Play22 生体記録 2012年08月19日 「!!」 ワープした先は、操作室の様な場所。 部屋の側面には多くの多くのが設置されている。 そしてそれらを順に見つつ前へと視線を向けたオレは、驚きに目を見開いた。 「ようこそ!」 「あなたは…アクロマさん!?」 「はい!わたくしはここで知り合いに頼まれ研究を手伝っていたのです!」 「研究を…」 『もしかしなくても、あの装置は…』 十中八九あのキュレムを捕まえている装置はこの人が開発したような気がする。 試作機とは言えポケモンを活性化させる機会を作れるのだから、それくらいはやってのけそうだ。 「わたくしの望みはポケモンの能力を完全に引き出すこと!それが出来るなら手段は何でもいいのです!」 「なんでもって、ポケモンの意思を無視しても構わないの…?」 「端的に言えばそうなりますね。貴方のようにポケモンと心で結ばれようと、プラズマ団のように無理矢理力を引き出そうと私には関係ない!そう、その結果世界が滅ぶとしても!!」 「そんな力の引き出し方、間違ってる!」 「私には過程など必要ないのですよ。結果さえあればそれでいい!」 「……っ」 オレも、ポケモンの力を最大限に引き出せればいいとは思う。 トレーナーは皆、パートナーの力を引き出してやりたいって思うものじゃないのかな。 だけど、アクロマさんのように結果だけを求めたくはない。 それじゃあまりにも、トレーナーについてきてくれるポケモンが可愛そうだ。 「それはさておき!私がイッシュの各地でトレーナーとバトルしてきたのはポケモンの力を引き出せる資質を見ていたからです!」 「……」 「そして貴方はその中でも特に優秀!」 「今のあなたに褒められても、嬉しくはないです」 「ふふ、そうですか。ですが、わたくしの望む答えを持つのか教えてもらいますよ!」 言って、アクロマさんはボールを構える。 オレもボールを構えて、アンディを繰り出した。 「(アクロマさんの手持ちのタイプは大体わかってる。アンディなら、何があっても大体は対処できるはずだ)」 この船に乗り込んで最初の、不意打ちのバトル以来バトルしたくてたまらなかったらしいアンディにはちょうどいいだろう。 果たして、オレの予測は当たっていたようで難なく対応できている。 それ程苦戦することもなくバトルに勝つことができた。 「やはり強い!そこで、貴方に尋ねます!」 「な、なに…」 「ポケモンとトレーナーは解り合うことでさらなる高みを目指せると思いますか?」 「…はい。信頼がないと得られない強さもありますよ」 「なるほど!貴方の返答はわたくしのとっての理想!実際貴方はその信念を持ってポケモンと向き合い力を引き出している!」 やっぱり、アクロマさんっていまいちよく判らない。 過程は必要ないと言っておきながら、こんな質問をしたりするのだから。 「ですが!貴方はわたくしに可能性を見せてくれた!」 「!?」 オレが考え込んでいる間にアクロマさんは一人喋り続けていたらしい。 急に顔を近づけそう言ってくるものだから、オレは驚いて後ずさった。 「これは、貴方とプラズマ団絆と力のそれぞれの関わり方を決める戦いでもあるのです。もう一度捕らわれたキュレムの前を通り反対側にあったワープパネルに乗りなさい」 「は、はあ…」 さっき下っ端に塞がれたあのパネルの事か。 あの先にはいったい何があるのだろう。 オレは気になりつつ、言われた通りに件のパネルへと足を乗せた。 ***** ワープした先は、小部屋だった。 その奥には緑の髪の男性がモニターを睨み付けている。 「アクロマめ…あやつは科学者として無駄に純粋すぎる!」 そして急に振り返ったかと思うと、大きな声で怒鳴りだした。 ボスにしてやったのに、と叫ぶ男はいったい何者なのか。 男の口ぶりからすると、黒幕のような気がしなくもない。 「さて、あなたは幸運です」 男を警戒しつつ考え込んでいたら、今度は落ち着いた声で話し始める。 「あなたはワタクシ、ゲーチスの演説をたった一人で拝聴できるのです。ありがたく思いなさい」 「ゲーチス…?」 聞き覚えがある。 そうだ、以前のプラズマ団を、世界征服を目論んでいた奴の名前。 この目の前にいる彼が、そうなのか。 ゲーチスさんは、2年前、それより以前から未だに世界征服を諦めていないのだ。 ゲーチス曰く演説が進む中、どこからともなくダークトリニティが現れた。 いつも思うが本当に驚かされる。 「ゲーチス様、キュレムの搬送が完了しました」 「!?」 「いよいよです!いよいよワタクシがイッシュを完全に支配する素晴らしい時が来たのです!」 ゲーチスはそういうと、ダークトリニティに後を任せ階段を下りて行ってしまう。 オレがその後を追おうとするもダークトリニティに阻まれ歯噛みするしかない。 が、丁度のタイミングでヒュウ兄が追いついた。 「待てよ、ダークトリニティ」 「ヒュウ兄!」 「おまえ、ヒオウギで奪われたチョロネコの事を教えな」 「……ああ、それならこいつのことかもな」 「グルルゥー!!」 ヒュウ兄の言葉に思い出したかのように、ダークトリニティがボールを軽く投げる。 そこから出てきたのはレパルダスだ。 ダークトリニティの話では確かにこのレパルダスはヒオウギから奪ってきたポケモンらしい。 そして、今は彼のいう事しか聞かない…。 その言葉に、ヒュウ兄の怒りのボルテージが上がっていく。 しかしダークトリニティはそんなこととでも言うようにヒュウ兄から視線を外し、オレへと向き直った。 「そこのお前!ゲーチス様の邪魔はさせん!」 「!」 言うと、別のボールからポケモンを繰り出しバトルを仕掛けてきた。 オレもほぼ同時にボールを繰り出す。 チョロネコ…今はレパルダスは、ヒュウ兄を威嚇していてバトルに出るつもりはないらしい。 数が少なかった事もありすぐに終了を迎えたバトルにほっと息を吐きかけたその時だ。 オレを囲むようにして残りのダークトリニティも姿を現した。 そしてそのまま第二、第三のバトルへと突入していく。 バトルが終了し、ダークトリニティの消えた部屋。 そこにはオレとヒュウ兄と、用済みだと言って残されたレパルダス。 「…………なあ、シオン。あいつらプラズマ団の思い通りにさせたら……チョロネコやキュレムみたいに悲しいポケモンが増えるよな…」 「そう…だね」 ヒュウ兄は、レパルダスを見ながら本当に悔しそうにしている。 オレも、見ていてつらい。 これ以上、こんな事が起こらないように止めなくちゃいけないんだ。 オレはまだ動けないらしいヒュウ兄を置いてゲーチスを追うことにした。 ヒュウ兄には手持ちのポケモンたちもいるし、あのままでも大丈夫だろう。 そしてオレは階段を下りた先、舟の外へと出て道なりにジャイアントホールの奥へ向かう。 しばらく進むと現れた崖の上へと続く階段を上り、洞窟の中へ。 そこは奥へ進めば進むほど冷気に満たされ周囲が凍てついている。 そしていくつか洞窟の穴を抜けた先。 いくらか広さのある最奥と思われる場所に、ゲーチスさんはいた。 「来ましたか。どうです、このジャイアントホールの最奥!こここそがキュレムのパワースポット。ここでならキュレムの力は最大限となる!イッシュ全土をいともたやすく氷漬けにできることでしょう」 最奥の中心部に立つゲーチスさんは、そう言って悦に浸っている。 その表情は、自身の野望が必ず達成されると信じて疑わない表情だ。 横にずれたゲーチスさんが、持っていた杖で凍った地面を激しく打つ。 「いでよ!キュレム!」 「うわ!」 『マスター!』 その言葉と共にどこからともなく吹雪が噴く。 オレは思わず腕で目前を防ぎ、リイヤがオレの体を支えてくれた。 吹雪が止んだ頃、恐る恐る腕を下げた先にはキュレムの姿。 そしてゲーチスが攻撃を指示する。 「キュレム、凍える世界です!!」 「ヒュララララッ!!」 キュレムの周囲に、氷の塊が浮かび上がる。 それは今までの冷気とは比較にならないほどの冷たさ。 気付けば氷の塊に周囲を取り囲まれていたオレ逹は、そのあまりの冷たさに急激に体温を奪われる。 「(もう、だめだ…っ!)」 オレはそう思って、支えてくれていたリイヤを逆に腕に抱き込む。 ああ、せめて手持ちのみんなだけでも助かってほしい。 ボールの外にいるこの子が少しでも寒くないように。 ギュッと腕に抱き込んで覚悟をしたその時だった。 どこからともなく青年の凛とした声が聞こえてきた。 「レシラム、クロスフレイム!!」 その言葉と共に、大きな火球が降下してくる。 それはオレ逹の周りを浮かぶ氷塊をいともたやすく溶かし、奪われたオレ逹の体温を取り戻す。 「……来ましたか」 ゲーチスさんはそれが何かわかっているらしかった。 目の前の光景を冷静に見つめ、呟く。 オレは何が何だかさっぱりわからず、ただただ周囲を見渡すだけだ。 「人の心を持たぬ化け物、Nよ」 「…あ」 ゲーチスさんの見やる先、そこには白い竜の姿。 そしてその背には、緑の髪の青年。 「レシラムが教えてくれた。キュレムが苦しんでいると…」 白い竜、レシラムの背から降りたその人が言う。 この人が、N。 いつか見た、ソロアークの幻影に出てきた青年だ。 「僕は、ポケモンを苦しめる身勝手な人を許さない!それに、僕はこのイッシュが好きです。僕に人としての生き方を…ポケモンと人とが一緒にいることで奏でるハーモニーがあると気付かせてくれた場所…!」 そこにクラス人とポケモンを守る! そう言ったNさんに呼応するように、レシラムが吠えた。 そんなNさんに、しかしゲーチスさんは恩知らずと罵る。 この人はどれだけ自分勝手にすれば気が済むのだろう。 人を馬鹿にした態度を崩さないゲーチスさんは、マントの下から遺伝子の楔を取り出した。 するとそれはひとりでに浮き出したと思えば、キュレムの体へと打ちこまれる。 キュレムが大きく身震いをした。 小さな翼のように見えていた部分が前方へ、何をするのかと警戒していたオレ逹の目の前でレシラムを襲い始めた。 翼のような部分の先には棘のような物が突き出ていて、レシラムはそれを必死に回避しようとしている。 空を飛び逃げるレシラムだったが、翼のようなところから発射された棘がレシラムを捕えてしまった。 そのままそれはレシラムを空から引きずりおろし、白い球へと姿を変えてしまった。 「!?れっ、レシラム!」 「なに、あれ」 慌てるNさん、唖然と見るしかないオレとリイヤ。 それぞれの目の前で、キュレムが白い球となったレシラムを体内に取り込んでしまった。 するとキュレムの体から炎が吹き出し、その姿を変えていく。 レシラムとキュレムの面影を残した真白い竜の姿へと。 「……!まさか、ポケモンが合体だなんて…」 「今回は圧倒的なパワーでイッシュを支配する!そのための力!」 そう言ったゲーチスさんはしかし、先ほどと同じではつまらないと言う。 なにがつまらないというのか。 ポケモンを己の欲の為に支配する人が。 「そこのアナタ、イッシュを救いたいのでしょう?ならば、このキュレムを止められるかどうか見せてもらいましょう!」 「っ!」 「…?おや、アナタのモンスターボール…震えていますね。もしや、アナタのポケモンは怒りに震えているのですか?否!そんなことあるわけがない!たかが道具に感情などないのですよ!」 「こっの…!」 「ぐるるる…」 ポケモンを道具といったゲーチス(もうこの時点でさん付けするのを止めることにした)に、オレもリイヤも怒りを抑えることができない。 そこまで言うのならやってやる。 キュレムを倒して、ゲーチスの野望を打ち砕く。 「(それにしてもこのキュレム、レシラムを取り込んだとしても基本は氷か…?だったら…)」 炎をちらつかせながらも未だ冷気を感じるキュレムに、オレは仮説を立ててアンディを繰り出す。 リイヤはさっきの凍える世界の事もあり、本調子ではなさそうだし。 「アンディ、あのキュレムを倒してくれ」 『任せろっての!』 頼もしい返事をしてくれたアンディが構える。 腕をクロスさせたあの姿勢は。 「アンディ、クロスチョップ!」 『うらああああ!!』 一気に近づいたアンディが、交差させた腕を渾身の力で振り下ろす。 放たれたクロスチョップはキュレムの胸元に直撃し、効果抜群で決まる。 氷タイプに格闘タイプの技は大ダメージ。 その上元々威力の高かった技が直撃したのだ。 キュレムはそのまま倒れ込んだ。 「バーニンガッ!」 「ヒュララララ……!!」 倒れたキュレムが、レシラムと分離する。 倒されたことにより合体を維持できなくなったのか。 ゲーチスは白いキュレム、ホワイトキュレムを倒されたことに怒り心頭の様子だ。 そして当のキュレムはというと、現れた時同様吹雪を起こしてどこかへと消え去った。 また捕獲しなくてはならないと呻いたゲーチスは杖を激しく地面に叩きつけ、ポケモンを繰り出す。 結果として連戦になるが、もう一度アンディにバトルへ出てもらうことにする。 「……どういう事だ?このわワタクシが一度ならず二度までも無名のトレーナーに負けるなどっ!!」 決して認めぬ! そう叫んだゲーチスに、Nさんが悲しい目で話しかける。 「……あえて、こう呼びます。とうさん!わかってください、ポケモンは道具ではないのです」 そう、ポケモンは道具じゃない。 人と同じように意思があって感情がある。 ポケモンと人はお互いを高みへと誘っていけるのだ。 しかしゲーチスはそんなNさんの声にも耳を貸さない。 そんなゲーチスとNさんを遮るようにダークトリニティが現れる。 ゲーチスはもう正気ではないといい、彼を連れて消えてしまった。 「………」 「ねえ、君」 「はい?」 「みんなにかわって、ありがとう!キュレムの事は大丈夫。今は力を失っているけどまたここに現れる。レシラムも、君にありがとうって」 「バーニンガッ!!」 聴こえてるよ、君の声。 ありがとうって、ちゃんと聞こえてる。 この人も、ポケモンの声が聞こえてるんだな。 Nさんはポケモンリーグへ向かうといいといい残し、レシラムに乗って去って行った。 少しして、ヒュウ兄が追ってきた。 やっと衝撃から抜け出したみたい。 ヒュウ兄は、あのレパルダスをやっぱり妹に返すらしい。 そうだよね、だってどんなに姿が変わっても大切な妹のポケモンだもん。 ただ、レパルダスも気が動転してるのかまだボールから出すことはできないらしいけど。 オレはことの顛末をヒュウ兄に話し、背を押されたこともあってポケモンリーグへと進むことにした。 その前にみんなの回復をしなくちゃいけないけど。PR