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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Play15

あの後タワーオブヘブンで見つけたアララギ博士は、嬉々としてフィールドワークをしていた。
オレがまだジムに挑戦していないと告げると、まだ時間はあるわねと言って奥へと行ってしまう。
どうもオレの心配はいらなさそうだと判断して、オレはタワーの最上階まで行って鐘を鳴らした。

タワーを出て野生ポケモンと戦いつつフキヨセシティに戻ってきたオレは、準備を整えてジムの前に立っていた。

「やっと6つめのジム、だね」
『そうですね』
「何だかんだで色々足止めちゃって、ここまで来るのに1か月以上…」
『長かったですね…』

そうだ、オレが旅に出たのは6月23日だからもう随分と時間が経っている。
オレ逹の他に同じように旅を始めた人たちはとっくに殿堂入りも済ませているのに、だ。
まあ、オレ逹はオレ逹のペースで進んでいるのだと言えなくもないのだけど。

「それじゃ、入ろうか」
『はい』

そう言ってジムに足を踏み入れてみると。
建物の中だというのに向かい風が凄い。
しかも、だ。
一歩足を踏み出した途端に前方から凄い風が吹いてきて、飛ばされてきたらしいガイドーさんに直撃された。

「いてて…」
「い、痛い…」
「ああ、申し訳ないっすね!お詫びにこの美味しい水を受け取ってくださいっすよ」
「あ、どうも…?」

こんな時でもこの人は美味しい水を渡すのを忘れないのか…。

「さーて、それじゃここの説明だ!このジムの仕掛けは風のトンネル!奥にあるプロペラが勢いよく回り出すとさっきのオレのように吹き飛ばされるっすよ!」
「この風ってあのプロペラからだったんだ…」

なんでジムなのにこんな大がかりな仕掛けなんだろう。
ジムリーダーって本当に不思議な人ばかりだ。

「それと!風が来ると思ったら壁に囲まれた場所に移動してやり過ごしてくださいっす」
「はい」

それじゃ、行ってきます。
そう言って歩き出したオレが、早速突風で壁に激突したのはここだけの秘密という事で。

しばらくはトレーナと戦いつつ先に進んだり、突風の中踏ん張ってバトルしたり、突風で飛ばされたりしつつジムの奥へ目指すことが続く。
しかもこの風、なかなかに勢いよく飛ばされるものだから何度も壁に激突してしまって明日にはきっと体中あざだらけだろう。
そんな感じでようやくたどり着いた最奥。

「ウフフ、待ってましたよ。あなたは風にもまけな…い…」
「ど、どもう…でもちょっと、バトルは…まって…」

最奥にいたジムリーダー、フウロさんの口上を澱ませた挙句遮ったオレはというと。
ボロボロの体である。
だっていくらなんでもあの風はキツイ。
誰が何と言おうとキツイ。
とにかくきつ過ぎて休憩しないとバトルどころじゃない。

「うーん、なんだかデジャブを感じるわ…」
「そりゃ、これだけ強力な風に立ち向かうドレーなーばかりなんですからデジャブくらい感じるんじゃ…」

きっとオレ以外にもこのジムに挑戦する人は大体こんな感じになるんじゃないだろうか。
なにせ少しでもタイミングを間違えると壁に激突。
下手をしたらあの世行だ。

「そろそろ元気になってきたかしら?」
「ええ、おかげさまで。待ってくださってありがとうございます」
「ううん、いいのよ。じゃあね、今度はあたしともっと楽しい事をしましょうね!」
「はは…」

フウロさんのその一言を開示の合図に、バトルが始まった。
余談だけど、この口上色々と際どいと思うんだ。
言ったら確実に仕留められそうだから言わないけど。


*****


「あなたってすごいポケモントレーナーなのね!2年ぶりかな?本気でポケモン勝負できたの。だから、あたしもポケモンも幸せ」
「こちらこそ、バトルありがとうございました」

フウロさんとのバトルは、他のジムリーダー同様すぐに終わった。
ちょっと色々あってレベルを上げつつ時間をつぶしていたらずいぶんとレベル差が空いていたらしい。

「さ、これはリーグ公認のジムバッジです。だけどここま通過点ですよ」

そう言ったフウロさんからジムバッジを受け取る。
これでようやく6つ目のジムバッジをゲットしたのだ。

「それと、この技マシンもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」

最近すっかり物を貰う事が当たり前のようになってしまっている。
恐ろしい…。
オレはフウロさんから貰った技マシン「アクロバット」を鞄に仕舞い、お礼を言う。

「ところで、アララギ博士ってどうしてるのかな?飛行機に乗せて!って約束だったけれど…」
「オレがジムに来る前に様子を見に行ったら嬉々としてフィールドワークしてましたけど」
「そっかあ」

でも、オレがこの人に勝ったからそろそろアララギ博士も戻って来ている頃だろう。
そう思いつつオレは出口に向かおうと一歩踏み出して思い出した。

「あ、やばっ…」
『マスター!』

そう、このジムは突風で吹き飛ばされるのだ。
オレはその事をすっかり忘れていて安全圏から出てしまい…。

丁度吹いていた突風に勢いよく飛ばされた。
オレは情けない悲鳴を上げつつ見事に飛ばされ、途中に置いてあった木箱を2個破壊して出入り口の外へと放り出された。
そんなオレの後ろ姿をリイヤの悲鳴が追いかけていた。

「ああ、ごめんなさいね。注意すればよかった」
「うう…」

慌ててあとから追ってきたらしいフウロさんが、困り顔で見下ろしてくる。
オレは仰向けになって飛行場の地面に寝転がっている。
諸々の衝撃が強すぎて動けないのだ。

『マスター、マスター』
「リイヤ、大丈夫だよ」

リイヤはすっかり半泣きだ。
そりゃ自分のマスターが風で飛ばされた挙句物に激突する姿を見るのはさすがにショッキングだろう。
オレはリイヤの頭をなんとか上げた手で撫でてやり慰める。
ようやくリイヤが落ち空いてきた頃、待ってくれていたフウロさんが急に手を打ち合わせた。

「さて!じゃあ飛行機でひとっ飛びしましょう!って、アララギ博士はどこかしら」
「…いない?」

そういえば、博士の姿が見えない。
まだ戻ってきていないのだろうか。

「はーい!お待たせしちゃった」
「アララギ博士!」
「ごめんなさいねー!すっかりフィールドワークに夢中になっちゃって!」
「たしかオレ、2日ほど手持ちのレベル上げを…」
「シオン、そこは気にしちゃダメよ!」
「あ、はい…」

2日間、アララギ博士はずっとフィールドワークしていたのだろうか。
凄い体力だ。

「さて、山を越えても同じようにいい調査ができるといいわね!」
「?」
「ふふ、私と一緒に飛行機に乗るのよ!」
「え!?」
「ソウリュウシティに会ってほしい人が居るのだけど…今はネジ山が通れないからね。飛行機でひとっ飛びしてヤマジタウンへ向かうのよ!」
「はあ…」
「というわけでフキヨセカーゴサービスで待ってまーす!」
「あ、ちょ…アララギ博士!」

博士はそれだけを言うとさっさと行ってしまった。
相変わらず元気な人だ。

「あ、待ってよ博士!」

そんな博士の後ろ姿を見てフウロさんも呆れている。
あのマイペースさは本当に驚きますよね、とオレも同じ表情でフウロさんを見やった。

そんなフウロさんもすぐに表情を変えると、あなたも来てね、と言い置いて行ってしまった。
どうやらオレに拒否権というものはないらしい。

「これも運命、とかそんなものなのかな?」
『さあ?』

しかたない、と半ば諦めたオレは言われた通りにカーゴサービスセンターまで赴くことにした。


*****


「さ、それじゃ飛行機を飛ばすわよ!」

俺より一足早く到着していたアララギ博士とフウロさんは、既に準備万端の様だった。
オレが到着したのを見るや否やそう言って飛行機へと向かおうとする。

「ふええええ博士ー!」

しかし、そんなオレ逹の前にベルさんがやってきた。
どうやらベルさんも飛行機に乗るらしい。
そんなベルさんは半泣きだ。
ベルさんはオレ逹と方角は同じ、けれど場所は違うリバースマウンテンに行くようだ。

そんなこんなでオレ逹は一緒に飛行機に乗ることとなった。
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