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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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Play13

その後ホドモエジムに来たオレ達。
どうやら先に来ていたヒュウ兄はもうジムをクリアしたらしい。
オレも負けてられないのかな、と思いつつ、ジムの中に足を踏み入れた。

「で、ここどこ」
『さあ…』

ジムに足を踏み入れてリフトを使い地下へ降りたオレ達は。
絶賛迷子中である。
暗いジム内であちこち歩き回っていたらすっかり自分の位置を見失ってしまった。
それどころか出口すらわからず、雨調はジムに入ってから連戦続きだ。
いい加減体力を消耗してきたようで、オレは傷薬を噴きかけてやりつつどっちが出口なのかを必死に考える。

「リイヤ、なんとかならない?」
『さすがにちょっと…』
「ダメかあ…」

がっくりと肩を落とし、適当にこっちかな?と道を進んでみる。

「ふん!やっと来たか、待たせやがって!」
「?」

そして辿り着いた先、今までのリフトとは色が異なるそこには、カウボーイハットをかぶった中年男性。
威厳さえ醸し出される皺のある顔は不機嫌そうにゆがめられている。

「えーっと、ここのジムリーダーさん?」
「ああそうさ。ワシがここのジムリーダーのヤーコンだ」
「よ、よかったあああ」

やっとたどり着いたのだと大きく息を吐きだしたオレに、ヤーコンさんは怪訝そうだ。
しかしすぐに表情を不機嫌そうなものに戻した彼は、そんなことはいい、と言ってボールを構え。

「さてと、お手並み拝見させていただくか」

そう言って、バトルを仕掛けてきた。


*****


さすがに連戦の中で鍛えられた雨調だ。
熱湯でヤーコンさんのポケモンを次々と倒していって、バトルはすぐに終わってしまった。

「まったく、大したもんだ。2年前と言い、本物の実力を持った若者が次々と現れやがる」
「2年前…?」
「ふん!こいつを持っていけ」

2年前はたしか、プラズマ団が解散した年。
そんな事を考えていたオレに、ヤーコンさんがクエイクバッジを投げてよこしてきた。
オレは慌ててソレを受け取る。

「ほう、これでバッジが5つか。ついでだ、この技マシンも持っていけ」
「うわわ」

そしてまた投げてよこされたそれ、技マシン「地ならし」を受け取る。
けっこう、動作が乱暴な人だな。

「よし、お前ワシについてこい」
「へ?え、あ…」

オレが戸惑っている間にヤーコンさんはリフトを動かし、それは地上へと上がる。

「いいステージにはいいダンサーが肝心だ」
「はあ…」
「こっちだ」

言って、ヤーコンさんは一人さくさくと進んで行ってしまう。
彼を見失わないようにとオレもその後を追った。

そうして出てきたホドモエジムの外。
そこではヒュウ兄が待っていてくれた。

「お、お前もジムバッジ貰ったのか!さすがだな」
「えへへ、ありがと」
「あのさ、ジムバッジを取れたのはたしかに相棒のおかげだけど。オレとこいつたちの繋がりって、モンスターボールだけじゃないよな。そうでないと、奪われたチョロネコの気持ち…」
「ヒュウ兄…」
「取り戻せないよな!」
「そうだね」
「何だお前ら、知り合いだったのか?」

話し合っていたオレ達に、ヤーコンさんが話しかけてくる。

「あ、はい。幼馴染なんです」
「オレのが上だけどな」
「ヒュウ兄ってば」
「ふん、二人ともなかなかだったからな。いい所へ連れて行ってやる」
「「いいところ?」」

着いて来ればわかるさ、そう言ったヤーコンさんはオレ達を案内してくれた。
連れて来られたのはポケモンワールドトーナメントという大会の開催されている場所。
ここには各地方から強者が集まり、誰が一番かを決めるらしい。
そしてそのまま仲間で案内される。

「あれ?」
「チェレンさんだ」
「やあ、久しぶりだね」
「どうしてチェレンさんが…」
「お前たち!」

会場内にはチェレンさんが居て、どうしてこの人がここに?と首を傾げたオレ達。
するとヤーコンさんがなにか用紙を持って近づいてきた。

「お前たちにはこれから何でもオーケーのホドモエトーナメントに参加してもらう!」
「え、急にですか?」
「8人参加のトーナメントで3回勝てば優勝だ」
「あの、オレまだ参加するとは…」
「なぜ僕まで…僕には調べることがあるのに」
「なんだ、何か文句でもあるか?」
「「いいえ…」」

まだ参加すると決めていないオレと、調べ物があるチェレンさん。
2人が参加を渋っていると、ヤーコンさんにギラリと睨まれてしまった。
うう、これじゃ断れないよ。
ヒュウ兄はヒュウ兄で参加する気満々だし。

結局オレ逹はこのトーナメントへと参加することを余儀なくされてしまった。


*****


そうして参加したホドモエトーナメント。
オレはいきなり初戦に当たってしまった。
そしてオレに相手はヒュウ兄だ。

どうやら本当に何でもありのルールらしくて、ポケモンの数こそ制限されているもののレベルはそのままだった。
だからヒュウ兄のポケモンともレベル差が随分あいているようで、あっけなく勝ってしまった。

次の対戦はどうやらチェレンさんと。
一度勝ったとはいえ相手は現役ジムリーダーだし、どうなるのか判らない。

と、思ったのだけれど。
そういえばチェレンさんの手持ちはノーマルタイプばかりだった。
そのおかげか、チェレンさんとのバトルも特に苦労することなく勝ち進む。

そうして迎えた決勝。
相手は誰だろうと対戦表を見てみると、そこに記された名前はアクロマ。
どうやら彼もこのトーナメントに参加していたらしい。
言葉少なにバトルが開始される。

勝負はまたもや偏りを見せた相手の手持ちのおかげで勝つことができた。
アクロマさんは何やら新しい発見がったとか言って喜んでいたけど。

受付に戻ってBPを貰っていると、背後が何やら騒がしくて。
振り返るとそこにいたのはホミカちゃん。
どうやらもっと熱く狂おしいほどのポケモンバトルをしろと言っているようだ。
変わらないなあ、と苦笑する。

ヤーコンさんはまたトーナメントに参加してくれよ、と言い置くとジムへと戻って行った。
オレ逹は一度会場の外へと出ることにする。
チェレンさんがオレ逹の成長に驚いたと話していた時。
黒尽くめの人がオレ逹の横を通り過ぎ走り去っていった。

「今の!?」
「うん」

あれは、プラズマ団だ。
まだこの街に残っていたんだ。

ヒュウ兄と二人して追いかけようとしたその時。
オレ逹を止める静かな声が聞こえた。

「およしなさいな」
「アクロマさん!」
「あんた、まえにヒウンシティの下水道で会った…」
「わざわざ危険な事に首を突っ込む必要などありません」
「けど、探してるポケモンが!妹のチョロネコが居るかもしれないんだ!!」

止めるアクロマさんの声に耳を傾けず、そう叫んだヒュウ兄はプラズマ団を追って行ってしまった。

「ボクも行きます!彼を護らないと!」

チェレンさんも、ヒュウ兄を追いかけて走り去っていく。

「……まったく。理解できません。あれは勇気ではなく愚行です!ポケモンが居ればトレーナーはどんなことでもできるのですか?」

アクロマさんは本当に呆れた様子でそういう。
けどオレは、そうではないと思った。
たしかにポケモンが居ても出来ないことがあるかもしれない。
けど、信頼関係、強い絆があればどうにでもなると思うんだ。
オレの甘い考えかもしれないけどさ。

「…なんでもできるのかは解らないですよ。でも、オレは出来ると信じたいです」
「君も、愚かな考えを持つのだね」
「愚かでもいいです。だって、オレは手持ちのみんなを信じてるから」

それじゃ、オレもヒュウ兄たちを追いますね。
そう言って、オレはアクロマさんと分かれて先に行ってしまった二人を追いかけた。
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Play12

ライモンシティを抜けた先、5番道路。
さあ進もうと足を踏み出せば、聞き覚えのある声に呼び止められた。
なんだろうと振り返ると、そこにはベルさんの姿。

「シオーン!いいところで出会ったね!これをあげようと思ってたの!」

相変わらずのテンションで、相変わらずそれだけを言って何かを手渡してくる。
何だろうと思い見てみると、それは秘伝マシン「空を飛ぶ」だった。

「どう?空を飛ぶの秘伝マシンよ!戦ってない時にその技を使うと今までに行ったことのある街にすぐに飛べるの!」

凄いでしょ、とベルさんはテンション高く身を乗り出していってくる。
たしかに、これがあればずいぶん移動が楽になる。

「ところで、シオン君は隠し穴って知ってる?」
「隠し穴?」
「あ、知らないか」

隠し穴っていうのはねー、木と木の間にポケモンが隠れそうな穴があるんだけど、その事だよ!

そう、ベルさんが教えてくれる。
そしてここにもありそう!と言うと、さくさくと一人歩いて行ってしまった。
オレは慌ててその後をついていく。

「あのね、向こうから声が聞こえたの!私耳良いんだよ」
「そうなんですか」
「うん!……あれ?たしかこの辺から物音が聞こえたんだけどなあ…」

うーん…と、ベルさんは地面にかがみこんで木々の間を探し回る。
オレも手伝いとばかりに同じようにして探していると、ベルさんが何か見つけたらしかった。

「うあ!ここ!!ほらシオン君、ここに入れそうな隙間があるよ!」

そう言ったベルさんの目前には、確かに入れそうな隙間が存在している。
入ってみて、とベルさんに促されるまま、オレはその穴へと入り込んだ。

入り込んだ先、細い通路のようになっている道を進むと、少しだけ開けた空間へと出た。
その空間の中央にはチラーミィの姿。
ベルさんはこんな場所にいるのだからすごいポケモンなのかも!と言ってはしゃいでいる。
他にも隠し穴があるかもしれないから探してみるといいよ、と言い置いた彼女は、そのまま外へと出て行った。


*****


あの後隠し穴にいたチラーミィをスルーして5番道路を進んでいたオレは、途中トリプルバトルを挑まれたりしつつも無事にホドモエにやってきた。
といってもまだ跳ね橋、別名をリザードン大橋を渡ったばかりなのだけれど。

すると、前方にいい加減見慣れてきた姿と見慣れない姿。
見慣れた姿、プラズマ団はもう片方の人物になにやら話しかけているらしい。

「なあ!前みたいに楽しく人のポケモン奪おうや!」
「だめだよ。人のもを取ったら泥棒だと身に染みて解ったんだ…」
「うるせえ!今更真面目ぶっても遅いんだよ!」

どうやらあの見知らぬ恰好の男性はプラズマ団の元団員の様だ。
今はプラズマ団を抜けたのだろう。

そのまま眺めていると、黒い服のプラズマ団は元プラズマ団の男性を突き飛ばし更に何かを言い募っている。
しかしそれに対して元団員の男性は首を縦に振る様子は見られない。
俺がしばらく静観していると、背後からヒュウ兄がものすごい勢いで走り寄ってきた。

「おい、話を聞かせろ!」
「やべ…っ」

ヒュウ兄は走ってきた勢いのままプラズマ団を突き飛ばすと、掴みかからん勢いで迫りよる。
しかしプラズマ団は戦うなとでも言われているのだろうか、ヒュウ兄に捕まえられる前に走り去ってしまった。

「待て!!」

ヒュウ兄は逃げたプラズマ団の後を追っていく。
取り残されたオレはしばらく唖然としていたものの、元団員の事を思い出して彼に近寄ると手を差し伸べた。

「あの、大丈夫ですか?」
「あ、大丈夫です!」

オレの手をとった元団員の男性は屈託なく笑っている。
さっきのプラズマ団の男性とは随分と違うようだ。

「すみません。あいつ、昔はプラズマ団で友人だったんです…」
「え」
「だけど、2年前ポケモンを救いたいと願うN様に従う者たちと、世界征服を企んだゲーチスのグループに分かれてしまって…」

つまり、プラズマ団は穏健派と過激派の二つのグループに内部分裂してしまったのだろう。
その時のさっきの彼とこの人は…。

「あ、よろしければ私たちの家へどうぞ。詳しい話を聞けますよ」
「え、いいんですか?」
「はい、どうぞ。ジムの隣、小高い場所にありますから」

是非、と言い残して元団員の彼は去って行く。

「これは、一度詳しい話を聞いた方がよさそうだね」
『はい。何やら事情も複雑そうです』

オレは隣で聞いていたリイヤと話すと、詳しい話を聞いてみようと彼の言った家へ向かうことにした。


*****


街中を散策しつつ言われたとおり小高い場所へと向かうと、先ほどの元団員とお爺さんが一軒の家の前に立っていた。

「あ、ロット様、ほら来ましたよ!」

こっちですこっち、と急かされたオレは、歩くペースを速めて件の家へ近づく。

「ほう、プラズマ団に興味があるのか」
「はい」
「私たちの話を聞いてもらえれば、理解してもらえるかもしれません…お客人、悪いがここに入るならあなたというトレーナーがどんな人物か見せて貰いたい」

バトルさせてもらいますよ。
そういって、ご老人、ロットさんはモンスターボールを構えた。


*****


勝負に難なく勝ったオレは、一息ついてシィマをボールに戻す。
と、どうやって俺を見つけたのかヒュウ兄がプラズマ団を取り逃がしたと言いつつ走り寄ってきた。

「そちら様は?」
「あ、ヒュウ兄って言って、オレの友人です」
「ご友人ですか。ならばご一緒に」
「ありがとうございます」

オレ達はロットさんの後について家の中へと入っていく。

「さて、改めて名乗りましょう。私はロット」
「……あんたらもプラズマ団だよな?さっきのプラズマ団と何が違うのか教えろよ」
「正しく言うなら、元プラズマ団だ。二年前の件をきっかけに、罪滅ぼしとして持ち主と離ればなれになったポケモンの世話をしている」

よく見ると、家の中のあちこちには元団員と同じ格好をした人たちと、ポケモンたちが居る。
ポケモン達のの表情は穏やかで、ロットさんが嘘を言っていないと判る。

「え、お前は?」
「オレはヒュウ。ヒオウギシティのヒュウ。5年前、お前らプラズマ団に妹の大事なポケモンを奪われた情けないトレーナーだよ…」

何が離れ離れだ!そうしたのはお前らだろ!!
ヒュウ兄はそう言って感情をあらわにする。
そんなヒュウ兄の様子に、ロットさんは本当にすまなさそうな顔で謝罪していた。
そして妹のポケモンがここにはいない事を知ったヒュウ兄はジムに行くと飛び出して行ってしまった。

「ヒュウ兄…」
「プラズマ団は、彼のようなトレーナーを…改めて悔やむ。何と愚かであったか…」
「ロットさん…」
「私たちのしたことは、たしかに謝っても謝りきれぬ。決して償いきれるものではないのだ…」
「……」
「シオン、君に一つ頼みがある」
「なんでしょうか?」
「ここに居るこのゾロアを、一緒に連れて行ってやってはくれんか」
「…え」
「きっと、私たちと共にいるよりは幸せになれるだろう。君ほどのトレーナーと共に在れるのなら…」
「……」

オレは、ゾロアを連れて行くことを了承した。
しかし手持ちがいっぱいだからと、一先ずポケモンセンターへと戻らせてもらったけど。

そして手持ちを一匹預けて戻ってくると、家の中にはだれもおらず。
代わりに居たのはソロアの進化形、ゾロアークであった。

「くあぁあぁん!!」

ゾロアの鳴き声に驚いたオレの脳裏に、色褪せたような色の映像が流れ込んでくる。

その映像は、現プラズマ団が元プラズマ団を戻ってくるように説得されたというもの。
今でもあのプラズマ団には多くの団員が残っているらしい。
映像の途中で団員が行ったギャグは全く笑えなかったが。
プラズマ団は、過去にしたことが今でも人々の記憶に根付き抜けたあとでも苦労しているのだ。
しかし、ここに居る人たちは本当に自分達の行いを悔いているのだとよく伝わってくる。
そしてそんな団員の話を聞いていた緑髪の青年。
きっと彼が、Nと言う人物なのだろう。

映像が途切れると、そこにはオレがポケモンセンターへ戻る前の光景。
部屋の中央にロットが居て、その隣にはゾロアが。
きっとさっきのは何かに化かされたのだろうと、そう思うことにした。

「ゾロア、オレと一緒に来てくれる?」
「きゅううん」

語りかけたオレに、ゾロアはひと鳴きする。
そっとモンスターボールを差し出すと、彼は赤い光に包まれてボールの中へと入って行った。

「これからよろしくな、ゾロア」

ボールに語りかけるとカタカタと揺れる。
そして微かに聞こえるこちらこそ、という声。

オレは新たに仲間になったゾロアのボールを腰のホルダーに掛け、元プラズマ団の家を出た。

Play11

足を踏み入れたそこは、どうやらステージを意識したつくりになっている様だった。
奥へとまっすぐに伸びる床。
その両側には多くの人がひしめき合っている。

オレは人々の注目を集めつつ、ステージを奥へと進む。

少し歩いたところには、モデルらしい女性が一人。
どうやら彼女を倒さなければ奥へと進めないようだ。

「それじゃ、アンディ…頼む!」
『おうよ任せろ!』

オレの手持ちには地面タイプが居ないからと先発を任せたアンディ。
エレキブルへと進化していた彼はやる気満々といった風に両腕を振り回している。

そんな調子のアンディのおかげで難なく倒した3人目。
彼女の背後に続くステージを進むと、急に辺りが明るく照らされた。

「うわ、眩しい!」

一斉にスポットライトが当てられたそこ、段の高いステージ奥には黄色いもこもこ。

「……もこもこ」
『もこもこですね』
『暖かそう』

人だという事はわかる。
判るのだがしかし、もこもこである。
そしてそのもこもこが、急に片手を上げて動き出した。

「な、なに…」
『マスター、あれがカミツレ様なのでは?』
「いや、カミツレさんと言えばまっきいろ…黄色?」

よく見ると、そのもこもこはいたる所にカミツレさんらしき印象を与えるものが。
うん、あの人がカミツレさんなんだ。
もこもこすぎて誰なのか全然わからなかった。

そんな本人言うには失礼な事を考えつつ、止めていた歩みを再開する。

『アンテナだな』
『アンテナですね』

リイヤと出したままなアンディは、オレ以外に聞こえないのをいい事に言いたい放題だ。
ちくしょう、オレもその会話に混ざりたいだなんてそんな。
驚きすぎてちょっとキャラ崩壊してるのはご愛嬌だ。

「ようこそ、私のステージへ」

カミツレさんの目前で止まったオレに、彼女が急に語りかけてくる。

「私の愛しのポケモンたちとあなたのポケモン、どちらが本物かここで競いましょう!!」
「望むところです!」

シャイニングビューティーの異名を持つだけの事はある。
凛としたその姿と美しさはさすがトップモデルだ。

カミツレさんはモンスターボールからポケモンを、オレは既に場に出ていたアンディを互いにフィールドへと繰り出した。


*****


「もう……あなたってば予想以上に素敵なトレーナーね」

やはりというかなんというか、オレは見事なまでに圧勝した。
アンディの特性で電気技を完封しつつ地震で倒す。
攻撃力の高いアンディの地震にカミツレさんのポケモンは耐えられず、彼女の切り札であったゼブライカにも梃子摺る事なく勝つことができた。

「ありがとう、アンディ」
『ま、俺にかかればこんなもんよ』
「ほんと、頼もしいな」

えへんと胸を張るアンディをひと撫でしてやり、ゆっくり休んでくれと声をかけてボールに戻す。

「あなた、シオンだったわね」
「あ、はい!」
「ふふ、惚れ惚れするようなバトルだったわ。なんだか、感動しちゃった」
「こっちこそ、カミツレさんとバトル出来てよかったです」

急に名前を呼ばれて慌てて顔を上げたオレに、カミツレさんはそう言ってくれた。
ジムリーダーにそう言ってもらえるのって、なんだかちょっと照れくさいけどやっぱり嬉しい。

「さあ、これを受け取って」

そう言ってカミツレさんからボルトチェンジと、彼女の好きだという技「ボルトチェンジ」の技マシンを受け取る。
これもなんだか恒例になってるよな…。
オレは受け取ったそれらを鞄に仕舞い、観客の視線や歓声を受けつつジムを後にする。

つもりが、またもや急に声を掛けられて歩んでいた足を止めた。

「ねえシオン、ぜひ私たちと」
「はあ…」

オレを追ってきたらしいカミツレさんはそう言い、隣へと立つ。

「それにしても、トレーナーとしての輝き…!それを備えているあなたなら全てのジムバッジを集めポケモンリーグへと行けるはず。その時あなたのポケモンはさらに眩しく輝くはずよ」

共にステージを入口へと向かいながら、カミツレさんはそう言ってくれた。
本当に、そうなのだろうか。
そうだったらいいな。
ポケモンリーグへ行けることは疑っていない。
だって、オレとオレの大切な仲間とでバッジを集めているんだから。
そこで、カミツレさんが言うように少しでも輝けたら、きっと素敵なんだろうな。

そして着いたジムの出入り口で、オレはカミツレさんにお別れを言って外へ出た。


*****


「さてと、次はどっち行けばいいんだろう」

ジムを出た俺たちはタウンマップを開いて次の行先を相談する。

『次はホドモエではないでしょうか』
「ホドモエ?」
『ここです、マスター』

リイヤが示したのはライモンの西側だ。
橋を渡り進んだそこにはホドモエシティと書かれている。

「次はここか…よし、行こう」
『はい』

タウンマップをたたみ鞄に片付け、オレ達は西ゲートを目指して歩いていく。

「待てよ。お前ら、ここで何してた?」

しばらく進みリトルコートまで来たとき、聞き覚えのある声が聞こえてきた。
自分の事かと思い咄嗟に声のした方を向くと、そこにはやはり見覚えのある後姿。

「ヒュウ兄?」
『何をしているのでしょうか』

そして気付いた。
ヒュウ兄の奥、彼と丁度対面するように黒尽くめの集団が居る。
あれは、間違いなくプラズマ団だ。

「別に?俺たちはただここに居ただけだ」
「逆に質問するが、俺たちがお前に何かしたか?」
「……何もしていない。だがな、人のポケモンを奪うお前らは絶対に許さない」

そこで一度言葉を切ったヒュウ兄はすうっと息を吸い込むと、静かな、しかし怒りのこもった声で言葉を放つ。

「言っておく。オレは今から怒るぜ!!」
「やれやれ…近頃のトレーナーは物騒だ」
「あれか?ポケモンの強さを自分の強さと勘違いでもしてるのか?」
「まあ、お前なんかどうでもいいけど、邪魔されたくないんでな!」

そう言うなりプラズマ団はヒュウ兄を取り囲んだ。
慌てて俺はヒュウ兄へと加勢する。

「ヒュウ兄!」
「シオン!?悪いが、頼りにさせてもらう!」
「うん、手伝うよ!」

オレはヒュウ兄の隣に立ち、モンスターボールを構えた。


*****


「くっそ、マジかよ!」
「まいったね。まさかお子様二人にやられるとは」

オレとヒュウ兄に負けたプラズマ団の下っ端は、悔しそうに言うものもあればまだオレ達を小馬鹿にしたような奴もいる。
そんな事など些細な事のように下っ端たちを睨み付けていたヒュウ兄に、下っ端の一人が肩をすくめてしかたない、と呟いた。

「その強さに免じて教えてやるよ。我々プラズマ団はある物を探している」
「ある物…?」
「それさえあればアイツは真の力を発揮できるんだ…」
「じゃあな!」
「あ、待て!」

言うなり下っ端たちは例の如く見事な逃げ足っぷりを発揮して姿をくらましてしまった。
相変わらず逃げ足だけはいい。
それにしても、ある物って、アイツって何なんだろう…。

「……5年前、さ」
「ん?」
「オレの妹さ、プレゼントされたチョロネコをプラズマ団に奪われたんだ…」
「……」
「オレもただのガキだし、なにもできなくて」

だから、強く。もっと強くなりたい!

そう言って俯いたヒュウ兄の顔は本当に悔しげで。
ヒュウ兄が強くなりたいと望む裏にはそんな事があったのだと、初めて知った。

「けど、さすがだな!お前にはセンスがある!さてと…!」

パッと顔を上げたヒュウ兄はいつもの頼れる兄のような顔に戻っていて。

「お前のポケモン、回復してやるよ」
「ありがと」
「いいか、お前は図鑑を埋めつつもっと強くなってオレをサポートしてくれよ!」
「うん」
「これからも頼むぜ!」
「任せて」

あんなヒュウ兄を見たら、断るなんてできないよね。
正直プラズマ団を前にした時のヒュウ兄は少しだけ怖いけど、でもすべては5年前の事が原因だったんだ。
だからオレは、ヒュウ兄を手伝いたいと思った。

「……いこっか、リイヤ」
『はい』

しばらく立ち尽くしてからようやく、オレはリイヤに声をかけて西ゲートを潜り抜ける。

Play10

俺がライモンシティに到着して早2週間。
オレはこの間リトルコートやビッグスタジアムに行ってはトレーナーと戦い、手持ちのレベルを上げたりしていた。
このライモンシティは不夜城ともいえる場所で、ネオンの消えることのない街だ。
娯楽施設の多く立ち並ぶ通りを抜けて、オレは一つの建物の前まで来た。

この建物は、ギアステーション。
何でも廃人と呼ばれる人たちが集まるバトル施設なんだとか。
廃人って、あの廃人だろうか。
ちょっと怖い気もするが、興味が湧いたのだから行ってみたいと思うのは人の性だろう。

そして辿り着いたギアステーションでは、入り口に誰かが立っている様だった。

「わ、わ、凄い!」
「…?」

こちらに背を向けているお団子頭の女の子が、なにやら興奮した様子ではしゃいでいる。

「こんなところにサブウェイマスターがいるなんて!ギアステーションで一番強いトレーナー!」

凄い凄いとはしゃいでいたその女の子は、さっきまで興奮したように飛び跳ねていた体をピタリと止めた。
すると突然こちらにくるりと向き直り、オレに詰め寄ってくる。

「あのねあのね!2vs2なら特別にバトルしてくれるんだって!」
「へ…?」
「だから私と一緒にバトルしてよ!」

急に詰め寄られそう誘われたオレは、その勢いに思わずYESと答えていた。

「やった!ありがと!ってことでサブウェイマスターさん、挑ませてもらいます!」
「本来このような場所での勝負はイレギュラーですが、これも何かの縁。戦う事でみえることもあるでしょう。ではクダリ、何かありましたらどうぞ」
「ルールを守って安全運転!目指すは勝利!出発進行!」

そのまま再び前を向いた彼女、メイという名の少女はサブウェイマスターへと勝負を挑む。
彼女の目前、同じデザインの白と黒の色違いのコートをまとう男性二人は、口上を述べると互いのボールを手に取った。

「ラグーン、お前の初陣だよ。頑張ろう」
「ぎゅううう!」

最近手持ちとしてやってきたモノズの頭を撫でて、バトルフィールドへと送り出してやる。
ラグーンは元気に鳴き声を上げると、やる気満々でフィールドへと出て行った。


*****


「ブラボー!あなた方のバトル見せていただきましたよ!ですが一言。あなた方はまだ上を目指せます!」
「ボククダリ!ノボリと一緒に負けちゃった。君たちのコンビネーション最高!ものすごく強いトレーナー!」

はい、これお小遣い。
そう言ってバトル報酬を貰ったのだけど…。

「あの、すみません…」

そう言ってそっと目線を逸らしながら、オレはラグーンの首にかかるソレを示した。

「えー…お二人とも、次は是非ともこの地下鉄で、電車に乗ってバトルをいたしましょう」
「ボクたちいつでも待ってるよ!」

2人はラグーンの首にかかるソレ、お守り小判を見ると顔を引くつかせ最初のお小遣いの倍額を支払ってくれた。
なんというか、申し訳ないです…。

そしてお小遣いを渡し終えたサブウェイマスターの二人は、彼らの支配する地下の世界へと帰って行った。

「すごかった…!さすがサブウェイマスター!もっと鍛えていつか本気のサブウェイマスターと戦いたい!ありがとね!えーっと…」
「シオン。オレはシオンだよ」
「シオン!これは気持ちよ、受け取って!」

メイはそう言って、オレにバトルレコーダーを渡してきた。
どうもこれはバトルの様子を記録できる媒体らしい。
使い道はそれなりに有りそうだ。

「シオン、あなたと一緒に戦うのとても面白かったよ!また付き合ってくれると嬉しいな」

じゃーね!と言い残して、彼女もまたギアステーションへと姿を消した。


*****


「さてと、オレタチはどうしようか?」

サブウェイマスターの2人とメイが立ち去った地上で、オレは次にどうしようかと考える。
きょろきょろと視線を彷徨わせたオレの目に映ったのは、大きな観覧車。
そういえば、まだあそこには行っていなかったのだと思いだす。
たしかあそこにはライモンジムがあるのだ。
いい加減行かなければいけないと思い、オレは観覧車の見えるエリアへと足を向ける。

『そう言えばマスター』
「うん?」
『ここのジムリーダーはどんな方なのでしょうか』
「このライモンシティのジムリーダーはカミツレさんっていって、イッシュのトップモデルなんだ」
『トップモデル?』
「あ、判んないか。なんて言ったらいいかなー…とっても有名な人、とでも言えばいいかな?」
『うーん…凄い人、ということはわかりました』

まだ生まれてそれ程経っていないから、よく判らないのだろう。
オレは「それだけでも判ればいいよ」と言ってリイヤの頭をなでてやる。

しばらくして、オレ達はライモンジムのある遊園地へと到着した。
リイヤは初めて見る光景に心なしかわくわくしているようだ。
そのまま入り口でパンフレットを貰い、ジムがある奥を目指す。
そして辿り着いたジムの入り口には誰か人が立っているようで、誰だろうかと首を傾げながら近づいてみることにした。

「やあ、君か!」
「あ、ガイドーさん」

そこにいたのは、各地でジムの案内をしているガイドーさんだ。
お久しぶりです、と挨拶をするとガイドーさんが今ここにカミツレさんはいないと教えられた。
どうやらここに来る途中にあった旧ライモンジムにいるらしい。
カミツレさんとバトルするためにも、オレ達はその建物へと一度引き返すことにした。

「なんで、ジェットコースター…」

引き返して辿り着いた旧ライモンジム。
その内装はというと、ジェットコースターであった。
おれ、あんまり得意じゃないんだけど…。

旧ライモンジムの入り口に立っていた男性の話によると、カミツレさんはここの奥にいるらしい。
つまりはこのジェットコースターを乗り越えて行けと。
無理だ、絶対無理。
あ、ちょ、やめてリイヤ本当に無理だって俺は乗れないからあああああ!

立ち尽くしても意味がないと、オレは容赦なくリイヤに引きずられ目の前に丁度到着したジェットコースターへと載せられた。
出発したジェットコースターはオレの情けない悲鳴を尾にし、走り去る。
入り口に立っていた男性がポケモンに無理やり乗せられ悲鳴を上げて去って行くオレを憐れそうに見ていたことは、オレ達の知らない事だ。

「で、なんでトレーナーが居るんだよ!」
『それはやはり、旧事務だからではないでしょうか』
「正論をありがとうリイヤでもオレの言いたい事はそれじゃなくてっ!」

旧ジムの奥に進むと現れたトレーナー。
彼らに圧勝したオレは、思わず叫び声を上げる。
だってそうだろうテンション高く話しかけてきたと思ったら突然バトルになるだなんて誰も予想していない。
しかもデジャブすぎる。

だらだら文句を垂れ流しつつ奥へと到着したオレは、周囲を見渡す。
しかしどこにもカミツレさんらしい姿が見えない。
何故だろうと思っていたら、照明の奥、他より暗がりとなっている場所から一人の女性が姿を現した。

「ここにカミツレさんはいないわよ」
「え、それじゃ」
『入れ違いというやつですね』

せっかく嫌いなジェットコースターに乗ってきたのに、目的の人物はもう既に帰った後の様だった。
仕方ないかとオレ達は入り口直通のジェットコースターに乗って来た道を戻る。
そして戻ってきた現ライモンジムに、オレは足を踏み入れた。

Play9

心の準備(笑)をしたオレは、彼が待つと言った4番道路へ歩みを進めている。
だって、誰でもさっきまで普通に?話していた人がバトルを仕掛けてきたら驚くと思うんだ。
オレは悪くないオレは悪くない。

そうしてゲートを超えた先、4番道路を進んでいるといつもの様にトレーナーに捕まってしまいなかなかさきに進めない。
おまけに良いかm…違った、何度も挑んでくるトレーナーがいるものだから、ついつい律儀にその度にバトルをしてしまい、気付いたら何日も経ってしまっていた。

さすがにこれは不味いと慌てて道路の先へと進む。
確実にというか、ヒュウ兄の二の舞をやらかしてしまって非常に気まずい。

「待ってましたよ!」

進んだ先にはやはりというか、砂まみれになったアクロマさんの姿。
まさかとは思うがこの一週間近くこの人はずっとここにいたのだろうか。
砂まみれとなっているアクロマさんのかおは怖いくらいの形相となり、申し訳ない気持ちしか浮かんでこない。

同じことをもう繰り返さないかと聞かれたら、断言できる自信はないけど…。

「どうしました?私の後ろが気になりますか」
「いえ…あの…」
「これは岩ではなくイワパレスというポケモンです」

アクロマさんは気まずそうにしているオレに構わず話を進める。
なんというか、大人な対応だ。
絶対怒られると思っていたのに。

「見てください。私が作ったポケモンを活性化させる装置で…」

そのままオレをスルーしてイワパレスに近づいたアクロマさんは、道路の真ん中にうずくまっていたイワパレスに何かの薬品をかけている。
するとさっきまでピクリともしなかったイワパレスがむくりと起き上がったかと思うと、向きを変えて道路の奥へと消えていった。

「…イワパレスたち、岩を背負ったままここで力尽きたのでしょうか?」
「珍しい、ですね。野生のポケモンが、人通りが少ないとはいえ道路の真ん中でなんて」

オレも同じように道路の奥を見やる。
野生のポケモンは警戒心も強いし、普段はこんなところに居ないのだけど。

「さて…彼のプラズマ団は言いました」
「…?」
「ポケモンの持つ可能性を認め、人間から解放すべきだと。しかし、わたくしはそうは思いません!むしろ人間はポケモンが秘めている能力を引き出すべきなのです!」

突然語りだしたアクロマさんは、なんだか一人テンションが高くなっている。
自分の好きな事だからだろうか、目も子供みたいにキラキラしている。
以前会った時と一緒だ。

「そういえば、あなたの名前を聞いていませんでしたね」
「え、ああ…オレはシオンです。ヒオウギシティのシオン」
「シオンさんですか。その名前、憶えておきましょう!」
「ありがとう、ございます?」
「ではあなたがポケモンの力を引き出せるトレーナーか確かめます!」
「はい」
「今度は断らないで下さいよ!もう砂まみれになって待つのはごめんですので!」
「いやあの、この前は唐突過ぎてびっくりしただけですから!今回はちゃんと受けますって!あとごめんなさい!」

やっぱり根に持っていたらしい。
そりゃ砂漠に約1週間だもんな。
うん、後でもう一度謝ろう。

そう心に決めつつ、オレはモンスターボールを宙へ放る。


*****


「なるほど!」

アクロマさんとのバトルを終えての彼の第一声。
新しい事でも発見したかのように、アクロマさんの声が弾んでいる。

「あなたは各地のジムリーダーたち、あるいはポケモンリーグにいる四天王とチャンピオンのようにポケモンを大切にすることでその強さを導き出す。そういったタイプの人たちに似ているようですね」
「うーん、ポケモンの強さ云々は判らないですけど、大切にしてるのは確かですよ」
「ふふ、あなたは意識していなくとも、あなたのポケモンはあなたのその気持ちによってたしかに強さを引き出されている。恩に着ます。これはお礼ですので受けとってください」
「あ、ありがとうございます」

オレはお礼と言って渡されたタウリンを受け取る。
初めてじゃないだろうか、こうやってちゃんと渡してくれた人って。
研究の事となると少々着いて行きにくい感じの人だけど、根は真面目でいい人なのかもしれない。

「ああ、それにしても悔しいです!ポケモンの能力を引き出す、そのためにポケモンと会話できればいいのですが!しかし…そのような人間が世界にいるわけがない…」
「……」

これは、間違いなく確実に言わない方がいい…よね?
オレがポケモンと会話できるなんて知られたら、なんだか研究対象にされてしまいそうだ。
それにしても本当に悔しそうな顔をしてるな、この人。

「それではシオンさん、またお会いしましょう。今日は本当にありがとうございました」
「い、いえ…お役にたてたのならそれで…」

そうして去っていくアクロマさんを見送ったオレは、途中リゾートデザートと古代の城に寄り道をしていよいよ次の街、ライモンシティ方面へと進む。
高速道路の下を通り真っ直ぐ進むと、ジョインアベニューという場所に辿り着いた。
中に入ってみると数人の男女が集まって何やら話し込んでいるようだ。

「うーん、困ったな…ボクも忙しいし…」
「ですよね。いったい…どうしましょうか」
「「!」」
「ちょっと君!」
「え、オレですか?」
「そうだよ君だよ!ジョインアベニューへようこそ!とは言っても、ご覧の通り今は何にもないただのストリートだけど」
「はあ…」

たしかに、通りの左右を見ても何もない。
建物も見受けられるが人の姿はオレの目の前にいる男女くらいのものだ。

「おっと、失礼!申し遅れたね、僕はこのジョインアベニューのオーナーなんだ。マイドリームは多くの人で賑わう街を世界中につくる事!でも…ここを管理する人が来れなくて困ってるんだよね」
「そうなんですか。それはお気の毒に」

世界中に街をつくる、なんだかすごい話だな。
でも今この人が言ったみたいに管理する人が居ないとどうにもならないだろうに。
おまけにここは砂漠地帯。
管理する人が居てもちゃんと町として機能するのだろうか?

「しかし僕はビビッと来た!」

そんなことをぼんやり考えていると、オレの顔をジッと見つめていたオーナーさんはカッと目を見開いたかと思うとズズイとオレに詰め寄りそう言った。
ちょ、顔近いですってか怖いですその見開いた目!

「君は見たところトレーナーで各地を巡っているね?」
「ええ、ジムバッジを集めてますけど…それが何か?」

やんわりと距離を取るように自身の前に腕を出すとオーナーさんは大人しく後ろに引き下がってくれた。
よかった、あのまま詰め寄られてたら逃げ出しかねない。
それくらいの迫力があった。
そして彼を引き離すと同時に彼の質問に答える。
正直、またもや嫌な予感しかしないのだけれど。

「そこでだ!色んな人と出会える君に頼みたいことがあるんだが…」
「あー、お断りは…?」
「残念だがないよ!で、君、ここの管理をやってみないかい?というかやってくれるね?」
「はい…」

案の定というかなんというか、オレはここの管理を任されてしまった。
拒否権なしって、まだ10代前半のオレにちゃんと管理ができるのか疑問だ。

「ありがとう!それじゃ、きみという人間を教えてくれないかい。世界のみんなに教えたい口癖は?」
「口癖…ですか」
「そう、なんでもいいよ。ただし、この口癖は世界中の人に知られるから、慎重にね?」
「うえ!?」

世界中って、まじですか。
うう、口癖か…

「えーっと…『なるようになる』かな?」
「なるほど!じゃあ、思わず感動した時はなんて言う?初めて会う人にも伝わるグローバルなセリフでよろしく!」
「こ、今度はグローバル…」

うーん…感動した時か。
感動した時、感動した時…

「す、『すっげー!』…かな」
「ほうほう……うん!思った通りだ!君しかいない!君以外に有り得ない!」

一体何が思った通りなのか今一よく判らないが、何かとりあえずオレの回答はオーナーさんの満足いくものだったらしい。

「あ、オーナー!そろそろ次のお仕事のお時間ですが…」
「おっと、そうだった。秘書たちよ、そういう事だから後の事はよろしくー」
「はい、行ってらっしゃいませ」

オーナーさんはそういうと、OL風の女性(秘書だろう)を連れて此処、ジョインアベニューを去って行った。

「いったい、なんだったんだ…」
「さて、と…」

オレがオーナーさんたちの去って行ったほうを見つめそう呟くと、背後から女性の声が聞こえてくる。
その声に再び正面を向いたオレの目の前には、エリートトレーナーのような恰好をした1組の男女。

「はじめまして、あなたの事を何とお呼びすればよいでしょう?」
「あ、普通にシオンさんでいいですよ…?」
「シオンさんですね。あなたはこの町の責任者です。まだ何もないこの街をたくさんの人が行きかう素敵なアベニューにしてください」
「は、はい」
「街を発展させる方法はこれから説明します」

そう言って女性の方がまだ何も知らないオレに色々と教えてくれた。

1.人を呼ぶためには便利で役立つ施設をつくるのがいい
2.人を招待してみる

ということで、早速アベニューに来た人を招待してお店を出してもらった。
そうやらポケモンのレベルを上げたり能力の基礎値を上げるお店らしい。

「おめでとうございます!立派なお店が立ちましたね!」
「そう、ですかね…?」
「しかし、お店を作ってもお客様が来なければ意味がありません。」

3.お客様にお店を紹介する
4.アベニューに来た人に話しかけて案内をする

先程同様アベニューに来てくれた人を、今度は客として出展されているお店に案内した。
するとどうやらお店の人気度というものが上がったらしい。

2人はその後簡単に他の事を説明するとオレのオフィスだという建物へと去って行った。
それを見送ってからオレは(完全に放置をする気はないけど)アベニューは後回しといった感じに通りを抜けて、いよいよライモンシティへと到着した。
ライモンジムのジムリーダーに勝てば残るバッジは4つとなる。

次も頑張るぞと気合を入れて、夜も遅いからと一先ずポケモンセンターへと向かうことにした。


Play8

私用で4日間ほど帰省していたオレ。
何をしていたかって?
新しいポケモンを貰ってレベル上げたりしてました。
そんなわけで新しい仲間を紹介します
エイパムのシィマ、♂。
特性ものひろいで色々な道具を持ってくるいい子です。

『マスター、そんなこと一人でぶつぶつ言ってる場合じゃないと思います』

オレが独り言を言って現実逃避をしていると、リイヤがそう声をかけてきた。
せっかく現実逃避していたのに、ってそんな場合では実はなくて。

「おっまえ4日間もどこで何してたー!」
「いや、ちょっと、色々と…てか気持ちわるっ…」
「うわちょ、吐くなよ!?」

オレが帰省している間下水道で一人待たされていたヒュウ兄に胸元掴まれガクガクと揺さぶられている現状です。
下水の臭いと相まって気分が悪く…あ、ちょっと本気でまずい。

オレがさらに顔色を悪くした時点でヒュウ兄はようやくオレを離してくれた。
いや助かった、本当に。

「ったく。シオン!お前には強くなってもらう!」
「え、急に何?」
「さすがにオレ一人でアイツらとやり合うのはキツイからな……」

どうやらオレは幼馴染のよしみ?でなにかに協力することが決定しているらしい。
もっとも、その“何か”がなんなのか、大体の予想はつくのだけれど。

「大丈夫だ、安心しろ!ポケモンは俺が回復してやるからな!」
「え、あ…ありがとう?」
「それじゃ、プラズマ団を探すぜ!」
「う、ん…」

最初から目的はそれだったわけで、つまりは一緒にプラズマ団を探し出してボコるというわけだ。
なんだか旅に出てからヒュウ兄の知らなかった一面をたくさん見ている気がする。
そんな事を考えながら、オレはヒュウ兄に急かされるようにして下水道の奥を目指した。


*****


あれから数時間、オレはまたヒュウ兄に「探す気有るのか!?」と揺すぶられる羽目になった。
失礼な、強くなれって言ったのはヒュウ兄なのに。
だからこそ俺はさきに進まず入り口付近でひたすら手持ちのレベルを上げていたのだ。
ちなみに現在は全員レベル20以上だ。
頑張ったと思うがまだ上げたりない。

しかしヒュウ兄もいい加減先に進みたいようで、一先ず集中してレベルを上げるのはこの辺でいいだろうとさきに進むことにした。
そして初めから怪しそうだと踏んでいた区画へと足を踏み入れる。

そこには、予想通りとでも言おうかプラズマ団が居た。
人数は2人。

「おい!」

ヒュウ兄がいきなり大声で呼びかける。
相手も驚いたようだが、隣にいた俺もびっくりした。
ヒュウ兄ってば本当に元気だ。

「なんだ?おまえら」
「……プラズマ団、この悪党ども」

このプラズマ団員はタチワキシティに居た奴らとは別人なのだろうか。
どうやら俺たちの事を知らないらしい。

そうこうしている間にプラズマ団はポケモンを繰り出してきて、バトルとなった。
こちらも相手も2人ずつで、マルチバトルをするようだ。
オレは手持ちの先頭にしていた雨調(あまつき)を繰り出す。

「雨調、メグロコに熱湯!」

メグロコは地面タイプだから、水タイプの熱湯はひとたまりもない。
メグロコはあっけなく戦闘不能となった。
もうひとりのプラズマ団のズルッグも呆気なく倒される。

「あ、賞金は倍額で」
「鬼!」

勝ったオレたちは雨調の首に下げられたお守り小判をちらつかせしっかり賞金を頂きました。
まだまだ駆け出しだからお小遣いが足りないんです。
ありがとう。

「くっそ、こいつら強いな!」
「ああ、それに鬼だ!」
「うん、最後のそれは必要ないよね?」
「ま、まあいい!必要なポケモンは手に入れた!ここは引き上げるぞ!」
「おう!」

いくらか動揺していたようだが、さすがとでもいうべきか。
彼らはしっかり引き際も覚えているようで、またもや逃げられてしまった。
逃げ足だけは本当に早い。

「っく、また逃げたか!逃げ足だけは本当に早いな!シオン、まだ奥に居るかもしれない。探すぞ!」
「うん」

そうして俺たちは下水道のさらに奥を目指そうと体を反転させたところで。

「君たち、その必要はないっぽいよ」

何処からともなく声が聞こえた。

「「!」」

オレたちが目指そうとした下水道の奥、そこから一人の男性がやってくる。
茶色のムディアムヘアに緑の服と赤いマフラー。
この奇抜ともいえる服装の男性は…。

「もしかして、ジムリーダーのアーティさん?」
「うん、そーだよー。ボク、アーティ」

さきにその正体に気づいたらしいヒュウ兄の問いかけに、アーティさんはなんとも気軽く答えてくれた。
アーティストってみんなこんな感じなのだろうか?

「でね、この先だけど、怪しい人はいなかったよ」
「そうなのか…?」
「そうだよー。ボクさっきまでこの奥にいたからね」

でも、プラズマ団についてはボクも警戒しておくよ。
そう言ったアーティさんの顔は、やはりジムリーダーらしくキリッとしていた。
それ以外はなんだかちょっと気のに抜けたような顔だったのに。

「それよりもここから出ない?下水道ってなんだかムシムシするからね」
「そうだな。さすがに4日以上下水道にいたら臭いも移るし気も滅入るし…なぁ?シオン」
「………」
「何かあったのかい?」
「いえ、なんでもないです」

まだ根に持っているらしいヒュウ兄は、笑顔なのに全く笑っていない目でもってオレを見てきた。
さすがにオレは何も言えず沈黙するしかなかったのだが。
そんなオレたちの遣り取りを不思議に思ったのか首を傾げたアーティさんを促し、オレたちは下水道を出ることに。
ヒュウ兄はオレに手伝ってくれてありがとうと言うと秘伝マシン「かいりき」を渡すとさっさと行ってしまった。
余程耐えかねるらしい。
オレたちも下水道を出ようとすると、またもや奥から声がする。

「そこの君!プラズマ団相手にパートナーのポケモンの能力を引き出した見事な戦いぶりでしたね!」
「は、はあ…」
「いい!すばらしくいい!そして面白い!なるほどです」
「……?」
「今の、誰?」
「さあ…?」

またもや変な人と遭遇してしまった。
どうしてこうオレの周囲には変な人が多いのか。
さっぱり謎だ。

「まあいいや。君はどうするの?ここでこのままポケモンを鍛えるも良し、ボクに挑戦するのもいいかもね」

そういうと、アーティさんはじゃあねと言って去っていった。
オレはここの奥に少し興味があるし、レベル上げも兼ねてもう少し進んでみようと思う。
回復薬は生憎あまり持っていないから程々の所で。

もうちょっと付き合ってくれ、と腰に下げたボールに向かって言うと、相棒たちは答えるようにボールを揺らした。


*****


すっかり夜も更けたころ。
オレはようやく下水道から出てきた。

あの後ひたすら下水道で手持ちのレベルを上げること数時間。
ずっと下水道の奥の洞窟でレベル上げに勤しんでいたおかげで、みんなのレベルもそれなりに上がった。

あとはジムでレベルを上げればいいだろうとオレはポケモンセンターによってからジムへと向かうことにした。

「で、このジムのこれはどういうこと?」
『繭、ですね』
『よく燃えそうだなー』
「……燃やすなよ?」

入ってみたヒウンジムの内装はというと、辺り一面真っ白の繭だらけだった。
うん、たしかアーティさんは蟲使いだったはずだがいやそれにしてもこの内装はないだろう。
タチワキジムもライブハウスと大概ぶっ飛んだ内装だったがこれはこれでオレの予想斜め上の内装だ。
何故ジム内に巨大繭がゴロゴロしているのか。
あいた口がふさがらないとはまさにこのことだろうと思いつつ、いつもの如くガイドーさんから美味しい水を受け取って奥へと歩みを進めてみた。

「うおわあ!?」

一先ずと、手近な繭に近づいてみると。
突然強力な力で吸い込まれてジムの上階へと上げられた。

「い、いったい何が…」
『わー、ふっしぎー♪』
「とんとろ、燃やすなよ?」
『さすがに燃やさないよー』

そんなやり取りをしつつ、ジム内の探索…違った、攻略を目指す。

途中で繭を突き破って出てきたピエロにはとても驚かされた。
てっきり何もない繭だと思って近づいたものだから通常よりその驚きは大きい。
リイヤはどうも判っていたみたいで、そんな俺の反応を見て溜息をついていたけど。
判っていたなら教えてくれ。

しかしそんなこんなでどうにか辿り着いた最上階。
いよいよアーティさんとバトルだ。

やっぱりジムリーダーは強い。
オレの手持ちのほうがレベルは上だったけど。

シィマのレベルを上げたくて他の子には悪いけど出さずに頑張ってもらっていたら危うく瀕死にさせかけたのはここだけの秘密。

それでも比較的楽にアーティさんに勝ったオレは、戦ってくれた仲間を労いつつポケモンセンターで体力を回復させると、次の街へ行くためにゲートを目指した。
途中、広場を通りかかったのだけれど。

「!先程のあなた!」

下水道で出会った男性に声を掛けられ、捕まった。

「差支えなければ、あなたのポケモンを見せて貰いたいのです」

そう言って、リイヤの顔を覗き込む。
当のリイヤはというと、居心地悪そうに顔を顰め後ろに一歩下がる。

「何もしないのなら…いいけど」
「感謝します!」

彼の目は子供のようにキラキラしていて、断るのも忍びないかなと思ってリイヤには悪いが承諾すると。
彼はさらに目を輝かせて前後左右からリイヤを観察し始めた。

「ほーう…なんとまあ!あなたのリオルは同じ種族のポケモンよりも自身に溢れていますね!」
「そりゃ、大切な相棒だし。な」
『はい』

少し照れくさかったけどそう言ってやると、リイヤも嬉しそうに「ガウ!」と鳴いて答えてくれた。

「だが…あなた自身はまだバッジが3個のトレーナー…グレートです!理由は不明ですがあなたはパートナーであるポケモンの力を引き出している」

彼はなんだか自分の世界に浸りかけているのではないだろうか。
ぶつぶつと呟いたかと思うと突然大きな声を出しと、広場とは言え夜遅い時間にこれは迷惑になっているのではないだろうか。
承諾したとはいえ、早く立ち去りたいのだが。

「おっと、失礼!わたくしはアクロマという科学者です。「ポケモンの潜在能力は何によって引き出されるのか」という研究をしておりまして」
「はあ…」
「ポケモンの力を最大限に引き出すのは一体何なのか。トレーナーとの絆?それとも別の手段なのか?」
「オレは…絆だと思いますけど」
『私もそう信じていますよ』

彼、アクロマさんには聞こえていないだろうけど。
オレは隣にいるリイヤを見下ろしてそういう。
だからなのか、次にアクロマさんが言った言葉をうまく理解することが出来なかった。

「ですからそれを、あなたとバトルすることで確かめようと思います!」
「へ?」
「よろしいですね?」
「え、ちょっ…待った!」

突然のバトルに突入しそうだったその雰囲気を、うまく状況が飲みこめていなかったオレは慌てて止める。
するとアクロマさんは「ではこの先の4番道路でお待ちしております」と言い置いて去っていった。
よかった、あの人がちゃんと人の話を聞いてくれる人で。

オレは心の準備(笑)をしてからアクロマさんが待つと言っていた4番道路へ向かうことにした。

Play7

さて、ホミカちゃんに言われて逃げたプラズマ団を追い20番道路に来たオレたち。
しばらく草むらや橋の向こうを探したりしつつサンギタウンの方向を目指す。

と、逃げたプラズマ団の内の一人を見つけた。
彼女(唯一居た女性だ)もこちらに気づいたようで、しつこいと言いつつバトルを仕掛けて来られた。

「チョロネコ、行ってくれ」
『OK!』

偶然にも相手が出したポケモンもチョロネコで、同じ♀。

『なによあんた、やるっての!?』
『そっちこそ、私にやられたって知らないんだから!』

互いに顔を合わせ睨み合った彼女たちはそんなことを言い合っている。
女性って、怖い。
もっとも彼女たちはポケモンだけど。

一進一退の攻防を続けていた彼女たちだけど、勝ったのはオレのチョロネコだった。
負けた彼女はというと、「プラーズマー」とか変な声を上げて仲間は海の方にいるんだった!と言って逃げ去った。
逃げ足だけは本当に早いなと、思わず感心してしまう。

するとヒュウ兄も駆け付けたようで、海という事は船だから戻ろうということになった。
此処から一番近い港はヒウンシティらしい。
このイッシュでも指折りのビジネスシティであるヒウンシティは隠れるところがたくさんあり、探すのは一苦労だろう。
けれど今からならまだ間に合うかもしれないと、オレたちは慌てて元来た道を戻る。


*****


タチワキシティに戻り先のバトルで傷ついたチョロネコを一先ずは回復してやる。
どうやらさっきのバトルでレベルが上がり追い打ちを覚えたらしいチョロネコは、どこか誇らしげな顔だ。

ポケモンセンターを出て、船に乗るのだから船乗り場だとオレはそこへ足を向ける。

辿り着いた船着き場には、ホミカちゃんとそのお父さんが居た。
何やら話し込んでいるようでそっと聞き耳を立ててみる。

「あの映画、私はよかったと思うよ」
「……観たのですか?」

うーん…これは、邪魔しちゃいけないよね。
そっと傍にいたリイヤたちに視線をやると、彼らも同じ気持ちの様だった。
口の手を当てて静かにしているその仕草が何ともかわいい。

するとどうやら気付かれたようで、ホミカちゃんはちょっと照れくさそうに「みちゃった?」と言ってくるものだから。
ちょっと気まずくなって視線を逸らしつつ「…うん」と答えた。

「プラズマ団は、全員逃げたみたい」

互いにちょっと気まずくなっていたから、急に話題を変えたホミカちゃんに助かった。
おれはやっぱり全員逃げたかと思いつつ、ホミカちゃんの話を聞いている。

「あ、バタバタしちゃったけどヒウン行きの舟に乗れるよ」

そう言い残してホミカちゃんはその場を立ち去る。

オレも逃げたプラズマ団を追うことになっちゃってるし、舟に乗る手続きをするため建物の中へと入った。
すると先に到着していたヒュウ兄も居て、一緒に船に乗ることに。
舟はオレたちを乗せて海を滑るように走り、いくらもかからない内にヒウンシティへと到着した。

船着き場から見上げたビルは本当に高い。
この街で本当にプラズマ団が見つけられるのか怪しいが、やる気になっているヒュウ兄一人を行かせられるわけもなくて。
オレはヒュウ兄とライブキャスターの番号を登録し合ってその場で分かれた。

オレたちが乗ってきた船着き場の正面には黒い帆船が停泊していて、それが少し気になりつつもオレも街中へと繰り出していく。


******


船着き場を出たオレたちは、なぜかピエロに捕まった。
オレって、誰かに捕まるのが運命なのだろうか。

するとなんだか一人で喋っていたピエロに自転車を貰ってしまった。
本当にこの世界の人たちは人の話を聞かず色々な物を押し付けてくる。
大概は役に立つからいいのだけれど。

しかもなんだかヒウンラリーに参加することになっているし。
プラズマ団を探さなきゃいけない事だし、ついでにやってみようか。

あちこち見て回りつつ、ポケモンの姓名判断のお爺さんが居たから手持ちの名前を占って変えてもらう。
リオルはリイヤ、チョロネコはチョロ、エレキッドはアンディ、ミロカロスはあまつきと、名付けてもらった。
みんな素敵な名前を付けて貰えてよかったね。

そのままビルを出て道を歩いていると、ジムの看板を掲げた建物を見つけた。
近寄ってみるとジムらしき建物の入り口に男性が立っている。
どうやらここは本当にジムらしく、しかもジムリーダーのアーティと言う人は「事件かもしれない!」といって飛び出していったらしい。
オレは何故か嫌な予感がすると共に、その男性に「探してきてほしい」とまたもや頼まれごとをされてしまった。
するとアイリスという名前らしい少女がやってきて、あきれた様子で「アーティっていっつもどこかに消えてない?」と言っている。
どうやら親しい中だということが伺えるのだが、この少女はいったい何者なのだろうか。

そのままオレは何者なのかを聞かれ、プラズマ団を探している事を伝えるともう解散しているはずだと言いつつも心当たりの在りそうな場所を探してくれるという。
とても親切な少女だ。

アイリスちゃんの後をオレは着いて行く。
すると「怪しい場所と言えば下水道!」といってヒウンシティの端、下水道へと案内された。

まさかここに入るのかと頬を引くつかせるオレに、運命というやつは無情なもので。
ヒュウ兄までやってきてはもう入らざるを得ないわけで。

さっさと1人下水道へ入っていったヒュウ兄を追って、オレも入っていくのだった。

Play6

いくつか撮影をしてみて満足したオレは、みんなを連れて元来た道を戻る。

ゲートを抜けてタチワキシティに戻ってきた。
そのまま街の中を散策していると、町はずれでヒュウ兄を見つける。

「あれ、ヒュウ兄だ。タチワキシティに居たんだ」

ヒュウ兄の姿を見止めたオレは、声を掛けようと近づいていく。
するとヒュウ兄の傍に小柄な影がある事に気付いた。
よくよく見ると、その小柄な影はホミカちゃんの様だ。
どうして2人が一緒にいるのだろうと不思議に思って更に近づいてみると、2人の他にまだ人影がある事に気付く。

建物の影、町の端に黒尽くめの影が3つ。
どこかで見た事のある影だ。
ゆっくり近づいていくと、その影が以前牧場で見かけたのだと気付く。

「あんたら……もしかしてプラズマ団?」

ホミカちゃんたちの声の聞こえる範囲まで近づいた。
プラズマ団であるかどうかの確認しかしていないホミカちゃんに対し、そうだと答えたプラズマ団の男は聞いていないこともべらべらと喋っている。
随分お喋りなんだなと思いながら、オレはさらに距離を縮めた。

「……口を閉じろよ」

ヒュウ兄が一歩前に出て言う。
その声には怒りの感情が込められているみたいだ。

「ポケモンを救うと言いつつただのポケモン泥棒だった最低のお前らだ…許してもらえると思うな…!」

ヒュウ兄の過去の事はよく知らない。
けれど、彼らの間に何かあったのではないかと思わせるものが確かにあった。

「牧場ではヨーテリーに追いかけられるしここじゃ絡まれるし、いい事ないな」
「まあいいじゃないか。ここでこいつらからポケモンを奪えば」
「準備が出来たらかかってきな」
「……お前たちも、新しい作戦とやらも、ここで潰す。プラズマ団は絶対に許さない」

そうして各々に、バトルが始まった。


*****


「はは!お前のポケモンさくっと頂戴して世界征服に使ってやるよ!」

かつてはポケモンを解放することを大義名分に掲げていたプラズマ団は、どうやら完全に世界征服を企む組織となったのだろうか。
隠すこともせずそう叫んでポケモンを繰り出してくる。
人のポケモンを使って世界征服だなんて、言われて気分のいい人なんて絶対にいない。

「いけ!ミネズミ!」
「とんとろ、頼む!」

相手がミネズミを繰り出すのに対し、オレはとんとろを繰り出した。
とんとろもやる気満々で、手加減なんてしちゃくれなさそうだ。

「とんとろ、ニトロチャージ!」

あまり素早くないからとニトロチャージを指示する。
それに対してミネズミは我慢を繰り出してきた。

『シオン、どうする!?』
「ターンをかけたらまずい。一気に倒す!」
『判った!』

オレの指示に的確に答えてくれたとんとろのおかげでミネズミのがまんが解かれる前に倒すことができた。
やっぱりいい相棒だと戦い終えたとんとろの頭をなでてやる。

すると、とんとろの身体が光り出す。
光に包まれたとんとろの身体からその光が消えるころ、彼はチャオブーヘと進化を遂げていた。

「まさか、こんな子どもたちに不覚を取るとは…」
「クッ……逃げるぞ!」
「う、わっ!?」

どうやらヒュウ兄とホミカちゃんもバトルに勝ったようで、負けたプラズマ団の人たちは悔しそうにしながらもさっさと撤収していった。
うん、ヒュウ兄はともかくホミカちゃんはジムリーダーだから負けるなんて思ってなかったけど。
彼らが逃げる際に突き飛ばされたオレは無様にもしりもちをついて、彼らを逃がしてしまった。
ヒュウ兄は悔しそうに、ホミカちゃんは手分けして探そうと言って走っていってしまった。

と、思ったら急に立ち止まったホミカちゃんがこっちを振り向く。

「……負けていたら、大切なポケモンを取られてた。あんたたち、アリガト」
「え、あ…いや…」
「これ、使いなよ!」
「わ、わ!」

少し照れくさそうにお礼を言ったホミカちゃんにつられてなんだか少し照れていたら、急に彼女が秘伝マシン「居合切り」を渡してきて。
慌てて受け取って「貰えないよ」と言おうと顔を上げたらそこにはもうホミカちゃんの姿はなかった。

「は、早い…」
「それ…秘伝マシンだな」

オレの手元を覗き込んだヒュウ兄が言う。
そのままこの技がどういったものなのかを説明してくれた。
うん、ありがとう。

走り去っていったヒュウ兄の後をオレも追おうと歩みを進めつつ。

「本当に、君たちを取られなくてよかった」

ボールに戻したとんとろ達を撫でるかのように、そっとボールに触れてやり。
触れたボールは、自分たちもだと言わんばかりにかすかに揺れた。

体育祭詳細記事

◆企画内容◆
 DaSと妖學院合同体育祭。
 みんなで体育祭楽しもうぜ☆

◆開催期間◆
 8月1日~8月31日までの一ヶ月。
 9月10日頃に結果発表を行う。

◆開催場所◆
 十分な広さの異空間を用意。
 DaSに水鏡を設置し、そこより異空間へと移動する。
 会場端には看護テントと放送席、来賓席も用意。
   *大まかな会場図* (別窓表示)

◆参加方法◆
 体育祭用のテンプレートを用意。
 そのテンプレートを使い参加してもらう。
 あらかじめ組み分けされている(妖なら赤と白、DaSなら緑と橙)ので、その組に分かれて点数を競い合う。
 組み分けについては次項参照。
 ※テンプレを使っていない記事は集計時に点数加算外となります。※

◆組み分けについて◆
 どのように組み分けするかについての詳細は各企画元の記事を参照。
 チーム数は妖學院より赤と白、DaSより緑と橙の計4つ。
  ・妖學院組み分け法
  ・DaS組み分け法
   (※各組み分け方記事へのリンクです。別窓表示)

◆勝敗の決め方について◆
 記事の種類によってあらかじめ点数を設定。
 各チームで合計点数の高い方を勝利とする。
  ●点数配分●
   ・競技、応援漫画(3コマ以上):5点
   ・競技、応援イラスト:3点
   ・コメ欄漫画:5コメントにつき1点
    ※絵やセリフの無い塗りつぶしただけのコメントや真っ白のコメントはカウント外。
   ・よそのお子様を借りる:人数に関係なく2点

◆対抗チーム同士が描かれている記事について◆
 その記事内で勝敗を決してもらう。
 記事タイトルは勝った方のチームとする(タイトルについては後述)。

◆競技について◆
 一般的な競技のうち、今回は大人数必要な競技は除外。
 障害物競走での教員とのジャンケンでは、ユーザーが任意で教員を選ぶ。
 主催の方からの競技に対する時間切れはあえて設定していないので、障害物競走や借り物競走での時間切れはユーザーが決めること。

◆種目について◆
 ・100m走…頑張って走ってください。
 ・二人三脚(2人用)…相方と協力して走ってください。相方が見つからなかった場合はモブ生徒可。
 ・騎馬戦(4人用)…あと3人見つけて一緒にやってください。人数が足りない場合はモブ生徒可。
 ・パン食い競争…家庭科の先生が心を込めて作りました。色々なパンがあります。
 ・障害物競走…ハードル、網潜り、平均台(落ちたら平均台を最初から)、教員と勝つまでジャンケン。
 ・借り物競争…ツイッター診断を用意しました。
 ・リレー…各チームの色のバトンを渡していく。アンカーはチームの色のタスキ装着必須。
  (※各競技の詳細はWiki先生等にお世話になってください。)

◆その他対抗競技について◆
 今回は主催の方での予定は無し。
 有志による○○(部活、教員)対抗はやってもらって構わない。
 その際は体育祭テンプレを使わないように。
 チームへの点数加算は無し。

◆服装について◆
 DaSでは規定の体操服がないので、各チームの色の鉢巻を頭部に着用してもらう。
 服装自体は運動に適した動きやすいものを着用して参加すること。
 妖學院では規定の体操服もしくはジャージを着用すること(体操服については企画元参照)。

◆記事タイトル、タグについて◆
 原則としてタイトル冒頭に【(赤or白or緑or橙)チーム参加】とつけること。
  例) 【緑チーム参加】
 タグについて、各企画のお絵かき用タグ、もしくは妖學院とDaSの共有イラストタグを使用。
 ※どのチームかタイトルに無い場合、点数加算外となります。※

◆体育祭中の主な役割分担◆
 妖學院、DaS両校の保険医並びに保健委員生徒は基本競技参加以外では医療用テントで待機。
 各競技の用具準備と設置は両校の体育教員並びに体育委員生徒、用務員が担当。
 有志の方のお手伝いも歓迎。
 体育祭の放送は両校の文化委員に担当してもらう。

◆その他◆
 キャラクターによっては「~の能力がある」という設定も有るかと思うが、体育祭では一切の使用を不可とする。
 また、原則として飛行行為は禁止。
 足がある方は走りましょう。
 来賓については陰式、GSの方も歓迎。

◆追加事項◆※2012/08/03 追記※
 ・コメント欄でのリレーマンガ可。
  ただし、リレーマンガへの参加者は通常記事で募集し、テンプレは使わないこと。
  この場合の得点は 記事ポイント+コメント数ポイント+よそのお子様ポイント となり、通常と同様となる。
 ・教員の参加可。
  チームの振り分けは通常通りとする。
  なお、教員の参加によるボーナス得点等はない。


解らないことがあればこちらの記事にコメントか、手ブロのメッセにお願いします。

Play4

ホミカちゃんを追ってポケウッドへと来た俺は。
ゲートを潜り抜けてすぐ、オーナーだというウッドウさんに捕まっていた。

「君がシオンちゃんか!早速だけど映画を撮ってみないかい!?」
「いやあの、その前にシオンちゃんって…」

オレ、男なんだけど。
どうしてちゃん付けで呼ばれているのだろう。

思わずひくりと頬をひきつらせたのは仕方ないだろう。
とんとろとリイヤ(NNこそ登録はされていないがリオルの名前だ)も苦笑を禁じ得ないようだ。

こっそりリイヤが『災難だね』と言ってきた。

そのままウッドウさんは「ボクもチャチャッと準備しないと!」と言ってどこかへ消えてしまう。
これは確実に逃れられそうにない。
出来れば全力で逃げたいのだけれども。
来てしまったことを早速後悔し始めたオレに、ポケウッドのスタッフだろうかが「一緒に行こう」と言ってオレの腕を引く。
そのまま成すがまま、オレは彼に連れて行かれあれよあれよと場所の説明をされてしまった。

そうして連れて来られたシアター内。
そのまま進んでいると見た事のある男性がオレを連れた男性に声をかける。

「これはこれは!スカウトさんじゃありませんか!おかげさまで私も念願のスクリーンデビューができました!」
「どうですか!それはなにより!」

どこかで見かけたとおもったら、彼はホミカちゃんのお父さんだ。
スカウトという名前なのだろうオレを連れた男性と話していた彼は、オレの存在に気づいたようで、スカウトさんに俺の事を聞いている。
スカウトさんはというと、オレがホミカちゃんに挑戦しているところを見てスカウトしたのだと説明している。
スカウトというか、半ば強引だったじゃないから目を逸らし空笑いするしかないオレ。

なんだかんだ話が進んで、気付いたらオレはホミカちゃんのお父さんの映画を見ることになっていた。
一体全体どうしてこうなったのだろうか。

そのまま今度はホミカちゃんのお父さんに連れられて行く。
俺に拒否権ってないのかな。
そう、意識を遠くにやりそうになっているオレの足を、とんとろとリイヤが優しく叩いた。
その優しさが心にしみる。

そのまま特別上映なのだと言って通常のスクリーンとは違う場所に連れられて行く。
そこで見せられたのは『ハチクマンVS正義のの中年男』というものだった。
悪のハチクマンと正義のリオルマンが戦うという内容の様で、オレの隣にいるリイヤは“リオル”の名前に反応していた。
しかし内容はとてもつまらないもので、最初は多くいた観客も映画が進むにつれてどんどん人が居なくなってしまう。
リイヤも初めこそ興味津々にしていたのだが、どんどん「なんだこれ」といった様子で。

ようやく映画が終わりスクリーンから退場するオレとホミカちゃんのお父さん。
お父さんはというと無言である。

どうやら自分に映画は向かないと悟ったらしいお父さん。
彼は一先ず本業に戻るがしかしまだ夢は諦めていないといい残し、シアターを去っていった。

そしてオレはというと、再びやってきたスカウトさんにまたもや連れられて撮影スタジオへと行くことに。
到着したそこでは既にウッドウさんが準備を終わらせていた。

そしてオレならきっと銀幕のスターになれると言って共演者までいるのだと言われた。
そんなウッドウさんに呼ばれて登場したのは、さっきお父さんの映画でも登場していたハチクさん。
どうやらここポケウッドの看板スターらしい彼と組んで映画を作らされることとなったらしい。

簡単に、ぶっきらぼうに挨拶をしたハチクさんは、そのままスタジオの奥へと消えていく。
ウッドウさんは彼を相変わらずクールだと評していたが。


*****


仕方なく、撮影の手続きを済ませようとする。
自分のポケモンと使おうとしたらどうやら今はまだ自分のポケモンを使えないようで断られてしまった。

一先ずレンタルのポケモンで撮影をすることに。

渡されたポケモンはリオル。
そろっと映画セットの端に視線を向けると、リイヤが完全に不貞腐れていた。

「(そりゃ自分のトレーナーが自分がいるにもかかわらず同じ種族の違うポケモン使ってたら怒るよなぁ)」

オレは後でどうやってリイヤの機嫌を取るかと考えつつ、やるからにはしっかりと、の精神で映画撮影に取り組むことにした。

どうやら俺は映画の中ではリオルキッドというらしい。
リオルマンといい、なんて安直なネーミングだろうか。
相変わらず俺は空笑いしかできない。

ようやく撮影も終わり、オレは撮影現場から出る。
出てそうそう、オレは受付スタッフにリオルのボールを返す。
これ以上このリオルを連れていたら本当にリイヤの機嫌を取れなくなりそうだ。

そのままオレはシアターに連れて行かれそうになったが、どうやらウッドウさんは時間が押しているらしい。
何度も自分の出演作品を見るようにと念を押しつつ、彼はスカウトさんに連れられて去っていった。

さて、何度も念を押されたことだしと、オレは一応自分の作品を見てみることに。
さっそくシアターへと向かう。

そうして鑑賞してみた自分の映画。
ストレートすぎてあまり面白みがないように感じられる。
興行成績も見れるようで、自分の映画は240億円の様だ。

そのままシアター―を出ようとすると、またもやウッドウさんに捕まってしまった。
今日は本当に誰かによく捕まるな。
ウッドウによると映画は大人気だそうだ。
自分ではちょっと不満だったのに。

せっかくだからともう少しだけやってみることにする。
またもやレンタルポケモンだったが、今回はハーデリアだったのでなんとかリイヤの機嫌を損ねなくて済みそうだ。

「その内君たちと映画を撮りたいね」

そういったらみんな嬉しそうに返事をしてくれた。
うん、オレも嬉しいよ。