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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~Part 13~

さわさわと、風が葉を揺らす音。
それ以外は僅かな鼓動と囁くような小さな『声』だけ。
日も暮れかけ夕焼け独特の淡い橙色に染まった世界の中、今この場にいるのは己と、そして肩に乗る相棒。

「……遅いねぇ」

日中は金色に煌く髪を橙色に染め、レイナが呟く。
その視線の先には大きな果実のような物。

「もう生まれててもいいはずなんだけど…」

昼間、ようやく生まれるかと思ったのに。
あれから何の進展もなく時間は経ち、とうとう夕方になってしまった。

「まいったなぁ」

何が参ったって、明日も授業があるのだ。
精霊から知らせがあったから今日は授業を抜け出して来たというのに。
既にシュウや学園長に連絡は入れてあるができれば今日中に帰りたい。
レイナにとって学園で学ぶべきことはあらかた履修してあるとはいえ怠ける気はないらしく。
誕生を急かす気はないのだが気が逸ってしまうのだ。

「リュリューィ」
「ん、大丈夫…多分」

大丈夫か?と尋ねてくるちーの頭をなでて言葉をかける。
が、やはり心配と不安のない交ぜになった視線でもってソレを見上げていた。

「ほんと、どうしたんだろ」

翁に訊きに行くのがいいだろうかと思案し始めたとの時、件のそれに変化が現れた。
逸早く気づいたのはちーだ。

「リュリュ!」
「ん?」

口元に手を当て視線を下げていたレイナは、ちーの鳴き声に再び視線を上へと上げた。
するとそこには…。

「やっと始まった。」

先程までの淡い発光ではなく、明るい光を放つソレが目に入った。
そして先程よりも確かにはっきりと聞こえる鼓動と『声』。
それはもう生まれるという合図に他ならず。
レイナが浮かべる表情は先程とは打って変わり安心と喜色に彩られている。

「リュー」
「…っと」

光が収まるとそこにいたのは、黒い1匹の幼竜。
その幼竜は翼を広げちーとは反対の、空いている方の肩へと降り立つ。

「デュイ!」
「リューィ!」
「はぁ…」

ああもう、また賑やかなのが増えたな。
と、己の肩で騒々しく騒いでいる2匹に溜息。

「本格的に暗くなってきたから翁の所に急ぐよ」

いつの間にか肩から飛び立ち空中で戯れていた2匹に呼びかけ、彼女は翁の許へと足を向けた。



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Dramatic Record ~Part 12~

≪-≫

陽の光と、優しい風。
緑に囲まれたここは精霊たちが生まれ育ち、そして最も多く住まう土地、通称『精霊の里』。
そして今日、この里で新たな命が生まれようとしていた。

「ん、もうそろそろだね」
≪-≫

里のなか、一際大きな木の根元に座り込んでいたレイナは、光を受け淡く煌金色の髪を揺らし立ち上がる。
大樹を見上げ眩しそうに目を細めるが、その視線はひとつの場所へと定められそらされる様子はない。
そんな彼女の足元では小さな犬か大きな猫ほどの体躯をした真っ白の竜が、彼女と同じように頭上を見上げていた。

「リューィ」
「ふふ、どんな子が生まれるだろうね」

幼竜―――白九龍の「ちー」へと笑いかけながら、想像を膨らませる。
彼女たちが今いる場所、そこに植わっている大樹はただの大樹ではない。
世界で唯ひとつ、この場所にしかないもので、精霊たちが生まれおちる樹。
どういった原理で生まれてくるのかはわからないが、彼らはこの樹を『始まりの樹』と呼びとても大切にしている。

「今回の子は、強い力を持ってる。」
「リュリュ!」

見上げた先には淡く発光する大きな果実の様なもの。
あそこに、今正に生まれようとしている精霊の赤ちゃんがいるのだ。
先程からずっと、小さく囁く様な『声』が聞こえてくるのは、その赤ちゃんの声。
それを見つめる眼差しは母親のように優しく、ずっと見守っている。

「生まれたら名前を考えないとねぇ」
「リュキュ!」
「獣か、鳥か、他にも色々姿があるからなぁ」


早く生まれておいで、みんな楽しみに待ってるからさ…




Dramatic Record ~Part 11~

「ん、……ぁ」
「…っ」
「ふぅ…っく、あぁっ」
「こう、か?」
「ふぁっ!?」
「いい声」
「うる、っさい…///ぁ、そこ……んんん!」
「黙ってなよ」
「ぁあっ…っもちぃい///」
「それは、よかった」
「・・・・・・・・・」
「ふ、ぁ…んん、んぅ…」
「これはどうかな」
「あくぅ…///」


「お前ら生徒会室で何してんだよ!?」
「何って、マッサージ」
「紛らわしいから!特にレイナ!!」
「ふぁ?」




Dramatic Record ~Part 10~

「リュー?」
「ピィ!」
「リュィ!リュー、リュリュ!」
「グルル…」
「リュキュ!」
「ピィピィ!」
「・・・・・・」
「あんたたちねぇ…」

うららかな午後、本日学校は休み。
そんなこともあってか少女―――レイナは白九龍を連れて久方ぶりに故郷の里を訪れていた。
この里には多くの精霊が住まい、また、多くの精霊が生まれる場所でもある。
里の周りは多くの緑に囲まれ、外敵を防ぐかのように緑の迷路となっているため実に平和だ。
そんな里への帰郷第一に寄ったのは、みなが長と呼ぶ古(いにしえ)よりの精霊の許。
……なのだが。
長へ挨拶する前にちょうどその場に居た精霊たちに捉まってしまった。

「リューィ?」
「先に翁へ挨拶させてもらっていいかな…」
「ピィ!」
「あとで構ってあげるから、ね。」

頭を撫でてやり、正面を向く。

「翁、久しぶり。帰郷早々騒がしくしてしまってすまん」
≪まぁ、しかたのないことよ≫

その場に響く、通常とは違う響くような『声』。
その声は彼女の目の前に構えるモノから発せられたのだろう。

「翁は変わりないようで、安心した」
≪なぁに、変わりあればすぐに騒ぎになろう≫
「それもそうだ」

翁―――その姿は巨大な亀。
里の奥に置くその身は人の身の丈を軽く超える巨体。
そして歳を感じさせるその声は、古より生きている証であろう。
翁は生まれて幾星霜、この地で他の精霊の誕生を見守ってきた存在。

「最近、他の子たちはどう?学園に居る子達は元気にしているのだけど」
≪みな実に元気よ。毎日騒々しくしておる≫
「そう」

ならいいわ、と呟いたところで、挨拶が済んだと思ったのか再び精霊たちが集まってきた。

「ああ、ゴメン翁。表で遊んでくるよ」
≪そうしておやり。みなお前が来るのを楽しみにしていたからね≫

それじゃ、ちょっと行ってくる。
そう言い置いて、精霊の子達を連れ表へと出て行った。




Dramatic Record ~Part 9~

「ちー」

夕暮れに染まる木々の中、1人の少女の声が響く。
その少女は夕日を受け淡い橙色に染まる髪を揺らして何かを探している様子。

「リュィ!」

少女の声のあとに響いたのは可愛らしい動物の鳴き声。
そんな所にいたの?と声のした方を向き目的のものを見つけた少女―――レイナは、鳴き声を発した生き物に「おいで」と手招きをする。

「いい子ね」
「キュー」

呼ばれて少女の許まで来たのは大きな猫か小さな犬ほどの体躯の生き物。
夕日に染まり橙色に見えるが元は白いだろう身体に青藤色の瞳、背には大きな翼を供えた幼竜だ。

「ちー、今日はどうだった?」
「リューィ」
「そっか、翁にねぇ…」

肩に乗せた幼竜の言葉がわかるのだろう。
幼竜の頭を撫で今日のことを話す。

「翁にも一度会いに行かないといけないね」
「リュリュ!」

さ、行こうか。
そう言うと、彼女は幼竜を肩に乗せたまま寮搭へと姿を消した。




Dramatic Record ~Part 8~

「いいか、この言葉は『言葉』というよりは『音』に近い」

朝の日差しが射し込む勉学塔内の一室。
机に教科書を広げまじめに聞いている者もいれば、眠そうにしている者や寝てしまっている者もいる。
そんな彼らに「ちゃんと聞いておかないと泣くのはお前らだぞ」と茶化す、深海を写したかのような蒼い瞳とそれより薄い色の瞳の青年―――コウリュウは、再び授業の続きを開始した。

「俺たちが『古代語』と呼んでいるこの言葉は元は古き精霊たちが使っていたものだとされている」

授業の内容を説明しつつ、彼は生徒たちの間を通り、寝ている者や寝そうになっている者たちの肩を叩いては起こす。
起こされた者たちは慌てて教科書を開くもまだ眠気が去っていないのか再び瞼が落ちそうになる者が大半だ。

「古代語は『音』で全てを表現する。」

音の一つ一つには魔力が宿り、それらの音を繋げることによって大きな力へと変わっていく。
それゆえに、きちんと理解し操ることで通常よりも強力な力を発揮することも可能となる。

「特に白魔術師、黒魔術師、言霊使いには大きな恩恵があるだろうな」

これらの職は魔法を発動するのに詠唱を必要とする。
そしてその詠唱を古代語で行うことにより、より強力な魔法を発動することができるのだ。

「せんせー」
「なんだ?」

相変わらず生徒の間を歩き説明していた彼に、生徒の一人が声をかける。

「音で表すのなら、どうして言葉なんですか?」
「んー、単純に言えばその音がそれぞれ意味を持ってるからかな」
「音一つ一つが意味を持っているから、言葉だと?」

生徒たちは疑問に思ったことを次々に質問していく。
それに答えつつ、ゆっくりと教卓へと戻る。

「そうだ。古代語は今の俺たちが使う言葉と根本は同じ」

古き精霊たちは会話するのにも使っていたとされているしな。

「まぁでも、『音』だから今の人間が理解するのは難しいだろう」

俺も正直大変だったし今も完全に扱えるわけじゃない。
そう言い、教科書を手に取る。

「それじゃ、とりあえず覚えるのは後にしてどうやって今の言葉になったのかをするか」
「あ、結局覚えるんですか」
「ん、簡単なものだけな」

さすがに本格的にやると今期の授業丸々潰れる。

「さ、教科書の…」

言いかけた時、丁度終業の鐘が鳴った。
今日はこれで終わりだ、と教科書を閉じる。

「次の授業は今日の続きだからな」
「はーい」



 


Dramatic Record ~Part 7~

≪―――≫

勉学塔にある中庭、太陽の日差しを優しく遮る大樹の下に20人前後の男女が集まっている。
そしてその中心には深海を写したかのような藍の髪とそれより薄い藍色の瞳の男性―――語学教師を務めるコウリュウが、肩に鳥を乗せて何かを話しかけていた。
肩に乗っている鳥は白い身体に翼の先がうっすらと赤みがかっており、大きさは大型の鳥類ほどだろうか。
優しい眼差しでコウリュウの言葉に耳を傾けている。

「と、まぁ大体こんな感じだな」

肩に乗せた鳥との会話が終わったのか、彼は生徒の方を向き人の言葉を喋る。
先程彼が使っていた言葉は精霊と会話するための言葉だ。

「精霊によって言葉は違うから把握するのは大変だが、ある程度覚えてしまえば応用は利く」

この世界には彼ら人間の他に魔物と、そして精霊がいる。
人間と魔物の使う言葉は大体一緒だが精霊たちは別の言語を使っている為に言葉が通じない場合があるのだ。
この語学の授業はそういった言語を学ぶ授業でもある。

「セフィー、ありがとう。もういいぞ」

セフィー、そう呼ばれたのはコウリュウの方に乗っている鳥の事だ。
コウリュウは召還術師ではないのだがなぜか懐かれているため時々授業の手伝いをしてもらっている。
お礼を言い優しく頭を撫でてやると、セフィーはピィと鳴いて彼の肩から飛び立っていった。

「今みんなに見せたのは精霊の間でも基本的な言葉だ。」

これからしっかり教えてやるから興味のある奴はちゃーんと覚えろよ。

「あ、ちなみに簡単な言葉だが小テストに出すから覚悟しろ」

と、爆弾投下。
その言葉に生徒たちからはいっせいにブーイングが飛んできた。




Dramatic Record ~Part 6~

「んー、今日は何を話そうか」
「せんせー、ちゃんと授業してくださいよー」
「あははー、いつも行き当たりばったりでごめんね☆」

うららかな午後の日差しがさし込むここは、勉学塔の一角にある教室。
室内には所狭しと本棚が設置されており、これまた所狭しと大量に収納された本。
しかし本棚に収まらなかったのだろう、本棚の上や床に雑多と本が積まれている。
そしてそんな室内には約30前後の机と椅子があり、生徒たちが座っている。
机の上には一冊の本とペンケースが置いてあるのだが…使われそうな気配は残念ながらない。
そして彼ら生徒の視線の先には大人らしからぬ仕草を見せる1人の男性教師―――高い位置で一つに結った濃紫の髪とそれより薄い色の瞳、一見すれば女性にも見える彼、コウヤは朗らかに笑う。

「それじゃぁねー、今日は精霊の歴史でもしようかー」

大まかなことは前に話したと思うから詳しいことを順にするねー、と間延びした口調で告げる。

「えー、それって教科書に載ってるんですか?」
「載ってないんじゃないかなー」

あくまでこの教科書は人間の歴史だからね。
言いつつ後ろの本棚と向き合うと一冊の本を抜き出す。
その本はどうやら精霊についてのことが書かれているらしい。

「じゃ、どうやって人間との関わりを持ったのかから行くかー」
「ちょ、普通ここは誕生からじゃないですかね!?」

さっき順を追ってって言ってたじゃないですか!
と、生徒から抗議の声。
しかし当のコウヤは、あははは、と笑っているだけで。
本当に行き当たりばったりと言うか、計画性皆無と言うか。
まぁ、彼はいつもこんな調子なので生徒たちみんな諦めかけているのだが。

「むぅ…それじゃ精霊の誕生から行くねー」
「ははは……」

結局この日の歴史の授業は精霊の誕生の歴史からとなった。




Dramatic Record ~番外 2~

●内容
性転換ネタ。

ネタがご光臨なさったので…。
試験中の光景です。
本編でするか悩んだんですけどねぇ。
さすがに野郎の嬉声というか叫び声というか、ちょっと、遠慮、したいです…。

結構、楽しんで書いたことだけは言っておきます。
だって絶対こうなりそうだし?(笑