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刻の本

古びた本は 今も昔も刻(とき)を刻む。

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play22

一度セイガイハシティに戻ったオレは、手持ちの回復を済ませ再び22番道路へとやってきた。
マップを確認し、おそらくチャンピオンロードへは前回通れなかったジャイアントホールの横穴だろうと辺りを付ける。
はたしてその予想は当たり、23番道路へと進むことができた。

オレ逹は川沿いに上流へと進んでいく。
そうして長い距離を歩いていると、長い階段が見えてきた。
見上げてみると超常らしき場所にはアーケード。
恐らくはアレがチャンピオンロードの入り口だろう。

「……来たか」

階段を上りアーケードをくぐったオレを、佇み待つ人物が一人。
緑の髪を風になびかせるその人は、Nさんだ。
どうしてここに居るのだろう。

「この先がチャンピオンロードだ」

そう言って、Nさんが横を向く。
その視線の先にはバッジのオブジェクトが並ぶ道。
いよいよなんだと、オレは固唾を飲む。

「……僕はね、ポケモン勝負は傷つけるだけのものだと思っていたんだ」

何を、とは言わなくても判る。
ポケモンのことだ。

「けれど、それだけじゃないことを知った。ポケモン勝負とは、自分とパートナーの、相手と相手のパートナーとがもつそれぞれの素敵な部分を確かめ合うことでもあったんだ」

素敵な部分を確かめ合う…。
たしかに、Nさんの言うとおりだと思う。
オレ逹はバトルをすることで相手と分かり合える、相手の素敵な所を発見できる。
だからこそ楽しく、パートナーと切磋琢磨できるのではないだろうか。
Nさんはそれを、レシラムから教えてもらったらしい。

「君も、この先に進んで自分の真実を見つけるといい」

この先はこの秘伝マシンがないと進めないよ。
そう言って、Nさんが秘伝マシン「滝登り」を渡してくれた。
どうやら以前リーグとは違い、構造が変わっているのだとか。
オレはお礼を言って、秘伝マシンをバッグへと仕舞い込んだ。

Nさんは言うことを言ったのか、チャンピオンロードを後にする。
オレ逹も先に進もうと、歩みを再開した。

≪ベーシックバッジヲ チェック シマシタ≫

数歩進んだ先、オブジェの横を通り過ぎようとしたその時だ。
足元から光が当てられ頭の先まで通過したかと思うと、オブジェの方から合成音声が聞こえてきた。
それはどうやら通行人?がリーグ認定のバッジを持っているかをチェックしているらしい。
当然全てのバッジを持っているオレは、気にすることなく先へと進む。

最後のチェックも済ませて歩み続けたオレは、巨大な門のような壁に行き当たった。
それは先へ進むのを阻み、横から通る事が出来そうにない。
どうしようと考えた末によつはで飛び越せばいいと思いついた俺が実行しようとしたその時だった。

壁の向こうから何か重い物が落ちるような、沈むような音が鳴り響く。

「!!?」
『何かの襲撃でしょうか?』

最近周囲が物騒だったから、怪しい音に身構えるようになってしまっている。
リイヤもピンと耳を立てて辺りを警戒しているようだ。
と、視線を彷徨わせていたオレの視界で、壁の両脇の突起が僅かに動いたような感覚を受けた。
なんだろうと注視していると、その突起が轟音を立てて地面へと沈んでいく

「!!」

次々と沈む突起は、すべて沈み込んでしまえば残るは巨大な壁のみ。
そしてそれも、オレ逹の目の前で地面へと沈んでしまった。
しかしこれでオレ逹の行く手を阻むものがなくなった。

壁の先には歴史を感じさせる柱や石畳。
そしてその奥には遠くてはっきりと確認できないが、下に伸びる階段のような物。
おそらく、あの階段の先が本当のチャンピオンロード。

オレ逹は、意を決して歩みを進めることにした。


*****


いざ入ってみたチャンピオンロードの中は複雑で、出口までたどり着くのに苦労した。
中には怪力や波乗り滝登りを使う場所もあり、それらを周るのは中々の重労働だった。
しかしそれでも何とかなるもので、時々リイヤに助けてもらいつつチャンピオンロードの頂上付近へと登りつくことができた。

「リイヤ、頼りまくってごめん」
『気にしないでください』

隣にいたリイヤに、労いと感謝を告げる。
オレは階段を上ったり下りたりと、それだけで結構体力を消耗したのだけれど…。
流石というべきか、リイヤは息一つ乱していない。
旅で結構鍛えられたつもりなんだけど、まだまだなのかな。
そんな風に二人と一匹でじゃれ合いながら進むチャンピオンロード頂上。
ようやく出口らしき場所が見えてきたとホッとするのもつかの間、オレの背後から階段を駆けてくる足音が聞こえてきた。
オレ逹以外にも挑戦する人がいるのか、とぼんやり考えた時だ。

「待ちな!」

駆ける足音と共に、幾度と聞いてきた声。
振り返れば、駆けてきたためだろう息を切らしたヒュウ兄の姿。

「はあ、追いついた!ポケモンリーグ挑戦の前にオレが相手してやるよ」

これ如きではめげないとでも言うかのように持ち直したヒュウ兄が、ボールを構えて言う。
オレもせっかくだからとその誘いに乗ることにした。

「頼む、ラグーン」
『う、うん…』

レベル上げも兼ねて先頭にしていたラグーンを繰り出す。
控え目なこの子は、やる気はあるんだけどいつもオロオロしてるんだ。
今回もそうだけど、その中には隠しきれないリーグへのワクワクした気持ちが隠されている風だ。

その気になったラグーンはとにかく強い。
ヒュウ兄のポケモンに反撃を許さず沈めて行く様は、本当に雄々しい。
ヒュウ兄とのバトルはラグーンの頑張りもあって早々に終わった。

「…シオン、オレの旅はお前のおかげで無事に目的を果たせた」
「そっか、よかった。あのレパルダスは妹さんに?」
「ああ。妹のとびっきりの笑顔、お前にも見せてやりたかった!」

ヒュウ兄は本当に嬉しそうだ。
そんな彼は、これはオレからのお礼だと言って技マシン10万ボルトを譲ってくれた。
そしてチャンピオンになれと言って、背を強く押してくれる。

オレはその手の強さを感じながら、行ってきますとただ一言だけ零してチャンピオンロードを抜けた。
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Play22

「!!」

ワープした先は、操作室の様な場所。
部屋の側面には多くの多くのが設置されている。
そしてそれらを順に見つつ前へと視線を向けたオレは、驚きに目を見開いた。

「ようこそ!」
「あなたは…アクロマさん!?」
「はい!わたくしはここで知り合いに頼まれ研究を手伝っていたのです!」
「研究を…」
『もしかしなくても、あの装置は…』

十中八九あのキュレムを捕まえている装置はこの人が開発したような気がする。
試作機とは言えポケモンを活性化させる機会を作れるのだから、それくらいはやってのけそうだ。

「わたくしの望みはポケモンの能力を完全に引き出すこと!それが出来るなら手段は何でもいいのです!」
「なんでもって、ポケモンの意思を無視しても構わないの…?」
「端的に言えばそうなりますね。貴方のようにポケモンと心で結ばれようと、プラズマ団のように無理矢理力を引き出そうと私には関係ない!そう、その結果世界が滅ぶとしても!!」
「そんな力の引き出し方、間違ってる!」
「私には過程など必要ないのですよ。結果さえあればそれでいい!」
「……っ」

オレも、ポケモンの力を最大限に引き出せればいいとは思う。
トレーナーは皆、パートナーの力を引き出してやりたいって思うものじゃないのかな。
だけど、アクロマさんのように結果だけを求めたくはない。
それじゃあまりにも、トレーナーについてきてくれるポケモンが可愛そうだ。

「それはさておき!私がイッシュの各地でトレーナーとバトルしてきたのはポケモンの力を引き出せる資質を見ていたからです!」
「……」
「そして貴方はその中でも特に優秀!」
「今のあなたに褒められても、嬉しくはないです」
「ふふ、そうですか。ですが、わたくしの望む答えを持つのか教えてもらいますよ!」

言って、アクロマさんはボールを構える。
オレもボールを構えて、アンディを繰り出した。

「(アクロマさんの手持ちのタイプは大体わかってる。アンディなら、何があっても大体は対処できるはずだ)」

この船に乗り込んで最初の、不意打ちのバトル以来バトルしたくてたまらなかったらしいアンディにはちょうどいいだろう。
果たして、オレの予測は当たっていたようで難なく対応できている。
それ程苦戦することもなくバトルに勝つことができた。

「やはり強い!そこで、貴方に尋ねます!」
「な、なに…」
「ポケモンとトレーナーは解り合うことでさらなる高みを目指せると思いますか?」
「…はい。信頼がないと得られない強さもありますよ」
「なるほど!貴方の返答はわたくしのとっての理想!実際貴方はその信念を持ってポケモンと向き合い力を引き出している!」

やっぱり、アクロマさんっていまいちよく判らない。
過程は必要ないと言っておきながら、こんな質問をしたりするのだから。

「ですが!貴方はわたくしに可能性を見せてくれた!」
「!?」

オレが考え込んでいる間にアクロマさんは一人喋り続けていたらしい。
急に顔を近づけそう言ってくるものだから、オレは驚いて後ずさった。

「これは、貴方とプラズマ団絆と力のそれぞれの関わり方を決める戦いでもあるのです。もう一度捕らわれたキュレムの前を通り反対側にあったワープパネルに乗りなさい」
「は、はあ…」

さっき下っ端に塞がれたあのパネルの事か。
あの先にはいったい何があるのだろう。
オレは気になりつつ、言われた通りに件のパネルへと足を乗せた。


*****


ワープした先は、小部屋だった。
その奥には緑の髪の男性がモニターを睨み付けている。

「アクロマめ…あやつは科学者として無駄に純粋すぎる!」

そして急に振り返ったかと思うと、大きな声で怒鳴りだした。
ボスにしてやったのに、と叫ぶ男はいったい何者なのか。
男の口ぶりからすると、黒幕のような気がしなくもない。

「さて、あなたは幸運です」

男を警戒しつつ考え込んでいたら、今度は落ち着いた声で話し始める。

「あなたはワタクシ、ゲーチスの演説をたった一人で拝聴できるのです。ありがたく思いなさい」
「ゲーチス…?」

聞き覚えがある。
そうだ、以前のプラズマ団を、世界征服を目論んでいた奴の名前。
この目の前にいる彼が、そうなのか。
ゲーチスさんは、2年前、それより以前から未だに世界征服を諦めていないのだ。

ゲーチス曰く演説が進む中、どこからともなくダークトリニティが現れた。
いつも思うが本当に驚かされる。

「ゲーチス様、キュレムの搬送が完了しました」
「!?」
「いよいよです!いよいよワタクシがイッシュを完全に支配する素晴らしい時が来たのです!」

ゲーチスはそういうと、ダークトリニティに後を任せ階段を下りて行ってしまう。
オレがその後を追おうとするもダークトリニティに阻まれ歯噛みするしかない。
が、丁度のタイミングでヒュウ兄が追いついた。

「待てよ、ダークトリニティ」
「ヒュウ兄!」
「おまえ、ヒオウギで奪われたチョロネコの事を教えな」
「……ああ、それならこいつのことかもな」
「グルルゥー!!」

ヒュウ兄の言葉に思い出したかのように、ダークトリニティがボールを軽く投げる。
そこから出てきたのはレパルダスだ。
ダークトリニティの話では確かにこのレパルダスはヒオウギから奪ってきたポケモンらしい。
そして、今は彼のいう事しか聞かない…。
その言葉に、ヒュウ兄の怒りのボルテージが上がっていく。
しかしダークトリニティはそんなこととでも言うようにヒュウ兄から視線を外し、オレへと向き直った。

「そこのお前!ゲーチス様の邪魔はさせん!」
「!」

言うと、別のボールからポケモンを繰り出しバトルを仕掛けてきた。
オレもほぼ同時にボールを繰り出す。
チョロネコ…今はレパルダスは、ヒュウ兄を威嚇していてバトルに出るつもりはないらしい。
数が少なかった事もありすぐに終了を迎えたバトルにほっと息を吐きかけたその時だ。
オレを囲むようにして残りのダークトリニティも姿を現した。
そしてそのまま第二、第三のバトルへと突入していく。

バトルが終了し、ダークトリニティの消えた部屋。
そこにはオレとヒュウ兄と、用済みだと言って残されたレパルダス。

「…………なあ、シオン。あいつらプラズマ団の思い通りにさせたら……チョロネコやキュレムみたいに悲しいポケモンが増えるよな…」
「そう…だね」

ヒュウ兄は、レパルダスを見ながら本当に悔しそうにしている。
オレも、見ていてつらい。
これ以上、こんな事が起こらないように止めなくちゃいけないんだ。

オレはまだ動けないらしいヒュウ兄を置いてゲーチスを追うことにした。
ヒュウ兄には手持ちのポケモンたちもいるし、あのままでも大丈夫だろう。

そしてオレは階段を下りた先、舟の外へと出て道なりにジャイアントホールの奥へ向かう。
しばらく進むと現れた崖の上へと続く階段を上り、洞窟の中へ。
そこは奥へ進めば進むほど冷気に満たされ周囲が凍てついている。

そしていくつか洞窟の穴を抜けた先。
いくらか広さのある最奥と思われる場所に、ゲーチスさんはいた。

「来ましたか。どうです、このジャイアントホールの最奥!こここそがキュレムのパワースポット。ここでならキュレムの力は最大限となる!イッシュ全土をいともたやすく氷漬けにできることでしょう」

最奥の中心部に立つゲーチスさんは、そう言って悦に浸っている。
その表情は、自身の野望が必ず達成されると信じて疑わない表情だ。
横にずれたゲーチスさんが、持っていた杖で凍った地面を激しく打つ。

「いでよ!キュレム!」
「うわ!」
『マスター!』

その言葉と共にどこからともなく吹雪が噴く。
オレは思わず腕で目前を防ぎ、リイヤがオレの体を支えてくれた。
吹雪が止んだ頃、恐る恐る腕を下げた先にはキュレムの姿。
そしてゲーチスが攻撃を指示する。

「キュレム、凍える世界です!!」
「ヒュララララッ!!」


キュレムの周囲に、氷の塊が浮かび上がる。
それは今までの冷気とは比較にならないほどの冷たさ。
気付けば氷の塊に周囲を取り囲まれていたオレ逹は、そのあまりの冷たさに急激に体温を奪われる。

「(もう、だめだ…っ!)」

オレはそう思って、支えてくれていたリイヤを逆に腕に抱き込む。
ああ、せめて手持ちのみんなだけでも助かってほしい。
ボールの外にいるこの子が少しでも寒くないように。
ギュッと腕に抱き込んで覚悟をしたその時だった。

どこからともなく青年の凛とした声が聞こえてきた。

「レシラム、クロスフレイム!!」

その言葉と共に、大きな火球が降下してくる。
それはオレ逹の周りを浮かぶ氷塊をいともたやすく溶かし、奪われたオレ逹の体温を取り戻す。

「……来ましたか」

ゲーチスさんはそれが何かわかっているらしかった。
目の前の光景を冷静に見つめ、呟く。
オレは何が何だかさっぱりわからず、ただただ周囲を見渡すだけだ。

「人の心を持たぬ化け物、Nよ」
「…あ」

ゲーチスさんの見やる先、そこには白い竜の姿。
そしてその背には、緑の髪の青年。

「レシラムが教えてくれた。キュレムが苦しんでいると…」

白い竜、レシラムの背から降りたその人が言う。
この人が、N。
いつか見た、ソロアークの幻影に出てきた青年だ。

「僕は、ポケモンを苦しめる身勝手な人を許さない!それに、僕はこのイッシュが好きです。僕に人としての生き方を…ポケモンと人とが一緒にいることで奏でるハーモニーがあると気付かせてくれた場所…!」

そこにクラス人とポケモンを守る!
そう言ったNさんに呼応するように、レシラムが吠えた。

そんなNさんに、しかしゲーチスさんは恩知らずと罵る。
この人はどれだけ自分勝手にすれば気が済むのだろう。
人を馬鹿にした態度を崩さないゲーチスさんは、マントの下から遺伝子の楔を取り出した。

するとそれはひとりでに浮き出したと思えば、キュレムの体へと打ちこまれる。
キュレムが大きく身震いをした。
小さな翼のように見えていた部分が前方へ、何をするのかと警戒していたオレ逹の目の前でレシラムを襲い始めた。
翼のような部分の先には棘のような物が突き出ていて、レシラムはそれを必死に回避しようとしている。
空を飛び逃げるレシラムだったが、翼のようなところから発射された棘がレシラムを捕えてしまった。
そのままそれはレシラムを空から引きずりおろし、白い球へと姿を変えてしまった。

「!?れっ、レシラム!」
「なに、あれ」

慌てるNさん、唖然と見るしかないオレとリイヤ。
それぞれの目の前で、キュレムが白い球となったレシラムを体内に取り込んでしまった。
するとキュレムの体から炎が吹き出し、その姿を変えていく。
レシラムとキュレムの面影を残した真白い竜の姿へと。

「……!まさか、ポケモンが合体だなんて…」
「今回は圧倒的なパワーでイッシュを支配する!そのための力!」

そう言ったゲーチスさんはしかし、先ほどと同じではつまらないと言う。
なにがつまらないというのか。
ポケモンを己の欲の為に支配する人が。

「そこのアナタ、イッシュを救いたいのでしょう?ならば、このキュレムを止められるかどうか見せてもらいましょう!」
「っ!」
「…?おや、アナタのモンスターボール…震えていますね。もしや、アナタのポケモンは怒りに震えているのですか?否!そんなことあるわけがない!たかが道具に感情などないのですよ!」
「こっの…!」
「ぐるるる…」

ポケモンを道具といったゲーチス(もうこの時点でさん付けするのを止めることにした)に、オレもリイヤも怒りを抑えることができない。
そこまで言うのならやってやる。
キュレムを倒して、ゲーチスの野望を打ち砕く。

「(それにしてもこのキュレム、レシラムを取り込んだとしても基本は氷か…?だったら…)」

炎をちらつかせながらも未だ冷気を感じるキュレムに、オレは仮説を立ててアンディを繰り出す。
リイヤはさっきの凍える世界の事もあり、本調子ではなさそうだし。

「アンディ、あのキュレムを倒してくれ」
『任せろっての!』

頼もしい返事をしてくれたアンディが構える。
腕をクロスさせたあの姿勢は。

「アンディ、クロスチョップ!」
『うらああああ!!』

一気に近づいたアンディが、交差させた腕を渾身の力で振り下ろす。
放たれたクロスチョップはキュレムの胸元に直撃し、効果抜群で決まる。
氷タイプに格闘タイプの技は大ダメージ。
その上元々威力の高かった技が直撃したのだ。
キュレムはそのまま倒れ込んだ。

「バーニンガッ!」
「ヒュララララ……!!」

倒れたキュレムが、レシラムと分離する。
倒されたことにより合体を維持できなくなったのか。
ゲーチスは白いキュレム、ホワイトキュレムを倒されたことに怒り心頭の様子だ。
そして当のキュレムはというと、現れた時同様吹雪を起こしてどこかへと消え去った。

また捕獲しなくてはならないと呻いたゲーチスは杖を激しく地面に叩きつけ、ポケモンを繰り出す。
結果として連戦になるが、もう一度アンディにバトルへ出てもらうことにする。

「……どういう事だ?このわワタクシが一度ならず二度までも無名のトレーナーに負けるなどっ!!」

決して認めぬ!
そう叫んだゲーチスに、Nさんが悲しい目で話しかける。

「……あえて、こう呼びます。とうさん!わかってください、ポケモンは道具ではないのです」

そう、ポケモンは道具じゃない。
人と同じように意思があって感情がある。
ポケモンと人はお互いを高みへと誘っていけるのだ。

しかしゲーチスはそんなNさんの声にも耳を貸さない。
そんなゲーチスとNさんを遮るようにダークトリニティが現れる。
ゲーチスはもう正気ではないといい、彼を連れて消えてしまった。

「………」
「ねえ、君」
「はい?」
「みんなにかわって、ありがとう!キュレムの事は大丈夫。今は力を失っているけどまたここに現れる。レシラムも、君にありがとうって」
「バーニンガッ!!」

聴こえてるよ、君の声。
ありがとうって、ちゃんと聞こえてる。
この人も、ポケモンの声が聞こえてるんだな。
Nさんはポケモンリーグへ向かうといいといい残し、レシラムに乗って去って行った。

少しして、ヒュウ兄が追ってきた。
やっと衝撃から抜け出したみたい。
ヒュウ兄は、あのレパルダスをやっぱり妹に返すらしい。
そうだよね、だってどんなに姿が変わっても大切な妹のポケモンだもん。
ただ、レパルダスも気が動転してるのかまだボールから出すことはできないらしいけど。

オレはことの顛末をヒュウ兄に話し、背を押されたこともあってポケモンリーグへと進むことにした。
その前にみんなの回復をしなくちゃいけないけど。

Play21

22番道路のその先、洞窟の中はそのままジャイアントホールへと続いている。
洞窟へ入ったオレは、中を道なりに進んでいく。
と、プラズマ団の下っ端が何事かを話し込みながら道を塞いでいるのが見えてきた。
後ろから丁度ヒュウ兄もやってくる。

「お、もう来てたのか。って、あいつら…」

オレの傍に来たヒュウ兄は、早くもプラズマ団の姿を視界に入れたらしい。
ヒュウ兄の周りの空気が剣呑になる。
相変わらずプラズマ団を見つけてから臨戦態勢に入るまでが早いなと、オレは妙な所で感心を受ける。
って、そんなこと考えてる場合じゃなかった。
オレがフルフルと頭を振っていると、奥から誰かが走ってくる音が響いてくる。

「おーい!ここはもういいってよ!」

奥から走ってきたのは、別のプラズマ団員。
何か命を受けていたのだろう彼らを呼びに来たらしい。
やっと戻れる、と喜んで駆けて行った彼らを見送り1人になった彼に、ヒュウ兄が静かに声をかけた。

「一人になったか。どっちと戦うか好きな方を選べよ」
「あ、君は!」

振り返った下っ端が、パアっと顔を綻ばせてオレの方を見やる。

「おれです、おれ!元プラズマ団の!」
「あ!」

その顔には確かに見覚えがある。
彼は確かロットさんの所にいた…。

「ロットさんに頼まれてスパイをしてるんです」
「ああ、そういや居たな、お前…」

ヒュウ兄も気づいたらしい。
チッと小さく舌打ちして構えていたボールを仕舞う。
ヒュウ兄、舌打ち良くない。

一先ず戦闘は回避できたなと思っていると、ヒュウ兄はさっさとさっきの彼らを追って行ってしまった。
本当に、ヒュウ兄もここに居る元プラズマ団の人たちも必至だな。
奪われたポケモンを取り戻すため、かつて王だったというNさんが再び悪者にされないため。
両者ともそれぞれの思いを抱えて現プラズマ団を追い、止めようとしてる。

元プラズマ団の人も、まだすることがあると言って先に行ってしまった。
オレも早くヒュウ兄を追いかけないと。


******


しばらく洞窟の中を彷徨ったりカゴメタウンから行ける道を繋いだりしつつ、ようやくオレはジャイアントホールの中心部へとたどり着いた。
視線の先にはロットさんと彼に従う元プラズマ団員、そしてヒュウ兄の姿。
どうやらロットさんたちは昔の仲間を説得しようとしているらしい。
しかしロットさんの言葉は現プラズマ団員には届かない。
痺れを切らしたらしいヒュウ兄がとうとうバトルを仕掛けた。
オレも援護の為にボールを構える。

「リイヤ、頼む。サイコキネシスだ!」
『はい!』

相手の繰り出した手持ちは毒タイプ。
リイヤがサイコキネシスで確実に相手のポケモンを仕留めていく。

「くっそ!」
「こんなガキどもに俺たちが!」

バトルに負けた下っ端たちが一歩後ずさる。

「おまえたち、ポケモンは大丈夫か?」
「ロットさん…オレのポケモンは大丈夫です」

バトルを終えたオレ逹に、ロットさんが声をかけてくる。
大丈夫といったオレに、しかしロットさんは持っていけと元気の塊をくれた。
お礼を言って、それをバッグに仕舞い込む。

「ったく、またきやがった」

隣でオレと同じように元気の塊を受け取っていたヒュウ兄が呟く。
ヒュウ兄の視線をたどると、プラズマ団の仲間が駆けてくるのが見えた。
ロットさんたちもそれが見えたのだろう、オレ逹の前に立つと先に行けと促して増援の相手をしだした。

「ヒュウだったか」
「なんだよ」
「お前が探しているポケモンはダークトリニィの誰かが持っているはずだ」
「本当か!?」
「ああ」

駆けだそうとしたオレ逹、正確にはヒュウ兄をロットさんが呼び止めた。
なんだろうと話を聞いていたら、まさかの奪われたチョロネコの話。
ダークトリニィ、オレ逹を何度か船外に放り出したあの忍者みたいな人たちだ。

「わかったっ!アイツらに会えたならあんたらの罪滅ぼしだっけ?手伝ってやる!」

ヒュウ兄はそれだけを言うと、ロットさんたちの横をすり抜け駆けて行く。
オレもロットさんたちに小さくえしゃくをすると、ヒュウ兄を追って駆け出した。


*****


駆けだしたのはいいものの。
中心部は冷たい冷気と氷に覆われている状態。
足元も土ではなく氷に覆われており、歩くというより滑るに近い。

「うわわわ!あでっ!!」

オレはなんとか踏ん張ろうとするも甲斐なく、足を滑らせては所々に出来上がっている氷柱に激突している。
滑って勢いがついているだけにかなり痛い。
リイヤは危ないからとボールに戻ってもらっているが、これは素直に運んでもらった方がよかったかもしれない。

『(だから運びますと言ったのに…)』
「あはは…」

ボールの中から喋るリイヤの声はくぐもって聴こえる。
それでも呆れと心配がよく伝わってきて、オレは苦笑するしかない。

「っと、ここだな」

しばらく滑っては激突するのを不本意ながら繰り返し、プラズマ団の船へとたどり着いた。
タラップが下りているから、今度は乗るのに困らないだろう。

「あちゃー…」

そうして早速乗り込んだ船の中では、もはや恒例ともいえるヒュウ兄のバトルが始まっていた。
多くに下っ端が居る中、多勢に無勢だ。

「(これだから心配なんだよな。いくらヒュウ兄が強くても、数が多かったら大変なのに)」
『マスター、はやく助太刀を』
「うん」

船に乗り込んでボールから出てきたリイヤが言う。
言われなくてもそのつもりだから、大丈夫だよ。

「ヒュウ兄!」
「シオンか!ここはいい、俺だけでなんとかなる!」
「ちょ、無謀だって!」
「大丈夫だ!それよりお前は先に行け!ダークトリニティかチョロネコを見つけたら知らせろよ!」
「あ、ちょっと!」

ヒュウ兄はそれだけを言うとバトルに集中してしまった。
これじゃオレが何を言っても聞かなさそうだ。
しかたない、とオレは先に進むことを選ぶ。

『よろしかったので?』
「うん。ヒュウ兄も強いから、相手が多くても勝てるって信じてる」

ヒュウ兄が大丈夫って言ったんだから、オレはそれを信じるよ。
リイヤにそう言って、オレは一先ず前回乗り込んだときは行けなかった場所を中心に探すことにした。

「待っていたぜ!」
「!!」

扉をくぐると、両脇で待ち伏せしていた下っ端二人に捕まった。
まさかここで待ち伏せているとは、完全に油断していた。

『マスター』
「うん、行っといで」

待ち伏せされたとしても、オレ逹はそう簡単にやられないよ。
すぐに冷静さを取り戻したオレは、リイヤとアンディを繰り出す。

『あ?久しぶりのバトルか』
「アンディ、頼むよ」
『任せとけって、すぐに終わらせてやる!』
『あまり暴れるなよ』

やる気満々で飛び出していくアンディと窘めるリイヤ。
こんなやり取りをしていても気の合うらしい二人は、あっという間にバトルを終わらせてしまった。
バトルに負けて膝をついている下っ端二人をしり目に、オレはワープパネルへ飛び込む。

ワープ先にはさっきの元団員が居た。
このエリアの構造を教えてくれる。
パイプを繋げて進まなくてはいけないこのエリアは、少々面倒そうだ。

しばらくパイプを繋げたりワープしたりとぐるぐるエリアを回り、ようやくすべてのバリアを解除できた。
そこからさらに元のワープパネルに戻るまでにぐるぐる歩き回ったのはここだけの秘密だ。

そして解除されたバリアの先、装置の中に繋がれたキュレムをようやく目の前にできた。
しかし、近づくオレを遮るかのように後ろから声がかけられる。
振り向けばそこにはヴィオさんの姿。

装置からキュレムを出させはしないとボールを構えバトルを仕掛けてくるかれに、オレも応戦する。
連戦が続いているけど、リイヤには頑張ってもらわないと。

またもやオレとの勝負に負けたヴィオさんが後ずさる。
負けてもなお、最後に笑うのはプラズマ団だと言うヴィオさんをしり目に、オレはキュレムを助けるため装置へと近づいた。
しかしその装置はオレでは解除できないようで、どうすればいいのか途方に暮れる。

「キュレムを助けるのは、ここじゃないのか?」
『マスター、あそこ』

歯噛みしていたオレに、リイヤが一点を示す。
部屋の隅、隠れるようにして存在するワープパネル。
他に助けられそうな手段もなく、オレは試しとそのパネルの上に乗った。

Play20

出口を通り海辺の洞窟だから脱したオレ逹。
白い砂浜に打ち寄せる波の音を聞きながら、オレはそれを見上げていた。

「あれは…」

打ち寄せる波の向こう、浜から少し離れた沖合。
そこに停泊するそれは。

『プラズマ団の、飛行船…!』

そう、以前ソウリュウシティを氷漬けにしたプラズマ団の飛行船がそこに停泊していた。
それを見上げていたオレの後ろから、足音がする。
隣のリイヤが警戒していないのを確認しつつ、振り返ってみると。

「見つけたか!さすがだな、シオン!」
「ヒュウ兄」

どうやらまだここに来ていなかったらしいヒュウ兄が、そう言って近づいてくる。

「しかし…どこから上がればいいんだ?」
「登る場所ないね」

見える範囲で船を見渡してみるが、それらしい場所はない。
どこから上がればいいのだろうと2人で悩んでいると、どこからか待つようにとの声が聞こえる。

「「?」」

その声に2人して周囲を見渡していると、船からタラップが下りてきた。

「これで大丈夫たい!」
「シズイさん!」

下りてきたタラップの先には、シズイさんの姿。
あの人、この船にどうやって乗り込んだんだろう。

「あんた、プラズマ団と戦うつもりはないんじゃなかったのかよ」
「おうともよ!おいはプラズマ団に恨みはない。みんながプラズマ団は悪いいっとるけど、おいはそんなん知らんしひとの噂でそう決めるんは流儀に反する!でもおはんらが困っとるんやったら助けてやらねばならん。これがおいのやりたいことや」
「はあ…」

つまりは、プラズマ団に興味はなくても目の前や知り合いが困っているなら助けたいってことだ。


「ありがとうございます。ほら、ヒュウ兄もお礼言わないと」
「……あんがと」

いまいちシズイさんの言葉に納得いっていないらしいヒュウ兄を促して、お礼を言う。
お礼ってとても大切だよ、ヒュウ兄。

「ええか、おはんら。信念を持て。奪われたポケモンを探すのでもいいし、イッシュを氷漬けから守るためでもいい!理由は何でもいい。でもな、自分はそのために何をするのか、信念の強さがポケモンと自分に力をくれるたい!」
「…はい」
「騒いでしまったから何人か出てきたけど、がんばるんやぞ!」
「うえ!?」

たしかに、甲板が騒がしくなっている。
シズイさん、できればオレはもうちょっと穏便にというかひそやかに行きたかったです。
気をつけて、と言葉を残して去って行くシズイさんの背中を恨めしく見やってしまったのは仕方ないだろう。

「ったく、最後まで締まらない人だな」
「あはは、確かに」
「とはいえ、あれがあの人なりの優しさなんだろうな」
「うん」

ヒュウ兄と言い合って、オレ逹はプラズマ団の船へと乗り込むことにした。


******


「あ、お前ら!タラップを降ろしやがったお気楽水着の仲間か!?」

船に乗り込むと、さっそくプラズマ団の下っ端に絡まれた。
そうか、シズイさんはやっぱり彼らにもお気楽者に見えるのか。
って、感心してる場合じゃない。
変な叫び声を上げてポケモンを繰り出してきた下っ端に応戦するため、オレもリイヤを繰り出す。

「リイヤ、頼む」
『任せてください』

やっぱり、みんな頼もしい。
相手が繰り出すポケモンを次から次へと伸して行ってる。
オレがバトルを終えるとヒュウ兄も丁度バトルを終えたようで、ヒュウ兄はヴィオに妹のポケモンの事を聞くのだと言って駆けて行ってしまった。
オレは相変わらずなヒュウ兄が心配で、慌てて後をついていくことにする。

「リイヤ、大丈夫?」
『はい。ダメージは受けていないので心配いりません』
「そか。このまま頼むね」
『はい』

追いついた先では、早速というかなんというか、ヒュウ兄がまたもやバトルを開始しようとしていた。
相手の数は2人。
オレは慌ててリイヤに参戦するよう指示する。

ヒュウにと共に倒した下っ端は、チョロネコを連れてはいなかった。
彼らは他の団員に知らせねばと、オレ逹の脇をうまくすり抜けて走っていく。

「…あれは、バリアか。その横にはパスワードの入力装置…」
「きっと、下っ端かもしくは幹部クラスの人が居る」
「ああ。探すか聞き出すか…どうにかしてこのバリアを解除しないとな」

オレ逹は手分けをしてパスワードを探すことになった。
一足先に言ったヒュウ兄の後を追い、オレもこの通路から出て行く。


******


プラズマ団と戦いパスワードのヒントを得たオレは、入力装置の前まで来ていた。

「えーっと、このカードを挿して…」

オレは装置に下っ端の人からもらったプラズマカードを差し込む。
これがないとパスワードを入力してもバリアの解除ができないらしい。

「ヒントは…プラズマ団が求めたドラゴン、黒色…」

同じく、他の下っ端の人が見せてくれた伝説のドラゴン二体の姿を思い浮かべる。
彼らの名は確か。

「ゼクロム…かな?」

名前を入力してEnterキーを押す。
すると場に似つかわしくない軽快な音を響かせバリアが解除された。
オレはその先にあるワープホールに足を踏み入れる。

そうして飛ばされた先には、ヴィオさんの姿。
足元の床が格子状になったその部屋に、彼はいた。

「ここまで来るとは大したトレーナーだ」
「リイヤ達が頑張ってくれたので」

なんだろう、この部屋は他に比べて随分と寒い。
それになんだか、あまりいい感じがしない。

「わざわざここまで来たのだ。良い物を見せてやろう」
「…いいもの?」

そう言って立っていた位置をずらしたヴィオさんの足元。
透明なパネルから見えるその下には、ポケモンの姿。

「これが!伝説の氷ポケモンキュレム!!」
「!」
「ヒュララ…」

あのポケモンが、キュレム。
かつてレシラムとゼクロムが二匹のポケモンに分かれた際に生まれたのではないかとされるポケモン。
そのキュレムは、どこか元気の無さ気な鳴き声を上げている。

「ソウリュウに打ちこんだミサイルはキュレムの能力と我らの科学力で創りだした物なのだ!」
「兵器に、ポケモンを使ったの…?」
「ああ、そうさ。そして、お前はプラズマ団にとって不安要素になりかねない」
「……」
「此処で排除させてもらう!」

バトルが始まるのかと、オレは身構える。
隣のリイヤも準備は万端で、低く威嚇の唸り声を上げている。

「そうはさせないぜ」
「!」

バトルが始まる寸前。
ヒュウ兄がワープホールを使い追いついた。

「シオン、バリアを解除してくれてありがとな。助かった!」
「むぅ!一人増えたがまあいい、まとめて始末するのみだ!」
「行くぞシオン!」
「うん!」

こうして、ヴィオさんたちとのバトルが開始された。
戦って思ったけど、ヴィオさんの手持ちって氷タイプばかりだよな。
おかげでリイヤが一発で相手のポケモンを沈めてる。

頭の片隅でそんなことを考えてるうちに、バトルは早々と終わりを告げていた。
もちろん勝ったのはオレ逹だ。

「俺たちが負けるか。で、ここはなんなんだ?」

ポケモンをボールに戻したヒュウ兄があたりを見渡していう。

「!あのポケモン…周りが凍り付いてる?まさかソウリュウの…」
「キュレムだよ。ソウリュウシティを氷漬けにした氷のミサイルはあのポケモンの能力が使われてる」
「やっぱりか!」
「ふむ、敏いトレーナーだな。しかし、それ程敏いのになぜワタシたちのアジトに乗り込んできたのか…」
「んなの決まってるだろ。妹のポケモンを取り戻すためだ」

妹のチョロネコを奪ったのはお前かと訊くヒュウ兄に対して、ヴィオさんはチョロネコなど誰かが奪って使っていると答えた。

「だが解せぬ。チョロネコなど他にもいよう。なぜそこまで拘る」
「……死んだ爺ちゃんが妹のために捕まえてくれたチョロネコなんだ。アイツは、世界にたった一匹しかいないんだよ!」

そっか、ヒュウ兄があれほど拘る裏にはそんな理由もあったんだ。
たしかに、それなら何が何でも探し出して取り戻したいと思うよな。

「個人の想いか…しかし、その思いは他から見れば実に小さい」
「なんだと!」
「さて、キュレムも回復してきた頃だろう。遺伝子の楔は大切に使わせてもらうぞ」
「あ!」

そう言ったヴィオさんの手には遺伝子の楔。
それを取り戻そうとし一歩動いた俺の前に、突然ダークトリニティが姿を現した。

「また、邪魔をするつもり?」
「これが俺達の仕事だ」
「っく…」

彼らはそういうと、またもやオレ逹を船外へと連れ出した。
本当に早業だ。
抵抗するまもなく外へと放り投げられたオレ逹の目の前で、プラズマ団の船が空へと昇って行く。

「プラズマ団!どこへ飛ぼうと絶対に逃がさない…!」
「あの方向は…」
「あの方向は恐らくジャイアントホールだ」

ヒュウ兄が船の飛び去った方角を睨み付ける横で、オレは場所の憶測を立てる。
と、到着が遅くなったと言ってチェレンさんがやってきた。
そしてチェレンさんの推測もオレと同じくジャイアントホール。
キュレムが居たとされる地。

「ジャイアントホールって事は、22番道路か!俺は先に行くぜ」
「うん」

言うと、ヒュウ兄はいつもの様に駆け出そうとした。
しかし、その足をピタリと止めてオレの方へと向き直る。

「……シオン。アイツの、キュレムの鳴き声、なんだか悲しそうだった」
「うん、判ってる」

それだけ言うと、ヒュウ兄はいってしまった。
チェレンさんはヒュウ兄の言葉に驚いている。
そりゃ、伝説ともいうべきキュレムの力を悪用してるんだ、驚くよね。
チェレンさんはというと、どうやってプラズマ団を止めるかぶつぶつと独り言をつぶやいている。
しばらく考え続けてどうするか決めたらしいチェレンさんもまた、来た道を戻って行った。

「キュレム、苦しいって言ってた」
『はい』
「やっぱりあのミサイルは無理矢理キュレムの力を引き出してたんだと思う。だから…」
『はやく、キュレムを助けましょう』
「うん、そうだね」

絶対、キュレムを助ける。
あんな辛そうな声を聴いたんじゃ、助けるしかないし。
オレはよつはの背に乗り、一度セイガイハシティに戻ると22番道路へと急いだ。

Play19

「!」
「あ」

外に出ると早速、待っていたヒュウ兄と目があった。
ヒュウ兄はオレの様子を見て勝ったのだなと嬉しそうだ。

「本当ならすぐにポケモンリーグに挑戦…なんだけど。プラズマ団が先だ!」
「うん!」
「よう!おはんら!プラズマ団ってなにしておる連中よ?」
「し、知らないんだ…」

ジムリーダー全員には伝わっていないのかな。
まあ、いいんだけど。

ヒュウ兄がプラズマ団の説明をして知らないのかと聞いてみたら。
シズイさんは胸を張って「知らん!」と言っていた。
すごく堂々としてるなあ。

「海で暮らしているとな、そういうことあんまり気にならん」

ああ、この人って堂々としてるんじゃなくて良くも悪くもマイペース。
もっとソフトに言えば大らかなんだな。

「で、おまはん、プラズマ団は悪いと思うか?」
「お、オレ?」
「そうじゃ、おはんや」
「オレは、悪いと思う。少なくとも、自分たちのためにこの地方を巻き込むのはいけないと思う」
「そうか、悪いから戦うのか。さてと…」

それだけを言って、シズイさんはどこかへ行ってしまった。
本当にこの人マイペースだな…。

「ったく、なんなんだとあのマイペースな人。まあいい、シオン、お前は22番道路でプラズマ団を探してくれ」
「うん、わかった。ヒュウ兄、気をつけて」
「おう!」

そこで、オレ逹は一度分かれた。
プラズマ団、22番道路にいたらいいんだけどな…。
そんことを考えつつもやってきた22番道路。

草を掻き分けつつ進んだ先に、茶色い巨体。
どうやらポケモンの様だが、このポケモンはいったい…?

「今あなたの眼前で存在感を放つそのポケモンはテラキオン!」
「!」

オレの疑問を聞いたかのように答える声。
声のする方へと振り向くとそこには。

「久しぶりです!」
「アクロマさん」
「テラキオンは戦いの炎からポケモンを護るため人と戦った三匹のポケモンの一匹!」
「三匹の…」

もしかして、コバルオンの仲間だろうか。
たしか電気石の洞窟へ行く道中で会ったおじいさんがそんな事言っていたような気がする。

「きっと、プラズマ団が発する危険なにおいをかぎ取り彼らに対抗できる強きトレーナーを求めているのでしょう」
「……だから彼らは…」
「彼らがあなたの前に現れたのは興味がある!それはさておき、あなたはプラズマ団と戦うのですか?」
「…はい」
「なるほど!ならば自分のポケモンを護れる強さを持つのです!ポケモンに守ってもらうだけがトレーナーではありません」

言われなくても、わかってる。
いくら強いポケモンが手持ちにいたとしても、そのポケモンとの絆が無ければ本当の強さは出せない。
ポケモンとトレーナーが互いを強く思いあうからこそ強い力が発揮できるのだ。

「これはわたくしからのプレゼントです」
「?」

手渡されたのは、小型のリモコンのような物。
これはいったいなんだろうか。

「それはポケモンを活性化させる装置の試作品!」
「し、試作品!?」

どうしてそんな物を手渡したのだろう。
それに試作品って…。

「戦っているポケモンには使えませんが、何かの役に立つこともあるでしょう」
「……本当に使って大丈夫なのかな」
「では、あなたとポケモンの旅の無事を祈って!」
「ちょ、まって…」

渡すものを渡して言う事を行ったアクロマさんは、なぜかポーズをとって去って行った。
あのポーズ、する必要あったのかな。
オレの隣ではリイヤが突っ込んだら負けですって遠い目で言っていた。


*****


アクロマさんからなんともネーミングセンスの欠片もないアクロママシーンを受け取ったオレは、来た道を戻ることにした。
そのままジムの前を通り21番水道へと出る。

「ヒュウ兄ってこっちだっけ?」
『どうだったでしょうか』

22番道路にプラズマ団は居なかった。
その事を伝えるためにもオレは来た道を戻り21番水道へと来たのだ。
が、ヒュウ兄がこっちへ行ったのか覚えていない。

とりあえず進んでみようとリイヤと相談し、水道の先を行く。
すると、洞窟らしき入り口が見えてきた。
上陸し、中へと入ってみる。

「広いね」
『ですが道は単調です』

迷うような構造ではないため、進むのは楽だ。
雨調に乗って洞窟内の水源を上っていく。
しばらく進んだ先に、階段と地上への出入り口が見えてきた。

「あれ…?」
『障害物、ですね』

出入り口の前には大きな岩。
前にも見たことがあるような光景だ。
いったいどこで見たことがあるのだったかと考えつつ進んでいれば、すぐに辿り着く。

「んー…」
『いったいどこでしたか…』
「……あ」

首を捻っていたら思い出した。
そうだ、4番道路だ。
たしかあの時もこんな感じで大きな岩が道を塞いでいた。
あの時はアクロマさんが…。

「んん?」

これってもしかして。

『アクロママシーン、ですね』
「……」

使えってことなのか、そうなのか。
でも試作品って言ってたよね、たしか。
それをポケモンに使うのは…なんだかちょっと…。
でも、これを使わないと先に進めないんだよな。

「うー…ほんとはちょっと嫌だけど…仕方ないよね」
『大丈夫だと信じましょう』

リイヤの後押しもあって、オレはアクロママシーンを使うことにした。
すると、道を塞いでいたイワパレスはむくりと起き上がると元気な鳴き声を上げてオレに襲いかかってきた。

「うわ!?」
『マスター!』

慌てたリイヤがオレの眼前に飛び出し、イワパレスを蹴り上げる。
いつも己を鍛えているだけの事はあるリイヤの強烈な蹴りは、イワパレスを壁へと叩きつけた。

「リイヤ、やりすぎ!」
『申し訳ありません。ですが、急にマスターを襲ったので…』
「うん、助けてくれてありがと。でも、もうちょっと加減してあげて」
『はい』

オレはリイヤを窘めつつ、壁で伸びているイワパレスを捕獲した。
それにしても、鳴き声って「ぱれっしゅ!」なんだ…。
随分可愛い鳴き声だなと思っていたら、このイワパレス♀だったけど。

「……あれ?」
『壊れてますね』

捕まえたイワパレスがボックスへと転送されるのを見送り、ふと気づく。
手に握られたアクロママシーンが壊れているのだ。
試作品とあるだけに、使用に耐えられなかったのだろうか。
まあ、使ったポケモンにはなんの異常もなかったから少し安心したけど。

「それじゃ、行こうか」
『はい』

イワパレスを捕まえた事で道の開けた出口。
リイヤと頷きあって、オレは出口へと歩みを進めた。

Play18

「うーん、どこいったんだろ」
『気配が完全に消えていますね』

ダークトリニティはその気配を消せるという。
気配に敏感なリイヤが見つけられないとは。

『波導で探してみます』
「うん、お願いするよ」

そう言って、リイヤが波導での探索に切り替えてくれる。
これなら隠すことはできないだろうし見つかるはずだ。

『……!見つけました!』
「どっち」
『こちらです!』

リイヤがオレを先導するように走り出す。
オレも滑らないよう足元に注意しつつ、その後を追いかける。

しばらく走り辿り着いたのは11番道路へと続くゲート。
そこにダークトリニティのh地の一人がいた。

「……ふふ、遺伝子の楔を奪い返せるか?」
「奪い返してみせるよ。……リイヤ、そのまま頼む」
「ガウ!」

ところで、トレーナー名がダークトリニティではなくダークだったのだが…。
まさか『ダーク』『トリ』『ニティ』とかに分かれてはいない…よな?
そう思いつつ、オレはリイヤへと指示をだし確実に彼の手持ちを減らしていく。

「っ…認めたくはないが、いい腕のトレーナーだ」

手持ちをすべて倒されたダークトリニティが言う。
なんというか、ジムリーダーの人たちに言われた時とは違い嬉しい気持ちにはならない。
それは相手が悪事を働く人だからか。

「しかし残念だったな。遺伝子の楔を持っているのは他の仲間…時間稼ぎはできました。私を追ってきてくれて感謝しますよ。では、ごきげんよう」
「あ!」

言って、ダークトリニティは再び姿を消した。
今度はこの街にはいないようで、リイヤも首を振っている。

「なんたること!」
「シャガさん…すみません…」
「いや、シオンはよくやってくれた。不甲斐ないのはこの私だ」

遺伝子の楔を奪われてしまったことでしんみりとしたオレ逹の空気を、突然鳴り響いたライブキャスターの音が切り裂く。

≪シオン!≫
「ヒュウ兄?それに…チェレンさんも」
≪ソウリュウに変な船が飛んでったろ!?≫
「うん。それのせいで今ソウリュウシティが氷漬けになってて…」
≪ボクもそれを見た!今そっちに向かっているところだ≫

どうやらチェレンさんはこちらへと向かっているらしい。
ヒュウ兄はオレの事が心配で連絡をしてきたようだった。

「シオン!」
「!」

通信が切れると同時に、ゲートをくぐってチェレンさんが到着した。

「あ、シャガさんもご無事でしたか!よかった…」
「チェレンか。すっかり逞しくなったな」
「ありがとうございます。ですが、挨拶はまた今度に。プラズマ団の潜伏場所は大体わかっています。イッシュ地方で一番気温が低いところ…セイガイハシティ付近でしょう」
「セイガイハ…」
「ボクとヒュウでプラズマ団の事を調べます。ですからシャガさんは、ソウリュウシティを護ってください」
「……街をこうさせてしまったわたしに、そう言ってくれるか。わかった、そちらは任せる。だが、決して無理はするな!」
「はい!シオン、できれば君にも来てほしい。何と言ってもプラズマ団と互角…いや、それ以上の腕を持っているトレーナーだからね」
「もちろんです!それに、ヒュウ兄も行くんだったら心配だから」
「そうか。ではシャガさん、ここは任せます」

先に行く、と言ってチェレンさんは走っていく。
オレも行こうとして、しかしシャガさんに止められる。

「セイガイハシティ…サザナミタウンから北に何があるのか…。シオン!プラズマ団からポケモンを守ってくれ」
「もちろんです」

オレはリイヤ達と離れたくないし、ポケモンを悪事に使う人は、やっぱり好きになれない。
それに、大好きなこの地方を氷漬けにもさせたくはないから。
だから絶対、止めてみせる。
今度はヒュウ兄の手伝いをするとかじゃなくて、オレがそうしたいから。

オレはシャガさんに行ってきますと言って、ゲートをくぐる。


******


さて、サザナミタウンまで戻ってきたものの。
どこからセイガイハシティに向かえばよかったのやら。

「というかそもそもそんな道あったっけ?」
『マスター…』

どこから行けばいいのだったかと頭をひねるオレを、リイヤが引っ張る。
そして連れて来られたのはマリンチューブの前。

「ああ!」
『すっかり忘れておられましたね…』
「あはは…」

そういえば、依然来た時にスルーしたんだった。
リイヤの言うとおり、すっかり忘れてしまっていた。
道も見つかったことだしとオレがマリンチューブに入ろうとすると、またもや鳴り響くライブキャスター。

≪シオン、今どこに居る!?≫
「ヒュウ兄?今サザナミタウンだよ。マリンチューブの前」
≪わかった!そのままちゃんと、真っ直ぐ、寄り道せずに!来いよ!?≫
「う…はい」

前科がある俺としては否とは言えない。
大人しく今度はちゃんとまっすぐ行きますと言って、オレは通信を切った。

「それじゃ、いこっか」
『はい。ちゃんと行きましょうね』
「リイヤまで…」

オレ逹は軽い言い合いをしつつ、マリンチューブの建物へと入って行った。


*****


「すごかった、ねー…」
『はい』
「夜だったからかな、ポケモンの姿は少なかったけど」
『昼間ならもっとたくさんのポケモンが見れそうです』

マリンチューブを通ったオレ逹は、海の中という普段は見ることのできない景色に少なからず興奮した。
初めて見る海底の景色は夜なだけあり幻想的で、漂うプルリルが少し怖かったけど。

「シオン、来たか!」

マリンチューブから出てすぐそこにヒュウ兄が居た。
連絡を受けて事情は全て了解しているらしい。
必ず遺伝子の楔を取り戻すぞと息巻いている。

「だけど!その前にお前はジムリーダーに勝ってこいよ!」
「うん、ちょっと行ってくるね」

ヒュウ兄に見送られてオレはジムに入っていく。
が、ガイドーさん曰く「海だー!」と叫んで駆けて行ってしまったらしい。
だからどうしてジムリーダーのみなさんはこう自由気ままなのだろうか。
探すのって意外に大変なんだけど。

仕方なく、街に出て探すことにする。
街の人はシーちゃんや自由人など随分親しんでいるらしい。

「さてと、どこに居るのかな?」
『地道に回るしかないのでは』
「やっぱりそうなるよね…」

どうするかなあと考え込んでいるオレの後ろで、穏やかな波を立てていた海が大きく揺れる。
リイヤと二人して考え込んでいたオレは、それに気づかず。

「とりゃお!」
「うおああ!」

海から急に飛び出してきた人物の、活きのいい声に盛大にビクついた。
なんとなく気づいていた様子のリイヤが実に恨めしい。

「おう!おはん、ジムに挑戦だろ?おいがジムリーダーのシズイたい。探させて悪かったな!」
「い、いえ…」

方言、だろうか?
意味は通じるのだけど、理解するのに少しだけ時間を要しそうだ。

「ほな、ジム行っとるたい!」

シズイさんはそう言って、意気揚々と走って行った。


*****


しばらく手持ちのレベルを上げたあと。
いよいよオレはジムへと挑戦するためジムの扉をくぐる。
中は池のような作りになっていて、大きなハスの葉に乗って移動するようだ。
いくつかのハスを乗り継いだりしつつ奥を目指す。

「おー!やっと来たか!」
「お待たせしました」

よかった、シズイさんはちゃんといた。
来るまでに時間がかかったからまた泳ぎに行ってないよなと思っていたけど、さすがにそんな事はなかったようだ。

「おはん強そーやね!」
「さすがにバッジ7つ持ってるので」
「そかそか!ほな始めよーかい」
「はい、よろしくお願いします!」

互いに挨拶をして繰り出されたポケモン。
シズイさんのポケモンも本当に強そうだ。
けど外じゃヒュウ兄が待ってるんだ、頑張らないと。

開始されたバトルは、やっぱり苦戦した。
なんといっても8つ目のジム。
もうちょっと手持ちのレベルを上げてから挑んでもよかったかもしれない。

そう思いはしても、信じる手持ちのみんなだ。
シズイさんとのバトルにはちゃんと勝つことが出来た。

「おはん、強そーじゃなくわっせ強いんじゃな!」
「わ、わっせ…?」

なんとか意味を理解していた方言だけど、さっきのは流石にわからなかった。
いったいどういう意味なんだろう…。

「おお、そうじゃ!これを渡さないとダメなんじゃったな!」
「あはは…忘れちゃダメですよ…」

強いトレーナーに会えた驚きですっかり忘れていたらしい。
シズイさんから最後のバッジ、ウェーブバッジを受け取る。
新しいイッシュ地方のバッジらしいそれは、波紋を思わせる綺麗な輝きをしている。

「どじゃ、綺麗じゃろ?」
「はい。綺麗な輝きですね」
「それでジムバッジが8個目か。なら、どんなポケモンとでも仲良しよ!あとー、技マシンも渡すんじゃな」

持ってけ、と渡された技マシンは熱湯。
雨調が覚えている技と同じだな。

「ほな行っとこかい!」
「?」
「ついてくるとえーよ!」
「は、はい…って、ええ!?」

着いてこい、と言いつつシズイさんは背後の水に飛び込んだ。
え、これはオレも飛び込むのか…?
ゆっくりと床の縁へ近づいてみるが、水面との高低差があって波乗りは使えなさそうだ。
飛び込むのもちょっとな…と考えて、オレは来た道を戻ってジムを出ることにした。

Play17

途中バトルだなんだとしつつソウリュウシティを目指したオレは、ようやく到着できた。
ビレッジブリッジでは1000勝だったか2000勝だったかにオレを選んだおじいさんに圧勝してしまい、申し訳なくなったりもしたのもだ。

ゲートをくぐり街中へと入ったオレは、見た事のある少女に捕まってしまった。

「やっほー!ヒウンシティ以来だね。ひょっとして…あたしのおじーちゃんに挑戦しに来たの?」
「おじいちゃん?」
「うん!ソウリュウシティのジムリーダーはあたしのおじいちゃんなの!」

といっても血の繋がりはないんだけど!
言うと、アイリスちゃんは親切にジムの方角などを教えてくれる。

「それにしても、おにーちゃんってポケモンに慕われてるのね!」
「ありがと。リイヤたちは、オレの大切な家族なんだ」

そっと、腰に下げるホルスターに付けたボールを撫でる。
隣のリイヤも、ボールの中の彼らも、嬉しそうだ。
アイリスちゃんはその様子を見ると、頑張って、と言い置いて立ち去った。


*****


「ようこそ、ソウリュウジムへ!」

いつものようにジムに入ったすぐそこで、ガイドーさんから美味しい水を受け取りつつジムの説明を受けた。
このジムは巨大な竜の石像の頭に乗って上を目指していくらしい。
それにしても本当に大きな石像だ。
上を見上げる首が痛い。

なんとか石像を操作しつつ上へと上がっていく。
どうやらトレーナーによってポケモンの育て方やバトルスタイルが違うらしい。
それでも順調に最上階へとたどり着き、ジムリーダーのシャガさんと対面することができた。

「よくぞ参られた」

そこにいたのは、非常に特徴的な髭?を蓄えたおじいさん。
この人が、ソウリュウジムのジムリーダー、シャガさん…。
そして、この街の市長でもあるらしい。

「私は今までこの町のジムリーダーとして、そして市長として、この町が発展することに尽力してきた。しかし私は、君がレイやアイリスのように私に未来を見せてくれることを望んでもいいのだろうか。それを、たしかめさせてもらおう」

ソウリュウシティを発展させてきたこの人に、オレのバトルで未来が見せれるのかはわからない。
けれど、オレはこのバトルに勝って先に進むだけだ。
そう思いながら、オレはボールを宙へと投げる。


*****


「すばらしい」

バトルに勝ったオレに、シャガさんがそう言う。

「君と出会い戦えたことに感謝する」
「こちらこそ、バトルをありがとうございます」

シャガさんとのバトルは、今までのジム戦とは違った感じを受けた。
まさかドラゴンタイプの技が半減されるはずのリイヤが瀕死に追い込まれるとは思わなかったのだ。
雨調が居てよかったと思えた瞬間である。

「さあ、これを持っていきなさい」

そして手渡されるレジェンドバッジと、毎回恒例となってしまっている技マシン。
習得できる技はドラゴンテールという技らしい。

「さてと、アララギの娘から話は聞いている。イッシュを造った伝説のポケモンの話を聞かせればよかったのだな」
「はい。お願いします」
「よかろう。では外で待っていてくれ」

言われたとおりにオレはここまで来た順序を戻り、外へと出る。
それにしても、何度見ても大きい石像だ。
どう考えてもジムの外観と中の大きさとが合っていないように見える。

『マスター、それは触れてはいけない事だと思います』
「リイヤ、もう大丈夫なのか?」
『はい。心配をおかけしました』
「ううん、大丈夫。シャガさん本当に強かったね」

上を見上げ絶対これおかしいよな、と呟いていたオレに、ボールから出てきたリイヤが突っ込んできた。
受けたダメージも少しは回復したようで、一応は動けるらしい。
でも心配だからとオレはミックスオレをリイヤに飲ませつつ、彼と他愛ない事を言い合う。
余談だが、シィマが拾ってきてくれるおかげでオレのバッグにはミックスオレが120本以上入っている。
多いし中々消費できないしとここぞとばかりにミックスオレを飲ませてやった。

「待たせたな」
「シャガさん」
「さあ、家まで案内しよう。私についてきなさい」
「はい」

しばらく歩き案内されたシャガさんの家。
シャガさんと対面し落ち着いたオレは、いよいよ伝説のドラゴンポケモンの話を聞けるのだ。

「では話そう。長くなるが、心してきいてほしい」
「……」

二年前、二匹のドラゴンポケモンが目覚めた。
そのポケモンこそが、レシラムとゼクロム。
この二匹のポケモンは元々一匹のポケモンであったが、かつて双子の英雄を手助けするために二匹のポケモンへと分かれた。
二人でつくった国、しかしどちらが正しいのかを争い始めた双子の為に国は二つに分かれてしまった。
その時に、伝説のドラゴンポケモンも分かれた。
そして、実はこの時にもう一匹、キュレムというポケモンが生まれたのではないかというのだ。
シャガさんの一族には、それを裏付ける証拠があるのだという。
それは、遺伝子の楔という宝。
アララギ博士の調べでは竜螺旋の塔と同じ成分が含まれているらしい。
キュレムが本当にいてどんなポケモンなのかは不明だし、強大な力を持っていたレシラムとゼクロムなのだから、いたとしても抜け殻のようなポケモンなのではないか。
存在がまだ不明であるため、シャガさんもどの考えが正しいのかはわからないみたいだけど。

シャガさんの話も終わりを見せたころ、急に表が騒がしくなってきた。
そして聞こえてきた不思議な音に、オレ逹は表へと出てみることにした。

すると、ソウリュウシティの上空に巨大な飛行船。
それはソウリュウシティの上空に来ると動きを止めた。
一体何事かと上空を見つめるオレ逹の視線の先で、飛行船の船首部分がゆっくりと開いていく。
開いたその奥に見えるのは銃砲だろうか?
どの道嫌な予感しかしない。

「これは…」
『マスター!』

唖然とするオレとシャガさん。
オレの横ではリイヤが野生の感か、危険を感じて吠えている。
しかし、見上げるオレ逹を余所にその銃砲は光を収束させ始めた。
これは、かなりまずいんじゃないか。

オレが動き出そうとした瞬間、銃砲から圧縮された光の玉が撃たれた。
それは地面に当たると周囲を氷柱の中へと閉じ込めてしまった。
建物も、その中にいた街の人たちをも巻き込んで。
次々と放たれる砲撃は、次々と街を凍てつかせていく。

「この氷の世界は…オノノクス、ドラゴンテールだ」
「ググォー!」

シャガさんの手持ちのオノノクスが、オレ逹の目前を防ぐ氷柱を砕く。
しかし、砕けるかに思えた氷柱は壊れず、傷一つ負わずにそこにあり続けた。
いったいこれはどういう事なのだろうか。

「そうでしょうとも」
「!お前は…」

不思議に思うオレ逹の前に、プラズマ団のヴィオさんが現れた。
辺りを見渡して寒いと言っているが、そうしたのはあなただろうと言いたかった。
寸前で堪えたオレ、頑張ったと思う。

「これはプラズマ団の技術で生み出した特殊な氷!アイツを捕えている限り溶けることも砕けることもないのだ!」
「…アイツ?」
『よくは判りませんが、この氷の秘密のようですね』

引っかかった単語に眉をしかめる。
恐らくは何かのポケモンなのだろうが、ポケモンの中にこのような氷を作り出せるポケモンはいただろうか。
少なくともオレの記憶にはいない。

「さて、用件を伝えよう!シャガ殿、遺伝子の楔を渡してもらおう」
「お前たちが二年前にした行い。それを知っている人間が素直に渡すと思っているのか?」
「ふむ、予想通りだな。本来なら脅すところだが…」

どうやらあの氷は一度に使える回数に限りがあるらしい。
今は使い切ってしまい、言ってしまえばエネルギーの補充中というところか。
彼らは地道に探すことにしたらしい。
オレはシャガさんに頼まれ、この町からプラズマ団を追い出すこととなった。

「それにしても、寒いね」
『はい。風邪を引かないよう気を付けてください』

今の季節は冬とはいえ、それほど寒い地域に無かったものだから防寒具なんてほとんどない。
気を付けないと、凍傷だなんて笑えないよな。
それにしても、戦う先々で随分な言われようだなとリイヤと苦笑し合う。

街中の下っ端を倒していくと、一人が「ジムを徹底的に探せ」と言われたと言った。
それを聞いて、オレは急いでソウリュウジムへと向かう。
すると、ジムの前にヴィオさんの姿。
どうやら戦わないわけにはいかないらしい。
オレは氷で滑りそうになる足を踏ん張りつつ、リイヤへと指示を出した。


*****


「やれやれ、さすがはポケモンを使うことに長けたトレーナーか」

オレに敗れたヴィオさんがそういう。
彼はバトルの最中もずっと寒そうに震えていた。
この人、こんなに寒がりなのによく街中を凍らせて、しかも遺伝子の楔を探し回る気になったな。
称賛も真似もできないけど、オレは絶対にやりたくない。

「さて、ここは一度引き上げるか。何より寒くて敵わんしな」
「それじゃ最初から凍らせなければいいのに…」
「だが、想像してみるがいい。イッシュ地方のすべてが氷漬けになる様を。そのためには何があっても遺伝子の楔を手に入れるぞ」
「イッシュを氷漬けにはさせないよ。そして、遺伝子の楔も渡さない」

オレは、撤退していくヴィオさんの背中にそう言った。

「さすがだ。君のおかげで助かった」

ヴィオさん達プラズマ団の去って行く姿を見ていたオレに、シャガさんがそう声をかけてくる。
プラズマ団を捕まえなかったことを怒られるかなと思ったが、特に怒られる様子はないみたいだ。

「戦ってくれた君の大切なポケモンにも感謝居ているよ」
「街を守る事は出来なかったけど、引いてくれてよかったです」
「それでいい。子供が無理に彼らを捕まえようとすることはない」
「そう…でしょうか」
「それは、大人の仕事だ。さあ、せめてもの気持ちだ。この薬でポケモンの回復を。それと、ここで少し待っていてくれ。すぐに戻る」
「はい」

オレはシャガさんから薬を受け取り、戦ってくれたリイヤの傷に噴きかけてやる。
それほど大きな傷ではないが先程の戦いでダメージを受けていたから丁度いい。

「ふむ、行って戻るまでの最短記録更新だな」
「……」

オレがリイヤの手当てをしている間にジム内に行っていたシャガさんは、実に早いお戻りだった。
別にそんな記録を更新しなくてもよかったのに。
シャガさん、お年の様だから少し心配だ。

「いいか、シオン。遺伝子の楔とは、これだ」
「…!」

そうして見せられたのは白黒黄色のカラーリングをした三角錐。
鮮やかなこの色の楔が、本当にあの竜螺旋の塔と同じ年代の成分だとは俄かに信じがたい。

「これが、あいつらの手に渡らなくて本当に良かった」
「ですね…」

彼らの求めるものだ、きっと手に入れていたなら非常にまずいことになっていただろう。
何の目的でこれを探していたのかは判らないけど、でもヴィオさんの口ぶりから察するなら恐らくは街中を氷漬けにしたアレの威力を上げる作用があるのだろうか。

「……案の定、ジムが隠し場所だったか」
「「!?」」

オレ逹がほっと息を吐いていると、急に現れた黒尽くめ。
あれは、ダークトリニティだ。

「なるほど、よく考えたものだ。シャガが居なければ入れず、居れば最強の番人となる…ジムを改装したのもこれが理由だったからか」
「お前たちは…いったいどこから」
「しかし、遺伝子の楔はたしかに貰い受けましたよ」
「何!?」

見れば、シャガさんの手の中にあった楔が消えている。
現れた一瞬で奪われたのだ。

「まさか、七賢人すら利用して楔の在りかを突き止めるとはな。ましてや奪われるなど…」
「どんな手段ででも目的を達成する。私たちはN様のように民の心を奪う求心力がないのでね」

代わりに圧倒的な力で人々を屈服させるのだと、彼はいう。

「二年は存外長かった…」

言うと、一人が三人に、そしてそれぞれに散っていく。
楔が今誰の手にあるのかもわからぬまま…。

「奪われたら奪い返すまで!行くぞ!」
「はい!」

このイッシュを、みんなの住む場所を氷漬けになんかさせない。
オレとシャガさんはダークトリニティを追い走り出した。

Play16

しばらく飛行機に乗り辿り着いた先。
飛行機から降りたオレに、アララギ博士は何やら真剣な様子でオレを連れてきた理由を話してくれた。

「チェレンから聞いたのだけれど、プラズマ団と名乗る連中が今一度伝説のポケモンでイッシュの支配を目論んでいるのですってね」
「はい」
「この地方にはレシラムとゼクロム、伝説のドラゴンポケモンが2匹いるわ。ただ、そのどちらのポケモンもそれぞれ英雄と認めるトレーナーに付き従っている」

2年前の事はオレも覚えている。
かつてプラズマ団の王だった人と、レイさん。
オレはプラズマ団の王だった人の事はよく知らないけど、そのどちらもが互いに掲げる理想の為にゼクロムとレシラムを従え戦ったのだ。

「だから、プラズマ団が伝説のドラゴンポケモンを利用するなんてできるわけがないはず…」
「ですよねえ……なにをするつもりなのかな?」
「そうね、ベル」

レイさんも、そしてもう一人の英雄も、今どこに居るのか知れない。
消えたもう一人の英雄を探してレイさんもどこかへ行ってしまったから。
今はどこで何をしているのだろうか。

「しかも、レシラム達についてはまだわからないことが多いの。そこで!」
「?」
「ソウリュウシティのジムリーダー、シャガさんに詳しい話を聞きたいのね」
「ドラゴン使いの、ですか」
「そうよ。で、ようやく本題なのだけど!あなたにはソウリュウシティに向かってシャガさんに話を聞いてきてもらいたいの。そして何かあった時に力を貸してほしいのよ!」
「はい、わかりました」
「ありがとう!もっとも、プラズマ団とは関わり合いにならないのが一番いいんだけどね」

たしかに、過激派のプラズマ団とは関わらないのが一番なんだろうな。
けど、ヒュウ兄がああなんだもん、きっとそれは無理な話なんだろうとも思う。
アララギ博士と、リバースマウンテンに調査しに行ってくると言ったベルさんと分かれて、オレはソウリュウシティへと向かうことにした。


******


さて、博士たちと分かれたのはいいがいったいどの道を進めばいいのか。
よく判らないからと道沿いに進んでみることにした。

途中ストレンジャーハウスという建物に寄ったのだが…その、幽霊屋敷だった。
ゴーストタイプのポケモンは平気だが幽霊は駄目なオレは、情けなくも悲鳴の連続だった。
絶対、もうあそこには近づかない…。

そう誓いつつ、別の道を進むことにしたオレは、今リバースマウンテンに来ている。
他に道もなさそうだったし、ここを越えて行くという事なのだろうか。

「あ、おおうい!シオンくん!」
「あ、ベルさん!」

リバースマウンテンの内部を歩いていると、先に来ていたベルさんと合流できた。

「あのねあのね、このリバースマウンテンで調査したいところがあるの。だけど野生のポケモンが思ったより強くって梃子摺っちゃってて…」

だからお願い!手伝って!

その言葉にオレは思わず頷いていた。
というか、レベル帯くらい事前に調べなかったのだろうか。
そんなところも彼女らしいと言えば彼女らしいのだけれど。

「あ、安心して!ポケモンの回復はあたしがするから!」
「それは、ありがとうございます」
「ということで出発進行!」
「わ、ちょっ!」

お礼を言っていたら急に背中を押されて半強制的に歩みを再開させられる。
この人も結構なマイペースっぷりだ。

結局ベルさんが調査したいと言っていた場所やその他を適当に散策し、出口だという場所を教えてもらって分かれた。
ベルさんはまだ調査したい場所が有るらしいので、彼女とはここで分かれることとなった。

そうして辿り着いたサザナミタウン。
オレはいつもの様に一通り町の中を散策する。
どうやらお金持ちの多いこの町には、四天王カトレアさんの別荘があるらしい。

ひとしきり散策し終わったオレは、ソウリュウシティへと向かうために13番道路に出ようとゲート前にやってきた。
すると、後ろからオレを呼び止める声。
振り向くと、しばらくぶりに会うヒュウ兄が居た。
久しぶりだと思った瞬間、オレはヒュウ兄にバトルを挑まれていたけど。

「やっぱシオンは強いな!」
「ポケモン育てるのは好きだから」
「うん、俺たちこれだけ強ければプラズマ団も逃げ出すよな!」
「どっちかというと、ヒュウ兄の気迫に押されたんじゃ…」
「ん?なんか言ったか?」
「なんでもないよ」

ヒュウ兄はチョロネコを必ず取り戻すのだと息巻いている。
毎回毎回プラズマ団を見つけたヒュウ兄の反応は鬼気迫る様な物があって、オレはきっとこの気迫のせいで逃げているのだと思うのだ。
まあ、たしかにオレ逹の強さもあるのだろうけど。

ヒュウ兄はポケモン図鑑の完成も頑張れよ、と言い置くと、13番道路へと消えて行った。
オレもソウリュウシティを目指して13番道路へと向かう。


*****


途中道草もしつつ、なんとかカゴメタウンまでたどり着いたオレは、先に来ていたらしいアララギ博士とベルさんと合流した。

「あーい、シオン!」
「アララギ博士!」
「うふふ、空を飛ぶを使ったからシオン君を追い越してたみたい」
「あ、それで先に来ていたんですね」

そっか、そういえばこの2人の方がずっと先輩なのだ。
カゴメタウンに来たことがあってもおかしくはない。

「このカゴメタウンを抜けてまっすぐ行けばソウリュウシティよ。だけど、その前にあなたたちにも聞いてほしい話があるの」

そう、アララギ博士は真剣な顔で言う。
そしてこっちよ、と言って案内されたのは、一軒の家。
中に入ってみると、おばあさんが一人座布団に座っていた。

「あんたたちかい、カゴメの昔話を聞きたいというのは」
「はい。よろしくお願いしますね」

そうして語られたのは、カゴメの裏にある巨大な穴、ジャイアントホールのまつわること。

昔々、このジャイアントホールは巨大な隕石が落下してできたのだそうだ。
その隕石には恐ろしいポケモンが潜んでおり、辺りを闇が包むとそのポケモンは凍えるような冷たい風とともに姿を現して辺りを凍てつかせた。
そのポケモンは人やポケモンをとって喰らい、たいそう恐れられていた…。

それが、おばあさんが話してくれた話の内容。
ポケモンが人を食べるだなんて、今では信じられない話だ。
昔の話だからそのポケモンがどうなったのか今は判らないけど、オレはその話の恐ろしさに思わず身震いしてしまった。

「ところでシオン、レシラムの話は覚えてる?」

おばあさんの家をお暇した博士たちは、そのポケモンについて色々と語っているようで。
オレは専門外だからと傍で傍観していたら突然話を振られてしまった。

「え、あ…はい!」
「そう、レシラムは真実を追い求めるものを英雄と認め力を貸し与えるという伝説のポケモン」
「博士は、レシラムとさっきのお話のポケモンとが何か関係があるとお考えなのですか?」
「まだ何とも言えないわ。でも、隕石がね…」
「隕石?」
「レシラムも、そしてゼクロムも石から復活したのよ。そして昔話の隕石が同じものだったとしたら…」
「!」

たしかに、もし同じものだとしたら切って捨てることの出来ない問題だ。
もしかりにその恐ろしいポケモンがまた石になっていたとして、それが復活していたのだとしたら。
その復活したポケモンがジャイアントホールに居るのだとしたら…。

博士もまだ決定づけるのは証拠が足りないと言ってフィールドワークを続けると言っている。
オレはこのままシャガさんに会いに行って話を聞いた方がよさそうだ。
もちろん、ジャイアントホールのポケモンについても。

そうして再び別れたオレは、カゴメタウンの外へと足を向ける。
しばらく進み西口と思われる場所まで来ると、よく見慣れた姿。

「よう!」
「ヒュウ兄」

そう、ヒュウ兄だ。
彼は民家の壁に凭れてオレを待っていたようで、オレの姿を見止めると片手を上げて挨拶してきた。

「おまえ、この辺りでプラズマ団を見なかったか?そんな噂を聞いたんだが」
「うーん、オレは見てないかな」
「そっか」

少なくともオレが歩いてきた13番道路では見ていない。
オレの返事にヒュウ兄ががくりと肩を落としていると、カゴメタウンの先の道路から怪しい姿。

「やれやれ、それはご苦労な話だな」
「お前!」

現れたのは、プラズマ団のヴィオさん。
ヒュウ兄が反応しているのを余所に、彼は何やら勝手に語り始めた。

そして話される自分勝手な話に、ヒュウ兄の怒りのボルテージが上がっていくのが判る。
饒舌に話すヴィオさんの話を、ヒュウ兄の低い唸るような声が遮った。
ヒュウ兄のお決まりともいえるセリフを合図に、バトルが始まる。


*****


「ヴィオ様と戦ったのに!?」
「こやつらのこの強さ…2年前を思い起こさせる」

勝負に勝ったオレ達の姿を見て、ヴィオさんと下っ端が後ずさる。
少なくともヴィオさんの脳裏には今、2年前のレイさんの姿が思い起こされているのだろう。

「しかし、今はそれに構っている暇はない。やはりアレはソウリュウシティにあるのだろうか…」
「?」
「先を行くぞ!」
「待て!!」

ヴィオさんたちは何かを探しているのだろうか、そう呟くと一目散に退却していく。
ヒュウ兄もその後を追いかけて行く。
オレはそれを見送って、一度バトルに出てくれたリイヤを回復させるためポケモンセンターへ向かう。

ヴィオさんたちはソウリュウシティと言っていた。
ならばまた必ず出会うはずだ。
ヒュウ兄ほど慌てて追いかけることもないだろうと結論付けて、オレはポケモンセンターを出た。

Play15

あの後タワーオブヘブンで見つけたアララギ博士は、嬉々としてフィールドワークをしていた。
オレがまだジムに挑戦していないと告げると、まだ時間はあるわねと言って奥へと行ってしまう。
どうもオレの心配はいらなさそうだと判断して、オレはタワーの最上階まで行って鐘を鳴らした。

タワーを出て野生ポケモンと戦いつつフキヨセシティに戻ってきたオレは、準備を整えてジムの前に立っていた。

「やっと6つめのジム、だね」
『そうですね』
「何だかんだで色々足止めちゃって、ここまで来るのに1か月以上…」
『長かったですね…』

そうだ、オレが旅に出たのは6月23日だからもう随分と時間が経っている。
オレ逹の他に同じように旅を始めた人たちはとっくに殿堂入りも済ませているのに、だ。
まあ、オレ逹はオレ逹のペースで進んでいるのだと言えなくもないのだけど。

「それじゃ、入ろうか」
『はい』

そう言ってジムに足を踏み入れてみると。
建物の中だというのに向かい風が凄い。
しかも、だ。
一歩足を踏み出した途端に前方から凄い風が吹いてきて、飛ばされてきたらしいガイドーさんに直撃された。

「いてて…」
「い、痛い…」
「ああ、申し訳ないっすね!お詫びにこの美味しい水を受け取ってくださいっすよ」
「あ、どうも…?」

こんな時でもこの人は美味しい水を渡すのを忘れないのか…。

「さーて、それじゃここの説明だ!このジムの仕掛けは風のトンネル!奥にあるプロペラが勢いよく回り出すとさっきのオレのように吹き飛ばされるっすよ!」
「この風ってあのプロペラからだったんだ…」

なんでジムなのにこんな大がかりな仕掛けなんだろう。
ジムリーダーって本当に不思議な人ばかりだ。

「それと!風が来ると思ったら壁に囲まれた場所に移動してやり過ごしてくださいっす」
「はい」

それじゃ、行ってきます。
そう言って歩き出したオレが、早速突風で壁に激突したのはここだけの秘密という事で。

しばらくはトレーナと戦いつつ先に進んだり、突風の中踏ん張ってバトルしたり、突風で飛ばされたりしつつジムの奥へ目指すことが続く。
しかもこの風、なかなかに勢いよく飛ばされるものだから何度も壁に激突してしまって明日にはきっと体中あざだらけだろう。
そんな感じでようやくたどり着いた最奥。

「ウフフ、待ってましたよ。あなたは風にもまけな…い…」
「ど、どもう…でもちょっと、バトルは…まって…」

最奥にいたジムリーダー、フウロさんの口上を澱ませた挙句遮ったオレはというと。
ボロボロの体である。
だっていくらなんでもあの風はキツイ。
誰が何と言おうとキツイ。
とにかくきつ過ぎて休憩しないとバトルどころじゃない。

「うーん、なんだかデジャブを感じるわ…」
「そりゃ、これだけ強力な風に立ち向かうドレーなーばかりなんですからデジャブくらい感じるんじゃ…」

きっとオレ以外にもこのジムに挑戦する人は大体こんな感じになるんじゃないだろうか。
なにせ少しでもタイミングを間違えると壁に激突。
下手をしたらあの世行だ。

「そろそろ元気になってきたかしら?」
「ええ、おかげさまで。待ってくださってありがとうございます」
「ううん、いいのよ。じゃあね、今度はあたしともっと楽しい事をしましょうね!」
「はは…」

フウロさんのその一言を開示の合図に、バトルが始まった。
余談だけど、この口上色々と際どいと思うんだ。
言ったら確実に仕留められそうだから言わないけど。


*****


「あなたってすごいポケモントレーナーなのね!2年ぶりかな?本気でポケモン勝負できたの。だから、あたしもポケモンも幸せ」
「こちらこそ、バトルありがとうございました」

フウロさんとのバトルは、他のジムリーダー同様すぐに終わった。
ちょっと色々あってレベルを上げつつ時間をつぶしていたらずいぶんとレベル差が空いていたらしい。

「さ、これはリーグ公認のジムバッジです。だけどここま通過点ですよ」

そう言ったフウロさんからジムバッジを受け取る。
これでようやく6つ目のジムバッジをゲットしたのだ。

「それと、この技マシンもどうぞ」
「あ、ありがとうございます」

最近すっかり物を貰う事が当たり前のようになってしまっている。
恐ろしい…。
オレはフウロさんから貰った技マシン「アクロバット」を鞄に仕舞い、お礼を言う。

「ところで、アララギ博士ってどうしてるのかな?飛行機に乗せて!って約束だったけれど…」
「オレがジムに来る前に様子を見に行ったら嬉々としてフィールドワークしてましたけど」
「そっかあ」

でも、オレがこの人に勝ったからそろそろアララギ博士も戻って来ている頃だろう。
そう思いつつオレは出口に向かおうと一歩踏み出して思い出した。

「あ、やばっ…」
『マスター!』

そう、このジムは突風で吹き飛ばされるのだ。
オレはその事をすっかり忘れていて安全圏から出てしまい…。

丁度吹いていた突風に勢いよく飛ばされた。
オレは情けない悲鳴を上げつつ見事に飛ばされ、途中に置いてあった木箱を2個破壊して出入り口の外へと放り出された。
そんなオレの後ろ姿をリイヤの悲鳴が追いかけていた。

「ああ、ごめんなさいね。注意すればよかった」
「うう…」

慌ててあとから追ってきたらしいフウロさんが、困り顔で見下ろしてくる。
オレは仰向けになって飛行場の地面に寝転がっている。
諸々の衝撃が強すぎて動けないのだ。

『マスター、マスター』
「リイヤ、大丈夫だよ」

リイヤはすっかり半泣きだ。
そりゃ自分のマスターが風で飛ばされた挙句物に激突する姿を見るのはさすがにショッキングだろう。
オレはリイヤの頭をなんとか上げた手で撫でてやり慰める。
ようやくリイヤが落ち空いてきた頃、待ってくれていたフウロさんが急に手を打ち合わせた。

「さて!じゃあ飛行機でひとっ飛びしましょう!って、アララギ博士はどこかしら」
「…いない?」

そういえば、博士の姿が見えない。
まだ戻ってきていないのだろうか。

「はーい!お待たせしちゃった」
「アララギ博士!」
「ごめんなさいねー!すっかりフィールドワークに夢中になっちゃって!」
「たしかオレ、2日ほど手持ちのレベル上げを…」
「シオン、そこは気にしちゃダメよ!」
「あ、はい…」

2日間、アララギ博士はずっとフィールドワークしていたのだろうか。
凄い体力だ。

「さて、山を越えても同じようにいい調査ができるといいわね!」
「?」
「ふふ、私と一緒に飛行機に乗るのよ!」
「え!?」
「ソウリュウシティに会ってほしい人が居るのだけど…今はネジ山が通れないからね。飛行機でひとっ飛びしてヤマジタウンへ向かうのよ!」
「はあ…」
「というわけでフキヨセカーゴサービスで待ってまーす!」
「あ、ちょ…アララギ博士!」

博士はそれだけを言うとさっさと行ってしまった。
相変わらず元気な人だ。

「あ、待ってよ博士!」

そんな博士の後ろ姿を見てフウロさんも呆れている。
あのマイペースさは本当に驚きますよね、とオレも同じ表情でフウロさんを見やった。

そんなフウロさんもすぐに表情を変えると、あなたも来てね、と言い置いて行ってしまった。
どうやらオレに拒否権というものはないらしい。

「これも運命、とかそんなものなのかな?」
『さあ?』

しかたない、と半ば諦めたオレは言われた通りにカーゴサービスセンターまで赴くことにした。


*****


「さ、それじゃ飛行機を飛ばすわよ!」

俺より一足早く到着していたアララギ博士とフウロさんは、既に準備万端の様だった。
オレが到着したのを見るや否やそう言って飛行機へと向かおうとする。

「ふええええ博士ー!」

しかし、そんなオレ逹の前にベルさんがやってきた。
どうやらベルさんも飛行機に乗るらしい。
そんなベルさんは半泣きだ。
ベルさんはオレ逹と方角は同じ、けれど場所は違うリバースマウンテンに行くようだ。

そんなこんなでオレ逹は一緒に飛行機に乗ることとなった。

Play14

アクロマさんと分かれてヒュウ兄たちを追いかけたオレ。
たしかアクロマさんが分かれる時に南の防波堤に行くといい、と言っていた気がする。
二人が走って行った方もたしか南で、だからオレはその防波堤の方までやって来ていた。

「えーっと…どこだろう」
『マスター』
「ん?」
『あそこから、波動を感じます』

リイヤに呼び止められ、示された方を向く。
そこには大きな船が停泊していた。
早速と言わんばかりに、オレはその船へと乗り込む。

果たして、その船にはヒュウ兄たちが居た。

「この船…」

ヒュウ兄はなぜ冷たいのだと呟いている。
たしかに、今の季節は秋とは言えまだ日差しが暑い。
なのにこの船はまるで何かに冷やされていたかのようにひんやりとしている。

「それに…」

チェレンさんがこっちを向いて言葉を繋ぐ。

「古い帆船の偽装しているけれど、そんなわけないよね」

たしかに外観は帆船であった。
しかしいざ乗り込んでみると、その内装は機械に固められており、とてもではないが帆船とは言い難い。

「そんなこたあどうでもいいだろ!コテンパンにされるお前たちにはな!!」

何処からともなく、そう声が聞こえる。
そして振り向いた先には、プラズマ団の下っ端。
更にその奥からは他の下っ端たちも現れ出した。

そして気付いた時には、オレ逹は周りをプラズマ団に囲まれて逃げることもできない状況。
しかし、そんなことで怯えるような人はここにはいない。

「これで全員か?もっと出てきてもいいんだぜ」

ヒュウ兄がプラズマ団を挑発する。
しかし彼らもそんな挑発に乗るほど簡単ではないようで、笑い飛ばされてしまった。

そして3人から1人へとばらけさせられ、彼らの相手をすることになった。


*****


順調に、チェレンさんと合流できてからは2対2でプラズマ団を倒していく。
そしてヒュウ兄とも合流し、ようやくすべてのプラズマ団を倒した。
倒した彼らにヒュウ兄がチョロネコの事を訊こうとしたとき。
プラズマ団の背後からロットさんによく似た服装の老人が現れた。

「あなたは冷凍コンテナで震えていた…たしかヴィオ!」

どうやらチェレンさんはこの老人、ヴィオさんを知っているらしい。
ヴィオさんもチェレンさんを知っているようで、また計画を邪魔する気かと唸っている。
そしてヴィオさんがダークトリニティとかいうものにオレ逹をつまみ出せと言った瞬間、目の前にプラズマ団とはまた違った黒尽くめの男性が現れた。

「うわ!?」
「悪いが、降りてもらうぞ」

どうやらこの人たちがダークトリニティらしい。
3人いるうちの1人に担がれたかと思うと、船の外へと放り出されてしまった。

「くそ!」

ヒュウ兄がもう一度船に乗り込もうとするも、梯がが上げられ目の前で船が出港してしまう。

「あいつらなんなんだよ!プラズマ団ごと消えやがるし!」

ヒュウ兄は悔しそうに地団太を踏む。
ひとしきり悔しそうに叫んだ彼はトーナメント会場の方へと去って行ってしまった。

「ダークトリニティって…?」
「ダークトリニティとは、人々の動きを封じて連れ去る超人的な連中だ」
「へ、へえ…」

動きを封じるって、いったいどうやっているのだろう。
というか連れ去るってそれ誘拐なんじゃ。
どこかげんなりとした風に説明してくれたチェレンさんはよく知っているのか、それとも経験したことがあるのか。
あまりいい思い出はなさそうだった。

「それにしても、『伝説のポケモンをもう一度従える』とはどういうことだ?ゼクロムもレシラムももうこの地方にはいないのに…」

一人ぶつぶつ呟いていたチェレンさんは、オレの方を見ると調べることがあるからと言って消えた。
どうやらこの先の6番道路に何かあるらしい。


*****


そしてやってきた6番道路。
何かの研究所らしい建物の前に、チェレンさんはいた。

なんでも各地で一瞬気温が-50℃になるという現象が観測されているらしい。
そしてそれを調べてくれと言われ、秘伝マシン「波乗り」を手渡された。

波乗りを雨調に覚えさせ、一先ずはとヒオウギからまだ言ったことのない場所を回りつつ6番道路へと戻ってきた。
途中チェレンさんに今の所問題はないと伝え、6番道路を先へと進む。

すると、どこからかポケモンだと思われる鳴き声が聞こえてきた。

「こふおおおおー!」

急に、目の前へと青いポケモンが出てきた。
それはじっとこちらを見つめたかと思うと、どこかへと走り去っていく。
すると今度は後ろから、ロットさんとお爺さんがやってきた。
お爺さんの話では、さっきのポケモンはコバルオンという伝説のポケモンらしい。
なにか、よくない騒動が起こる前触れなのではないかとお爺さんは心配していた。


*****


ロットさんたちと別れたオレは、電気穴の洞窟へとたどり着いた。
その内部は噂に違わず電気を帯びて青白く発光しており、幻想的な風景だ。

入口より少し進んだところに、ベルさんの姿が見えた。
彼女はここで何か調べ事があるとかで、少しお話しただけで奥へと行ってしまう。

オレものんびりと野生ポケモンと戦ったりトレーナーと戦ったりしつつ奥へと進む。
そうしてだいぶ進んだ頃、ようやく出口と思われる場所へたどり着いた。
どこを抜けると、次の街フキヨセシティだ。

フキヨセについたオレ逹は、早速ポケモンセンターに寄る。
手持ちのみんなを回復させていつもの様に街を見て回ろうと一歩踏み出した時。

「はーい!シオン!!」
「?」

特徴的な髪型をした女性が前方から近づいてきた。
この人にはどこかで会ったことがあるような気がする。
しかしどこだろう、他の面々が濃すぎて思い出せない。

「ふふ、やーっとライブキャスターを使わずお話が出来たわね!」
「あ、アララギ博士か!」
「せいかーい!」

そういえば、ライブキャスターで一度顔を見たことがあるのだ。
すっかり忘れてしまっていた。

「改めて、私がアララギです!私のお願いを聞いてくれてありがとう。パートナーとここまで来てくれたんだよね」
「あ、あはは…」

とんとろは今ボックスに居ますだなんて言いにくい…。

「じゃあ、早速だけど図鑑の評価をさせてもらうわね!」
「は、はい!」

オレはポケモン図鑑を取り出して博士に手渡す。

「ふむ…見つけた数108匹か…なるほどね!ありがとう、これは感謝の気持ちよ!」

そう言った博士は、オレに紫色のモンスターボールを手渡した。
初めて見るそのボールを、オレはまじまじと見つめる。

「それはマスターボール。どんなポケモンでも絶対に捕まえられる最高のボールよ」
「へえ…」
「旅にポケモンとの出会いは付き物。チャンスを逃さないでね!」
「はい」

こんな貴重なボールをくれるなんて、アララギ博士って太っ腹だなあ。
本人は細い体だけど。

そんな事を思っていると、遠くからアララギ博士を呼ぶ声が聞こえてきた。
オレ逹が声のする方を見ると、赤茶色の髪の女性が近づいてくるのが見えた。

「あら、フウロじゃない!シオン、こちらはフキヨセジムのジムリーダー、フウロよ」
「もー博士ったら。今はねじ山が徒歩で行けないから飛行機に乗せてって言ったのは博士でしょ!シオン君、初めまして。あたしはフウロよ」
「オレはヒオウギタウンのシオンです。よろしくお願いします」

この二人は仲が良いらしい。
とても気さくに話し合っていた。

「あはは、ごめんなさいね。だけどどの前にタワーオブヘブンを調べたいの!だからそれまで待っててくれないかしら?」
「もー、しかたないなあ」
「それじゃあね、シオン!どんな時でもポケモンと仲良くするのよ」

言うと、アララギ博士は言ってしまった。
フウロさんは少しの文句を言っていたがそれだけで、くるりとオレの方へ向き直る。

「さてと、あなたはジムに来て挑戦する?それとも博士が向かったタワーオブヘブンで鍛える?あたしはどっちでもいいんだけど」
「あ、オレはタワーオブヘブンに行ってみようと思います」
「そう。それじゃ、またあとでね」
「はい」

フウロさんもそれだけを言うと言ってしまった。
オレも、一人で行ってしまった博士がちょっと心配だし行ってみようと思う。
一人であちこち行くような人らしいから、大丈夫だとは思うけど。