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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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キミの苦手なもの

「なぁレイ、まさかとは思うが…プラズマ団の奴らここにはいない、よな?」
「他を探してもいなかったからな」
「・・・・・・」

彼らが今居るのは冷凍倉庫の前。
ヤーコンに煽られた後彼らは二手に分かれて逃げたプラズマ団を探していたのだが。
街中、その周辺を探しても見つかることはなく、最後に残ったのがココであった。

「・・・・・・寒いのは苦手なのに」
「そういえばそうだったな」

チェレンの呟きにレイは彼が苦手とすることを思い出した。
そう、彼は寒いのが酷く苦手なのだ。
冷凍倉庫を見る顔にはありありと『帰りたい』という様子が見て取れる。

「でも、調べないといけないんだよな…いやだなぁメンドーだな…」
「はいはい、嫌だ何だといってても奴らを見つけないことにはジム挑戦もできないんだからな?」
「うぅぅ…」

レイはそう宥めると「ほら行こう」とチェレンを促し中へと入っていった。



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選手交代

『あれ』
「ん?」

ポケモンセンターを出て6番道路へとやってきたレイたち。
するとダリアが急に声を上げる。

『レイ、ヨギは?』
「ああ…」

ダリアの言葉にレイは納得した様子で声を発する。
そしてよしよしと背伸びをしてダリアの頭を撫でた。

『(頭、下げた方がいいかな)』

そう思ってダリアが姿勢を低くしようとした瞬間。
レイが事も無げに爆弾を落とした。

「そろそろ捕まえたポケモンも多くなってきたしな。メンバー交代♪」
『え』
「だから、ヨギにはボックスで遊んでてもらおうかと」

ちなみに新しく入ったのはこの子な、といってレイがボールから出したのは。

『…ゴチム?』
「そ。ゴチムのフリージアだ」
『よろしくお願いします、ね』

フリージアと紹介されたゴチムは照れ屋なのか恥ずかしそうにしながら挨拶をする。
全体的にモノクロの、瞳は綺麗な空色をした彼女は小さくて可愛い。
ダリアが「この子絶対大きくなった私の替わりだ」と思ったのは彼だけの秘密だ。

「と、いうわけで。先ずはこの子を30にするから手伝ってくれよ」
『はいはい。フリージア、よろしく』
『はい』

そうして彼女のためのレベル上げが開始された。
余談だか、この間プラズマ団含めチェレンやヤーコンは放って置かれたのはある種当然であった。




成長

「ダリア」
『はい』
「大きくなったな」

レイはそう、感慨深げに言うと大きくなったパートナーを見上げた。
進化しジャノビーからジャローダへとなったダリアは今では背の高さも変わり、今まで見上げていたレイを見下ろす立場へと成っていた。

「完全に手足が退化したな」
『元々蛇ですから』
「それ、耳?」
『さぁ…』
「模様、綺麗だな」
『・・・・・・ありがとう』
「重さもすっかり…」
『・・・・・・』
「もう肩に乗せたり抱っこしたり出来ないなぁ」
『でも、以前よりレイを守れる』
「そうだな」

威厳の自信に満ちたダリアの言葉に、レイはふふ…と笑うと精一杯に背伸びしてその頭を撫でてやった。

それは責任転嫁と言うのです

「フン!お前らがカミツレの話していたトレーナーか」

拝啓、お母様。
橋を渡りきると幼馴染のチェレン君が変なおじ様に絡まれていました。
ちょっと怪しく感じたので避けようとしたら物の見事に巻き添えを喰ったのですが、どうしたらいいでしょうか。

そんな言葉が一瞬頭をよぎったレイである。
ジムリーダーだと名乗った男、ヤーコンに、なぜこうなるのだとレイは思った。

「歓迎なんかしないぞ」
「いえ、結構です」

続いて言われた言葉にレイはうっかり言ってしまった。
言ってしまってからまずったなと思っても後の祭りだったりする。
怒られるかなと思ったが、話はなんだか予想の斜め上を行っていた。

「跳ね橋を下ろしたせいで捕らえていたプラズマ団が街中に逃げてしまったからな!!」
「え、ちょっ、それ関係ないよね!?まったくオレたちと関係ないよね!?」
『逆恨み…』

そもそも逃げられたのはそっちの不手際じゃないか!と叫んでも誰もレイを責められないだろう。
そもそも降ろすように頼んだのはカミツレだし、実際に降ろしたのは今目の前にいるヤーコンだと思われる。
なのになぜ自分たちが悪いといわれるのか。
これは完全に…。

「「うわ、えげつねぇ『ないです』」」

レイとチェレン、ダリアが共に呟いてもこれまた責められる謂れはない。

「・・・・・・メンドーだな」
「!」

あのチェレンが、なんかとにかく澄ましてて保護者っぽいけどそんな事言わなさそうなチェレンが!
面倒って言ったよ!!
チェレンのそんな姿など滅多に拝めないゆえか、レイの驚きベクトルが違う方へと向いてしまった。

「端を降ろしてくれて感謝していますけど、それとは無関係ですよね?」
「何とでも言え」
「・・・・・・・・・」

直球!直球来たよ!
スパッと切り込んだチェレンの言葉は、ヤーコンによってバッサリと切り捨てられた。

「大事なのはお前たちが来た…そしてプラズマ団が街中に逃げていったということだ」
「(うわきたフラグ!めちゃくちゃ乱立してるよフラグ!)」

この瞬間、彼らが逃げられないことは確定した。

「自分でも強引だと思うがお前らもプラズマ団を探せ。凄腕のトレーナーなんだろ?」
「自覚してるんかよ!!」

最後にヤーコンは(主にチェレンを)煽って街中へと消えていった。

「そうだな…プラズマ団を見つけ出したらジムで挑戦を受けてやるぞ!」

と言い残して…。




羽ってそんな効果ありました?

「シュンパツ?テイコウ?」

なんだこりゃ、とレイは手に持った羽を見やる。
ホドモ橋(あの跳ね橋だ)を渡っている時に頭上から降ってきた羽だ。
どうも名前によって素早さや防御が上がるらしい。

「・・・・・・なぁダリア」
『はい』
「羽ってそんな効果あったっけ…?」
『ポケモンの羽なら、有り得るかと』
「あの水鳥の羽…?」
『状況的には、そうだと思いますが』
「・・・・・・」

じっと羽を見つめちょっと複雑になったのはここだけの秘密だ。




それは興奮

おおお!と、巨大な跳ね橋が下がる光景を見てレイとダリアが感嘆の声を上げる。
横にいたチェレンも少なからずその光景に驚いたのか、いくらか子供らしい表情をしていた。

「すっごいなー」
『そうですね』
「それじゃ私はテレビの仕事があるからここで帰るわね」
「はい、ありがとうございます」
「いいのよ」

カミツレは目をキラキラとさせるレイと僅かに表情を変えるだけのチェレンへと声をかける。
そして簡単に次のジムリーダーについて説明してくれた。
最後に頑張ってと言葉を残し、ライモンシティへと戻っていった。

「癖のあるおっさんかぁ…」
『怖くないと、いいです』

レイは教えられた情報を元にどんな人だろうと想像する。
ダリアは良い人だと嬉しいと尻尾をユラユラさせ答えた。

「レイ」
「ん?」

と、黙っていたチェレンが声をかける。

「ボクはトレーナーだ。強くなり勝利することでボクの正しさを証明するよ。チャンピオンに対しても…」
「………」
『どうしてそこまで勝利に拘るのでしょうか』
「だよなぁ。もうちょっと気楽に旅すればいいのに」

言うだけ言って先に跳ね橋の向こうへと行ってしまったチェレンに、レイとダリアは呟いた。

それぞれの答え

「トレーナーとしての目的はチャンピオンですけど」
「うむ!目的を持って旅することは素晴らしいことだ。それで、チャンピオンになってどうするつもりかね?」

チェレンの言葉に燃えるような赤い髪を持った男性、チャンピオンと名乗ったアデクは鋭く突っ込む。
その言葉の意味を理解できてないないのか、チェレンは怪訝な表情を浮かべた。

「強さを求める、それ以外に何かあるのですか?一番強いトレーナー、それがチャンピオンですよね」
「ふむぅ、強くなるか…」

チェレンの当然と言う言葉にアデクは顎えと手をかけ考え込む。

「それだけが目的でいいのかね?」

本当にそれだけでいいのかと、彼は言う。
そしてアデクはなお続ける。

「わしは色んな人たちにポケモンを好きになってもらう、そのことも大事だと考えるようになってな」

そして「彼女たちと遊んでみるといい」といって側にいた園児を呼び寄せる。
アデクの呼びかけに寄ってきた園児となぜかバトルすることになり、2人はボールを構えた。

◆◇◆◇◆

「お前たち!勝てなかったがいい勝負だったな!それにポケモンも嬉しそうだしなぁ」
「(そりゃチェレンのポケモン瀕死にさせたんだから上出来だろ)」

豪快に笑い園児の頭を撫でるアデクの言葉に、レイはそっと心の中で突っ込む。
先のバトル、例のポケモンは無傷でチェレンは先鋒となったレパルダスは瀕死へと追い込まれた。
実質戦闘ではレイのポケモンの独壇場であったが…。

「さて、若者よ。キミのように強さを求めるものがいれば彼らのようにポケモンと一緒にいるだけで満足するものもいる。色んな人がいるのだ、答えもいろいろある。キミとわしの考えるチャンピオン像が違っていてもそういうものだと思ってくれい!」
「さ、行きましょ。ホドモエの跳ね橋はもう直ぐよ」

アデクの話が終わると共にいたカミツレは2人を促し先へと進む。
そんな彼女の後を着いていきながら、チェレンは納得のいかない顔をしていた。

「強いのがチャンピオン!それ以外の答えはないよ」
「それだけじゃ、ないと思うけど…」

レイはその姿を見ながらポツリと呟いた。

最近の移動方

「おー、早い早い!」
『すごいですね』
『まだまだ早く走れるぜ!』
「これ以上早いとオレが振り落とされる」
『同感です』
『・・・・・・・・・』

道路を駆け抜けるのは静電気を発する立派な鬣(たてがみ)を靡かせたゼブライカ。
その背には彼のトレーナーであるレイが乗っており、彼の腕の中にはダリアが納まっていた。
風を切って走るゼブライカ、ゼツに乗ったレイはご機嫌だ。
つい先程進化したばかりのゼツはレイのPT内でもエースを務め、幾たびの危険を退けてきた。
そんなゼツがようやく進化したのだから喜びもひとしおである。

「ちまっこくて可愛かったのがカッコよくなったよなぁ」
『もっと頼り甲斐でたか?』
「でたでた」
『♪』

レイの言葉が嬉しかったのか、ゼツの走るスピードが上がる。
それに慌てたのはレイだ。

「うわわ、ちょっ!ゼツスピード落とせって!」

レイはそう言うがしかしゼツはスピードを落とす気はないようで。
ぎゃー!ダリアがー!!と言う悲鳴が聞こえてようやくゼツはスピードを緩めたらしい。




苦手なものは仕方ない

「ぎゃー!!」

ジム内に響く絶叫。
今回のジムはなんと内装がジェットコースターであった。

「うーん、見事な絶叫ね」
「いやー!!!」

ジムリーダーの声を掻き消すほどの絶叫。
それはどんどんこちらへと近づいている。

「そろそろかしら…」
「うおおおおお!?」

この悲鳴を最後に、声がふつりとやんだ。
少しして現れたレイにカミツレは声をかける。

「ようこそ。どうかしら、私のジムは。フラフラになったん…じゃ…って、大丈夫?」
「大丈夫じゃ、ないです」

レイとダリアはフラフラとした足取りで、魂がどこかに飛んでしまったかのようにユラユラとしている。
さすがにやりすぎたかとカミツレは心配になった。

「ちょっと、絶叫系が死ぬ程ダメだと知っただけ…です」
『も、もうダメです~』

ダリアはそれだけど言うとパタリと倒れ付した。
リーダー戦前から瀕死のダリアである。

結局あの後あまりにもフラフラとしていたのでカミツレが休憩を進め、バトルしたのは数十分後だった。




真なるは

「プラズマ団を探しているんだろう?」

ポケモンセンターでシャワーを借り砂を洗い落としたレイたちが街を見て回っているとテーマパークらしき場所に辿り着いた。
そしてそこには何度か出会っている帽子。
あ、と思った時にはこちらに気付いたのだろうその少年、Nに声をかけられていた。

「いや、別に探してるわけじゃ…」
「彼らなら遊園地の奥に逃げていったよ」
「お前も大概人の話しきかねぇなおい」
「着いてきたまえ」

何でオレの周囲には話を聞かない奴が多いんだと嘆いていたら、Nは着いてこいと言ってレイの手を引く。
急な動作だったためレイはその手を振り払うことも出来ず慌てて惹かれるがままにNの後を着いていった。

「・・・・・・居ないね」

辿り着いたのはパークの奥、観覧車の前だ。
Nは周囲を見渡しプラズマ団を探す。

「(おいちょっと待て、何でオレがプラズマ団探してるって思ったんだ…?)」

レイはきょろきょろと周囲を見渡すNの姿に眉間へとしわを寄せ見つめる。
Nはそんなレイの様子には気付いていないのか観覧車に乗って探そうと提案すると強引にレイを観覧車へと乗せた。

「ボクは観覧車が好きなんだ」
「へぇー…」

Nの言葉に対し不機嫌に返事する。
彼はその後も円運動や力学など数式について熱く語っている。

「(てか、何でこんなことに…)」
『・・・・・・』

明後日の方へと視線を向け決してNとは目が合わないように逸らせている。
そんなレイの膝の上にはリボンをつけた(ここに来る前にベルによってダンスへと引っ張っていかれた名残だ)ダリアが沈黙しつつもレイの顔を見上げていた。
ダリアにはNの件もあるので彼の前では喋らないようにと(余計な面倒ごとを避けるためだ)言い含めてある。

「最初に言っておくよ。ボクがプラズマ団の王だ」
「ほほぅ、それは凄いな…って、はぁ!?」

いきなりのカミングアウトに普通に返事し一瞬の思考停止。
次の瞬間、レイは大きな声で叫んでいた。

「ゲーチスに請われ、一緒にポケモンを救うんだ」
「・・・・・・(このシチュエーションってなんか危険な気もするなぁ)」
「この世界にどれ程のポケモンがいるのだろうか…」

ポツリと呟いたNはその後一言も発する事無く。
それにつられてかレイも沈黙したまま。
観覧車はゆっくりと地上へ近づいていた。

「N様!」
「ご無事ですか!」
「(うわ、本当に王かよ)」

地上に着き観覧車を降りると、どこからかプラズマ団がやってきた。
もう嫌だコイツ、と今すぐここから立ち去りたい。

「問題ない。ポケモンを救うために集まった人々も…僕が守るよ」
「(あ、嫌な展開来た)」
「ボクが戦う間にキミたちはこの場を離れたまえ」

要するに彼は、最初から彼らを逃がすつもりでレイを観覧車に乗せたのか。
しかし忠誠心が強かったのかNの身を案じ逃げなかったと。
あのまま逃げてくれてたら良かったのになーと今は別に戦う気分ではないレイは考える。

「……され、レイ。ボクの考え理解できるかい?」
「ちょっと待て、オレはお前に名を言った覚えはないぞ」

いよいよモンスターボールを構えバトルスタンバイしたNに、思わずレイは待ったをかける。
なんで名乗った覚えもないのにコイツは俺の名前を知っているんだ。

「そんなの当然だろう。前にメガネの子が君の事を呼んでいた。それにボクは王だからね」
「ああ…」

そういえばそうだった、と。
何度もプラズマ団を蹴散らしているのだ、報告に上がっていてもおかしくはない。

「というわけで、バトルしようか?」
「今日はもう戦う気なんてなかったのに…」

呟いたレイの声はしかし、すでにやる気になっていたNには届かなかった。