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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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非力だがひ弱ではないと信じたい

「・・・・・・」
『これはまた』
「なんで人間大砲・・・」
『・・・大丈夫ですか?』
「・・・・・・」

ジムに入った瞬間見えたものに、レイはライモンシティでの記憶が蘇った。
あれはある意味で彼の黒歴史だ。

「と、とりあえず行ってみるか!」
『レイ、せめて大砲をちゃんと見て言いましょうか』

行こうと言うもののレイの視線は明後日。
大砲になるべく目を向けたくないのか顔までそっぽを向いている。

『私も一緒ですから、行きますよ』
「うぅぅ」

ダリアはそう言うと尻尾でレイを促す。

◆◇◆◇◆

「あ、レイ君やっときたのね」

ジムトレーナーから挑戦者が来たと連絡を受けたフウロは嬉しそうに言う。
さてさて、レイ君はどんな反応をしてくれるのやら。

「うおぁ!?…とと」
「うわわわ!」
「え、あれ次どっち?」
「ちょ、まっ…っで!!」
「うわああああ!?」
「ぎゃーー!!!」
「ぶつかるぶつか、っる!」
「・・・・・・・・・」

始めは軽快に着地する音が聞こえていたかと思うと途中から音が危なっかしくなり、それと共に悲鳴も大きくなっていって。
フウロのいる場所の左からガツンともベシャッっともつかないなんとも言えない音が響いたかと思うと、目の前に無言のレイが着地した。
その後にはダリアが続いている。

「だ、大丈夫…じゃないわね」
「鼻、打ちました…」

レイの片手はしっかりと鼻を押さえており、指の隙間から赤いものが見えている。
よほど痛かったのか涙目だし、額は赤くなっていた。

「えっと、威力が強すぎたみたいね…。ごめん」
「少し休憩入れてからでもいいですか」
「ええ、もちろんよ」

レイの言葉に頷くと、フウロは冷やす物を取りに行くため一旦その場を離れた。

「なんでイッシュのジムは変な内装が多いんだろう…」

レイの呟きを聞いたのは、側にいるダリアだけ。



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やっぱりキミは電波

「ボクの全身から溢れるトモダチへのLOVE!」
「・・・・・・・・・」
『えっと、あの…ちょっと…』
『マスター俺をボールに帰してええええええ!!』

電気石の洞窟、その出口が見える位置まで来て。
Nに勝負を挑まれ相手するのはいいのだが。

その一言でオレもダリアも、そしてバトルに出ていたゼツもドン引きしたのは言うまでもない。
ゼツ、悪いがもう少しだけ頑張ってくれ…。




心臓に悪い

拝啓、お母様。
オレはどうも変な人々に目を付けられやすいのかよく遭遇します。
今現在も後方を抜いた三面をダークトリニティという変な人達に囲まれています。

またもやそんな言葉が頭を過ぎったレイの視線に先には、無言で佇むダークトリニティ。
正面だけではなく左右からもヒシヒシと視線を感じます。

「・・・今度は何?」
「・・・・・・・・・来い」
「(またかおい!)」

またもや短くそう言った彼らに、レイは重要人物よろしくSPのごとく彼らに連れて行かれる。

「・・・この先に下りの階段がある。そこでプラズマ団がお前を待ち構えている」
「親切にどうも?」

彼らはどうやらレイを案内するために現れたらしく、案内は終わったとばかりに姿を消した。

「(入り口付近で遊びすぎて痺れでも切らしたか?)」

あー、回復とボール補充したい。

たしかにそれはそうだろう

「ハーイ!元気してるかしら?レイ!」
「アララギ博士、お久しぶりです。この通り元気ですよ」
『博士、おひさしぶりです』

ちょっと奥へ進むかとレイが歩みを進めたその時、後方から聞き知った声に呼び止められる。
振り向くとそこにはベルが居て、この浮いている鉱石は押すと移動するのだと教えてくれた。
そしてなんと、博士も来ているのだと教えてくれて。
ベルの更に後方から現れた人物、アララギ博士にレイは丁寧に挨拶し、ダリアも聞こえはしないが挨拶をしていた。

「相変わらずここはポケモン好みの電気をたっぷり帯びてるわねー!」
「電気に好みとかあるんだ…」

博士の言葉にレイは感心した風情で驚く。
その姿に博士はふふ、と笑うと浮いている石についての詳しい説明をしてくれた。

「私はね、パパに頼まれてギアルって歯車みたいなポケモンのことを調べているの」
「(パパ…)」
「私がポケモンの起源を調べているからって人使い荒いよね…」

まったく、と大人とは思えない子供っぽい仕草で憤慨する博士にレイは苦笑する。
憤慨した後に「好きだからいいけど!」と続けるところはなんとも博士らしい。

「そうだ!レイ、これを持って行きなさいな!」

そういって博士に幸せ卵を貰う。

「おお、これ欲しかったやつ!」
「あら、知ってたの。それ、ポケモンにもたせておくと貰える経験値がちょっぴり増えるのよね」

ま、頑張ってちょうだい!というと博士は器具を広げ調査の準備に取り掛かる。
ベルは今回博士のボディガードのようで、レイは2人に挨拶をすると洞窟の奥へと足を向けた。




どうせ絡まれるのだし

「あ、ここ面白い」
『わぁ』

踏んだ地面がバチバチと電撃を放つ。
その様子にレイは面白がり、ダリアは感嘆の声を零す。

「うぉ!?ビリビリする!」
『レイ、大丈夫?』
「うわー、髪の毛が!」
『静電気ですごいことになってるね(あ、ちょっと可愛い)』

気付いたら髪の毛が静電気で大変なことになっていた。
そんなトレーナーの姿を見たダリアは不覚にも可愛いと思ってしまいちょっと落ち込んだとかそうでないとか。

「ダリア、ここ何か浮いてる!」
『これ、水晶?』
「さぁ、どうなんだろ。どっちにしろ面白いよなぁ」

浮いている鉱石に触れてしげしげと眺め、ダリアと一緒に笑いあう。
この先に居るのであろうプラズマ団はひとまず置いておくとして、今は物珍しいこの洞窟を思う存分楽しもうと思う。




先ずは人権を守れ

「!?」
『レイ!』

電気石の洞窟に入り歩みを進めていると、見慣れてきた姿があった。
レイは嫌だなぁと思いつつも次の街へ行くには彼を通り過ぎなければならず、仕方なしに彼へと近づく。
その時だった。
見知らぬ人物2人がレイの前後に降り立つ。
どこからともなく現れたその人物たちはレイを前後から挟み込むと無言で見下ろしてきた。

「・・・・・・・・・」
「あ、あの・・・?」
「・・・・・・来い」
「へ?」

短くそれを言うと両脇を固め奥に居る彼、Nの前へと連れて行かれる。

「・・・・・・・・・」
「N様、連れてきました」
「・・・ありがとう」

Nのその言葉を聞き見知らぬ2人は現れた時と同様何の前触れもなく姿を消す。

「今の連中はダークトリニティ」
「ダーク…トリニティ?」
「そうだ。ゲーチスの集めたプラズマ団の連中だよ」

どう考えてもお前の仲間だろうとは口にしなかった。
どうせ言っても聞いてはいないだろうから。

「ちなみにこの洞窟の入り口にデンチュラの巣を用意したのも彼ららしいね」
「・・・・・・(やっぱりあれもあいつらか!)」

ヤーコンの言っていた不自然さとダークトリニティの姿になんとなくは察していたが。
またもやビンゴか。

「それにしても、この洞窟いいよね」
「何を言い出すんだキミは」
「だって、電気を表すのは数式。そしてポケモンとの繋がり。・・・・・・人が居なければボクの理想の場所だ」
「数式バカ・・・」
「酷いなぁ」

そういえば度々数式がどうのと言っていたなと思い出し呟いてみれば、その言葉を聞き取ったNは言いながらも笑っていた。

「さて、キミは選ばれた・・・・・・そう言うと、驚くかい?」
「・・・いや、少しは驚くけどそれほどでもないかな」
「ふうん・・・」

レイの回答にNはさもつまらないと言うように返す。

「キミたちの事をゲーチスに話した。するとダークトリニティを使いキミたちの事を調べたらしいよ」
「オレたちのプライバシーはどこへ行った」
「そんなのあってなきようなものじゃない?」
「ああ言えばこう言う…っ」

オレの突っこみに珍しくも反応したと思ったらこの切り返し。
不穏な思考が鎌首を擡げそうになった。
危ない危ない。

「まぁ、とにかく。この先でプラズマ団がキミを待ち構えている。キミがどれ程のトレーナーか試すそうだよ」

そう言うとNは洞窟の奥へと歩き去った。


それは越えられない壁

「散々好き勝手言ってくれたけど…ハッ!この状況を見てまだいえるか?」
「ぐぬぬぬ…!」
『レイ、悪人面です』

タイプの相性抜群、レベル差10以上と文句なし。
上げまくった手持ちのレベル差にヤーコンは一撃も与える事無く敗れ去った。




最初から予想はしていた

「なんであのへんてこマスク居るんだよ」

ポケモンを回復させた後向かったジムの前に、プラズマ団の幹部であるゲーチスがいた。
どうやらヤーコンの捕まえた仲間を連れ戻しに来たようだ。

「我々の仲間を引き取りに来ましたよ」
「いやいや、礼はいらんよ」
「(いったいなんの礼だよ!)」
「あんたのお仲間がポケモンを奪おうとしていたんでね」
「おや、誤解があるようで。ワタクシどもはポケモンを悪い人間たちから解放しただけですよ」

また何時もの言い分だとレイは嘆息する。
どうしてこう、彼らは人間を絶対悪と決め付けるのか。

「実はホドモエシティには興味がありましてね。他にも仲間がいるのですよ」
「戦わずして勝つ、か」

ゲーチスはヤーコンを脅し、仲間を返すように言う。
その言葉に街中で戦うわけにはいかないと、ヤーコンは悔しそうにしながらも捕らえていたプラズマ団を解放する。

「それではワタクシたちはこれで」
「・・・・・・」

レイたちはただただプラズマ団が去っていくのを見ていることしかできなかった。

それは当然

「なにやってんだあいつら」
「・・・・・・」

冷凍コンテナの奥で見つけたのは、寒さに震え固まるキモい集団、ではなくプラズマ団でした。
思わず2人とも回れ右したのは仕方ないと思います。

ではなくて、オレたち(主にチェレンではあるが)のためにさっさと倒してしまおうと思う。
だってさっきからチェレンのやつ寒さでガチガチ震えてるし、これ以上は絶対マズイ。
そもそもあの服装で入るなよとも思うが今それを指摘するのは酷だろう。

「さぁ、残すはお前だけだぞ賢者サマ?」
「っく、おのれ小僧どもが…っ」
「さっさと(チェレンのために)倒されて捕まれ」

オレだってさすがに寒くなってきた。
風邪ひく、これ以上ここにいたら風邪ひく。
チェレン絶対寝込むぞこれは。

とか思っていたのに、存外チェレンは丈夫なようで。
冷凍コンテナあら出た後はオレよりもぴんぴんしていました。

それが全てを台無しにしているんだよ

「・・・・・・それにしても」
「んー?」
「チャンピオンが言っていたトレーナーにとって強い以外に大事なことってあるのかい?」
「(・・・おや)」
「考えても、わかるわけないよね。メンドーだし、さっさと中を捜索しよう」

チェレンが零した言葉に、おや?と首を傾げる。
チャンピオンに会ってからの彼の言動にはどこか今までとは違う感じがする。
しばしそれがなんなのか考えて、レイは違和感に気付いた。

「ぁぁ…」
「どうした?」
「いや、なんでもない」

それは、彼の抱いていた思いが変化したから。
今まではただ単に強さだけを求めていた彼が、チャンピオンに会い話を聞くことで少しずつ変わってきているのだ。
これはいい変化になるだろう。
このまま変われと、レイは思う。
強さだけが全てではないとわかってほしい、どんな在り方があるのかを知ってほしい。
だから、早く変わってくれよとレイは心の中で呟いた。

しかし。

「なぁ、チェレン」
「なんだ」
「いくら良いことを言っていてもさ、コレはちょっとなぁ。絶対全てを台無しにしていると思うんだ」
「っ!」

コレ、といって腕にしがみ付くその体勢を指摘してやった。