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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Play12

ライモンシティを抜けた先、5番道路。
さあ進もうと足を踏み出せば、聞き覚えのある声に呼び止められた。
なんだろうと振り返ると、そこにはベルさんの姿。

「シオーン!いいところで出会ったね!これをあげようと思ってたの!」

相変わらずのテンションで、相変わらずそれだけを言って何かを手渡してくる。
何だろうと思い見てみると、それは秘伝マシン「空を飛ぶ」だった。

「どう?空を飛ぶの秘伝マシンよ!戦ってない時にその技を使うと今までに行ったことのある街にすぐに飛べるの!」

凄いでしょ、とベルさんはテンション高く身を乗り出していってくる。
たしかに、これがあればずいぶん移動が楽になる。

「ところで、シオン君は隠し穴って知ってる?」
「隠し穴?」
「あ、知らないか」

隠し穴っていうのはねー、木と木の間にポケモンが隠れそうな穴があるんだけど、その事だよ!

そう、ベルさんが教えてくれる。
そしてここにもありそう!と言うと、さくさくと一人歩いて行ってしまった。
オレは慌ててその後をついていく。

「あのね、向こうから声が聞こえたの!私耳良いんだよ」
「そうなんですか」
「うん!……あれ?たしかこの辺から物音が聞こえたんだけどなあ…」

うーん…と、ベルさんは地面にかがみこんで木々の間を探し回る。
オレも手伝いとばかりに同じようにして探していると、ベルさんが何か見つけたらしかった。

「うあ!ここ!!ほらシオン君、ここに入れそうな隙間があるよ!」

そう言ったベルさんの目前には、確かに入れそうな隙間が存在している。
入ってみて、とベルさんに促されるまま、オレはその穴へと入り込んだ。

入り込んだ先、細い通路のようになっている道を進むと、少しだけ開けた空間へと出た。
その空間の中央にはチラーミィの姿。
ベルさんはこんな場所にいるのだからすごいポケモンなのかも!と言ってはしゃいでいる。
他にも隠し穴があるかもしれないから探してみるといいよ、と言い置いた彼女は、そのまま外へと出て行った。


*****


あの後隠し穴にいたチラーミィをスルーして5番道路を進んでいたオレは、途中トリプルバトルを挑まれたりしつつも無事にホドモエにやってきた。
といってもまだ跳ね橋、別名をリザードン大橋を渡ったばかりなのだけれど。

すると、前方にいい加減見慣れてきた姿と見慣れない姿。
見慣れた姿、プラズマ団はもう片方の人物になにやら話しかけているらしい。

「なあ!前みたいに楽しく人のポケモン奪おうや!」
「だめだよ。人のもを取ったら泥棒だと身に染みて解ったんだ…」
「うるせえ!今更真面目ぶっても遅いんだよ!」

どうやらあの見知らぬ恰好の男性はプラズマ団の元団員の様だ。
今はプラズマ団を抜けたのだろう。

そのまま眺めていると、黒い服のプラズマ団は元プラズマ団の男性を突き飛ばし更に何かを言い募っている。
しかしそれに対して元団員の男性は首を縦に振る様子は見られない。
俺がしばらく静観していると、背後からヒュウ兄がものすごい勢いで走り寄ってきた。

「おい、話を聞かせろ!」
「やべ…っ」

ヒュウ兄は走ってきた勢いのままプラズマ団を突き飛ばすと、掴みかからん勢いで迫りよる。
しかしプラズマ団は戦うなとでも言われているのだろうか、ヒュウ兄に捕まえられる前に走り去ってしまった。

「待て!!」

ヒュウ兄は逃げたプラズマ団の後を追っていく。
取り残されたオレはしばらく唖然としていたものの、元団員の事を思い出して彼に近寄ると手を差し伸べた。

「あの、大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です!」

オレの手をとった元団員の男性は屈託なく笑っている。
さっきのプラズマ団の男性とは随分と違うようだ。

「すみません。あいつ、昔はプラズマ団で友人だったんです…」
「え」
「だけど、2年前ポケモンを救いたいと願うN様に従う者たちと、世界征服を企んだゲーチスのグループに分かれてしまって…」

つまり、プラズマ団は穏健派と過激派の二つのグループに内部分裂してしまったのだろう。
その時のさっきの彼とこの人は…。

「あ、よろしければ私たちの家へどうぞ。詳しい話を聞けますよ」
「え、いいんですか?」
「はい、どうぞ。ジムの隣、小高い場所にありますから」

是非、と言い残して元団員の彼は去って行く。

「これは、一度詳しい話を聞いた方がよさそうだね」
『はい。何やら事情も複雑そうです』

オレは隣で聞いていたリイヤと話すと、詳しい話を聞いてみようと彼の言った家へ向かうことにした。


*****


街中を散策しつつ言われたとおり小高い場所へと向かうと、先ほどの元団員とお爺さんが一軒の家の前に立っていた。

「あ、ロット様、ほら来ましたよ!」

こっちですこっち、と急かされたオレは、歩くペースを速めて件の家へ近づく。

「ほう、プラズマ団に興味があるのか」
「はい」
「私たちの話を聞いてもらえれば、理解してもらえるかもしれません…お客人、悪いがここに入るならあなたというトレーナーがどんな人物か見せて貰いたい」

バトルさせてもらいますよ。
そういって、ご老人、ロットさんはモンスターボールを構えた。


*****


勝負に難なく勝ったオレは、一息ついてシィマをボールに戻す。
と、どうやって俺を見つけたのかヒュウ兄がプラズマ団を取り逃がしたと言いつつ走り寄ってきた。

「そちら様は?」
「あ、ヒュウ兄って言って、オレの友人です」
「ご友人ですか。ならばご一緒に」
「ありがとうございます」

オレ達はロットさんの後について家の中へと入っていく。

「さて、改めて名乗りましょう。私はロット」
「……あんたらもプラズマ団だよな?さっきのプラズマ団と何が違うのか教えろよ」
「正しく言うなら、元プラズマ団だ。二年前の件をきっかけに、罪滅ぼしとして持ち主と離ればなれになったポケモンの世話をしている」

よく見ると、家の中のあちこちには元団員と同じ格好をした人たちと、ポケモンたちが居る。
ポケモン達のの表情は穏やかで、ロットさんが嘘を言っていないと判る。

「え、お前は?」
「オレはヒュウ。ヒオウギシティのヒュウ。5年前、お前らプラズマ団に妹の大事なポケモンを奪われた情けないトレーナーだよ…」

何が離れ離れだ!そうしたのはお前らだろ!!
ヒュウ兄はそう言って感情をあらわにする。
そんなヒュウ兄の様子に、ロットさんは本当にすまなさそうな顔で謝罪していた。
そして妹のポケモンがここにはいない事を知ったヒュウ兄はジムに行くと飛び出して行ってしまった。

「ヒュウ兄…」
「プラズマ団は、彼のようなトレーナーを…改めて悔やむ。何と愚かであったか…」
「ロットさん…」
「私たちのしたことは、たしかに謝っても謝りきれぬ。決して償いきれるものではないのだ…」
「……」
「シオン、君に一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
「ここに居るこのゾロアを、一緒に連れて行ってやってはくれんか」
「…え」
「きっと、私たちと共にいるよりは幸せになれるだろう。君ほどのトレーナーと共に在れるのなら…」
「……」

オレは、ゾロアを連れて行くことを了承した。
しかし手持ちがいっぱいだからと、一先ずポケモンセンターへと戻らせてもらったけど。

そして手持ちを一匹預けて戻ってくると、家の中にはだれもおらず。
代わりに居たのはソロアの進化形、ゾロアークであった。

「くあぁあぁん!!」

ゾロアの鳴き声に驚いたオレの脳裏に、色褪せたような色の映像が流れ込んでくる。

その映像は、現プラズマ団が元プラズマ団を戻ってくるように説得されたというもの。
今でもあのプラズマ団には多くの団員が残っているらしい。
映像の途中で団員が行ったギャグは全く笑えなかったが。
プラズマ団は、過去にしたことが今でも人々の記憶に根付き抜けたあとでも苦労しているのだ。
しかし、ここに居る人たちは本当に自分達の行いを悔いているのだとよく伝わってくる。
そしてそんな団員の話を聞いていた緑髪の青年。
きっと彼が、Nと言う人物なのだろう。

映像が途切れると、そこにはオレがポケモンセンターへ戻る前の光景。
部屋の中央にロットが居て、その隣にはゾロアが。
きっとさっきのは何かに化かされたのだろうと、そう思うことにした。

「ゾロア、オレと一緒に来てくれる?」
「きゅううん」

語りかけたオレに、ゾロアはひと鳴きする。
そっとモンスターボールを差し出すと、彼は赤い光に包まれてボールの中へと入って行った。

「これからよろしくな、ゾロア」

ボールに語りかけるとカタカタと揺れる。
そして微かに聞こえるこちらこそ、という声。

オレは新たに仲間になったゾロアのボールを腰のホルダーに掛け、元プラズマ団の家を出た。
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