレイナの姿を見やった。


~おまけ~

「ちょ、依頼はなるべく無傷でってあったよね!?」
「んー、だって素早いんだもの」
「だからってっ…っ!」

シュウに抱えられたズタボロの対象を見て学園長とレイナの間で一悶着あったのは言うまでもない。







女帝は地味にストレスたまってました。
今回のシュウの結界(外側)は彼が扱う術の中でも結構高度。
指定した範囲の空間を結界で覆い隔離、その空間を一時的に保存することでいくら結界内で暴れても解除すれば元に戻るという不思議。
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