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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Play20

出口を通り海辺の洞窟だから脱したオレ逹。
白い砂浜に打ち寄せる波の音を聞きながら、オレはそれを見上げていた。

「あれは…」

打ち寄せる波の向こう、浜から少し離れた沖合。
そこに停泊するそれは。

『プラズマ団の、飛行船…!』

そう、以前ソウリュウシティを氷漬けにしたプラズマ団の飛行船がそこに停泊していた。
それを見上げていたオレの後ろから、足音がする。
隣のリイヤが警戒していないのを確認しつつ、振り返ってみると。

「見つけたか!さすがだな、シオン!」
「ヒュウ兄」

どうやらまだここに来ていなかったらしいヒュウ兄が、そう言って近づいてくる。

「しかし…どこから上がればいいんだ?」
「登る場所ないね」

見える範囲で船を見渡してみるが、それらしい場所はない。
どこから上がればいいのだろうと2人で悩んでいると、どこからか待つようにとの声が聞こえる。

「「?」」

その声に2人して周囲を見渡していると、船からタラップが下りてきた。

「これで大丈夫たい!」
「シズイさん!」

下りてきたタラップの先には、シズイさんの姿。
あの人、この船にどうやって乗り込んだんだろう。

「あんた、プラズマ団と戦うつもりはないんじゃなかったのかよ」
「おうともよ!おいはプラズマ団に恨みはない。みんながプラズマ団は悪いいっとるけど、おいはそんなん知らんしひとの噂でそう決めるんは流儀に反する!でもおはんらが困っとるんやったら助けてやらねばならん。これがおいのやりたいことや」
「はあ…」

つまりは、プラズマ団に興味はなくても目の前や知り合いが困っているなら助けたいってことだ。


「ありがとうございます。ほら、ヒュウ兄もお礼言わないと」
「……あんがと」

いまいちシズイさんの言葉に納得いっていないらしいヒュウ兄を促して、お礼を言う。
お礼ってとても大切だよ、ヒュウ兄。

「ええか、おはんら。信念を持て。奪われたポケモンを探すのでもいいし、イッシュを氷漬けから守るためでもいい!理由は何でもいい。でもな、自分はそのために何をするのか、信念の強さがポケモンと自分に力をくれるたい!」
「…はい」
「騒いでしまったから何人か出てきたけど、がんばるんやぞ!」
「うえ!?」

たしかに、甲板が騒がしくなっている。
シズイさん、できればオレはもうちょっと穏便にというかひそやかに行きたかったです。
気をつけて、と言葉を残して去って行くシズイさんの背中を恨めしく見やってしまったのは仕方ないだろう。

「ったく、最後まで締まらない人だな」
「あはは、確かに」
「とはいえ、あれがあの人なりの優しさなんだろうな」
「うん」

ヒュウ兄と言い合って、オレ逹はプラズマ団の船へと乗り込むことにした。


******


「あ、お前ら!タラップを降ろしやがったお気楽水着の仲間か!?」

船に乗り込むと、さっそくプラズマ団の下っ端に絡まれた。
そうか、シズイさんはやっぱり彼らにもお気楽者に見えるのか。
って、感心してる場合じゃない。
変な叫び声を上げてポケモンを繰り出してきた下っ端に応戦するため、オレもリイヤを繰り出す。

「リイヤ、頼む」
『任せてください』

やっぱり、みんな頼もしい。
相手が繰り出すポケモンを次から次へと伸して行ってる。
オレがバトルを終えるとヒュウ兄も丁度バトルを終えたようで、ヒュウ兄はヴィオに妹のポケモンの事を聞くのだと言って駆けて行ってしまった。
オレは相変わらずなヒュウ兄が心配で、慌てて後をついていくことにする。

「リイヤ、大丈夫?」
『はい。ダメージは受けていないので心配いりません』
「そか。このまま頼むね」
『はい』

追いついた先では、早速というかなんというか、ヒュウ兄がまたもやバトルを開始しようとしていた。
相手の数は2人。
オレは慌ててリイヤに参戦するよう指示する。

ヒュウにと共に倒した下っ端は、チョロネコを連れてはいなかった。
彼らは他の団員に知らせねばと、オレ逹の脇をうまくすり抜けて走っていく。

「…あれは、バリアか。その横にはパスワードの入力装置…」
「きっと、下っ端かもしくは幹部クラスの人が居る」
「ああ。探すか聞き出すか…どうにかしてこのバリアを解除しないとな」

オレ逹は手分けをしてパスワードを探すことになった。
一足先に言ったヒュウ兄の後を追い、オレもこの通路から出て行く。


******


プラズマ団と戦いパスワードのヒントを得たオレは、入力装置の前まで来ていた。

「えーっと、このカードを挿して…」

オレは装置に下っ端の人からもらったプラズマカードを差し込む。
これがないとパスワードを入力してもバリアの解除ができないらしい。

「ヒントは…プラズマ団が求めたドラゴン、黒色…」

同じく、他の下っ端の人が見せてくれた伝説のドラゴン二体の姿を思い浮かべる。
彼らの名は確か。

「ゼクロム…かな?」

名前を入力してEnterキーを押す。
すると場に似つかわしくない軽快な音を響かせバリアが解除された。
オレはその先にあるワープホールに足を踏み入れる。

そうして飛ばされた先には、ヴィオさんの姿。
足元の床が格子状になったその部屋に、彼はいた。

「ここまで来るとは大したトレーナーだ」
「リイヤ達が頑張ってくれたので」

なんだろう、この部屋は他に比べて随分と寒い。
それになんだか、あまりいい感じがしない。

「わざわざここまで来たのだ。良い物を見せてやろう」
「…いいもの?」

そう言って立っていた位置をずらしたヴィオさんの足元。
透明なパネルから見えるその下には、ポケモンの姿。

「これが!伝説の氷ポケモンキュレム!!」
「!」
「ヒュララ…」

あのポケモンが、キュレム。
かつてレシラムとゼクロムが二匹のポケモンに分かれた際に生まれたのではないかとされるポケモン。
そのキュレムは、どこか元気の無さ気な鳴き声を上げている。

「ソウリュウに打ちこんだミサイルはキュレムの能力と我らの科学力で創りだした物なのだ!」
「兵器に、ポケモンを使ったの…?」
「ああ、そうさ。そして、お前はプラズマ団にとって不安要素になりかねない」
「……」
「此処で排除させてもらう!」

バトルが始まるのかと、オレは身構える。
隣のリイヤも準備は万端で、低く威嚇の唸り声を上げている。

「そうはさせないぜ」
「!」

バトルが始まる寸前。
ヒュウ兄がワープホールを使い追いついた。

「シオン、バリアを解除してくれてありがとな。助かった!」
「むぅ!一人増えたがまあいい、まとめて始末するのみだ!」
「行くぞシオン!」
「うん!」

こうして、ヴィオさんたちとのバトルが開始された。
戦って思ったけど、ヴィオさんの手持ちって氷タイプばかりだよな。
おかげでリイヤが一発で相手のポケモンを沈めてる。

頭の片隅でそんなことを考えてるうちに、バトルは早々と終わりを告げていた。
もちろん勝ったのはオレ逹だ。

「俺たちが負けるか。で、ここはなんなんだ?」

ポケモンをボールに戻したヒュウ兄があたりを見渡していう。

「!あのポケモン…周りが凍り付いてる?まさかソウリュウの…」
「キュレムだよ。ソウリュウシティを氷漬けにした氷のミサイルはあのポケモンの能力が使われてる」
「やっぱりか!」
「ふむ、敏いトレーナーだな。しかし、それ程敏いのになぜワタシたちのアジトに乗り込んできたのか…」
「んなの決まってるだろ。妹のポケモンを取り戻すためだ」

妹のチョロネコを奪ったのはお前かと訊くヒュウ兄に対して、ヴィオさんはチョロネコなど誰かが奪って使っていると答えた。

「だが解せぬ。チョロネコなど他にもいよう。なぜそこまで拘る」
「……死んだ爺ちゃんが妹のために捕まえてくれたチョロネコなんだ。アイツは、世界にたった一匹しかいないんだよ!」

そっか、ヒュウ兄があれほど拘る裏にはそんな理由もあったんだ。
たしかに、それなら何が何でも探し出して取り戻したいと思うよな。

「個人の想いか…しかし、その思いは他から見れば実に小さい」
「なんだと!」
「さて、キュレムも回復してきた頃だろう。遺伝子の楔は大切に使わせてもらうぞ」
「あ!」

そう言ったヴィオさんの手には遺伝子の楔。
それを取り戻そうとし一歩動いた俺の前に、突然ダークトリニティが姿を現した。

「また、邪魔をするつもり?」
「これが俺達の仕事だ」
「っく…」

彼らはそういうと、またもやオレ逹を船外へと連れ出した。
本当に早業だ。
抵抗するまもなく外へと放り投げられたオレ逹の目の前で、プラズマ団の船が空へと昇って行く。

「プラズマ団!どこへ飛ぼうと絶対に逃がさない…!」
「あの方向は…」
「あの方向は恐らくジャイアントホールだ」

ヒュウ兄が船の飛び去った方角を睨み付ける横で、オレは場所の憶測を立てる。
と、到着が遅くなったと言ってチェレンさんがやってきた。
そしてチェレンさんの推測もオレと同じくジャイアントホール。
キュレムが居たとされる地。

「ジャイアントホールって事は、22番道路か!俺は先に行くぜ」
「うん」

言うと、ヒュウ兄はいつもの様に駆け出そうとした。
しかし、その足をピタリと止めてオレの方へと向き直る。

「……シオン。アイツの、キュレムの鳴き声、なんだか悲しそうだった」
「うん、判ってる」

それだけ言うと、ヒュウ兄はいってしまった。
チェレンさんはヒュウ兄の言葉に驚いている。
そりゃ、伝説ともいうべきキュレムの力を悪用してるんだ、驚くよね。
チェレンさんはというと、どうやってプラズマ団を止めるかぶつぶつと独り言をつぶやいている。
しばらく考え続けてどうするか決めたらしいチェレンさんもまた、来た道を戻って行った。

「キュレム、苦しいって言ってた」
『はい』
「やっぱりあのミサイルは無理矢理キュレムの力を引き出してたんだと思う。だから…」
『はやく、キュレムを助けましょう』
「うん、そうだね」

絶対、キュレムを助ける。
あんな辛そうな声を聴いたんじゃ、助けるしかないし。
オレはよつはの背に乗り、一度セイガイハシティに戻ると22番道路へと急いだ。
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