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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~Part 39~

「面倒なことになってごめんなさい」

朝、顔を合わせて開口一番に言われたのは言い訳も誤魔化しもない謝罪だった。


◆◇◆◇◆


「えーっと、シュウが謝るって事はやっぱアレ?」
「…うん」
「うわー…」
「アレ、ですの…」

朝一番の授業を受けるため教室へ向かう生徒たち。
そんな生徒たちでごった返す廊下の端で会話を繰り広げているのは学園お馴染みの生徒会4人組、レイナ、シュウ、エミリア、ファゼだ。
彼らの言う『アレ』とは何なのか、廊下を行く生徒たちは聞き耳を立てる。

「で、あんたが謝るって事は上がらみ?」
「今度はどこですの」

大方検討の付いている聞き方のレイナと場所(?)を確認しようとするエミリアに、訊かれた彼はそっと視線を逸らした。

「先ず間違いなく上が絡んでるかなぁ…なんて。今回は多分、北の隣国だと…」
「そこ、前回もじゃなかった?」

気まずそうに答えた彼の言葉の中、聞き捨てならない単語を耳にしたファゼが問う。

「前回は私の所ですわ。北は前々回ですわね」
「北ってやり方せこいからねぇ」

問いに答えたのはエミリアとレイナだった。
『北って!?隣国って!?てかエミリア嬢が絡んでたって何!!?』と、4人の会話を聞いていた生徒たちの心が一つになった瞬間だった。
余談だが、この時既に授業は開始されており、話を聞いていた生徒(+一部の教師)が見事遅刻した事をここに記しておこう。

「あ、もしかして…」

と、ここで話を聞いていた一部の生徒から声が上がる。
その一部の生徒たちはみな一様に経験があるのか渋い顔をしていた。

「お前ら『アレ』が何か知ってんのか!?」
「教えろ!」

何も知らない、判らない生徒たちがそんな彼らに詰め寄る。
必死な顔は正直ちょっと怖い。

「アレって言えば、アレよ。ねぇ?」
「ああ、アレしかないな」
「だから『アレ』って何!?」

事情を知ってる奴らだけで納得するな!と叫ぶ声。
引っ切り無しにうんうんと頷いていた彼らは、その叫びに漸く口を開く。

「アレってのは、王族や貴族の子供は避けて通ることの出来ない試練だ」

と1人の男子生徒が言う。
カッコよく言っているがそれはつまり…。

「お家騒動ってやつよー」
「そろそろ、あいつ等も婚約や見合いの話がくる年齢だしなぁ…」

『ああ、やっぱりですか…』と漸く事情が判った他の人たちも遠い目になった。
ってか、あの4人組ってそんな身分だったのか…と。
この学園では基本的にファミリーネームは名乗らないので本人が言わない限りはなかなか知ることが出来ない。
それは教師にも言える事のようだ。

「シュウ様とエミリア様の時は大変だったそうですし…」
「北も厄介だとレイナ嬢が言っていましたね」

もしかしたらそこらの大人より世知辛いものを見ている4人組(+同類らしき生徒たち)。
少なくとも一般家庭の生徒たちより遥かに大変であろう。

「関係者以外は首を突っ込まない方がいいわよー」
「え?」

大変だなぁ、としみじみ思っていた彼らに、時には渦中に身を投じざるを得ない彼女たちからの忠告が。

「私たち、学園にいる間はその生活を満喫するための不文律が有るからいいんだけどー」
「無関係な、一般人の方たちに関しては身の保障が出来ないと申しますか」
「はっきり言ってそこまで手が回らないんだよなー」

それはつまり、一般人が下手に手を出して巻き込まれた場合どうなっても責任は負えないと。
改めて彼らへの認識を新たにすると同時に、絶対に首を突っ込まないようにしようと決意した日であった。

学園の生徒や教師たちが『子女同盟』なるものを知ったのもこの日だったとか。



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Dramatic Record ~Part38~

広大な森の中、動物にしては異様な気配がいくつも存在している。
そんな森の入り口に突然魔法陣が現れ、いくつかの影が出現した。
魔法陣は影を出現させると何事も無かったかのように消え失せる。

「ここ、ね」
「数…は、50前後かな」

影---レイナとシュウはそれぞれ確認するかのように口を開く。

「依頼書もそれくらいの数ですわ」
「結構、バラけてるなぁ」

残りの影---エミリアが手元の依頼書を見て内容を確認していく。
その言葉に続くのは漆黒の髪と瞳に赤い半フレームの眼鏡をかけた青年。

「まぁ、ここで考えてても仕方ないし行こうか?」

3人を促すようにシュウが言う。

「あぁ、ちょっと待った」
「どうかした?」

シュウの言葉に森の中へ入ろうとしていた彼らを止めたのはレイナだ。
それにいぶかしんで問うた青年---ファゼにレイナは答える。

「ん、バラけてるから森に逃亡防止用の結界張って」
「ちょ、ここかなりの広さですのよ!?」
「あら、森の外に逃げられるよりはマシでしょう?」

さらりと無茶を言ったレイナにエミリアが抗議すると、彼女はコキリと首を傾けもっともなことを言う。
しかしそれでも内容はなかなかに無茶苦茶だ。

「レイナー」

と、2人が言い合いをしている横から声がかかった。
2人はそれにつられて声のした方を見やる。

「準備終わったけど。いつでも張れるよ」

そこには無茶をなんでもない事のようにやってのけようとしている人がいた。

「シュウ様、まさか…本当に張るおつもりで…?」
「え、ダメだった?」

驚き尋ねるエミリアにシュウは逆に驚いたように訊き返す。
本当になんでもない事のように言う彼に、エミリアとファゼは開いた口が塞がらない。

「そりゃ君の魔力も多いのは知ってるけど、いくらなんでもこの範囲は…っ!」
「そうですわ。すぐに倒れてしまいますわよ」

2人の言葉にクスリと笑い彼は大丈夫だと言う。

「絶禍」

言葉と共に、彼は左手を軽く振るう。
とたん、辺りに響いたのは「リィーン」と高く澄んだ音。
その音を発したのは彼の手中にあった鈴だった。

「それ、シュウ様の?」
「ああ」

エミリアが鈴を見ながら問う。

「攻撃用の瞬禍と、防御用の絶禍。それぞれ特化した能力を持ってるんだ」

見せるのは初めてだっけ、と手に持つ鈴とベルトに固定していた鈴を見せる。
初めて聞いたその話にエミリアとファゼは再び驚かされた。

「わたくし、その鈴はただの飾りだとばかり…」
「俺もだ…」

そういって、2つの鈴を凝視する。
視線の先、『絶禍』の方には確かに魔力が通っており、何か魔法を使っていることが見て取れた。
そんな2人の様子を見ていたレイナはクスリと笑うと「この話はまた後で」と言って意識を依頼へと向けさせる。

「さ、早く済ませてしまいましょう」
「そうですわね」
「わかった」

それぞれに返事をして、彼女たちは依頼完了の為森へと入っていくのであった。




Dramatic Record ~番外 7~

●内容
久々の性転換ネタ。
レイとシュウによるデートです。

さてさて、彼はどこからデート費用を出しているのか。
うーん…依頼報酬?それとも親の残した金か。
まぁ、その気になればいくらでも稼げるからなぁ。
シュウちゃんも、すげー持ってるんだぜ。

今度本編でもデーとやりたいよね。
Wと言わずトリプルとかさ。(←



 


Dramatic Record ~Part 37~

「それではみなさん、各自材料を用意して作業を開始してください」

サヨのその言葉に、生徒たちは材料を取るために席から立ち上がった。


◆◇◆◇◆


「えっと、この次はコレを刻んで入れて…」
「うわわ、なんでこんな色になるの!?」
「あ、お前これ入れ忘れてるじゃん」
「あーあ、失敗だね」

などなど、今現在教室の中は賑やかである。

ただ今の授業は薬学。
担当教員は保健医の1人であるサヨだ。

そんな本日の薬学は極一般的な解毒薬の調合。
教科書通りにすれば完成できるはずなのだが、先程から見るに生徒たちはある一定の工程から失敗しだしている。
勿論成功している者もいるのだが。
解毒薬は今回が初めてということもあり、上手く出来ないのだろうか?
先程からあちこちで失敗の声が聞こえる。

「……まだ、早かったでしょうか」

その光景を見ていたサヨがポツリと呟く。

いやしかしだ、今までに色々な調合をしてきたし何よりこの授業は多かれ少なかれ知識を持っている者たちばかりの筈。
いったいどうしたと言うのだろうか。
一人首を傾げるサヨと慌てふためく生徒たち。

結局授業はそのまま続き、実は棚に似たような薬草があった為に間違って違うものを使ってしまったと判ったのは後日だったとか。(間違って出来た薬はあろうことか毒薬になりました。)





Dramatic Record ~Part 36~

「またかよ…」

そう呟いた彼、コウリュウの言葉は、目の前で作業している彼女たちに届くことは無かった。


◆◇◆◇◆


本日の天気、快晴。
空には適度な雲しかなく、青い空が広がっている。
本日の気温、快適。
暑くもなく寒くもなく、優しい風が吹く今日はとても過ごしやすいだろう。

そんなわけで彼女は思い立った。
「そうだ、あの子達の手入れをしよう!」と。

思い立ったが即日の彼女、ルリは早速といわんばかりに同僚のサヨを伴いとある一室までやってきた。
そして扉を開け放つと机に向かい作業をしている人物へと近づく。

「コウリュウ、温室行くわよ!」
「はぁ!?」

作業をしていた人物、コウリュウへと声高らかに言うと腕を掴み立たせて引きずるように室内を後にする。
突然のことに驚き声を上げるが悲しきかな、フェミニストの嫌いがある彼は強く抵抗することも出来ずに連行されるのであった。

その後彼女たちが来た場所、それは数ある温室の中でもっとも危険な植物たちが育てられている第5温室だった。
この第5温室には貴重な毒草や『食』のつく植物たちが植わっているのだ、危険以外のなにものでもない。

温室へ到着した彼女たちはどこからとも無くエプロンや軍手、マスク(毒対策だ)などを取り出し装着する。
勿論それはコウリュウも有無を言わさず渡された。
そうして準備が終わるとこれまたいつ用意したのか肥料とスコップを持ち、近くの植物(間違いなく毒草である)に向かい合うと作業を始める。
(当然のことながらこの温室の責任者である彼女たちがここの植物たちに怯えるはずが無い)

「またかよ…」

そんな光景を横目で見つつ、コウリュウは溜息と共に呟いた。
こうして話は冒頭へと戻ることとなる。


◆◇◆◇◆

「サヨちゃん、ユニコーンとってー」
「はい。こちらには清水をいただきたいです」
「りょーかい」

作業を開始して1時間。
コウリュウの背後では彼女たち2人によるそんな会話が繰り広げられていた。(ユニコーンとは肥料の種類のことだったりする)
その会話をBGMに作業をしていたコウリュウがふと顔を上げる。
そのまま顔をぐるりと動かして周囲の様子を窺う。
何かを、感じ取ったのだ。

「……」

と、不意に何かが擦れる音が聞こえてきた。
その音はこちらへと近づいてきているようで、少しずつ大きくなっている。

「…まさか」

ちらりと、背後を振り返る。
すると目に入ったのは

「ゴッメーン、昨日からカイザー放してたんだった☆」
「ちょっとまてえええええ!!?」

てへ☆と舌を出し謝るルリとオロオロ慌てふためくサヨの姿。
そしてルリが言った『カイザー』という名前。
この温室に存在するのだから先ず間違いなくそうなのだろう。

「うわー、俺ヤバイよな明日生きてるかなぁ」と考えていると、音が止んでいることに気が付いた。
と同時に感じる背後の気配。
それと共に匂うのはなんともいえない甘い匂い。

幾度もここへ来ている(と書いて連行されたと読む)彼には判ってしまった。
この匂いが食人植物たちの放つ獲物捕獲用の匂いだということに。

「…………」

ゆっくりゆっくり、振り返る。
途中から見える毒々しい色に、これは現実なんだと認めざるを得ない。
正面を見据え(ああ、あの毒々しい色がいやだ!)そのまま視線を上へと上げる。
次いで見えたのは大きく立派な歯。(比喩や言い間違いではない)
その近くでうごうごと蠢いているのは太い触手。

この姿は紛れも無い、第5温室のボス『カイザー』(※この植物の名前)
カイザーは獲物を見つけたと言わんばかりに待ち構えていた。

ルリとサヨは温室の責任者であり植物たちの育ての親でもあるため襲われることは無いだろう。
瞬時にその結果を導き出した彼は、今己が持ち得る全ての力で持ってその場から逃げ出した。




Dramatic Record ~Part 35~

バキッと鳴り響いたのは何かが壊れる音。

「・・・・・・」
「はぁー」

その後に続いたのは無言と溜息。

「…ペン」

ぼそっと喋ったのは無言だった人物--長い赤髪のサイドを後ろでまとめた銀灰色の瞳の男性--は、それだけを言うと傍らに座っていた人物に、手の中で無残にも真っ二つに折れているペンを差し出した。

「お前コレで何本目かわかってるか?」

その様を見ていた別の1人--全体的にはざんばらの短髪、しかし襟足だけは腰近くまであるそれを一纏めにした明るい蒼の髪と同色の瞳。そして額にはバンダナを巻いている男性--が呆れた様に声をかけた。

「……数、しない」
「11本目だ、11本目!」

蒼髪の男性の言葉に主語を抜かしまくった返答をした赤髪の男--ゴウは、自身の隣に座っていた人物--短い漆黒の髪と赤い瞳の男性--から新しいペンを受け取ると、目の前の書類へとそれを走らせる。
なぜあの言葉で言いたい事が判るのか、それは突っ込んではいけない。

「まぁまぁ、いいじゃねーか」
『いや、よくないだろ』

黒髪の男--エンが気楽にそう言うのに対し、それを見ていた他の人たちが声を揃えて突っ込んでしまったのは仕方ないだろう。
「今月に入って既に11本目なんだぞ!?」
「だからゴウには安物渡してんだろー?」

そう、今月に入ってゴウが折ったペンの数は既に11本目に突入している。
その他にもコップ、扉、練習用武器、etc…。
とにかく彼は日々何らかの物を壊しているのだ。
その原因は単純明快、彼がとんでもない怪力の持ち主だからである。
彼が幼少のころから壊したものは数知れず…。
学生のころは毎日最低2本は折っていたというのだからまだましだろう。
そしてそんな彼のためにエンとゴウの使う机の上(2人の机は隣同士)には常にペンが大量に用意されている。
そんな彼に付いた渾名は『破壊神』。
まさにその名の通りであろう。

「その怪力を制御する方法でも教えろよ…」
「……それが出来たら俺だって苦労してねぇよ」

疲れたようにいう蒼髪の男--リュウオウからそっと目を逸らしたエンは、苦虫を噛み潰したような顔でそう告げた。
これでも良くなってるんだ、とゴウが幼少の頃からの付き合いである彼が言うのだ。
その言葉に嘘はないだろうし信ずるに値する。
何よりこの会話、もう何回も繰り返されていたりするのだ。
はぁ、と溜息を吐いて後頭部を掻くリュウオウは、「減給申し立ててやる」と呟いた。

その言葉をしっかりばっちり聞いていたエンはというと、「無駄だろうなぁ」と隣で再びペンを折ってしまった彼を見て思うのだった。




Dramatic Record ~Part 34~

「クー、鳳焔火!」
「デュィ!」

実習場に響くレイナの声。
それに答えたのは可愛らしい動物の鳴き声だ。
鳴き声が聞こえた一瞬後に現れたのは紅蓮の炎がかたちどった火の鳥。
炎を召喚したのは大きな猫か小さな犬ほどの体躯の漆黒の生き物。
鱗に覆われた身体は背に一対の翼を備え、赤い瞳を煌かせる。
レイナのガーディアン(守護獣)として契約をしている黒九龍だ。

「っ、焔燈(えんてい)回避!」
「!!」

目前に迫った火の鳥をシュウは指示を出しながら飛び退く。
その指示を受け共に攻撃を回避したのは猫ほどの体躯をした赤い毛並みを持つ獣。
回避しつつも毛と同色の瞳は敵--レイナと黒九龍から外されることはない。

「火奔り!」
「--!」

シュウが攻撃の指示を出すと赤い獣--焔燈は一つ、咆哮する。
と同時に地を舐め這い回るかのように炎が出現した。

「属性変化、水」
「デュキュ!」
「波流壁!」
「デュー!!」

シュウの攻撃を見止めたレイナもすかさず黒九龍へと指示をする。
するとそれまで火の気配を纏っていた魔力が水の気配へと変わった。
次いで出された指示に従った黒九龍は水の障壁を召喚する。
それは焔燈の攻撃を完全に防ぐほどの防御力を見せた。

「そのまま流水撃!」
「デュイ!」

水の障壁が崩れたかと思いきや、それは水流となりシュウたちを襲う。

「うぇええ!?」
「-!?」

哀れ、彼らは防ぐ間もなく水流に呑まれた。
辺りは水浸し、所々には水溜りもある。
シュウと焔燈はというと、実習場の端まで押し流されていた。

「クー、お疲れ」
「デュデュイ!」
「リュキュッ!」

戦闘は終わったとレイナは黒九龍に近づく。
彼女の後ろで戦闘を見ていた白九龍も飛んできた。

「レイナ!」
「ん?」

1人と2匹が戯れていると、復活したのだろうびしょ濡れのシュウがこちらへと来る。
その後ろでは焔燈が身を振るい水気を飛ばしていた。

「もうちょっと手加減しろよ」
「そう言われてもねぇ…」

言われたレイナは「この子は破壊を司るから難しいのよ」とコロコロ楽しげに笑いながらのたまった。

「っく…楽しんでるだろ!」
「それがなぁに?」
「……」

こっちは真剣なのに、向こうはどうやら楽しんでいるようで。
悲しきかな、こうして今日も彼は彼女に負かされた。




Dramatic Record ~番外 5~

久々のドラレコ番外編です。


↓↓ 今回の内容 ↓↓

本編から約3年前の話となっております。
つまり過去話。
本編も一段落していることですので思い切ってやってみることにしました。

ちなみに、シュウが結構…可哀想な事に。
そういえばこいつこんな性格だったよなと管理人自体書いてて思ったくらいです。

そんな可哀想な彼が登場している話ですが、読んでみたいという方はどうぞ。
見た後の苦情は受け付けませんのであしからず。(笑



 


Dramatic Record ~Part 33~

静かな室内、時折聞こえる音は紙をめくる僅かな音だけ。
それ以外には特に聞こえる音もなく、静かな時が流れる。

「レイナー」

そんな静寂を破る声が一つ。
声の主であるシュウはソファーに座りその背へと組んだ腕を乗せている。
組んだ腕に乗っている頭、視線の先には本を読む少女の姿。
シュウの隣に座っていた彼女は手元から目を逸らすことなく返事をしてやる。

「なぁにー」

少女-レイナ-から返事がきて嬉しかったのかシュウは組んでいた腕を解くとその腕を彼女の腰へ回す。
最近は努力の甲斐あってかこういった触れ合いもさせてくれるようになった。
シュウはそのままレイナの肩口へと甘えるように顔を埋める。

「本ばっか読んでないで構えー」
「いやだー」
「うわ、ひでぇ」

返ってきた言葉に特に気にする様子もなく、肩に顔を埋めたままクスクスと小さく笑い声を上げ、腕の力を強くした。

「…邪魔」
「これくらいいいだろ」
「むぅ…」

邪魔と言いつつも実力行使(悲しいかな、レイナが本気で抵抗すると大の大人でも抑え込むのは難しい)しないのは彼女なりの優しさなのか。
それきり言葉もなくなった二人に、室内は再び静寂に包まれる。
聞こえてくるのは一定のリズムを刻むページをまくる音だけ。
どれくらいそうしていたのか、今度はレイナによってその静寂が破られた。

「ねぇ」
「ん?」

先程からずっと同じ体勢のシュウは顔を埋めたまま気のない返事をする。
さっきとは逆だな、と小さく笑ったレイナはそれには構わず言葉を続ける。

「私さ…」
「うん」

ゆっくりと、言葉を紡ぎ。

「こんな性格してるけど」
「……」

静かに聴くことで続きを促す。
いったい何を言うつもりなのか。

「……ちゃんと愛してるから」
「………っ!」

投げられたのは、とんでもない威力を持った爆弾だった。
シュウの顔は真っ赤。
見事赤くなったまま固まった彼が復活するのは…さていつになることやら。