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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~番外 11~

●内容
番外10話の続き。
性転換ネタです。
レイ君はレイナちゃんと違って非常にらしいというか、躊躇いが無いです。
レイナちゃんも男らしいですが女らしさがどこか欠落していますがこっちはどこまでいっても男らしいです。
とりあえず、こっちの方が書いていて非常に楽しいのは間違いない。(←



 



Dramatic Record ~Part 64~

エリアル学園の正門、普段は人の出入が少ないそこはしかし、この日は違っていた。
花飾りで飾られているその門の上には『学園祭』と書かれた看板が取り付けられ、多くの人々がその下を行きかう。
看板のとおり学園祭の行われている今日は依頼も免除され、全生徒が思い思いに楽しんでいる。
友人同士、恋人同士、はたまた家族など、いくつものグループが見受けられる中、この学園で最も有名な4人組もまた学年やサークルなどの出し物を楽しんでいた。

「次はどれ行く?」
「んー、ここを通って実習場は?」
「少しお腹も空きましたし良いですわね」
「じゃ、それで決定だなー」

レイナの言葉にシュウがパンフレットを広げつつルートの進言をし、エミリアとファゼが賛成する。
次の行き先が決まった彼女たちは校内を通り途中で食べ物を買うと(本日食堂は休みだ)実習場へと出る。

「お、やってるやってる」
「ここは相変わらずの盛況ね」

実習場では室内では出来ない催しが行われているのだが、当然と言うか毎年このエリアでの催しはとても人気である。

「しっかし、何がいいんだろうな…」
「生徒や他のみなさんが楽しんでいるのなら問題は有りませんが」

催しの内容全てを把握している4人(許可は生徒会が行っている)は、全体を見回し首を傾げる。
先の体育祭でもそうだったが、この学園はくせ者が多いせいか世間一般の“祭り”とはかなり内容がかけ離れている節があるのだが。
首を傾げる4人もまた、そんな奇妙な催しに許可を出す辺り他の者と同類な事には気付いていなかった。


◆◇◆◇◆


「ああ、見つけた」
「ん?」
「誰ですの」

4人が出し物を巡っていると、見知らぬ青年に声をかけられた。
余談だが、この時レイナはなぜか出し物の店番をしてくれと連れて行かれ(同じ学科の生徒だったらしい)そんなレイナを追いかけてシュウも着いて行き、ファゼとエミリアの見ていた視界の先にて店番をしていた。

「君たちがファゼ君とエミリアちゃんだね」
「だから、誰ですの」
「知ってそうで知らない顔…」

声をかけてきた青年は肩辺りまである銀の髪を括り、紫の瞳を柔和に眇めた20台半ばの見た目だ。
その色彩と顔の造形に2人は即視感を覚え首を傾げる。
そこで見た顔だっただろうかと2人が思考の海に沈みかけていると、店番をしていたはずの2人の声が聞こえてきた。

「トキ兄?」
「なんで居るんだよ」

言いながら近づいてきた2人は怪訝そうな顔をしていて、トキ兄と呼ばれた青年はそんな2人の様子には気も留めず、嬉しそうな顔で持って手招きをしていた。

「あ」
「ああ!」

3人並び立ったその様に、ファゼとエミリアはようやく解ったと声を上げる。
そこかで見た、ではなくいつも見ている顔に似ているのだ。

「シュウの…」
「兄?」
「そ、シグレ兄さん。いつも放浪してるから会ったのは数年ぶりだけど」
「「・・・・・・」」

シュウの話を聞き、そんな家でいいのかと2人が心配になったのは言うまでもない。




Dramatic Record ~Part 63~

程よく出来た木陰の許、心地よいまどろみにたゆたう少女が1人。
そんな少女の頭の下には彼女の恋人である青年の足。
少女---レイナは恋人であるシュウの膝枕で午睡の中にいた。
もっとも、始めからこうであったわけではないのだが。


◆◇◆◇◆


さて、とシュウはレイナの長い金糸を優しく梳きつつ思考の海に沈む。
そもそもなぜこうなっているのか。
それは実に単純であり、どこにでもあるような理由であった。

少し前、彼は今自分の膝を借りて眠る少女を探していた。
というのも最近彼女の様子があまり良くなかったからだ。
レイナはこの時期になると眠りが極端に浅くなる。
眠りが浅いだけでなく夢にも魘される様で、彼と出会った当初からよく飛び起きていた。
それは彼と出会うよりも前に原因があるのは明らかで、もう随分と経つのに未だこうなってしまうほど彼女の中に根強く残っている。
そして流石の彼女も十分な睡眠を取れない状態が何日も続くと疲れが溜まるというもので。
この時期は出来るだけ視界の中に入れるようにしていたというのに、シュウが少し目を話した隙にどこかへと行ってしまったレイナを探し出したときには既に木陰の下でうつらうつらとしていた。
このままにしてはおけないとシュウが近寄り声をかけようとしたその時、レイナの体から力が抜け傾ぐ。
咄嗟にシュウは彼女の身を支え、隣に座ると自分の膝を枕にレイナを横たえさせたというわけだ。


◆◇◆◇◆


そして今現在、先程と変わらず膝にはレイナの頭。
眉間に少し皺が寄っているものの呼吸は穏やかだ。
その様子を見つつ自分も欠伸を一つ。
どうやら彼女の眠るさまを見ているうちに、自分にも睡魔が忍び寄ってきたらしい。

ここは一つ天気もいいことだし身を任せてみるか。

そう思うと行動は早い。

上半身を屈め、少し無理な体勢ではあるもののレイナの額に口付けを一つ。
どうか彼女の眠りが穏やかでありますように。夢に魘されることのないように。
そう願いつつ、自身もまた夢路へと旅立った。



~おまけ~

「ん…」

ゆっくりと、視界が開ける。
目を覚ましたレイナは寝起きによりぼっとした様子で周囲を見渡す。

「・・・・・・」

そして目に入ったのは、シュウの寝顔。
なぜ彼の寝顔が上にあるのか。

「・・・・・・いいか」

未だ傍にある睡魔に思考を放棄し、彼女もまた再度夢路へと旅立った。
お題No.22




Dramatic Record ~Part 62~

2日目の午後も様々な競技をこなし、いよいよ残すところあと1つ。
生徒たちのテンションも最高潮となっている。

『さぁ体育祭の競技も残すところ後1つです!内容はこれ、『勝っても負けても泣き言なしの騎馬戦』です!今までで一番まともにして最終競技に相応しい名です!!』
『ルールは地上実況のリクがしてやろう!内容はいたってシンプル、時間内により多くの鉢巻を取り、より多くの騎馬が残っていた学科の勝ちだ!エリアはそれぞれA・Bを一般生徒、C・Dを特殊能力持ちとに分けてやるぜ!』
『でないと一般生徒が怪我しますからね』
『あ、先に言っておくが式神使いと召喚術士は使役を召喚して騎手にするのは反則だぞー!競技中に相手に向かって使うのはOKだ!』
『が、レイナ会長はガーディアン自体が反則生命体なので全面禁止です』
「っち」
『ちょ、舌打ち!?会長舌打ちしちゃうの!?』

ガーディアン(現在動けるのは月影だけだ)を使う気満々だったのだろう。
先に釘を指されたレイナは大きく舌打ちをし、その様子に隣に居たシュウが苦笑していた。

『えー、気を取り直して。選手のみんなは同じ学科の選手と騎馬を組んでくれ!それが終わったらいよいよ開始だ!』

リクの言葉に選手たちは騎馬を組み始める。
レイナのところも彼女を筆頭にいくつかの騎馬が出来上がる。

「それじゃ、当初の作戦通りによろしく」
「おう」
「頑張れよー」

どうやら何か作戦があるようで、レイナたちはなにやら会話をしている。
学園どころか世界最強とそれに次ぐ能力者の居る学科なだけはあり、周囲はどうなるのかと冷や汗ものだったとか。

「それでは最終競技、開始!!」

騎馬を組み終わり点呼を取り、いよいよ準備が終了すると、それを確認した教師が言葉と共にホイッスルを鳴らす。
それと同時に各騎馬が一斉に動きだした。


◆◇◆◇◆


「かんぱーい!」

辺りは日が落ち暗くなり、生徒総出で片付けられたグラウンドには替わりと言うようにたくさんのバーベキューセットが出されている。
今は体育祭の打ち上げ真っ最中。
各々網を突き肉や野菜を食べている。(食材の提供は親や商人だ)
レイナたちも例に漏れず、いつもの4人組+レイナと中のよい教師たちで3つのバーベキューセットを占領していた。

「それにしても、未だに納得できませんわ」
「どれについて?」
「レイナとシュウについて以外で有りまして?」
「あぁ・・・」

そう、この2人は騎馬の上に乗っている生徒が地面に着かなければセーフというルールを利用して空中を移動したうえ、全く捕まらず大量の点を取ってくださった。
その間2人の騎手だった生徒や同じ学科の騎馬たちは必死に逃げ回っていた。

「だいたい、あの結界は何ですの!どうして宙に固定できますのよ!?シュウも、武器は使用禁止ですのに普通に使っていますし!!」

悔しい!とエミリアが吼える。
いささか可愛い顔が台無しになっているのはこの際置いておこう。

「あの結界は空間座標指定と結界術の応用なの。ちなみに私のオリジナル」
「今日使ったのは絶禍。あれは瞬禍の対で見た目は同じでも“糸”の種類が違うから殺傷能力はないし、魔力を通すことで強力な盾になる優れものだ」
「だからビャクヤ先生黙認していましたのね!?」
「そーいうこと」

苦笑しながら教えてくれたレイナとシュウに、どういった原理か判った周囲の生徒たちは驚いた。
エミリアだけは変わらず喰いかかっていたが。
しかし何よりこの2人がまだ手段を持っていたその事実に、生徒たちは呆れとも驚愕とも取れる感情を抱いたとか。


~おまけ~


「次ぎ焼けたぞ」
「いっただきー♪」
「あ、俺も」
「ちょ、ここにあった肉ほとんどなくなってるし!」
「いつの間に食べたんですの!?」
「「みんなが驚いてる間に」」
「ちょっとは遠慮というものを…っ!」
「あー、こいつらにそれを求めるのは難しいぞ」
「っ…っ!」




Dramatic Record ~Part 61~

『生徒の諸君集まっているか!?もうじき体育祭2日目が始まるぜ!午前の実況をするのはこの俺リクでっす!ちーは今日も頑張ってくれな!』

かわらずのテンションで言うリクに、ちーは雄々しく咆哮する。
それが合図とでも言うかのごとく彼らの眼下、実習場では2日目第一競技が開催された。


◆◇◆◇◆


『さて続いての競技は『綱引きに 命をかける 覚悟はあるか』だ!何故か七五調だしかも危ない匂い!?』

ちなみにタイトルの割りに内容は普通です、と続いた言葉に思わず身構えた選手一同は一気に脱力した。

『それじゃ綱引き始めちゃいましょう!』

その声に脱力していた生徒たちが一気に力を入れたのは見事だったと観客は語ったとか。
余談だが、綱引きは全学年入り乱れと言うこともあり中々に白熱した戦いとなった。


◆◇◆◇◆


『それではこれより昼食ターイム!俺も飯掻っ込んで午後から競技に参加です!それと30分後から応援合戦があるから参加者は忘れずにな!』

リクは言い終わるとちーを促し中庭の方(乗り降りは中庭でやっているらしい)へ飛翔していく。

「俺たち応援合戦だから行くな」
「おー、ガンバレー」
「別の学科相手にエール送ってもね…」
「むしろ余計なお世話だと思いますの」

放送を聴きながらいつもの4人組は軽口を叩き合う。
そろそろ行かないとマズイから、とレイナが言い、2人は校舎へと駆けて行った。

「さてと、俺たちも会場に結界張る準備しないと」
「毎年派手にやってくれますものね」

応援合戦に結界とはいったい何をどうしてそうなるのかと聞きたくなるが、ここではそれが当たり前だと返ってくるのだろうことは想像に難くなかった。


◆◇◆◇◆


『おおっと普通科これは良い!可愛らしく親しみやすい、普通ではあるがとてもアクティブ!今人気の音楽をテーマにしたチアガールたちがとてもとても可愛い良い応援です!』
『魔術科、水と炎と雷のコントラストが実に綺麗です!舞い踊る水、燃え盛る火、爆ぜる雷!キラキラと光り輝く様がなんとも美しい!』
『医術科これは嬉しいサプライズ!学科生渾身の大治癒魔法は確かな効果を齎しています!それぞれの魔力の色が合わさり虹色を作り出す様はなんとも幻想的、そしてあっというまに体力が回復してまいります!筋肉痛もしっかりばっちり治りますよ!?私どもの喉も絶好調です!!』

などなど、ソラリク兄弟は興奮したように各学科が練習に練習を重ねた(医術科だけはぶっつけ本番である)応援を実況していく。
どこの学科もそれぞれの特色を生かした見事な応援で、見ていた生徒と観客を楽しませた。

『さぁ、いよいよトリである総合科の応援です!』

ワッ!っと歓声が大きくなる。
それだけ総合科の応援を楽しみにしている者が多いのか、一気に会場のボルテージが上がっていく。

「今年はどう来るのかしら」
「さぁ・・・?」

エミリアとファゼも予想ができないらしく期待に満ちた眼差しを会場に向けていた。

と、それぞれ赤と桃色の東洋と思しき衣装を着た女子生徒が足音静かに会場中央へと駆けていく。
それと同時に反対側からは黒や紺の、女子生徒と同じ様に東洋と思しき衣装を着た男子生徒。
女子生徒の手には長く幅もそこそこにある布や煌びやかに装飾された扇、男子生徒の手には模造品だろう刀。
彼らは会場の中央へと着くと静止し、曲が流れるに合わせ静かに美しく、激しく力強く舞い始めた。
女子は演舞を、男子は演武を披露していく。
中でも一際目を惹くのは中央で舞う一組の男女、シュウとレイナだ。
2人は舞い全体を包むように煌く光球や、その光を受けてさらに輝く水、まるで花びらのように見える小さな炎をいくつも作り出す。
周囲の舞い手はそれらを上手くいなし操り、見事な光景を作り出していく。

総合科の舞が終わっても、しばし誰も言葉を紡ぐことができなかった。



 


Dramatic Record ~Part 60~

エリアル学園体育祭、それは優勝学科には素敵な特典があるとかで毎年熾烈な戦いがあるとかないとか。
とりあえず、突っ込んではいけない。
そんなこんなで毎年のごとく様々な手段を考えては実行し、捕まっては点を引かれるという裏舞台の話が存在していた。

「先生魔術科の生徒が怪我人に!」
「こらー!!」

救護エリアでは今年も医術科+教師VS不穏な行動を起こす生徒たちとの熾烈な戦いが起こっていた。
余談だが、医術科の生徒は総じて運動に対する体力がほとんどなく(医術に関しては凄まじいまでのスタミナを見せる)、体育祭には直接的な参加をしていない。
その代わり怪我人の面倒を一手に引き受けているので労を労う意味での特典があるらしい。

「捕まえたわよ!」
「ルリ先生お疲れ様です!」

生徒を捕まえるのは医術士にしては高い体力と見事な身体能力、そしてそれに伴う俊敏性を見せるルリの役目だ。
彼女は本日既に両手近くの生徒を捕まえていた。

「イツキちゃん、記録しておいて」
「はい」

こうして魔術科の減点は確定した。(減点数20点)


◆◇◆◇◆


『生徒教師見物のみなさん、会場ではこれから力比べが始まります!飛び入り参加も可能ですので気になる生徒は中央のエリアへお集まりを!!』

昼食時でもソラのテンションは変わらなかった。
ちなみにこの力比べ、米俵(10点)と大量の野菜の束(5点)を選び一定時間持ち上げるという内容だ。
米と野菜は商人からの善意で、点獲得をした生徒はそのままそれを貰える。
余った分は明日の打ち上げで使われるそうだ。
余談だが、力比べにちゃっかり参加していたレイナとシュウは、米俵のお持ち帰りを決定させた。


『生徒のみんなはお腹膨れたか!?トイレは行ったな!?午後の競技が始まるぜ!実況はこの俺、ソラの弟のリクだ!!』

午前のソラ&白九龍ペアに代わり大空を飛翔するのは、ソラの弟であるリクと黒く大きな身体の黒九龍(愛称をくーちゃん)だ。
リクは兄に負けず劣らずのテンションである。

『午後一番の競技はこれだ!『お手を繋いで二人三脚』!!ちなみにこれは体育委員の考えたタイトルのようです』

相変わらずふざけたタイトルだとみんなが思ったのは当然だろう。

「なんていうか、体育委員もはっちゃけたかったのね」
「でもはっちゃけすぎじゃ…」
「これはこれで面白いからいいと思う」
「よくないだろ」

半日飛び続けて今はぐっすり眠るちーを腕に抱いたレイナと、彼女を挟むようにして座った3人は苦笑している。
さすがに1日で何度も聞くふざけたタイトルは苦笑こそすれ始めのように驚くことはない。
回を重ねる毎にリュウオウの怒声も聞こえなくなってきた。(確認したところふざけたタイトルの半数はエンによるものだそうだ)

「あとの競技どれくらいある?」
「えっと今のがこれだからー…」

今日の分はあと少し。
明日もまだある体育祭に、明日も大変だと彼らは笑いあった。




Dramatic Record ~Part 59~

※前提
  ・色別対抗ではなく学科対抗。
  ・一般、能力者入り乱れ(一部例外有り)
  ・レイナとシュウは身体能力が高いためハンデとして重り着用。





バサリと翼をはためかせ、白く大きな竜が大空を舞う。
巨体の下、本日の会場となっている実習場には学園の生徒のほぼ全てが集まっており、場は熱狂的な空気が満たす。
その様子を白く大きな竜、白九龍のちーの背から見下ろしていた男はおもむろにマイクを手にし。

『今年もやって来ましたこの季節!本日快晴絶好の体育日和にございます!午前の実況は放送委員会のソラにございます!わたくし竜の背に乗るのは初めてでして普段高いテンションがますます上がっております!さぁさみなさん獅子奮迅の勢いで本日は頑張ってください!!』

と、調子よく声を張り上げた。
ソラの声はちーの手に持たされているスピーカーを通して地上の生徒たちへと伝わる。
彼の声に元々高かった生徒たちのテンションは更に上がっていく。

『ここで今一度体育祭の説明をさせていただきます』

地上に設置されたスピーカーから聞こえてきたのはエミリアの声。
上空のソラとは違い落ち着いた声で彼女は説明していく。

『我が学園の体育祭は2日に渡り開催されます。プログラムはお手元のプログラム表をご覧ください。
 会場のご案内は表にも掲載されていますが体育祭執行本部頭上に設置してありますパネルにもございます。
 簡単な説明ですがエリアAは1,2年生、エリアBは3,4年生、エリアCは5,6年生、エリアDは7,8年生となっております。
 また、青い囲みは執行本部、赤い囲みは救護班本部となっております。
 会場周辺は常に執行役員が巡回しておりますので何かありましたら声をおかけください』
『1日目第一競技がまもなく開催されます。参加者はただちに各エリア内へお集まりください。繰り返します---…』

一通りの説明を終えたエミリアが放送をきると、そのあとに参加者を促す放送が入る。
その放送を聞き第一競技参加者が会場内を移動し始め、こうして体育祭1日目が幕を開けた。


◆◇◆◇◆


いくつかの競技が終了し、太陽も真上へさしかかろうとしている。
実習場では変わらず生徒のテンションが高く、それは留まる所を知らないかのようにますます上がっていく。

『さて、次の競技はこれ!『借って仮って狩りまくて☆ドキドキ借り物競争』です!!』
『誰だこんなふざけたタイトル考えた奴!!?』

ソラが読み上げた次の競技のタイトルに、会場内から笑いが沸き起こる。
そんな笑い声に負けず劣らずの音量(マイク越しではあったがそれを差し引いたとしてもデカイ)で怒鳴ったのはリュウオウだ。
彼は執行本部の机に勢い良く片足を乗り上げマイク片手に激昂している。

『あ、それオレ♡』
『お前か!!』
『旦那が怒ったー♡』
『てめっ、待ちやがれ!!』
「・・・・・・・・・」

リュウオウの持つマイクを通してエンの声が聞こえる。
犯人(?)が判った途端、リュウオウは握っていたマイクを放り投げエンを追いかけ始めた。
毎度の事にエンも心得ており、リュウオウが動き出すのと同時に彼もまた走り出していた。
そんな2人の背に(既に遠くなっている)「先生マイクを投げないでください!」と生徒が言うが、最早彼らに届くことはないだろう。

『あー…と、エン先生とリュウオウ先生は追いかけっこ始めましたね。気を取り直して競技の説明をさせておらいまっす☆』

2人の遣り取りを上から見ていたソラが空笑いをしつつも気を取り直し競技の説明をする。
曰く、本競技は『狩人に仮装した選手がレーンを走り、途中で拾ったリストに載った借り物を持つ生徒を狩りして(捕まえて)一緒にゴールする』と言うものらしい。

『獲物(笑)となる生徒は善意による自由参加となっております!獲物となった生徒にも得点が入りますので1位になる自身のある方は同じ学科の生徒を上手く捕まえてくださいね☆』

ソラの最後の説明に獲物(笑)となる生徒が増えたとか。
盛り上がる会場の片隅では他とは違い微妙に低い、もとい冷静な様子を見せる4人組の姿。

「今年は競技内容が変わってるのは知っていたがこれは…」
「あ、私これ参加だ」
「俺も」
「あーうん。行ってらっしゃい」

大丈夫かなぁと思いつつ、シュウとエミリアはこれから参加するらしいレイナとファゼを送り出した。


~おまけ~


『おおっと、我らが生徒会長のレイナ選手強運なのかそうなのか!どうやら上手く同じ学科の生徒を狩ったようです!速い、流石ですその脚力!重りが付いているというのに誰も追いつくことができない!!そしてそのままレーンを爆走し一着ゴールだあああ!!引きずられた生徒さんお疲れ様です!』
「・・・・・・重りの意味、ありましたの?」
「まったくないな」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・増やすか」

エミリアの恨みがましい視線に、レイナの重りを増やすかと真剣に考えるシュウの姿があったとか。




Dramatic Record ~Part 58~

暦の上では秋の終わりである長月初旬。
涼しくなってきたとはいえ昼間はまだまだ暑さの抜けきらない日々に人々は汗を流しながらも楽しげに各々のするべき事をしている。
そんな光景を眺めつつ時計を確認するのは、ざんばらの、襟足の部分だけが長い紫の髪と、それより濃い色の瞳を持った青年---コウヤ。
黒のシャツに白いズボン、上着として薄手の淡い桃色をしたカーディガンと、首には薄い水色のスカーフを巻いている。その腰には蒼い色の珠(発動前の彼の武器、蒼月だ)が斜めに装着されたベルトに括りつけられていた。
彼は先程からしきりに頭上の時計(見事なレリーフのこれはこの町のシンボルのようなものだ)を確認しては誰かを待っている様子だ。

「遅い…なぁ」

そう呟いた時だ。
誰かが己の肩を叩く。

「悪い、出てくるのに手間取った」

片手を顔の前で拝むように掲げているその人物は、己の兄であるコウリュウ。
自身と同じ髪型の、しかし深い青色の髪と蒼穹の瞳。
黒の七分丈のシャツの上から緑青色のシャツを重ね、首には薄紫のスカーフ、下は黒のズボンを履き、腰にはコウヤと同様彼の未発動状態である紫色の珠---蘭月がベルトに括りつけられている。

「兄様ったら、予定の時間前には来たけど遅いんだもん」
「だから悪かったって。ほら、機嫌直せよ」
「むぅ…」

今日で21歳だというのにこの仕草…と、頬を膨らませ不機嫌だと表している弟に、兄は苦笑する。(同じ顔である分複雑だ)

「さぁ、行こうか。今日は俺とデートなんだろ?早くしないと時間悪なるぞ」
「ん…」

コウヤはコウリュウの言葉に頷くと、ごく自然な動作で兄の上に己の腕を絡め歩き出す。
それをされたコウリュウもまた、当たり前のように弟の腕を振り払うこともなく歩みに合わせていた。

本日9月3日はこの双子の誕生日。
そんなわけで今日の午前は2人でデートという名の買い物を、午後からは仲間内での祝いとなっている。


◆◇◆◇◆


「兄様、兄様。俺あれがいい!」

そう言ってコウヤが指差したのは、棚に飾られていたピアスの内の1つ。
彼らが今いるのは雑貨店の店内。
コウヤが見つけたピアスは銀に細工と宝石が嵌め込まれたもの。
その隣には宝石の色は違えと同じデザインのものが置かれている。
2人はそれぞれを手に取ると、揃ってレジへと向かった。


◆◇◆◇◆


少し遅いランチを取っている2人。

「あ、そろそろ帰る時間?」

おもむろに時計へと視線をやったコウヤが食事の手を止め呟いた。

「そうだな、これを食べたら帰るか」
「うん」

コウヤの呟きに同じく時計へと視線を向けたコウリュウがそう言うと、2人は少しだけ食事の手を早める。
食事を終えた2人は会計を終え店を後にした。
コレで今回のデートは終わり。
帰ったらサヨとルリを始めとしたみんながバースディパーティの準備を終えて待っていることだろう。
想像するだけで2人の顔には笑みが浮かんだ。

しっかりと手をつないだ2人の耳には、互いに付け合ったピアスが煌いていた。