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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Play18

「うーん、どこいったんだろ」
『気配が完全に消えていますね』

ダークトリニティはその気配を消せるという。
気配に敏感なリイヤが見つけられないとは。

『波導で探してみます』
「うん、お願いするよ」

そう言って、リイヤが波導での探索に切り替えてくれる。
これなら隠すことはできないだろうし見つかるはずだ。

『……!見つけました!』
「どっち」
『こちらです!』

リイヤがオレを先導するように走り出す。
オレも滑らないよう足元に注意しつつ、その後を追いかける。

しばらく走り辿り着いたのは11番道路へと続くゲート。
そこにダークトリニティのh地の一人がいた。

「……ふふ、遺伝子の楔を奪い返せるか?」
「奪い返してみせるよ。……リイヤ、そのまま頼む」
「ガウ!」

ところで、トレーナー名がダークトリニティではなくダークだったのだが…。
まさか『ダーク』『トリ』『ニティ』とかに分かれてはいない…よな?
そう思いつつ、オレはリイヤへと指示をだし確実に彼の手持ちを減らしていく。

「っ…認めたくはないが、いい腕のトレーナーだ」

手持ちをすべて倒されたダークトリニティが言う。
なんというか、ジムリーダーの人たちに言われた時とは違い嬉しい気持ちにはならない。
それは相手が悪事を働く人だからか。

「しかし残念だったな。遺伝子の楔を持っているのは他の仲間…時間稼ぎはできました。私を追ってきてくれて感謝しますよ。では、ごきげんよう」
「あ!」

言って、ダークトリニティは再び姿を消した。
今度はこの街にはいないようで、リイヤも首を振っている。

「なんたること!」
「シャガさん…すみません…」
「いや、シオンはよくやってくれた。不甲斐ないのはこの私だ」

遺伝子の楔を奪われてしまったことでしんみりとしたオレ逹の空気を、突然鳴り響いたライブキャスターの音が切り裂く。

≪シオン!≫
「ヒュウ兄?それに…チェレンさんも」
≪ソウリュウに変な船が飛んでったろ!?≫
「うん。それのせいで今ソウリュウシティが氷漬けになってて…」
≪ボクもそれを見た!今そっちに向かっているところだ≫

どうやらチェレンさんはこちらへと向かっているらしい。
ヒュウ兄はオレの事が心配で連絡をしてきたようだった。

「シオン!」
「!」

通信が切れると同時に、ゲートをくぐってチェレンさんが到着した。

「あ、シャガさんもご無事でしたか!よかった…」
「チェレンか。すっかり逞しくなったな」
「ありがとうございます。ですが、挨拶はまた今度に。プラズマ団の潜伏場所は大体わかっています。イッシュ地方で一番気温が低いところ…セイガイハシティ付近でしょう」
「セイガイハ…」
「ボクとヒュウでプラズマ団の事を調べます。ですからシャガさんは、ソウリュウシティを護ってください」
「……街をこうさせてしまったわたしに、そう言ってくれるか。わかった、そちらは任せる。だが、決して無理はするな!」
「はい!シオン、できれば君にも来てほしい。何と言ってもプラズマ団と互角…いや、それ以上の腕を持っているトレーナーだからね」
「もちろんです!それに、ヒュウ兄も行くんだったら心配だから」
「そうか。ではシャガさん、ここは任せます」

先に行く、と言ってチェレンさんは走っていく。
オレも行こうとして、しかしシャガさんに止められる。

「セイガイハシティ…サザナミタウンから北に何があるのか…。シオン!プラズマ団からポケモンを守ってくれ」
「もちろんです」

オレはリイヤ達と離れたくないし、ポケモンを悪事に使う人は、やっぱり好きになれない。
それに、大好きなこの地方を氷漬けにもさせたくはないから。
だから絶対、止めてみせる。
今度はヒュウ兄の手伝いをするとかじゃなくて、オレがそうしたいから。

オレはシャガさんに行ってきますと言って、ゲートをくぐる。


******


さて、サザナミタウンまで戻ってきたものの。
どこからセイガイハシティに向かえばよかったのやら。

「というかそもそもそんな道あったっけ?」
『マスター…』

どこから行けばいいのだったかと頭をひねるオレを、リイヤが引っ張る。
そして連れて来られたのはマリンチューブの前。

「ああ!」
『すっかり忘れておられましたね…』
「あはは…」

そういえば、依然来た時にスルーしたんだった。
リイヤの言うとおり、すっかり忘れてしまっていた。
道も見つかったことだしとオレがマリンチューブに入ろうとすると、またもや鳴り響くライブキャスター。

≪シオン、今どこに居る!?≫
「ヒュウ兄?今サザナミタウンだよ。マリンチューブの前」
≪わかった!そのままちゃんと、真っ直ぐ、寄り道せずに!来いよ!?≫
「う…はい」

前科がある俺としては否とは言えない。
大人しく今度はちゃんとまっすぐ行きますと言って、オレは通信を切った。

「それじゃ、いこっか」
『はい。ちゃんと行きましょうね』
「リイヤまで…」

オレ逹は軽い言い合いをしつつ、マリンチューブの建物へと入って行った。


*****


「すごかった、ねー…」
『はい』
「夜だったからかな、ポケモンの姿は少なかったけど」
『昼間ならもっとたくさんのポケモンが見れそうです』

マリンチューブを通ったオレ逹は、海の中という普段は見ることのできない景色に少なからず興奮した。
初めて見る海底の景色は夜なだけあり幻想的で、漂うプルリルが少し怖かったけど。

「シオン、来たか!」

マリンチューブから出てすぐそこにヒュウ兄が居た。
連絡を受けて事情は全て了解しているらしい。
必ず遺伝子の楔を取り戻すぞと息巻いている。

「だけど!その前にお前はジムリーダーに勝ってこいよ!」
「うん、ちょっと行ってくるね」

ヒュウ兄に見送られてオレはジムに入っていく。
が、ガイドーさん曰く「海だー!」と叫んで駆けて行ってしまったらしい。
だからどうしてジムリーダーのみなさんはこう自由気ままなのだろうか。
探すのって意外に大変なんだけど。

仕方なく、街に出て探すことにする。
街の人はシーちゃんや自由人など随分親しんでいるらしい。

「さてと、どこに居るのかな?」
『地道に回るしかないのでは』
「やっぱりそうなるよね…」

どうするかなあと考え込んでいるオレの後ろで、穏やかな波を立てていた海が大きく揺れる。
リイヤと二人して考え込んでいたオレは、それに気づかず。

「とりゃお!」
「うおああ!」

海から急に飛び出してきた人物の、活きのいい声に盛大にビクついた。
なんとなく気づいていた様子のリイヤが実に恨めしい。

「おう!おはん、ジムに挑戦だろ?おいがジムリーダーのシズイたい。探させて悪かったな!」
「い、いえ…」

方言、だろうか?
意味は通じるのだけど、理解するのに少しだけ時間を要しそうだ。

「ほな、ジム行っとるたい!」

シズイさんはそう言って、意気揚々と走って行った。


*****


しばらく手持ちのレベルを上げたあと。
いよいよオレはジムへと挑戦するためジムの扉をくぐる。
中は池のような作りになっていて、大きなハスの葉に乗って移動するようだ。
いくつかのハスを乗り継いだりしつつ奥を目指す。

「おー!やっと来たか!」
「お待たせしました」

よかった、シズイさんはちゃんといた。
来るまでに時間がかかったからまた泳ぎに行ってないよなと思っていたけど、さすがにそんな事はなかったようだ。

「おはん強そーやね!」
「さすがにバッジ7つ持ってるので」
「そかそか!ほな始めよーかい」
「はい、よろしくお願いします!」

互いに挨拶をして繰り出されたポケモン。
シズイさんのポケモンも本当に強そうだ。
けど外じゃヒュウ兄が待ってるんだ、頑張らないと。

開始されたバトルは、やっぱり苦戦した。
なんといっても8つ目のジム。
もうちょっと手持ちのレベルを上げてから挑んでもよかったかもしれない。

そう思いはしても、信じる手持ちのみんなだ。
シズイさんとのバトルにはちゃんと勝つことが出来た。

「おはん、強そーじゃなくわっせ強いんじゃな!」
「わ、わっせ…?」

なんとか意味を理解していた方言だけど、さっきのは流石にわからなかった。
いったいどういう意味なんだろう…。

「おお、そうじゃ!これを渡さないとダメなんじゃったな!」
「あはは…忘れちゃダメですよ…」

強いトレーナーに会えた驚きですっかり忘れていたらしい。
シズイさんから最後のバッジ、ウェーブバッジを受け取る。
新しいイッシュ地方のバッジらしいそれは、波紋を思わせる綺麗な輝きをしている。

「どじゃ、綺麗じゃろ?」
「はい。綺麗な輝きですね」
「それでジムバッジが8個目か。なら、どんなポケモンとでも仲良しよ!あとー、技マシンも渡すんじゃな」

持ってけ、と渡された技マシンは熱湯。
雨調が覚えている技と同じだな。

「ほな行っとこかい!」
「?」
「ついてくるとえーよ!」
「は、はい…って、ええ!?」

着いてこい、と言いつつシズイさんは背後の水に飛び込んだ。
え、これはオレも飛び込むのか…?
ゆっくりと床の縁へ近づいてみるが、水面との高低差があって波乗りは使えなさそうだ。
飛び込むのもちょっとな…と考えて、オレは来た道を戻ってジムを出ることにした。
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