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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Dramatic Record ~Part 5~

「どうぞ」
「ありがと」

出されたのは淹れたての紅茶とクッキー。
自分の目の前には黒い人―――髪も瞳も服までも、全ての光を呑み込んでしまうのではないかと思わせるほどの漆黒を纏った彼、魔王が、対面側のソファーで自分に淹れられた物と同じ紅茶を、ムカつくくらいの優雅な動作で飲んでいる。
そして先ほど紅茶を淹れてくれたのは薄青色の髪と青紫の瞳の女性―――魔王の側近の一人で夢魔のサキュバス。
優しい風貌の彼女はお辞儀をすると静かに扉を閉めて出て行った。

「まさか本当に連れてくるとは思わなかったわ」

魔王―――クロスと同じように紅茶を一飲みして言う。
淡く煌く金糸と大空を切り取ったかのような蒼い瞳を持つ少女―――この世界では頂点に君臨するほどの魔力を持ち、クロスと対等に渡り合える唯一の人物。エリアル学園の生徒会長を勤めるレイナは、ティーカップを置くとゆっくりとソファーの背もたれへと背中を預けた。
先のやり取りで色々と消耗したらしい彼女の顔は疲労感いっぱいだ。

「私が有言実行タイプなのは君も知っているだろう」
「だからって何も平日、それも授業中に来なくてもいいでしょうが」
「ははは」

笑い事じゃない!と憤慨しつつ、ふと扉の方を見やる。
扉で仕切られている為姿を確認することは出来ないが、いくつかよく知った気配がいる。

「ああ、会いたいって騒いでたんだっけ…」
「おや、もう集まってきてるのかい?」

今この2人がいるのは魔王が普段引き篭もっている(←失礼)魔城。
魔物たちは普段荒廃した土地に住んでいることが多いのだが、この魔城の周囲は緑が多く茂っている。
それでも空には所々暗く厚い雲が漂い、少し城から離れれば荒野が続いているのだが。
そんな場所にいるのは当然魔物たちなわけで、この扉の外にいるのもまた魔物たちだ。

「いいよ、入っておいで」

そう、クロスが扉に向かい言ってやると、すぐさま扉が勢いよく開かれた。
扉から入ってきたのは5,6人の魔物たち。
彼らはいっせいにレイナの方へとかけてくると…。

「あねさーん!!」

抱きついた。
それもみんな一斉に。
当然ながら抱きつかれたレイナは押しつぶされ、魔物たちの山の下から救助コール。

「こらこら、離れなさい」

見兼ねたクロスが助けてやる。
言われた魔物たちは「すみません」と素直に謝ってレイナを解放してやった。

「吃驚した…」
「あねさん全然顔見せに来ないからさみしかったっすよ!」

不満げに声を上げたのは一番最初に部屋に飛び込んできた魔物。
床にちょこんと座り頬を膨らませて抗議する姿はなんだか幼く見える。
彼の後ろにいた他の魔物たちからも「そーだそーだ!」と抗議の声。

「あー…そんな頻繁に私がここへ来るのも問題でしょう」

その彼らの姿に若干顔を引きつらせつつ、気まずそうに言う。
目が泳いでいる辺り、一応悪いとは思っているのか。

「せめてもう少し定期的に顔出しを!」
「「顔出しを!」」

勢い付いた彼らはなかなか止められないようで。
綺麗に合唱してくださって。

「わかった、わかったから」

ちょっと静かになさい、と言って彼らを宥める。
それを了承と取ったようで、ようやく落ち着いたらしく静かになった。

「まったく、相変わらず元気ね」
「そりゃもちろん!」

これまた元気な返事が返ってきた。
その元気さ時々疲れるわ、と言いつつもレイナも嬉しそう。
まぁ、あまり表情の変化はないのだが。

「ゆっくりしてってくださいよ!」
「はは、夕方には帰るけどね」
「「えー!!」」



 

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Dramatic Record ~Part 4~

「やぁ、久しぶりだね。」

本日の空、晴。(所々に良い具合で雲が浮いている)
ただ今の時刻、おおよそ13時半前後。(昼食が終わり通常ならそろそろ眠気の来る時間だ)
ただ今の授業、格闘技。(眠気も吹っ飛ぶ激しい組み手が、ここ実習場の各所で行われている)
私の視線の先には、黒い人。(髪も瞳も服までも黒い)
その黒い人物は突然目の前に現れたかと思うとにこやかに挨拶をしてきた。(ムカつくくらいの笑顔だ)

「なんでここにいるー!!!!?」

ついさっきまで行っていた組み手の勢いをそのままに、片足を軸として反転。
足技を繰り出すかと思いきや繰り出されたのは、いっそ見事なまでのアッパーカット。
もろにソレを喰らった黒い人物はこれまた見事に吹き飛ばされた。

「時と場所を考えろ!」

怒声一発。
陽の光を受け淡く煌く金糸と大空を切り取ったかのような蒼い瞳を持つ少女―――この世界でトップクラスの魔力(実際頂点に君臨するのだが)を誇る我らが生徒会長様であるレイナの怒声と突然実習場内に現れた気配、そしてアッパーカットの決まる音と重たいものが落ちる音に、生徒たちは何事かと渦中の人物たちへと視線を向ける。
黒い人はと言うと、ムクリと起き上がると目前の威圧的な気配を感じ取ったのかすぐさま正座の体勢へ。
そんな黒い人の視線の先には女帝の如く仁王立ちをし、彼の者が正座する理由となった威圧的な気配を抑えることも隠すこともせず垂れ流しにしているレイナの姿。
その様を見た他の生徒たちは、自分たちが怒られているわけではないのにも関わらずそのあまりの威圧感にジリジリと後退する者、ふらりと倒れる者など様々。
彼女と組み手をしていた、襟足まで届くざんばらの銀糸に紫の人を持つ彼―――この学園では有名なさる名家のご子息にして彼女を唯一窘める事の出来る人物、副生徒会長のシュウだ。

「れ、レイナ、ちょっと落ち着こうよ…」
「お黙り」

あまりの怒り具合に周囲の生徒たちを案じて窘めようとしたのだが…どうやら彼女は相当怒っているらしく虚しくも一蹴されてしまった。
当の彼女はと言うと、今尚怒り心頭。
その威圧感は収まるどころかどんどん増しているようにさえ感じる。

「で?どうして此処に来たのかしら、クロス?」

クロス。
間違いなく、確実に、彼女の目の前で自主的に(半ば強制的でもあったが)正座をした黒い人物の事であろう。
レイナとは対照的に陽の光を受けて尚全てを飲み込むかのような漆黒の、腰よりも長い髪と同色の瞳、そして服を着た男性―――纏う気配は人とも精霊とも違う。そう、この気配は紛れもなく魔物のものであろう彼はしかし、正座をしているにも関わらずニコニコと、反省の色の欠片も見えない様子でレイナを見上げていた。

「だって君、全然顔を見せに来ないだろう?だから寂しくなってね、会いに来たんだよ」

では何か。
単に寂しかったからここまで来たと。
別に会いに来るのは構わない。
全くもって問題はないし時と場所さえ合っていればこちらとて歓迎しただろう。
しかしソレらが合うことはなくむしろ状況的には最悪。

「……立場、わかってる?」
「うん」

何が最悪かって?
それは勿論この男の立場的問題が大部分を占めるだろう。
この男、実はこれでも魔物の長、つまりは魔王である。
本人は普段魔城(魔物たちの領地に聳え立つ城だ)に引き篭もっているのでその顔を知る人間は非常に少ない。
が、彼の内包する魔力と気配だけで勘の良い者なら感づいてしまうだろう。
そんなとんでもない事態を引き起こそうとしている(いや、既に引き起こしてしまった後であろう)彼はそんなことはどうでもよいと、全く気にする様子もなく相も変わらず笑顔である。

「ならどうして」
「だから寂しかったんだと言っているだろう」
「・・・・・・」

彼の科白にレイナはただただ絶句するしかない。
先ほどまでの怒りはどこへやら、彼のあまりにもくだらないその言葉を受けてすっかり収まってしまった様子。
今やあの威圧感は完全に消えうせ、形を潜めている。
怯えていた生徒たちも安堵の息を吐き出していた。

「で、来てどうしたかったの」

呆れの溜息を吐いたレイナが彼へと問う。
問われた彼は、ようやく本題に入れたと言わんばかりに更に笑顔になった。
本当にこれで魔王だというのだから、世の中なにか間違っているような気がする。

「それなんだけどね、他の者も君に会いたがっていてね」

ちょっと拉致でもしようかと思って。
などと言われ、レイナは本気で眩暈が起こった。
武器を扱い、時には拳でもって敵を黙らせることもあるとは到底信じられないような白く細いその手を己が額へと当て、嘘でも演技でもなく本当にヨロヨロとくず折れる。
常の彼女ではありえないその光景に他の生徒はただただ驚くばかり。

「レイナ!?」

その様を見ていたシュウは慌てて彼女を支える。

「ごめん、ちょっと、本当に信じられないわ…」
「おや、大丈夫かい?」
「誰のせいだと思って…っ!」

支えてくれているシュウの腕に空いている手を乗せ、クロスの言葉に言い返す。
一応、言い返すくらいの気力はあるのだなと、生徒たちが思ったのはここでの秘密。

「まぁ、そういうわけだから。一緒に来てくれるかな?」
「は?え、ちょっ、マテマテマテ!担ぐなーー!!!」

どうせ暇だろう、と言いつつ近づいたかと思うと。
シュウの腕の中にいたレイナを、まるで小物でも扱うかのようにヒョイと持ち上げ肩に担ぎ上げてしまった。
やられた方はたまったものではない。
必死に抵抗するのだが、相手は自分より大きい上に男。
抵抗虚しくその努力は実らなかった。

「え、ほんとに連れてく気?」
「当然」

本人も驚きだが周囲も同じくらい驚きである。
まさか本当なんじゃとシュウが訊いたら答えは上記の通り。
自分じゃ魔王に勝てないのは確実だから悔しがることしか出来ない。
レイナが本気で抵抗すれば抜けられないこともないが…被害が多すぎるのを双方わかっているので、それはしないだろう。

「ちゃんと夜には帰せよ」
「わかっているよ」
「ねぇ、そこはもうちょっと抵抗してくれないかな!?」

仕方ないとの妥協案。
しかし問題の当人であるレイナは不満のようで。
抗議の声を上げるが悲しいかな、結局聞き入れられる事はなく。
そのまま魔王の手によって拉致されてしまったのだ。




Dramatic Record ~Part 3~

「洞窟ごと吹き飛ばせばいいんじゃない?」

その、なんとも不穏な発言に。
彼女と共に同行していた仲間は大量の冷や汗を流した。
太陽の光を受けて淡く輝く金糸と、大空を切り取ったかのような蒼い瞳を持つ少女―――この世界ではトップクラスの魔力を有する我らが生徒会長様のレイナは、面倒くさそうに前髪をかき上げ先ほどの科白をおっしゃった。

「ちょっと待て、それは拙いぞ。非常に拙いから実行するなよ?」

と、必死に彼女を説得しているのは深海の如く深い青を湛える髪とそれよりやや薄い青の瞳を持った青年―――上にも下にも問題児を多く抱える語学担当のコウリュウ。
そしてその隣には襟足まで届くくらいのざんばらな銀糸と紫の瞳を持つ青年―――彼らが籍を置く学園では有名な、さる名家の子息にして副生徒会長のシュウ。
必死にレイナを止めようとしているコウリュウと違い、こちらはそのやり取りを微笑ましそうに見ている。

「シュウ、お前も何か言ってやれ!このままじゃ本当にやりかねんぞ!?」

彼らが今居るのは洞窟の入り口の前。
この洞窟、中は立派な鍾乳洞となっており貴重な自然の残る場所なのだ。
そんな場所を吹き飛ばしたとあれば…考えたくはない。
そんなわけもあり、彼は必死にレイナと止めようとしているのだ。

「だって、洞窟ってジメジメしてるし」
「レイナ、ジメジメしてる場所苦手だよな」
「そんな問題で吹き飛ばそうとするな!」

そもそもなぜ彼らがここにいるのか。
それはただ単に依頼の為。
少々やっかいな魔物がこの鍾乳洞に住み着いてしまったらしく退治の依頼が舞い込んできたのだ。

「他の奴に行かせればいいのに」
「厄介な能力を持ってるらしいから抜擢されたんだろうが」

レイナの我侭っぷりにとうとう頭を抱え込むコウリュウ。
まぁ、実際レイナがこうやって我侭を言うのは相手に心を許している証拠でもあるのだが。

「とりあえずさ、さっさと済ませようよ」

そんな2人を先ほどまで笑いながら見ていたシュウが促す。
学園を発ったのは午前中だったはずなのだが、途中寄り道をしたりして結構時間が経ってしまっている。
既に太陽も傾き始めているため早くしなければ帰りは夜になってしまうだろう。

「シュウ、火出して」
「はいはい」

腰に下げていたランタンを取り外しつつレイナが言う。
それに頷きシュウが何かの動作を起こす。

≪―――≫

掌を上に向け小さく何かを呟くと、小さな火が灯った。
その火をランタンに入れ灯りの用意は完了だ。

「ランタン、シュウが持ってて」
「OK」

言いつつシュウにランタンを渡す。
レイナは刀を得物として戦う為ランタンを持っていると動きにくい。
それはコウリュウにも当てはまるのだが。
シュウは後衛からのサポートが多いので、よくこうして灯り持ちをしているのだ。

「それじゃ、行くか」

その言葉を合図に、彼らは洞窟の奥へと入っていった。


◇◆◇◆◇


「ジメジメ…」
「だからそれは仕方ないことだってば」

彼らはただ今洞窟の奥へと進行中。
先頭にレイナとシュウ、その後ろにコウリュウが続く。

「んー、そろそろ開けた場所に出るんじゃないかな」

ランタンを掲げながらシュウが言う。
実際彼の言うとおりのようで、光の先に大きく開けた場所が見えてきた。

「2人とも注意しろよ?」
「言われなくても」
「はーい」

コウリュウの言葉にそれぞれ返事を返す。
レイナは腰に佩いた刀へ、シュウはチェーンに付いている鈴。
そしてコウリュウは左手に持っていた鞘に収まる剣へと手をかける。
広い空間へと近づくにつれ、彼らの緊張感は高まっていく。
何があってもすぐに対処できるように、不意を突かれないように。

「……気配は、7」

そう言ったのはレイナ。
鍔へとかけた親指でそれを持ち上げ、辺りの気配を伺う。

「気配はあるが姿が見えないか」

レイナと同じようにいつでも剣を抜けるようにしたコウリュウが言う。
気配は感じるが身を潜めているようで姿が見えない。

「………っ!」

と、レイナが突然後方へと飛び退る。
その直後、彼女のいた場所を襲ったのは黒い刃。
黒魔術を使った何かだろうそれは、深く地面を抉る。

「行く」
「……」

レイナとコウリュウはすぐさま得物を引き抜き、攻撃の飛んできた方へと駆ける。
彼らの先には、蠢くモノ。
アレがこの洞窟に住み着いたという魔物か。

「紅桜、発動」

レイナがそう言うと、白く輝く白刃が血を吸ったかのように赤く染まる。
赤い刃、それがこの紅桜の本当の姿。
魔武器のうちの一つであり最高傑作と称されている武器でもある。

「はぁっ!!」

その武器を構え、魔物へと一太刀入れる。
斬れたかと思われるそれはしかし、寸でのところでかわされたのか浅い。

「レイナ!」
「!!」

彼らが動いたことにより、身を潜めていた他の魔物たちも動き出した。
数匹の魔物がレイナへと襲い来る。
と、彼女と魔物たちの間に細い銀の輝き。
よくよく見ればそれは銀の糸。
それを辿ると先はシュウの持つ鈴に繋がっているようで。

「乗って!」

その言葉と共にレイナが張られた糸を足場に跳躍する。
一瞬遅れて魔物たちの刃が空を裂く。
高く跳躍したレイナは紅桜を構え…。

「裂破」

斬撃を繰り出した。
その斬撃は魔物たちの足元を抉る。
やはり空中では狙いを定めにくいようだ。
地に着地したレイナが魔物へと言葉を発したとの時。

「この洞窟から立ちs…」

ザパン!
魔物の1体が放った水属性の技が見事レイナに当たる。

「・・・…」
「あーぁ…」

その様を見ていたシュウとコウリュウは「やってしまったな」を言うような顔をして後ずさる。
水を被ったレイナはと言うと・・・。

「…っの!!」

周囲の空気がピリピリと肌に刺す。
元々不機嫌だった所に水をかけられ完全に頭にきたのか。
そしておもむろに空いている片手を上げたかと思うと。

≪氷柱結縛≫

その言葉と共に洞窟の温度が下がり、魔物たちが氷柱の中に閉じ込められた。

「うっわ、見事に凍ってる」
「またそんな荒業…」

見慣れているといえば見慣れている光景ではあるが…。
機嫌が悪い時は相変わらずの荒業。
洞窟を吹き飛ばされなかっただけマシと言った方がいいのか。
てかこれ、俺たち出番ないよな…と、2人は顔を見合わせる。
本当はもう少し穏便に済ませたかったのだが。


◇◆◇◆◇


「で、結局魔物たちは凍らせちゃったと?」
「(こくん)」

ここはエリアル学園にある学園長室。
あの後彼らは氷漬けの魔物たちを洞窟から運び出すと報告のために学園へと戻ってきていた。

「その氷漬けの魔物たちは?」
「一応、他の魔物に引き渡しました」
「そっか」

なら大丈夫かな、と学園長はあくまで暢気。

「何はともあれ無事でよかったよ」
「ははは…」

頼むから今度から洞窟絡みの依頼は勘弁して欲しいと思う彼らなのだが。
果たしてその願いが叶うのかは怪しいところ……。




Dramatic Record ~Part 2~

「もう一回勝負だ!」
「っは、何回やってもお前の負けだ」
「んなのやってみないとわかんねーだろ!?」
「結果は目に見えてるわね」
「・・・・・・(コクン)」
「ちょ、そこは応援する所だろ!?」
「あら、さっきから負けっぱなしなんだから応援してもしょうがないでしょう」
「・・・・・・orz」

青い空の下そんな会話が繰り広げられている本日、日付は1月1日。
そう、元旦である。
そんな中彼らは今何をしているかと言うと、正月恒例の羽根突きの真っ最中。
といってもやっているのはエンとリュウオウの2人で後のみんなは観戦者である。

「せめてゴウだけでも応援…」
「むり」

恨みがましい目線で相棒に言ってみるが…
当の本人は墨の入った器と筆を手に一言で一蹴なさってくださった。
そしてエンはと言うと、顔のあちこちに墨で落書きがなされている。
ただ今の記録は0-5。
当然ながらリュウオウの圧勝である。

「ちっくしょう…」

リュウオウは手加減してくれないしユキメは笑ってみているだけ。
ゴウはしっかり墨と筆を持っているしレイナとシュウは面白そうにリュウオウの応援応援。
多勢に無勢な心境である。
と、そこへ。

「みな様、お雑煮の用意が出来ましたよ」

サヨとコウリュウ、それにルリたちがお盆に御節やお雑煮を乗せて持ってきた。
人数が多いため量も多い。
それれらを乗せたお盆を事前に用意してあった台に乗せて配る。

「おー、美味しそうだな」
「頑張って作りましたから」

エンに言葉に微笑んでサヨが答える。
御節は前もって料理のできる人たちが作っておいたもの。
みんな料理上手なためとても美味しそうだ。

「みんなちゃんと行き渡った?」

コウヤが全体を見渡し問う。
みんなちゃんと行き渡ったようで頷いている。

「それじゃぁ…」

「「新年明けましておめでとう!今年もよろしくね!!」」





Dramatic Record ~Part 1~

青い空、白い雲。太陽の光に照らされキラキラと輝く白い砂浜…なわけわなく。
太陽に照らされ白亜の白の如く聳え立つのはエリアル学園。
優しい風の吹き込む学園の上空では小鳥や翼を持った精霊たちが楽しげに飛んでいる。
そしてそんな太陽の光を沢山取り入れられるようにと設計されたやたらとでかい窓のあるここは学園の敷地内にある生徒会室。
日当たり抜群の窓辺に設置された推定3人掛けのソファーに座り黙々と、ただひたすらに本の活字を追っている少女の姿がある。

「れーいな!」

そんな一室に上がった声の主はこの学園の副生徒会長、シュウ。
襟足にとどく程度でざんばらに切られた銀の髪と紫の瞳を持つ少年だ。
この部屋の主であり生徒会長であるレイナを呼んだのだが…。

「・・・・・・」

呼ばれた本人は手元の本に夢中なのか反応が無い。
再び静かになったこの部屋に響く音といえばページを捲る音だけ。

「ったく・・・」

ため息を吐いた彼は彼女の座るソファーを回り込み前へと移動する。
そして…。

パンッ!!

と、拍手(かしわで)1つ。
その音に流石に気づいたのだろう、活字を追っていた彼女の目の動きが止まった。

「なに?」
「なに?じゃないだろ!」

読書を中断させられて些か不機嫌になったレイナが金の髪をサラリと肩から零しつつ、ようやく顔を上げる。
普段は高く一つに結い上げられている金糸が今日は珍しいことに下ろされている様を見て、ああこれは完全に寛ぎモードだなと、その様子に呆れたようにシュウが言い返した。

「依頼!学園長が呼んでる」
「……珍しいわね」

言うと面倒くさそうに本を閉じて立ち上がる。
気だるげなその美貌が今日もうつくs…いやいやいや、どれだけ彼女が面倒がっているかを伺わせる。
生徒会への依頼は確かに珍しい。
そもそも彼女たち生徒会以上の者が出る依頼自体が少ないのだ。
まぁ、頻繁にあったらそれはそれで大事(おおごと)ではあるが。

「とりあえず、さっさと行こう」


◇◆◇◆◇


「っとに、なんで生徒会室と学園長室離れてるわけ?」
「マンモス校だからなぁ。仕方ないんじゃない?」

2人はただいま移動中。
この学園はやたらと敷地が広い。
そのうえ生徒たちの寝起きする寮のある区画、授業を受ける教室のある区画、教師たちのいる区画に分かれているのだ。
幸い生徒会室は教室のある区画なので寮の区画から考えると近くではある。
が、それでもやはり距離があるため歩いていくには少々きつい。
というか区画が分かれている上にそれぞれの区画の面積が広い為正直、いやかなり、面倒。
世の中には移動魔法という便利なものもあるのだが生憎と学園内では禁止されているので使えない。
故にやたらと広い敷地内を徒歩で移動する羽目になってるのだ。

「と、やっと着いた」
「生徒会室も教師の区画のほうにあればいいのに」
「それは俺も思うな」

愚痴を零しつつ学園長室の扉を叩く。
するとすぐに中から返事があった。

「失礼します」
「失礼しまーす」

少し間延びした挨拶はシュウのもの。
彼はいつもこんな調子なので特に誰も気にする様子は無い。

「遅かったねー」
「どこの誰がこんな風に造るのを考えたのかは知りませんがとにかく距離があるもので」
「はは、君のそれも相変わらずだね」
「それはどうも」

にっこり。
レイナの背後に黒いものが見えるのは…気のせいだと思いたい。
肌理細やかな白い肌、日に透かせばきらきらと輝く金糸、大空を切り取ったかな様な蒼い瞳、黙っていれば『清楚』『可憐』が似合いそうなのに。
その実、口を開けば気に入らない相手はとことんその博識の元繰り広げられる毒舌マシンガンにより打ちのめすという、彼女に気に入られなかった相手は恐怖すら抱く性格の持ち主。
そんなこともあり、彼女と学園長は顔を合わせるたびに言葉の応酬を繰り広げているのだった。
(まぁもっとも、『気に入らない相手』でもいくつか種類があるようで学園長は軽い方だが。)

「学園長、そんなことはどうでもいいですからさっさと依頼内容を」

そしてこうやって学園長の秘書に止められるのも毎度の事。
関係の無い、見ているほうはただ苦笑するしかない。
(なにせ下手に首を突っ込めば彼女の毒舌マシンガンの餌食になってしまうのだから。)

「ああ、そうだったね」
「ったく、さっさと用件言ってよ」

いやいやいや、出会って早々毒舌吐いたのレイナだからね!?
などと彼女らから目線を外しつつ必死に心の中で叫ぶシュウ青年。
もっとも、付き合いの長い彼女にはこんな心の声も届いていそうだが。

「えーっとね、魔物がちょっと暴れてるらしいんだよねー。君たちにはそれを退治してきてもらいたいなーっと☆」

魔物、ほとんどの魔物は人間にも精霊にも好意的な種族だ。
しかし時々非好意的なものもいる。
そういった輩は大概において何か問題を起こしてくれるのだ。
だからこうして学園には依頼が舞い込んでくる。

「はー…」

溜息を吐いたのはレイナだ。
うっとおしそうに髪をかき上げ非常に面倒くさそうにしている。
相変わらずやる気の無い…。

「自分でやればいいのに」
「いやー、それがねぇ。ボクもこれから別件で出かけないといけなくってね」

他の教師陣も依頼に出てるし。今動けるのって君たちくらいなんだよねー。
などと大人の、学園長らしからぬ口調で言ってくれる。
多分レイナは彼のそんな所が気に入らないのだろうが…。

「とにかく、頼むよ」
「・・・・・・りょーかい」


今自分たちに頼むくらいだ、ことは急ぐのだろうと判断したのか。
彼女は他に言いたいことを飲み込んで承知した。




目次

●本編目次

第1話 ~召集~  『学園長、そんなことはどうでもいいですからさっさと依頼内容を』

第2話 ~正月~  『新年明けましておめでとう!今年もよろしくね!!』

第3話 ~依頼遂行~  『洞窟ごと吹き飛ばせばいいんじゃない?』

第4話 ~闇の王~  『時と場所を考えろ!』

第5話 ~愉快な仲間~  『あねさーん!!』

第6話 ~歴史の授業~  『むぅ…それじゃ精霊の誕生から行くねー』

第7話 ~言霊使い~  『あ、ちなみに簡単な言葉だが小テストに出すから覚悟しろ』

第8話 ~古の言葉~  『古代語は『音』で全てを表現する』

第9話 ~ちび助~  『翁にも一度会いに行かないといけないね』

第10話 ~精霊の里~  『リュィ!リュー、リュリュ!』

第11話 ~覗き禁止~  『ふぁっ!?』

第12話 ~待望~  『ふふ、どんな子が生まれるだろうね』

第13話 ~誕生~  『ほんと、どうしたんだろ』

第14話 ~日常~  『てんっめぇ!待ちやがれ!!』

第15話 ~魔器~  『あ』

第16話 ~職人~  『もちろんさ!俺が君の頼みを後回しにするはずないだろう』

第17話 ~彼と彼女の場合~  『もちろん、本命。私が義理をあげるとでも思ってた?』

第18話 ~双子たちの場合~  『こちらにおられましたか』

第19話 ~おしどり夫婦の場合~  『(えー…どうするかなこれ)』

第20話 ~苦労人とその相手の場合~  『しっかし、わざわざ用意する子も不憫になぁ』

第21話 ~闇の王たちの場合~  『どうしてあの子はこんなにも冷たいんだ!?』

第22話 ~肉食植物~  『パクリーヌちゃん可愛いのに、ねー?』

第23話 ~お茶会~  『んー、そこまで柔じゃないでしょー』

第24話 ~名~  『その真名(まな)を、』

第25話 ~発見~  『ちー、おいで。くーも』

第26話 ~支配~  『ええ、古すぎて大変だったけど』

第27話 ~故郷~  『ようこそ、我が故郷へ』

第28話 ~報告~  『そ。古い約束を果たせたことを報告にね』

第29話 ~お呼ばれしました~  『昼までに、死ぬ気で半分終わらすわよ』

第30話 ~彼の実家~  『さぁ、二人とも。昼食の用意はしてありますから食べましょうか』

第31話 ~お仕事~  『は、はいいぃぃぃ!!』

第32話 ~新入生~  『学園生活は自力で覚えろ。以上』

第33話 ~ツンデレ~  『本ばっか読んでないで構えー』

第34話 ~クーちゃん~  『クー、お疲れ』

第35話 ~破壊神~  『11本目だ、11本目!』

第36話 ~温室手入れ~  『ゴッメーン、昨日からカイザー放してたんだった☆』

第37話 ~薬剤調合~  『……まだ、早かったでしょうか』

第38話 ~結界~  『ん、バラけてるから森に逃亡防止用の結界張って』

第39話 ~避けられない定め~  『アレって言えば、アレよ。ねぇ?』

第40話 ~漆黒の獣~  『……わかりました』

第41話 ~悪戯~  『……誰、ですの』

第42話 ~魂共鳴~  『ちょっと行ってくるわ』

第43話 ~模擬戦~ 2 3 4 5 (43話~47話)

第48話 ~着替え~  『それ反則それ反則それ反則ううううう!!』

第49話 ~首飾り~  『ふふ、これは特別でね。ちょっと特殊な製法で作られたのよ』

第50話 ~視察の男~  『こちらが学生塔、生徒たちが寝食を共にする寮がある建物です』

第51話 ~対立?~  『なーにやってんだ?』

第52話 ~所有宣言~  『あの2人ってようやく付き合い始めたんだ?』

第53話 ~彼女の誕生日~  『………ダンスホール?』

第54話 ~海の依頼~  『というわけで、本日の依頼だ』

第55話 ~空と翼と彼女の怒り~  『海に来れたのはよかったかなって』

第56話 ~予想外~  『眼福眼福』

第57話 ~その日~  『---、どうか貴女だけでも生き残って…』

第58話 ~双子の誕生日~  『兄様ったら、予定の時間前には来たけど遅いんだもん』

第59話 ~体育祭~ 2 3 4 (59話~62話)

第63話 ~甘美な時~ 『どうか彼女の眠りが穏やかでありますように』

第64話 ~学園祭~ 『なんで居るんだよ』

第65話 ~思惑~ 『お前は卒業したらどうする?』

第66話 ~進路希望~ 『……落ち込むんじゃありませんわよ』

第67話 ~いいえストレス発散などではありません~ 『ちょ、依頼はなるべく無傷でってあったよね!?』

第68話 ~クリスマス~ 『今年は先約あるからダメデス』




Dramatic Record を書くに当たって

【ストーリーの進み方】
  計画性皆無。
  基本的に一話完結予定。
  一話完結だから繋がってたり繋がってなかったり。
  季節ネタもやりたいよね。


【ストーリーの内容】
  学園上の日常を描いたお話。
  依頼やってる話とか授業やってる話とか。
  ラブラブとかは…期待しちゃいけない。
  基本的にはほのぼの話が多いと思う。


【番外について】
  本編には入れないと管理人が判断したお話たち。
  似て異なるものだとかが多いかと。
  本編の過去話もこちらになります。


【タイトルについて】
  基本的に『Dramatic Record ~Part (?)~』で統一しています。
  (?)は数字。
  なぜそんなのかというといちいちタイトル考えるのが面倒だから。(←
  これだと考える必要ないし!

性別逆転ネタについて

●番外で時々やっている性別逆転ネタについての補足。

 基本的に性別が逆転しているのはレイナとシュウのみです。
 今現在の時点(2010/08/27)ではこの2人以外の性別逆転は考えておりません。
 むしろ考えた場合名前とかが面倒なのでやる気は毛頭ありません。(爆

 本編との関連ですが、基本的に2人の性別が逆転&多少性格などが変わる点以外はまったく一緒です。
 つまり何が言いたいかといいますと、番外であったことが本編でもあるかもしれないということです。
 まぁ、さすがに逆転話しの2人のようにラブラブにはなりませんがデートが有ったり無かったり。
 昼食は食堂でとらずお弁当だったり。
 とにかくそんな感じで脳内で本来の性別に変換して読むという楽しさもあるかと。(←
 1話で2度美味しい的な。
 すみませんふざけすぎました。(土下座

 以下、性別逆転時のプロフィールになります。




世界観

・世界
  人間・精霊・魔物が混在。
  みんな結構仲が良い。
  人間の住む場所、精霊の住む場所、魔物の住む場所とある程度領土分けがなされている。
  (↑いつの間にかそんな風に分かれてた。でも基本的にはどこにでも居る。)
  人間の住む場所は文明が発達している。
  精霊の住む場所は自然が多い。
  魔物の住む場所は些か環境が劣悪なので身体が丈夫に育ちやすい。(←
  水6:地面4くらいの割合。


・人間
  結構どこにでも居る。
  世界で最も人口が多いのも人間。
  人口多いけど精霊や魔物の領域を荒らしすぎないようにはしている。
  (※やりすぎると報復が怖いから)


・精霊
  劣悪な環境以外なら結構あちこちにいる。
  ↑には数が非常に少ないだけで居ないわけではない。
  精霊が最も多く居るのは『精霊の里』と呼ばれる自然が多く残る土地。
  周囲を森に囲まれており、天然の迷路。
  おまけに翁が結界を張っているので精霊の導きがなければ入れない。
  魔物はどう足掻いても侵入不可。


・ガーディアン(守護獣)
  精霊が召喚術師と契約を交わした場合そう呼ばれるようになる。
  契約主を守護する存在。
  基本的には言うことを聞くが彼らにも意思はあるので聞かない場合も。


・魔物
  劣悪な環境に居ることが多い。
  怖いのが多いかと思いきや気さくで友好的な奴の方がほとんど。
  別に精霊と仲が悪いわけではないのだが対極に位置しているので相性は最悪。
  そんなわけで普段は互いに干渉しないようにしている。
  「彼らとも仲良くしたいのに」(by魔物達
  ちなみになぜだか魔王を筆頭にほとんどの魔物がレイナを慕っている。


・エリアル学園
  魔力を持った子供たちが日夜勉学に励む場所。
  敷地は実に広く、魔力を持った子供たちが『力』の勉強をする為に集まってくる。
  内容は様々で、普通の学校で行うような授業を受けることも可能。
  詳しくは【エリアル学園詳細】にて。
  また、依頼ランクというものも存在。


・依頼ランク
  学園に持ち込まれた依頼をこなす為のランク。
  生徒1人1人の総合的な能力から各ランクに振り分けられる。


・依頼
  学園に持ち込まれる魔力が関する事件・事故など。
  学園長と秘書によりD~Sにランク分けされされる。
  これらの依頼はランク分けされた後、生徒や教師によって解決まで持ち運ぶ。
  通常一般性とはD~Bまでの依頼、生徒会はB,A、教師はA,Sのランクの依頼をこなす。


・力
  魔力や魔力を使った攻撃、属性のことを総称して『力』と呼ぶ。


・魔力
  一部の人間と精霊・魔物たちの有する力のこと。
  魔力を持った人間は少なくはないのだが持たない人間よりも数が少ない。
  また、魔力には属性と呼ばれるものもある。


・属性
  
木・火・地・雷・水・風・氷・闇・光の9種類。
  人間の扱える属性は基本的に闇を除く8種類。
  精霊は9種類全て。
  魔物の扱える属性は基本的に光を除く8種類。
  属性によっては攻撃・防御等の得手不得手などがある。
  木~風・闇は大体数が同じくらいで光はそれより少なめ。
  氷の属性をもつモノが一番少ない。


・職業
  個人が得意としている職。
  扱う武器や戦い方によって色々分けられる。


・武器
  和洋中色々ある。
  ただの武器なら普通の武器職人で作成可能。
  が、特殊な能力を持った武器(魔武器)は専門の魔武器職人と呼ばれる人しか作れない。
  それは魔武器は特殊な鉱石と技術が必要とされている為である。


・魔器
  魔力を秘めた装飾品の総称。(魔武器≠魔器)
  少ない魔力を補うものや強すぎる魔力を抑える物など用途は様々。


※設定は時々増えます。