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古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。
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「覚醒、紅桜」
「響鳴、瞬禍、絶禍」
「輝け、蒼月」
「発動、黒銀」
教師や生徒たちの見守る中、実習場の中心にいるのは4人。
それぞれ手に持つ得物へ声をかけ、戦いの火蓋は切って落とされた。
◆◇◆◇◆
事の始まりは何気ないこと。
生徒会4人組が中庭で思い思いに過ごしていた時だった。(ちなみに現在は放課後だ)
話が戦闘関連のことになったのだ。
元々彼らはそういった事に携わる者。
あっという間に話に花が咲き、いつの間にか教師人で誰が強いかという会話になっていた。
「ここは普通に考えたら学園長だよなぁ」
「ビャクヤ先生もお強いですわ」
「リュウオウ先生も中々いけると思う」
芝に腰を下ろし3人が自分の意見を言い合う。
その傍で同じく座り込んでいるレイナは3人の会話に入らず何かを考えているようで。
それに気付いたシュウが声をかけてきた。
「レイナ、どうした」
「ん、みんなの戦闘能力を考えてただけ」
その言葉にきらりと目の端を輝かす者が1人。
ファゼだ。
「そういえばレイナ嬢もシュウも有名所と幼馴染だっけ。どれくらい強いとか判る?」
「まぁ、大体は」
彼の好奇心いっぱいの質問に苦笑しつつ答えてやる。
「総合面で見るとコウ(双子兄のことだ)が一番かな。属性は防御系だけど本人が高い攻撃能力を持ってるからバランスがいいの。次はやっぱりビャクヤね。得物は中・遠距離だけど特異な戦闘スタイルが強力な近距離攻撃を可能にしてる。防御の低さが惜しいわね。3番目は意外にもエンよ。あの素早さで相手を翻弄し鋭い刃で的確に急所を狙ってくるから結構厄介かな」
ただ攻撃に重みがないから防がれるとダメージを与えられないのよね。
そうやってレイナは彼らの特性などを上げていく。
「よく、見てますわね」
「まぁね。それに何度も手合わせしてるし、互いの癖とかも理解してる感じかな」
「いいなぁ、有名所と仲良いのって」
ファゼの結構本気で羨ましがっている声にレイナは「案外そうでもないわよ」と言って苦笑してみせる。
その言葉の真意がわからず首を傾げる彼らに、後ろから声がかけられた。
「なーに面白い話してるんだ?」
声のした方を見やるとそこに居たのは話の渦中にいた2人、コウリュウとビャクヤだ。
この2人はなんだかんだと仲が良く、2人一緒に居る姿を見かける事が多い。
声をかけてきたのはビャクヤなのだろう、4人組を覗き込むように身を屈めている。
「ちょっと前から会話が聞こえていたぞ」
そう言ったのはビャクヤの更に後ろに居たコウリュウだ。
言霊使いでもある彼のことだ、風に乗る彼らの会話が聞こえてビャクヤを伴いここまで来たのだろう。
「あら、盗み聞き?」
「んなわけないだろ」
茶化すようにレイナが言えば、コウリュウが軽く小突く。
微笑ましいなぁ、なんて考えていたビャクヤがふと思いついたように声を上げる。
「なぁ、久々にやるか?」
彼の主語を抜かした言葉。
しかしそれは正確に伝わったらしい。
「ん、いいね。久々にやろ」
「最近身体動かしてなかったしな」
「まぁ、たまにはいいか」
上からレイナ、シュウ、コウリュウ、の順に応じると、立ち上がり伸びをする。
4人の話を黙って聞いていたファゼの目はキラキラと輝き、エミリアは呆れの溜息を吐き出す。
こうして2対2で手合わせすることになったのだが、どこから聞きつけたのか実習場には多くの教師と生徒が観戦に集まったのだった。
「んん?」
「あっれー?」
「……誰、ですの」
顔を合わせた途端、3人共に首を傾げてくれやがりました。
◆◇◆◇◆
ただ今の時刻、13時5分前。
もう少しで授業開始という時間になっても未だ現れない少女に、どうしたのだろうと心配する声が上がった時だった。
ダンスホール(次の授業は礼儀作法でダンスの練習だ)のエントランスが不意に騒がしくなる。
声に耳を傾けてみると「どこの子だ」や「綺麗…」などの言葉が聞こえ、顔を付き合わせ話していた生徒会4人組みのうちの3人、シュウ、エミリア、ファゼたちはつられる様にしてエントランスへと顔を向ける。
生徒たちの視線の先にいたのは白銀の髪に青藤色の瞳を持った少女。
見た目は恐らく自分たちと同じ歳だろうが纏う雰囲気はとても大人びている彼女は、上品なドレスを身に纏う。
白く滑らかな肌にはうっすらと化粧が施され、鮮やかな紅のひかれた唇はいっそ煽情的とも言える。
正に綺麗と評するに相応しい少女は、つい…と視線を動かしたかと思うとシュウたちへとそれを向ける。
「……っ」
視線を向けられ、知らず喉がヒクつく。
なんだろう、これは。
見つめられただけで胸が高鳴り息苦しい。
白銀の麗人は視線を合わせたまま、ゆっくりとこちらへ歩みだす。
すると、自然と道が開けさながらモーゼのような光景となる。
彼女自身が淡い彩色だからなのか、ダンスホールの窓に嵌め込まれているステンドグラスの放つ光に当てられ、周囲が輝いて見える。
コツ…、コツ…、と靴を鳴らし歩く姿に、3人の胸は更に高鳴った。
「「「……」」」
3人は声を出すことが出来ない。
そんな姿を見つつ、麗人がゆっくりと口を開く。
そしてようやく声帯を振るわせ鈴を転がすかのような声(※想像です)を発したかと思いきや。
「なんでみんな固まってるの」
麗人の口から発せられた声は、よく知る人物のものだった。
まぁ、たしかに綺麗な声ではあるのだが…。
知ってしまった瞬間、一気にその場を支配していた緊張感が吹っ飛んだ。
「んん?」
「あっれー?」
「……誰、ですの」
思わず漏れた言葉には、否定したい気持ちがありありと浮かんでいて。
そうして冒頭の会話へと戻ることとなる。
◆◇◆◇◆
「シュウ、覚えがないとは言わせないわよこのヤロー。ファゼは人を指差すんじゃありませんその指へし折ってやろうか。エミリア嬢も、この期に及んで『誰』はないんじゃないかしら?」
ニッコリ、ニコニコ。
後ろに溢れるどす黒い魔力の靄のような物が怖いだなんて口に出して言うことは出来ない。
言ったが最後、失ってはいけないものがなくなってしまう気がする。
「あー、その言い方は」
「間違いなく」
「レイナ、ですわね」
3人は順に言葉をつなげていく。
ここでまだ惚(とぼ)け様ものなら一体どうなることやら、考えるだに恐ろしい。
よほど機嫌が悪いのだろう、白銀の麗人---レイナは、黒い笑みを浮かべどす黒い魔力を消してくれる気配はない。
「それ、どうしたんだ」
あまりの怖さに誰も声をかけられない中、やはりと言うべきか、シュウが生徒たちの気持ちを代弁してくれる。
「………のよ」
「ん?」
うつむきぼそりと発せられた声は小さく聞き取れない。
余談だが、この時シュウは『結い上げて晒されてる項が色っぽいなぁ』と考えていたらしい。
後日親友(ファゼ)に打ち明けているのが確認されている。
「だから、ちーちゃんが悪戯で中に入ってるの!」
「「「「「は?」」」」」
「あ、やっぱり」
「中に入る?」
「何のことですの…」
わかっている者2名、わからぬ者多数。
みなが首を傾げる中、2人の会話は進んでゆく。
結局理解できたのは彼女のガーディアンのせいで髪と瞳の色が変わっていること、服はダンスホールへ向かう途中にルリとコウヤにつかまり着せ替え人形よろしく遊ばれたということだけだった。
●内容
レイナとシュウの出会い編。
6,7歳くらいの時の話です。