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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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続・彼は怒る

『レーイー・・・・・・。これは!いったい!どーいうことですか!!』
『ダリアうるせーぞー』
『ちょっとは静かになさいな』
『ひめはん、今日もどすか』
≪だって頼まれたんだもーん≫
『もーんてお前・・・』
「は、はははは・・・」

怒るダリアを筆頭に、うんざりしているゼツや呆れているココ、唖然としているゆきめにふてくされたひめ、投げやりになっているししゃもと空笑いをするレイ。
そんな彼ら(うち1名は画面越し)が取り囲むのは、大量発生しているピンクなのか紫なのか判断に苦しむムニュムニュとうごめく物体たち。
そう、『たち』である。つまりは複数形。
そんなうごめく物体の正体は大量の、数えれば総勢25匹と言うメタモンの群れである。
しかも全員性格が違っており、全ての性格が揃っているのだ。
おまけに中には数匹ほど高固体値も紛れている。

「よく、こんなに捕まえましたね」
≪だって楽だし楽しいし。あ、ちなみに私がこの子達産むのに重宝した子ばっかだから!(親指グッ)≫
「・・・・・・・・・」
『ほんまどす。うちもほろうはんもレムはんも、他にもようけお世話になった子がおります』
「へ、へぇ・・・」
『ししゃもはんたはしか、とろろはんからどしたか・・・』
『あー・・・だったかな?とろろ自身もたしか世話になってたんじゃ』
「・・・・・・」

孵化談義ですっかり盛り上がっているジョウト組みにレイはもう何も言えなかった。
とりあえず画面向こうにいるひめへとお礼を言うのは忘れない。

『レイ、いったい何匹先輩から貰う気なんですか!』
「いやだって、困ってるって行ったら送ってくれたし」
『だー!もう!!』

ダリアの心の平穏は、果たして訪れるのだろうか。



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またきっと彼は怒る

そう思っていたら、彼は予想通り怒っていた。
そんなことをぼんやり考えながらレイは現状を見つめてみる。

『この子達はどこの子ですかどうしてまた増えてるんです!?』
『おー、この子美人さんだなぁ』
『は、はずかし・・・』
『・・・・・・』
『なんじゃ、ひめはどこに行きおったんじゃ』
『ここ、どこ?』

一気に賑やかになった光景に、レイは苦笑する。
そんな彼にダリアが詰め寄る。

『レイ、どうして知らない子達が増えているのですか!しかも強い!』
「あー・・・姫さんから、そっちの地方で育ててやってくれって」
『マスター、マスター』
「ん?」
『かわい子ちゃんが泣いてる』
「え、ちょ」
『ひめはん、うちらはもう要らへんのどすか…』

レイたちから少し離れた場所で泣いているゼツ曰く「かわい子ちゃん」は、ホロホロと涙を流している。
かわい子ちゃんことユキメノコのゆきめは先程までは普通であったのにどうしたのか。

「ゆきめちゃん」
『ひめはん、ひめはん・・・』
『ゆき。すまない、レイ殿。ゆきはマスターが大好きだったゆえ』
「いや、それはいいんだけど」

レイが声をかけるもゆきめは聞こえていないのか尚も涙を零し、どうしたらいいのかと困っていたレイを見かねたバシャーモ(ししゃもという名前らしい)が声をかけてきた。
ししゃもはゆきめの頭を撫でながらレイへと説明をしてくれる。

「ゆきめちゃん、別に姫さんは君を捨てたわけじゃないよ」
『わかっています。けれどやはり悲しいのどす。もう、ひめはんと会うことがでけへんのでしょう・・・?』
「んー・・・」

判っているが納得ができないのだろう。
とうとう顔を覆って泣き出してしまったゆきめにどうするかとレイは頭をかく。

と、不意に通信が入る。

「はい?」
≪やっほー、レイ君!≫
「姫さん」
『ひめはん!』

いったいどうやって通信をつなげたのか、映し出された画面にはジョウト地方のチャンピオン、そして今回この地に送られてきたポケモンたちの元マスターであるひめが映っていた。
どうやったのだと呆れ顔のレイが名を呼ぶと、それを聞きつけたのか泣いていたゆきめが勢い良く画面を覗き込んできた。

≪あー、やっぱゆきちゃんはないてたか≫
『ひめはんひめはん、どうしてどうしてこのような場所にうちらを送ったさかいすか』
『それはわしも気になるのぅ』
『気にならないといえば嘘になるが・・・』
≪はは、まぁたしかにちゃんと説明しなかったからねぇ≫
『笑い事じゃおまへん!うちは、うちは・・・』
≪ん、ごめんね。だからほら、もうなかないで≫
『だったら最初から泣かせるようなことをするな』
≪う゛・・・≫
「姫さん、説明いいんですか」
≪ああ、そうだった。あのね、あなたたちをそっちに送ったのは---…≫

レイの言葉になんだかんだと話し込んでいたひめは漸く説明を始め、彼女の手持ちだった彼らはそれを静かに聴いていた。

≪て、ことです≫
『うちらが、彼のお手伝いしたらええのどすね?』
≪そうそう≫
『ったく、それならそうと最初に一言言っておけ』
≪あ、ちなみに後で二軍が行く予定です≫
『無視!?』
『彼らも来るの?』
≪うん≫
『・・・・・・』
≪それじゃ、そろそろ切るよ。あんまり長く通信できなくってさ≫
『そうか』
『しかし、姫と離れるのはやっぱ寂しいな』
≪なにも絶対会えなくなるわけじゃないよ。こうやって通信できるし≫
『そうだな』
≪しっかりレイ君に可愛がってもらいなよ。あと、苛められたらいいなさい≫
『・・・・・・』
「・・・・・・」

それだけ言うと、ひめはぷつりと通信を切断したようで。
いままで彼女を映し出していた画面はブラックアウトした。

『レイはん』
「ん?」
『さき程はお恥ずかしいトコをお見せしました』
「オレは気にしてないけど」
『どうぞこれからよろしく頼んます』
「こちらこそ、まだまだ未熟なトレーナーですがよろしくお願いします」




異国のキミから

「あなたジムバッジ全部持ってるの!?」

突然大きな声を出した女性にレイはビクリと肩を震わせた。
今彼が居るのは14番道路にある研究所。
中に入ってみると女性が1人佇んでおり、トレーナーだと伝えるとカードを見せてくれと言われた。
言われたとおりに見せると目を見開いた女性が先程の言葉を放ったのだ。

「この子ならもしかすると・・・パーク博士!パーク博士ー!!キミ、ちょっと着いてきて」
「え、あ・・・はい?」

そういうと女性は階段を登り研究所の上部へと上がっていく。
レイもそれについていくと、着いた先には1人の男性研究員。

「パーク博士、この子凄いの!全ジムバッジを持っているのよ!この子ならきっとアレを起動させることが出来るわ!」
「・・・アレって何だろ?」
『さぁ・・・』

レイとダリアが首を傾げていると女性の声を聞いた研究員がこちらを振り向き、興奮したように何かを言っている。
その様にレイは一歩後ずさる。

「(このノリ、即視感が・・・)」

誰だったか・・・とレイが考えている間も研究員の言葉は続き。

「ゥワッフーーーーー!」
「ひっ!?」
「なんて素晴らしい日だ!グレイト!信じられない!」
「博士博士、この子怖がってますよ」

突然の叫び声とクルクル回る姿にレイは完全に腰が引けている。
そんなレイの姿にダリアが警戒するように尾を動かし主を囲う。
それを見た女性が博士を落ち着かせるように口を開いた。

「ああ、すまない。つい興奮してしまってね。ぼくはアンドリュー・パーク博士!きみ!えーと・・・」
「レイ、です」
「レイ君か!きみ、歴史を動かす大実験に参加しないかね?!」
「大実験?」
『怪しいですよ、レイ』

研究員の言葉に首をかしげていると、まだ警戒しているのかダリアが言う。
ダリアの声が聞こえていない研究員は当然ながらそれに構わず説明を始めた。

「ここの装置はポケシフターと言ってエネルギーパーティクルをイヴォークしつつDSという・・・モレキュールの・・・2つ・・・ジャンクションし・・・遠くに居るポケモンと・・・」
「???」
『何を言っているのかさっぱり・・・。やぱりこいつ怪しいですよ』

男の説明は何を言って言うのかさっぱりで、レイの頭上にはクエスチョンマークが大量に飛んでいる。
ダリアも余計警戒しだしているようだ。

「つまりね、この装置を使えばポケモンを別の地方から連れてこられるかもしれないの。ただし、ポケモンたちが持っている道具はダメね!」
「そうなんだ・・・すごい、ね」
『・・・・・・』
「安全に連れてくるためには手ぶらが一番なのよ」
「というわけでユー!ファンタスティックトレーナー!世紀の大実験に付き合ってくれないか!」
「え・・・と」
『ほっといて行きましょう、レイ』
「でも、楽しそうだし・・・」
『俺も面白いと思うけどなー』
『ゼツ!』

レイは興味を惹かれているようでYESと言いたそうだ。
そんなレイにダメだと言うダリアの声に、ゼツがボールの中から声をかけた。

『でも、もしレイに何かあったらどうするのです』
『お前がいるし俺たちもいる、だから大丈夫だろ?』
『それでも』
『最近ダリアはとんとお母さんになったわねぇ』
『ココ!』

ダリアとゼツが言い合っていると、横合いからココも口を挟んでくる。
ココを混ぜた彼らの言い合いはしばらく続きそうで、レイはこの隙にと男へYESと伝えていた。

◆◇◆◇◆

「グレイト!グ、グーレイト!ファーンターースティーーック!!」
「っ!」
『ん?』
『なに?』

ダリアたちが口論していると突然男の大きな声が響いた。
その後にレイの小さな驚く声。
ダリアたちは何事かと一旦口論を止め彼らのほうを見やった。

「君のポケシフター捌きはほんっとうに刺激的だ!おほぉっ!ポケシフターがいよいよ完成に近づいているぞ!もうまたすぐ来てくれ!すかさず来てくれ!そして更に素晴らしいポケシフター捌きを我々に見せてくれっ!」
『あ、レイまさか勝手にやったんですか!?』
『おぅおぅ、マスターもやるねぇ』
『新しい仲間が増えたのね!』
『レイ、ダメだと言ったじゃないですか!』
「いや、でも楽しそうだったし、楽しかった・・・よ?」
『マスター、なぜそこで疑問系なんだ』

どうやらレイはダリアたちが口論している最中にポケシフターの実験をやったらしい。
それについてダリアは怒り、ゼツは感心、ココは仲間が増えることを喜んでいた。

「捕まえたポケモンはパソコンのボックスに入れておいたよ。やりたくなったらまた来てよね!」
「は、はい・・・」
『レーイー!』
『なんでダリアはそんな反対してるんだか・・・』
『それはダリア本人にしかわかりませんわ』

ダリアの叫びをよそにレイは嬉しそうで、他の仲間たちははてなを浮かべていたのだった。

また会う日まで

「私の目論見が!」

敗れたゲーチスが声を上げる。

「どういうことだ?このワタクシが、プラズマ団を作り上げた完全な男なんだそ!」
「この世界に完全な人間も生き物も居ない!」
「うるさい!私は世界を変える完全な支配者だ!」
「力で支配したとしても何も変わらない、結局最後は全て滅ぶんだ!」

ゲーチスの叫ぶ姿に負けずレイも叫ぶ。

「さて、Nよ・・・今もポケモンと人は分かれるべきだと考えるか?」
「・・・・・・ふはは!英雄になれぬワタクシが伝説のポケモンを手にする・・・そのためだけに用意したのがNだ!言ってみれば人の心を持たぬバケモノです。そんないびつで不完全な人間に話がつうじると思うのです」
「Nは不完全な人間じゃない。心を持たないバケモノなんかじゃない!」
「アデクさん、こいつの話を聞いてもメンドーなだけです。こいつにこそ心がないよ!」

レイの言葉を受けチェレンも言う。
人を、ポケモンを道具としてしか見れないゲーチスのほうこそバケモノだ。

「そうだな・・・本当に哀れなものよ。Nよ、色々思うことがあるだろう。だが、お前さんは決してゲーチスに操られ理想を追い求めたのではなく、自分の考えで動いたのだ!」

だからこそ伝説のポケモンと出会うことが出来たのだとアデクは言う。

「だが、ボクに英雄の資格はない」

それまで横を向き黙っていたNが正面を向いて言う。

「そうかあ?伝説のポケモンと共にこれからどうするか、それが大事だろうよ」
「判ったようなことを。今までお互い信じるもののため争っていた。だのに、なぜ!」
「Nよ・・・お互い理解しあえなくとも否定する理由にはならん。そもそも争った人間のどちらかだけが正しいのではないだろう?」

否定をするNにアデクは優しく諭す。
その姿は長年チャンピオンとしてやってきた、ポケモンと共に過ごしてきたものの姿。
その姿に、Nは泣きそうな顔をする。

アデクはそれだけを言うとチェレンと共にゲーチスを連行していく。

「・・・キミに、話したいことがある」
「ん?」

それを見送った後、Nがおもむろに話し始める。
こっち、と言ってNはレイを誘う。

「キミと初めてであったカラクサタウンでのことだ。キミのポケモンから聞こえてきた声がボクには衝撃だった。なぜならあのポケモンはキミの事を好きと言っていた・・・一緒に居たいと言っていたから」
「ふふ、当然だろ」
「・・・ボクには、理解できなかった。世界に人の事を好きなポケモンがいるだなんて。それまでそんなポケモンを僕は知らなかったから・・・」
「・・・うん」
「それからも旅を続けるほどに気持ちは揺らいでいった。心を通い合わせ助け合うポケモンと人ばかりだったから」
「互いに大切に思い一緒に痛いと望む姿の方が多いって、わかっただろ?」
「ああ・・・。だからこそ、自分が信じていたものが何か確かめるためキミと戦いたい、同じ英雄として向き合いたい、そう願った・・・」
「・・・・・・」
「ポケモンの事しか・・・いや、そのポケモンの事すら理解していなかったボクが・・・多くのポケモンと出会い仲間に囲まれていた君に敵うはずがなかった」

Nとレイは部屋の最奥へと歩いていく。
そしてNはゼクロムの突き破った壁の前に立ち、外を見やる。

「・・・さて、チャンピオンはこんなボクを許してくれたが、ボクがどうすべきかはボク自身が決めることさ」

そう言うと、Nはボールからゼクロムを出す。

「レイ!!」
「ん?」
「キミは夢があるといった。その夢・・・叶えろ!!素晴らしい夢を実現し、キミの真実となすんだ!」
「・・・ああ!」
「レイ!キミならできる!!・・・・・・それじゃ、サヨナラ!」




最終決戦

「しらたま、お疲れ様。ありがとう、君がいてくれなかったら勝つの大変だったね」
『なぁに、主のためさ。それに、我が半身のゼクロムのため』
「うん、そうだね」
「・・・これで僕の理想は終わる」

頑張ってくれたしらたまを撫でお礼を言う。
しらたまもまたそれに答えてくれた。
そんなレイとしらたまの様子を見て、Nは小さな声で言葉を零す。

「・・・・・・・・・・・・ボクとゼクロムが敗れた。キミの思い・・・真実・・・それがボクたちを上回ったか」

悔しそうな苦笑のような顔でNが言う。

「レシラムとゼクロム・・・2匹がそれぞれ異なる英雄を選んだ。こんなこともあるのか」
「・・・元々1匹のポケモンだったとは言え、今は個だ」
「そうだね・・・。同じ時代に2人の英雄。真実を求める者、理想を求める者、共に正しいというのか?わからない」
「今それを判る必要はないと思うけど?だって、人生まだまだこれからなんだしさ」
「異なる考えを否定するのではなく受け入れることで世界は化学変化を起こす。これこそが世界を変えるための数式だったのかな・・・」
「それが全てというわけではないけど、間違ってもいないよ。きっと」
「それでもワタクシと同じハルモニアの名前を持つ人間なのか?」

それきりふつりと黙り込んだNを見つめているレイの後ろから、ゲーチスの声が響いた。

「ふがいない息子め」
「!!」

ゲーチスの言葉にレイは驚きを表す。
まさか彼らが親子だったとは思いもしなかった。

「もともとワタクシがNに理想を追い求めさせ伝説のポケモンを現代に蘇らせたのは『ワタクシの』プラズマ団に権威をつけるため!恐れおののいた民衆を操るため!その点は良くやってくれました」
「・・・・・・」

ゲーチスはレイを通り過ぎてNへと近づく。

「だが、伝説のポケモンを従えたもの同士が信念をかけて闘い、自分が本物の英雄なのか確かめたいと・・・のたまった挙句ただのトレーナーに敗れるとは愚かにも程がある!」
「っ」
「ゲーチス!」

ゲーチスの言葉にNはヒュっと息を呑み、レイは怒りもあらわにゲーチスの名を呼ぶ。
しかしゲーチスの言葉は止まらない。

「つまるところ、ポケモンと育ったいびつな、不完全な人間が・・・。レイ!まさかアナタのようなトレーナーが伝説のポケモンに選ばれるとは完全に計算外でしたよ。ですがワタクシの目的は何も変わらない!揺るがない!ワタクシが世界を完全に支配するため!何も知らない人間の心を操るため!Nにはプラズマ団の王様でいてもらいます」
「んのっ!」
「だがその為に真実を知るアナタ・・・邪魔なものは排除しましょう」
「お前は自分の子供を道具としか見ていないのか!親としての心はないのか!?」
「親の心、そんなものワタクシが世界を支配するためには必要ないものですよ」
「どこまでも腐った奴だな・・・っ!」

ゲーチスの言葉にとうとうレイは怒りを抑えることもなく怒声を発する。
しかしレイの言葉ゲーチスは否定した。

「・・・・・・支配だって?プラズマ団の目的はポケモンを解放することじゃないの?」
「!」

レイの後ろから、今度は聞きなれた幼馴染の声がする。

「チェレン!」
「やぁ、レイ。待たせたね」
「あれはプラズマ団を作り上げるための方便ですよ」

チェレンの言葉にゲーチスは次々と真実を明かしていく。
ポケモンは便利な道具、解放してどうするというのか。
ポケモンを使うことで人間の可能性は広がる、だからこそ使えるのは自分だけでいいのだと。

「貴様、そんな下らぬ考えでおったか!」

その言葉を聞いたチェレンと共に追いついたアデクが唸る。

「なんとでも。さて、神と呼ばれようとしょせんはポケモン。そいつが認めたところでレイ!アナタなどおそるるに足らん。さあ、掛かってきなさい!ワタクシはあなたの絶望する顔が見たいのだ!」
「レイ!!」

ゲーチスが近づいてくる。
その後ろでNが焦ったように自分を呼ぶ声が聞こえる。

「誰が何をしようと!ワタクシを止めることはできない!!」
「・・・・・・」

チェレンたちが止める声を聞かず、デーチスと対峙したレイはボールを構えた。

伝説のキミ

『私は君と戦いたい。さぁ、私を仲間にしてみろ!』

咆哮と共に聞こえた声は、目覚めたレシラムの声であった。

「ゼツ、でんじは!」

レシラムの攻撃をかわし、ゼツはでんげきはを放つ。
これでレシラムの動きはだいぶ鈍くなるだろう。

「ゼツ、一度戻ってくれ。ひ助、頼む!」
『あいよ任せな!』

ゼツがでんげきはを浴びせたことを確認したレイは素早くポケモンを交代させる。
レシラムは炎タイプも持つポケモン、ひ助の波乗りで確実に体力を削っていく。

『うわぁ!!』
「ひ助!」
『マスター、俺を出せ!』
「頼む」

レシラムの一撃を受けたひ助は瀕死へと追い込まれ。
一度戻ったゼツがレイを守るように前へと飛び出す。

「ゼツ、もう少し体力を削ってくれ」
『りょーかい!』

レイの言葉を受け、ゼツは威力を調節しながらダメージを与えていく。
レシラムも度重なるダメージに相当体力を削られ、かなり弱っている。

「いけ、ダークボール!」

体力はギリギリ、時間は夜。
このボールなら確実にレシラムを捕まえられるはず。

レシラムを光で包み吸収したダークボールは数度揺れ、かちりと音を立てて動きを止める。

「つ、捕まえた…」
『レイ、お疲れ様』
「…うん」

レシラムの入ったボールを手に取り、手持ちたちを労う。

『主よ、私をこのまま手持ちに。ゼクロムが、待っている』

手にしたボールの中からレシラムが語りかける。
それに頷くと、レイはひ助にお疲れ様と言いレシラムのボールと入れ替えボックスに転送した。

「・・・・・・そうか。レシラムはキミの力を認め共に歩むことを決めたか」
「そうみたいだな」

Nはレイへと歩み寄る。

「さて・・・キミのポケモンが傷ついている。そんな相手に勝っても無意味だ」
「・・・・・・ありがと」

Nは言うとレイの手持ちを回復させてくれる。
その事にレイは素直に感謝の意を述べた。
ポケモンを回復させたNはすぐさまゼクロムの元へと戻り。

「ボクには未来が見える!絶対に勝つ!!」

声高らかに言い放つとバトルを仕掛けてきた。

「いくよ、しらたま」
『ああ』

レイもゼクロム(しらたまと名付けた)をボールからだし、バトルへと臨む。




真の悪

「王は伝説のドラゴンを従えチャンピオンに勝った。これでワタクシの、プラズマ団の野望がかなう!全ての人間が我らの言いなりだ!」

チャンピオンロードを抜け四天王を勝ち進み、レイはようやくチャンピオンの間へと辿り着く。
そこで見たのはNがチャンピオンを打ち負かした姿。
そしてリーグを覆い隠すようにして地下から出現したプラズマ団の、Nの城。
Nはレイへと追いかけて来いと言葉を残し城の中へと消えてゆく。

そして今、レイは城の最上階、Nがいるだろう部屋の前まで来ている。
部屋に入ろうとしたレイをゲーチスがとめ、冒頭の話をはじめる。

『レイ、やはり私はあの者が嫌いです』
『ソレは俺も思うぜ』

ゲーチスの話を聞き、ダリアをはじめとしたレイの手持ちたちが嫌悪感もあらわに言う。
レイ自身もゲーチスの話を聞き顔をしかめた。

この下の階で見たNに与えられた部屋。
他のプラズマ団から聞いたNの過去。
それらすべてを仕組んだのはこのゲーチスだった。

「(Nは、利用されていただけ…本当に悪いのは)」

本当に悪いのは、間違いなく今レイの目の前にいるこの男。

「(救わなきゃ。電波でどうしようもない奴だけど、このままにしておくわけにはいかないし)」
「さぁ、この奥へと進むがいい」
「言われなくても行くさ。見ていろ、勝つのはオレだよ」

そう、啖呵をきってレイは奥へと進む。




本末転倒

「なぁ、ダリア」
『はい?』
「積むのはいいけどさ、積むことに重きを置きすぎて攻撃する間もなく倒されるってどうよ」
『それは…』

対シャガ戦。
バトル開始早々積み始めたシャガのポケモンは龍の舞いを出すのはいいものの、その事に重きを置きすぎてダメージを与える事無くケンホロウ、せりに敗れた。
レベル差はほぼ同じだったが技の選択ミスによりシャガはあっけなく破れ。
レイは何事もなく8つめのバッジを手に入れた。

「これで後はポケモンリーグか…」
『アデクさん、無事だといいのですが』
「どうだろうな」

肩透かし

「お揃いのようですね。ですがここにはお探しのライトストーンはありませんよ」

古代の城の奥、ここに伝説のドラゴンの一体レシラムの眠る姿であるライトストーンがあるかもしれないと訪れたレイたち。
しかし先に来ていたプラズマ団たちはここを探したようで、ゲーチスにここには無いといわれた。

「(砂にまみれて砂に埋もれて埃っぽくなったのに…)」

アデクとゲーチスの会話を聞くとも無しに聞きながらレイは心の中で文句を言う。
おまけに城の中には回復してくれる人は居ないしダリアは瀕死になりかけるし、下っ端とも散々対戦させられたし。
苦労したというのにここには無いなど肩透かしもいいところだ。

「ところで」

ゲーチスはアデクとの会話は終わりとばかりに話題を変える。

「おめでとう、レイ!アナタは我らが王に選ばれました。あなたがこのままポケモンと共存する世界を望むなら伝説に記されたもう一匹のドラゴンポケモンを従え我らの王と戦いなさい」
「(なんか、コイツに呼び捨てされるの嫌だ)」

どんな状況下でもレイはレイであった。
そういえばと、レイはゲーチスの言葉を聞き流しながらリュウラセンの塔でNに言われたことを思い出す。

「ボクはこのゼクロムと共にチャンピオンを超える。ボクを止めたければもう一匹のドラゴン、レシラムを見つけることだ。ボクはキミが目指す世界の不確定要素になれるだろうか?待っているよ、レイ…」

そう言ってゼクロムに乗り飛び立った彼の姿を思い出す。
まったく、この世界において頂点に立ちたいというならなぜ自分をけしかけるのか。
彼の本心はなんとなく察しているが、ここまで引っ掻き回されればそう思いたくもなる。

レイが少し前のことを思い出しているうちにゲーチスの話は終わったようで。
彼はレイの脇を通り過ぎ城を後にした。




正義の1体

導きの間。

俺が今いるこの洞窟には伝説のポケモンの内の1体がいるのだと、人を信じることが出来ず人を遠ざけ長い年月を生きるポケモンがいるのだと、あのおじいさんは言った。
そしてそのポケモンはこの洞窟の、今いるフロアの最奥にいるのだと。
どうか今を生きる人とポケモンの生き様を、互いの絆を見せてやってくれと。
もう一度人を信じることを教えてやって欲しいと頼まれて、だからオレは今…。

「ゼツ、でんじは」
『おうよ!』

今、オレの目の前には伝説のポケモンの1体であるコバルオンが闘争心をむき出しに攻撃を仕掛けてきている。
オレはゼツを繰り出し彼のポケモンの足を止め、攻撃をかわしながらも確実にダメージを蓄積させていく。
コバルオンのレベルは思ったよりも高く、ゼツのレベルを僅かに凌ぐ。
幸いだったのは伝説のポケモンの脚力を持ってしてもゼツのスピードには敵わなかったことか。

「ゼツ、ニトロチャージだ!」

オレはゼツのスピードを上げつつもダメージを与え、素早い動きでコバルオンをかく乱させる。
まだだ、まだ早い。
ギリギリまでHPを削るんだ。

コバルオンが膝を折ったその瞬間。

「いけ!」

手にしたボールを投げ付けた。
それはコバルオンを光で包み込みボールの中へ吸収すると数度揺れ。

「っし、コバルオンゲット!」

かちりと音を鳴らしたボールはそのまま動くこともなく沈黙をもたらした。
オレはコバルオンを捕まえたことに感情を高ぶらせ、お疲れ様とゼツを撫でる。
ゼツも嬉しそうに頭を俺の肩へと擦り付けてきた。

「コバルオン、どうだ?もう、人とポケモンは争いばかりじゃないんだよ」
『レイたち人間も、俺たちポケモンも、共に生きてる。もうあの時とは違うんだぜ』

ボール越しにオレとゼツは語りかける。
伝説と呼ばれるコバルオンには、強い絆を持つ残り2匹がいるらしい。
きっと今頃はコバルオンを通じて他の2匹にも伝わっているだろう。

おじいさんは言う。
他の2匹もきっとオレの訪れを待っているだろうと。
だから彼らにも今の時代を教えてやってくれと。

だからオレは、いずれ出会うだろう2匹にもコイツと同じように、コイツと一緒に今の世界を見せてやろうと決意した。