忍者ブログ

刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。


Dramatic Record ~Part 32~

「それではこれより学園長からご挨拶いただきます」

進行役の声が、多くの生徒で埋め尽くされた講堂内に響き渡った。
ここエリアル学園では本日入学式が行われている。
今年入ってきた新入生と生徒会役員、式の手伝いに教師たち。
集まった人々の視線を一身に受けるのは先程紹介された学園長。

「みんな、我がエリアル学園への入学おめでとう。君たちはこれから『力』に関することや一般的な知識、教養、様々なことを学ぶことになる。大変なことが多いだろうしそれと同じくらいに楽しいこともあるはずだ。何事も諦めず最後までやり遂げ、素敵な学園生活を送ってほしい」

そう言うと話は終わったと壇上を後にする。
それを確認すると、進行役は式を進めていく。

「では次に現生徒会長から学園生活での注意事項などを話してもらいます」

進行役の言葉が終わり壇上へ現れたのは金色に輝く髪と空を切り取ったかのような瞳を持つ少女。
彼女こそがエリアル学園の生徒会長にして最強の名を冠する者、レイナだ。

「あー…」

壇上に上がり声を発してから数瞬。
新入生の視線を一身に浴びる中、彼女は酷く面倒そうにのたまった。

「学園生活は自力で覚えろ。以上」
「ちょっと待てええぇぇぇぇ!!」

それにすかさず反応したのは当然と言うか、副生徒会長のシュウだ。
レイナのあまりの言葉に慌てて壇上まで来た彼は、マイクを奪うとちゃんとした説明をし始めた。

「――・・・以上だ。それ以外の質問は明日あるオリエンテーションで訊くといい」

一通りの説明が終わるとそういい残し、彼はレイナを連れて壇上を降りた。

「これで入学式は終わります。この後は寮で昼食の後、授業に関する説明がありますので1時になりましたら各寮の広間にお集まりください」

こうして今年の入学式は終了した。



PR

Dramatic Record ~Part 31~

「シュウ様ーw」
「うぉ!?」

ガバッ!と音が聞こえそうな勢いでシュウへと飛びついたのは一人の少女。
淡い桃色の長い髪を緩く巻き、深緑の瞳を覗かせるこの少女の名はエミリア・ローズ。
生徒会役員の一人で書記を勤める彼女は、見た目はとても大人しそうに見えるのを大きく裏切りとてもおてんばな子だ。
好意を寄せるシュウに対し色々やっているのだが、如何せん彼にはレイナが居る為その努力空しく報われる事はない。

「エーミーリーアー…。毎回毎回飛びつくなって言ってるだろ!それから仕事はどうした!?」
「ふふ、怒った顔も素敵ですわー」
「っく…!!」

話を聞いちゃいねぇ!!と心の中で叫び、悔しそうに歪む顔。
恋する乙女には相手の怒りも何のその。
エイミリアはすっかり自分の世界に入り込んでしまっているようだ。
余談だが、エミリアの座っていた机の上にはまだ書類が残っていたりする。

「エミリア嬢」

なんとかエミリアを離そうと奮闘するシュウと離れまいとするエミリア。
そんな二人の横から冷たい声音で声が掛けられた。

ギギギ、と油の切れた機械のような動きで(音は出ていないが)酷くゆっくりと顔を向けた先に居たのは、絶対零度の笑みを貼り付けたレイナ。
触れれば切れるか火傷をするか、万人が怖いと言うだろうどす黒い魔力を静かに、しかし大量に流し出している。
その背後に般若が見えるのは幻覚だ、そうに違いないと思いたい。
名を呼ばれたのはエミリアだけだったが先ず間違いなく絶対に彼女の怒りの矛先に自分も入っているだろうと悟ってしまったシュウは(判りたくなどなかったさ!)冷や汗が大量に背を伝うのを感じた。

「エミリア嬢」
「は、はいいぃぃぃ!!」

再度、あの笑みと共に名を呼ばれたエミリアは勢い良く返事する。

「まだ、仕事が残っているようだけど?早く片付けなさいな」
「りょーかいしました!!」

言われたエミリアは(あまりの恐怖に)すぐさまシュウから離れ、己の席へと戻っていく。

「シュウ」
「………はい」

怖いなぁ、いったい何言う気なんだと思いつつ、ここで返事をしなければどうなるか判らない為少し戸惑った後応(いら)えを返した。

「一段落して休憩するんでしょ。早くしないと時間がなくなるわよ」
「へ?それだけ??」
「なに。仕事増やそうか?」
「エンリョネガイマス」

ニッコリ一言。
思わず片言になったのは仕方ないだろう。

「それじゃちょっと休憩してくる!」
「えぇ」

そういい残してシュウは部屋を後にした。




Dramatic Record ~Part 30~

結局あの後死ぬ気で作業し、書類の山を半分にまで減らしてみせた。(他の役員にもやらせたので最後はほぼ屍と成り果てていたが。)
そうして昼食も摂らずに(シュウが家でと言ったので食べなかった。)やって来たのは広大な敷地を持つ屋敷の門前。
片や満面の笑み、片や疲労困憊の顔の二人は躊躇う事無く屋敷の門を潜って行った。

「相変わらず綺麗に咲いてるわね」

二人の歩く道の左右には綺麗に咲き誇る花たち。
幾種類もの季節の花たちが互いの姿を損ねる事の無いように配置されている様は屋敷の持ち主のセンスの良さを窺わせる。
その景色を横目で見やりつつ歩き進んだ二人の目前には立派な玄関扉。
広く取られたその扉は、よく見れば細やかな意匠が施されている。
シュウはその扉へと手をかけ、ゆっくりと押し開いた。

「いらっしゃい」

と、聞こえてきたのは女性の声。
向けた視線の先、踊り場から2階へと行くための階段の中頃に一人の女性が立っていた。

「母様」

呼んだのはシュウだ。
トントンと小さく足音を立てて階段を下りてきた女性に近づく。
“母”と呼ばれた女性---淡い輝きを放つ白金の髪と菫色の瞳を持った女性は、「お帰りなさい」と言いながら近づいてきた息子を抱きしめた。
シュウの顔は母方の遺伝が強いのだろう、よく似た顔は共に微笑み合っている。

「レイナちゃんも、いらっしゃい。お正月以来かしら?」
「お久しぶりです、奥様。しばらく色々ありましたから正月以来、ですね」

満足したのだろう、息子から離れた女性は扉からいくらか中へ入った場所で立ち止まっていたレイナに声をかける。
それに丁寧に返してシュウ同様抱きしめあう。

「さぁ、二人とも。昼食の用意はしてありますから食べましょうか」
「うん」
「はい」

女性の言葉にそれぞれ返事を返して、三人は連れたって屋敷の奥へと消えていく。


◆◇◆◇◆


「そう言えば父様は?」

中庭に面したテラスに用意された昼食。
暖かい日差しの中で食事をしていた時、思い出したようにシュウが声を上げた。
「それなのだけど」と、彼の母は前置きをして夫が不在のわけを話す。

「少しトラブルが起きて帰るのが遅くなるらしいの。そんなに遅くはならないと思うから大丈夫よ」
「そっか」

「二人と居る時間が減ると嘆いていたわ」と食後のお茶を一口。
容易に想像できてしまうその光景を思い浮かべ、シュウとレイナは苦笑を漏らした。

その後シュウの父であり屋敷の主でもある彼の人が帰ってきたのは夕方。
明日は生徒会の仕事に追われると言った二人は簡単に挨拶と報告諸々を済ませて学園へと帰っていった。




Dramatic Record ~Part 29~

「いらっしゃい」

広く大きな扉を開けた先で出迎えたのは、優しい風貌の女性だった。


◆◇◆◇◆


レイナの故郷から帰ってきて数日、久々とも言える生徒会の仕事をしていた彼女にシュウが突然言い放った。

「レイナ、午後から俺の家な」
「……………は?」

たっぷり5秒。
あまりにも突然の出来事に、作業していたその手を読めてフリーズ。
バサバサと派手な音を立てて手に持っていた紙の束を床にばら撒いた。

「わんもあぷりーず」

おっといけない。
突然のことに驚きすぎて言葉がひらがなに。

「うん、だからね。今日の午後、この後から俺の家行くから」
「あのさ、書類のタワーが見えないのかな?」

会話を繰り広げる二人の目の前には山積みになった書類たち。
それらで作られた書類の山に数は…はっきり言って数えたくは無い。
ただでさえこの時期は忙しくなるというのにここ2日程私用で生徒会長が居なかったこの場所は書いて字の如し、忙殺されそうなほどに忙しい。(おまけに内1日は副生徒会長まで不在であった。)
そんな中、これ以上自分たちが仕事を放棄するわけにはいかない。

「……今の状況わかってて言ってる?」
「うん!」

あらまぁなんて素敵な笑顔なのでしょう。
うっかり殺意が沸いても仕方ない、仕方ない。
って、そんなこと考えてる場合じゃなくて!

「っの、わかってるなら仕事しろ!!」

怒声一発。
止まってしまっていた仕事を再開させるべくペンを手に取る。(床に散らばっていた書類たちは他の役員が既に拾ってくれている。)

「や、でもさ。親に言ったら連れてこいって。それに父様は今日の午後を逃したらしばらく休み取れないらしくてさぁ。だから…ダメ?」
「……・・・」

おずおずと、なおも食い下がる彼の顔と積まれた書類の山を見比べること数回。
ついでに時計の針も確認し、大きなため息を一つ。

「はぁー…」
「やっぱ、ダメか?」

今の時刻は午前9時ちょっと過ぎ。(ちなみにこの作業自体は午前6時からやり始めた。)
基本的には確認してサインをするだけなので死ぬ気でやれば半分くらいにまでは減らせるか。
そんなことをあれこれ考えつつも手はしっかりと動かし続け。

「昼までに、死ぬ気で半分終わらすわよ」

言った途端に不安げだった彼の表情は笑顔で輝き。
何だかんだで自分も彼に甘いのだと結論付けた。

その言葉に悲鳴を上げた役員たちが居たようだが、そこは知らぬ振りで今まで以上のスピードでもって書類を片付ける生徒会長と副生徒会長の姿があったとか。




Dramatic Record ~Part 28~

「見ての通り、ここには以前一つの集落があったわ。私の、両親の生まれた場所。今はもう廃墟だけど」

集落跡の中を歩き進めながら、懐かしむように目を細め先を見つめる。
どうして廃墟となったのか訊きたい気はしたが、なんとなく彼女の発する雰囲気からは訊き難くて。
代わりの様に別の質問を投げかけた。

「ところでさ、どうして今回俺を連れてくる気になったの?」
「あー…」

実は今回、何の説明もなしに行き成り着いてこいとだけ言って連れてこられたのだ。
数日ほど姿を見せず戻ってきたと思った途端にこれだ、彼女に訊きたい事は沢山あるがとりあえずはと、その理由を問うことにした。

「君の故郷の話は何度か聞いたけど…誰かを連れてくるのは初めてだよな」
「そうな。あれ以来、此処にはほとんど来なかったし…」

“あれ以来”というのがここが廃墟となった原因なのだろうが、ここで何があったのか知ることは出来ない。
こうして考えると自分は彼女のことに対して知らないことが多いのだと思い知らされる。
彼女自身語ろうとしないし、こちらから訊いても上手くはぐらかされてしまうのだが。

シュウが自身の思考に囚われていると、前を歩いていたレイナが急に立ち止まった。

「レイナ?」

どうしたのかといぶかしみながら声をかけた彼に顔を向け、彼女は言葉を発する。

「ここ、みんなのお墓なの」

そう言って前を向き直した彼女の視線に先には石を積んで作られた小さな山。
なんとなく、一族に何があったのかを察することが出来る。

「今日は、墓参りと報告を兼ねて…ね」
「報告?」

いったい何のだろうと首を傾げていると、レイナは「ふふ」と楽しげに笑い続きを言った。

「そ。古い約束を果たせたことを報告にね」
「約束…」
「それと--…」

次いで告げられた言葉に、今まで不思議そうにしていた顔を真っ赤にさせて硬直するシュウの姿があったとか。

---私に大切な人が出来たって言うお知らせよ。




Dramatic Record ~Part 27~

―チチチ…

鳥の囀る声のなかに紛れ、草の擦れる小さな音が聞こえる。
緑の茂る木々、零れる光に照らされ輝くのは金色の髪。
金髪碧眼を持つ少女は己が進む道をわかっているのか、道なき道を草を掻き分けひたすら突き進む。
そんな彼女の後ろを追うのは銀の髪に紫電の瞳の青年。
なんの苦も無く進む少女に比べ青年の方はというと、いささか息が上がっているようだ。
獣道を進む二人の他には鳥や小さな動物の気配しか感じられない。

「レイナ」

しばらく無言で歩いていると、青年が少女―レイナ―へと声をかけた。

「ん?」

それに対してレイナは返事を返すも視線は前を見たまま。
こちらを向く様子は無く、しかし意識はこちらに向けてくれているようだ。

「まだ着かない?」
「あら、もうバテたの」

まだなのかと問う彼にクスリと笑って茶化すように言ってやる。
それに軽く拗ねた様な顔をして「そうじゃないけど…」といった彼はなおも続ける。

「山の麓からこっち、結構歩いてるからさ。こんなに歩くんだったら直接飛んだ方が早かったんじゃないのかなって」

どうして山の麓から歩くのだと、己の疑問を口にした。

「あぁ…。この山一帯には座標を狂わす術がかかってるから直接飛べないのよ。私自身も面倒だと思うんだけど…解くことができないのよね」

ちなみにもうすぐ着くわよ、と続けながら教えてくれた。
そうだったのか、と、その事実に驚くと同意に確かに面倒だと同意する。
そんな事をつらつらと考えていたその時、不意にレイナが口を開く。

「着いた」

彼女の声に下げていた顔を前へと向けると、そこには一つの集落が収まるだろう程に拓けた空間があった。
いや、実際にそこには集落があったのだろう。
そこかしこに朽ち果てた木材の散乱した様子が見える。

「ようこそ、我が故郷へ」
「ここが…」

こちらへと向いたレイナは両腕を広げ、歓迎の言葉を口にする。
それを受けながら、シュウはゆっくりと周囲を見渡した。




Dramatic Record ~Part 26~

荒野の中、一角だけ緑の生い茂る場所がある。
鬱蒼と生い茂る木々の中心には古びた城が聳え立ち、異様な景色を作り出す。
しかし禍々しさは無く、そこに流れる空気は穏やか。

城の中心、丁度中庭に当たるだろう場所に突如青白い魔法陣が現れた。
そこから現れたのは3つの影。

「ん、ちゃんと着いたね」

1つの影、金色の髪を揺らし周囲の景色を確認するかのように動く蒼の瞳を持つ少女―――この世界において最強の名を冠する能力者でもある彼女―――レイナは、自分たちの今いる場所を確認し、目的地へ着いたことに一つ息を吐いた。

「ちーちゃん、くー。遊んでおいで」

残る2つの影―――白い体躯に碧の瞳の幼竜と、漆黒の体躯に紅の幼竜―――は、レイナの言葉を聞いてその場から飛び立った。

「さて、話をしようか」

おそらく周囲の森で遊ぶのだろう、2匹の姿を見送った彼女は、視線を逸らさず誰かへと語りかけるように話し出す。
彼女の後ろにはいつ来たのか、髪も瞳も服までもが漆黒の、闇を纏ったかのような男性が1人。

「見つけることが出来たかい?」

穏やかな笑みを湛え彼―――全ての闇の親であり主である魔王―――クロスが問う。

「ええ、古すぎて大変だったけど」

肩を竦めて、答える。

「それじゃぁ、聞こうか」

相変わらず彼は笑みを湛えたまま。
瞳に写る色も、とても優しい。

≪---≫

レイナが口を開き、音のような“名”を紡ぐ。
彼の瞳のように優しい音色で。
それをクロスはただ静かに聴く。

「クロス」

あの子が、自身の名を呼ぶ。
今度は、本当の名ではなくて。

「その真名を、」

あぁ、ようやく終わるのだと。
古(いにしえ)の時に交わされた約束が。
我知らず、心が歓喜に満たされる。

「支配する」

そして彼女は言いきった。



 


Dramatic Record ~Part 25~

「見つけた」

そっと呟いた言葉が、静寂(しじま)を壊す。
彼女は閉じていた瞼を開き、その身を沈めていたソファーから立ち上がった。
周りを見渡せば見えるのは壁を覆い隠すほどの書棚。
あまり広くない部屋に置かれた書棚には溢れんばかりに(実際には溢れてしまっているのだが)本が詰め込まれ、更には床にまで本が積み重ねられている。
その様を見て、『あそことそっくりだよなぁ』と微笑をこぼす。

「はやく、行こうか」

視線を下ろした先には自身の相棒とも呼べる白い幼竜。
幼竜もまた判っているのか自身を見上げていた。

「ちー、おいで。くーも」

白い幼竜、ちーはその声と共に己の翼を広げるとレイナの肩へと降り立つ。
と同時に、黒竜(黒九龍のくーちゃんとレイナは呼んでいる)がどこからともなく姿を現しレイナの腕の中へと収まった。

「飛ぶよ?」
「リュィ!」
「デュィ!」

二匹が泣き声を上げるやいなや、一人と二匹の姿がその場から消えた。




Dramatic Record ~Part 24~

≪---≫

紡がれたのは、声無き“音”
誰も知らぬその音を言の葉に乗せ、彼の者を支配する。
それは約束であり、契約。
遥か昔に交わされたそれを、終わらせるのは自分。

彼の者は、『あぁ』と呟く。

約束は、ひとつのゲーム。
見つけられるか、見つけられないか。

見つけられたなら、終わらせよう。
見つけられぬなら、いただこう。

遥か昔、交わされた約束は。
今ここに、終わりの時を告げる。

あの子が、見つけたから。

「クロス」

あの子が、自身の名を呼ぶ。
しかしそれは、本当の名ではなくて。

「その真名(まな)を、」

あぁ、と今度は心の中で呟いて。
ようやくなのだと、心が自然と歓喜する。

「支配する」

彼女は言いきった。




Dramatic Record ~Part 23~

「えー、ルリねぇ、そんなことしてたの?」
「まぁ、たまにはいいかなぁって」
「よくはありませんよ。コウリュウ様、泣いておられましたよ?」
「う゛……」

カチャ、と音を立てて置かれたのは淹れたての紅茶が湯気を立てるティーカップ。
彼女たちが今いるここは、学園内にある医務室のテラス。
なぜ医務室にそんなものがあるのかというと、此処がカウンセリング室も兼ねていたりするからだ。
生徒たちのためにとあらゆる環境を整えられているこの医務室は、学園に属するみんなの憩いの場ともなっている。
そんなこの場所でのんびりとお茶会を開いているのは、ここの医師である女性2人と、生徒である少年が1人。
少年、黒い髪を揺らし翡翠の瞳を細め笑うこの子の名はリュウ。
女性2人のやりとりにクスクスと笑い声を上げている。

「サヨねぇ、ルリねぇにそれはイミないよー」
「そうそう」
「ですが、リュウ。こういうことはちゃんと言っておかなければ。ルリ様も、あまり皆様を困らせることはしてはいけませんよ?」

毎度毎度なにかをしでかすルリに、無駄だとは判りつつも窘(たしな)める事を止めないサヨ。
何かをやらかすその度に生徒や他の教師から泣きつかれるコウリュウやレイナは半ば諦めているらしいが、元来生真面目な正確のサヨは諦められないらしい。
こうやっていつも窘めるのだが、その効果が現れることは今までも、そしてこれからもないだろう。

「実害がないからいいものの、心労を考えると相当だと思いますが…」

誰の、とはあえて言わないでおこう。

「んー、そこまで柔じゃないでしょー」
「でもでも、タイヘンなのにかわりないよね」
「いい加減悪戯から卒業なさればいいのに…」
「えー、でもさぁ、あの2人ってほんと反応楽しいんだもん」

だから止められないのよねー♪
などと言われれば、もうため息しか出ないわけで。
コウリュウとレイナの苦労が続くのは先ず間違いないだろう。