Play17 生体記録 2012年08月09日 途中バトルだなんだとしつつソウリュウシティを目指したオレは、ようやく到着できた。 ビレッジブリッジでは1000勝だったか2000勝だったかにオレを選んだおじいさんに圧勝してしまい、申し訳なくなったりもしたのもだ。 ゲートをくぐり街中へと入ったオレは、見た事のある少女に捕まってしまった。 「やっほー!ヒウンシティ以来だね。ひょっとして…あたしのおじーちゃんに挑戦しに来たの?」 「おじいちゃん?」 「うん!ソウリュウシティのジムリーダーはあたしのおじいちゃんなの!」 といっても血の繋がりはないんだけど! 言うと、アイリスちゃんは親切にジムの方角などを教えてくれる。 「それにしても、おにーちゃんってポケモンに慕われてるのね!」 「ありがと。リイヤたちは、オレの大切な家族なんだ」 そっと、腰に下げるホルスターに付けたボールを撫でる。 隣のリイヤも、ボールの中の彼らも、嬉しそうだ。 アイリスちゃんはその様子を見ると、頑張って、と言い置いて立ち去った。 ***** 「ようこそ、ソウリュウジムへ!」 いつものようにジムに入ったすぐそこで、ガイドーさんから美味しい水を受け取りつつジムの説明を受けた。 このジムは巨大な竜の石像の頭に乗って上を目指していくらしい。 それにしても本当に大きな石像だ。 上を見上げる首が痛い。 なんとか石像を操作しつつ上へと上がっていく。 どうやらトレーナーによってポケモンの育て方やバトルスタイルが違うらしい。 それでも順調に最上階へとたどり着き、ジムリーダーのシャガさんと対面することができた。 「よくぞ参られた」 そこにいたのは、非常に特徴的な髭?を蓄えたおじいさん。 この人が、ソウリュウジムのジムリーダー、シャガさん…。 そして、この街の市長でもあるらしい。 「私は今までこの町のジムリーダーとして、そして市長として、この町が発展することに尽力してきた。しかし私は、君がレイやアイリスのように私に未来を見せてくれることを望んでもいいのだろうか。それを、たしかめさせてもらおう」 ソウリュウシティを発展させてきたこの人に、オレのバトルで未来が見せれるのかはわからない。 けれど、オレはこのバトルに勝って先に進むだけだ。 そう思いながら、オレはボールを宙へと投げる。 ***** 「すばらしい」 バトルに勝ったオレに、シャガさんがそう言う。 「君と出会い戦えたことに感謝する」 「こちらこそ、バトルをありがとうございます」 シャガさんとのバトルは、今までのジム戦とは違った感じを受けた。 まさかドラゴンタイプの技が半減されるはずのリイヤが瀕死に追い込まれるとは思わなかったのだ。 雨調が居てよかったと思えた瞬間である。 「さあ、これを持っていきなさい」 そして手渡されるレジェンドバッジと、毎回恒例となってしまっている技マシン。 習得できる技はドラゴンテールという技らしい。 「さてと、アララギの娘から話は聞いている。イッシュを造った伝説のポケモンの話を聞かせればよかったのだな」 「はい。お願いします」 「よかろう。では外で待っていてくれ」 言われたとおりにオレはここまで来た順序を戻り、外へと出る。 それにしても、何度見ても大きい石像だ。 どう考えてもジムの外観と中の大きさとが合っていないように見える。 『マスター、それは触れてはいけない事だと思います』 「リイヤ、もう大丈夫なのか?」 『はい。心配をおかけしました』 「ううん、大丈夫。シャガさん本当に強かったね」 上を見上げ絶対これおかしいよな、と呟いていたオレに、ボールから出てきたリイヤが突っ込んできた。 受けたダメージも少しは回復したようで、一応は動けるらしい。 でも心配だからとオレはミックスオレをリイヤに飲ませつつ、彼と他愛ない事を言い合う。 余談だが、シィマが拾ってきてくれるおかげでオレのバッグにはミックスオレが120本以上入っている。 多いし中々消費できないしとここぞとばかりにミックスオレを飲ませてやった。 「待たせたな」 「シャガさん」 「さあ、家まで案内しよう。私についてきなさい」 「はい」 しばらく歩き案内されたシャガさんの家。 シャガさんと対面し落ち着いたオレは、いよいよ伝説のドラゴンポケモンの話を聞けるのだ。 「では話そう。長くなるが、心してきいてほしい」 「……」 二年前、二匹のドラゴンポケモンが目覚めた。 そのポケモンこそが、レシラムとゼクロム。 この二匹のポケモンは元々一匹のポケモンであったが、かつて双子の英雄を手助けするために二匹のポケモンへと分かれた。 二人でつくった国、しかしどちらが正しいのかを争い始めた双子の為に国は二つに分かれてしまった。 その時に、伝説のドラゴンポケモンも分かれた。 そして、実はこの時にもう一匹、キュレムというポケモンが生まれたのではないかというのだ。 シャガさんの一族には、それを裏付ける証拠があるのだという。 それは、遺伝子の楔という宝。 アララギ博士の調べでは竜螺旋の塔と同じ成分が含まれているらしい。 キュレムが本当にいてどんなポケモンなのかは不明だし、強大な力を持っていたレシラムとゼクロムなのだから、いたとしても抜け殻のようなポケモンなのではないか。 存在がまだ不明であるため、シャガさんもどの考えが正しいのかはわからないみたいだけど。 シャガさんの話も終わりを見せたころ、急に表が騒がしくなってきた。 そして聞こえてきた不思議な音に、オレ逹は表へと出てみることにした。 すると、ソウリュウシティの上空に巨大な飛行船。 それはソウリュウシティの上空に来ると動きを止めた。 一体何事かと上空を見つめるオレ逹の視線の先で、飛行船の船首部分がゆっくりと開いていく。 開いたその奥に見えるのは銃砲だろうか? どの道嫌な予感しかしない。 「これは…」 『マスター!』 唖然とするオレとシャガさん。 オレの横ではリイヤが野生の感か、危険を感じて吠えている。 しかし、見上げるオレ逹を余所にその銃砲は光を収束させ始めた。 これは、かなりまずいんじゃないか。 オレが動き出そうとした瞬間、銃砲から圧縮された光の玉が撃たれた。 それは地面に当たると周囲を氷柱の中へと閉じ込めてしまった。 建物も、その中にいた街の人たちをも巻き込んで。 次々と放たれる砲撃は、次々と街を凍てつかせていく。 「この氷の世界は…オノノクス、ドラゴンテールだ」 「ググォー!」 シャガさんの手持ちのオノノクスが、オレ逹の目前を防ぐ氷柱を砕く。 しかし、砕けるかに思えた氷柱は壊れず、傷一つ負わずにそこにあり続けた。 いったいこれはどういう事なのだろうか。 「そうでしょうとも」 「!お前は…」 不思議に思うオレ逹の前に、プラズマ団のヴィオさんが現れた。 辺りを見渡して寒いと言っているが、そうしたのはあなただろうと言いたかった。 寸前で堪えたオレ、頑張ったと思う。 「これはプラズマ団の技術で生み出した特殊な氷!アイツを捕えている限り溶けることも砕けることもないのだ!」 「…アイツ?」 『よくは判りませんが、この氷の秘密のようですね』 引っかかった単語に眉をしかめる。 恐らくは何かのポケモンなのだろうが、ポケモンの中にこのような氷を作り出せるポケモンはいただろうか。 少なくともオレの記憶にはいない。 「さて、用件を伝えよう!シャガ殿、遺伝子の楔を渡してもらおう」 「お前たちが二年前にした行い。それを知っている人間が素直に渡すと思っているのか?」 「ふむ、予想通りだな。本来なら脅すところだが…」 どうやらあの氷は一度に使える回数に限りがあるらしい。 今は使い切ってしまい、言ってしまえばエネルギーの補充中というところか。 彼らは地道に探すことにしたらしい。 オレはシャガさんに頼まれ、この町からプラズマ団を追い出すこととなった。 「それにしても、寒いね」 『はい。風邪を引かないよう気を付けてください』 今の季節は冬とはいえ、それほど寒い地域に無かったものだから防寒具なんてほとんどない。 気を付けないと、凍傷だなんて笑えないよな。 それにしても、戦う先々で随分な言われようだなとリイヤと苦笑し合う。 街中の下っ端を倒していくと、一人が「ジムを徹底的に探せ」と言われたと言った。 それを聞いて、オレは急いでソウリュウジムへと向かう。 すると、ジムの前にヴィオさんの姿。 どうやら戦わないわけにはいかないらしい。 オレは氷で滑りそうになる足を踏ん張りつつ、リイヤへと指示を出した。 ***** 「やれやれ、さすがはポケモンを使うことに長けたトレーナーか」 オレに敗れたヴィオさんがそういう。 彼はバトルの最中もずっと寒そうに震えていた。 この人、こんなに寒がりなのによく街中を凍らせて、しかも遺伝子の楔を探し回る気になったな。 称賛も真似もできないけど、オレは絶対にやりたくない。 「さて、ここは一度引き上げるか。何より寒くて敵わんしな」 「それじゃ最初から凍らせなければいいのに…」 「だが、想像してみるがいい。イッシュ地方のすべてが氷漬けになる様を。そのためには何があっても遺伝子の楔を手に入れるぞ」 「イッシュを氷漬けにはさせないよ。そして、遺伝子の楔も渡さない」 オレは、撤退していくヴィオさんの背中にそう言った。 「さすがだ。君のおかげで助かった」 ヴィオさん達プラズマ団の去って行く姿を見ていたオレに、シャガさんがそう声をかけてくる。 プラズマ団を捕まえなかったことを怒られるかなと思ったが、特に怒られる様子はないみたいだ。 「戦ってくれた君の大切なポケモンにも感謝居ているよ」 「街を守る事は出来なかったけど、引いてくれてよかったです」 「それでいい。子供が無理に彼らを捕まえようとすることはない」 「そう…でしょうか」 「それは、大人の仕事だ。さあ、せめてもの気持ちだ。この薬でポケモンの回復を。それと、ここで少し待っていてくれ。すぐに戻る」 「はい」 オレはシャガさんから薬を受け取り、戦ってくれたリイヤの傷に噴きかけてやる。 それほど大きな傷ではないが先程の戦いでダメージを受けていたから丁度いい。 「ふむ、行って戻るまでの最短記録更新だな」 「……」 オレがリイヤの手当てをしている間にジム内に行っていたシャガさんは、実に早いお戻りだった。 別にそんな記録を更新しなくてもよかったのに。 シャガさん、お年の様だから少し心配だ。 「いいか、シオン。遺伝子の楔とは、これだ」 「…!」 そうして見せられたのは白黒黄色のカラーリングをした三角錐。 鮮やかなこの色の楔が、本当にあの竜螺旋の塔と同じ年代の成分だとは俄かに信じがたい。 「これが、あいつらの手に渡らなくて本当に良かった」 「ですね…」 彼らの求めるものだ、きっと手に入れていたなら非常にまずいことになっていただろう。 何の目的でこれを探していたのかは判らないけど、でもヴィオさんの口ぶりから察するなら恐らくは街中を氷漬けにしたアレの威力を上げる作用があるのだろうか。 「……案の定、ジムが隠し場所だったか」 「「!?」」 オレ逹がほっと息を吐いていると、急に現れた黒尽くめ。 あれは、ダークトリニティだ。 「なるほど、よく考えたものだ。シャガが居なければ入れず、居れば最強の番人となる…ジムを改装したのもこれが理由だったからか」 「お前たちは…いったいどこから」 「しかし、遺伝子の楔はたしかに貰い受けましたよ」 「何!?」 見れば、シャガさんの手の中にあった楔が消えている。 現れた一瞬で奪われたのだ。 「まさか、七賢人すら利用して楔の在りかを突き止めるとはな。ましてや奪われるなど…」 「どんな手段ででも目的を達成する。私たちはN様のように民の心を奪う求心力がないのでね」 代わりに圧倒的な力で人々を屈服させるのだと、彼はいう。 「二年は存外長かった…」 言うと、一人が三人に、そしてそれぞれに散っていく。 楔が今誰の手にあるのかもわからぬまま…。 「奪われたら奪い返すまで!行くぞ!」 「はい!」 このイッシュを、みんなの住む場所を氷漬けになんかさせない。 オレとシャガさんはダークトリニティを追い走り出した。PR